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死を認識するよりも早く
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「不意打ちか?」
痛みはなかった。
ただ確実に刃に触れ、斬られた感覚はあった。
腹をさするがきちんと繋がっている。
「そんなつもりはなかったが、無傷とは恐れ入ったぞ。」
既に居合の構えに戻っているノブナガは、言葉とは裏腹に全く動揺していないように見える。
やはり居合は目視できない。
ただ、幸いなのは抜刀が早すぎて痛みを感じるのが遅いことと、レインの回復魔法のスピードがあまりに早いこと。
つまり俺は今、死ぬ前に回復できる。
「手応えはあった。確かに斬った。だがお前の心臓が止まるよりも、お前が死を認識するよりも早く、回復されたということか。」
「お互い様だ。鉄パイプより余程重い上抜刀も納刀もしづらいその刀を、さっきよりも早く抜き、納めているのはこの音色のおかげだろう?」
「ハッハッハ!!やはり見抜くか!!」
ノブナガは構えを解かず嬉しそうに笑う。
まるで長い間離れていた愛する人と再会できたかのように。
「これで互いに隠し事は無しだ。正々堂々いこうか。」
「ああ。挑んでやるよ天下へ。」
まずは近寄らない限り俺に勝機はない。
そこで俺はグリフォンのキ〇タマを潰した時に使ったボクシングの構えで足を使ってノブナガに近付くことにした。
トントンと小刻みに地面を跳ねながら、右に左に移動する。
恐らくほぼ効果は無いと思うが、動きで翻弄しつつ一瞬でも死角に入ることが出来れば距離を一気に縮めてこれの拳の射程距離に入れられる。
「ほほう。動きが変わったな。」
即興でやっているが、なかなか悪くないようだ。
時折飛んでくる剣閃が数センチ分ズレている。
まぁほとんど当たっていて、レインの回復がないと死んでいるが。
「何度斬っても変わらんか。なら、こういうのはどうだ?」
ノブナガは居合の構えのまま、すり足でこちらに距離を詰めてくる。
その速さは一般人の全力疾走よりも早く、思わず俺の方が1歩後ろにさがる程の速さだった。
俺の拳もノブナガの刀の刀身も互いに届く距離まで近寄った時、やはり先に攻撃を届かせたのはノブナガだった。
「うぐっ!!」
痛みが体を駆け巡る。
さっきまで全くそんなことは無かったのに。
「どうだ?これなら回復出来んだろう?」
ノブナガは抜刀した刀を途中で止め、俺の首に刀が刺さった状態になっていた。
前にもこんなことがあったな。
あの時は木の槍だったか?
つまり俺はもう、この痛みには慣れてるってことだ。
「やっと手が届く距離だ。」
喉が通っていないので声になっているかは分からないが、俺は首に刀が刺さりながら、ノブナガに全力のアッパーを繰り出した。
「何だと!?」
さすがのノブナガも慌てて刺さった刀を引き戻し、俺と距離を開ける。
俺の拳はノブナガには届かず空を切った。
「貴様の体に痛みや恐怖心は無いのか?」
「ははっ。もう慣れちまったんだよ。」
「1度くらえば死ぬ痛みを、慣れたと言うか!!ハッハッハ!!」
俺もノブナガも互いに笑うしか無かった。
何度攻撃を当てても絶対に倒すことが出来ない俺と、一度も攻撃を当てることが出来ないノブナガ。
お互い相反する戦い方でありながら、どちらもその強さを認めあっていた。
だがハッキリ言って俺は分が悪かった。
流石にレインの回復魔法を受け続けるのは容易ではなく、数秒ごとに意識が飛びかける。
ノブナガの攻撃を受け、死にかける度にその間隔は短くなっていく。
ふらつき、肩で息をしながら意識を保ち続ける戦いだ。
何故かは分からないが、タバコを吸う度意識がはっきりするので、タバコを吸えなくなった、或いはタバコを吸うことを阻止された時点で俺の負けが確定する。
俺はタバコの火を消さないように、タバコそのものを斬られないように守りながら戦うしかなかった。
最も危険なタイミングは、タバコを吸いきってから次のタバコを吸うまでのほんの数秒。
そろそろ今吸っているタバコが消える。
恐らくノブナガにはその程度のことは悟られているため、一瞬でもやつの隙を作るしか無かった。
「オラァ!!」
「おっと、我にとってはその程度、そよ風にしかならんぞ?」
正拳突きで前方広範囲に砂塵を撒き散らす。
その間に咥えていたタバコを吐き捨て、次のタバコを咥える。
「あ……マズイな……。」
ここに至るまで戦闘続きで流石に吸いすぎたか。
ストックが残り3本しか無かった。
痛みはなかった。
ただ確実に刃に触れ、斬られた感覚はあった。
腹をさするがきちんと繋がっている。
「そんなつもりはなかったが、無傷とは恐れ入ったぞ。」
既に居合の構えに戻っているノブナガは、言葉とは裏腹に全く動揺していないように見える。
やはり居合は目視できない。
ただ、幸いなのは抜刀が早すぎて痛みを感じるのが遅いことと、レインの回復魔法のスピードがあまりに早いこと。
つまり俺は今、死ぬ前に回復できる。
「手応えはあった。確かに斬った。だがお前の心臓が止まるよりも、お前が死を認識するよりも早く、回復されたということか。」
「お互い様だ。鉄パイプより余程重い上抜刀も納刀もしづらいその刀を、さっきよりも早く抜き、納めているのはこの音色のおかげだろう?」
「ハッハッハ!!やはり見抜くか!!」
ノブナガは構えを解かず嬉しそうに笑う。
まるで長い間離れていた愛する人と再会できたかのように。
「これで互いに隠し事は無しだ。正々堂々いこうか。」
「ああ。挑んでやるよ天下へ。」
まずは近寄らない限り俺に勝機はない。
そこで俺はグリフォンのキ〇タマを潰した時に使ったボクシングの構えで足を使ってノブナガに近付くことにした。
トントンと小刻みに地面を跳ねながら、右に左に移動する。
恐らくほぼ効果は無いと思うが、動きで翻弄しつつ一瞬でも死角に入ることが出来れば距離を一気に縮めてこれの拳の射程距離に入れられる。
「ほほう。動きが変わったな。」
即興でやっているが、なかなか悪くないようだ。
時折飛んでくる剣閃が数センチ分ズレている。
まぁほとんど当たっていて、レインの回復がないと死んでいるが。
「何度斬っても変わらんか。なら、こういうのはどうだ?」
ノブナガは居合の構えのまま、すり足でこちらに距離を詰めてくる。
その速さは一般人の全力疾走よりも早く、思わず俺の方が1歩後ろにさがる程の速さだった。
俺の拳もノブナガの刀の刀身も互いに届く距離まで近寄った時、やはり先に攻撃を届かせたのはノブナガだった。
「うぐっ!!」
痛みが体を駆け巡る。
さっきまで全くそんなことは無かったのに。
「どうだ?これなら回復出来んだろう?」
ノブナガは抜刀した刀を途中で止め、俺の首に刀が刺さった状態になっていた。
前にもこんなことがあったな。
あの時は木の槍だったか?
つまり俺はもう、この痛みには慣れてるってことだ。
「やっと手が届く距離だ。」
喉が通っていないので声になっているかは分からないが、俺は首に刀が刺さりながら、ノブナガに全力のアッパーを繰り出した。
「何だと!?」
さすがのノブナガも慌てて刺さった刀を引き戻し、俺と距離を開ける。
俺の拳はノブナガには届かず空を切った。
「貴様の体に痛みや恐怖心は無いのか?」
「ははっ。もう慣れちまったんだよ。」
「1度くらえば死ぬ痛みを、慣れたと言うか!!ハッハッハ!!」
俺もノブナガも互いに笑うしか無かった。
何度攻撃を当てても絶対に倒すことが出来ない俺と、一度も攻撃を当てることが出来ないノブナガ。
お互い相反する戦い方でありながら、どちらもその強さを認めあっていた。
だがハッキリ言って俺は分が悪かった。
流石にレインの回復魔法を受け続けるのは容易ではなく、数秒ごとに意識が飛びかける。
ノブナガの攻撃を受け、死にかける度にその間隔は短くなっていく。
ふらつき、肩で息をしながら意識を保ち続ける戦いだ。
何故かは分からないが、タバコを吸う度意識がはっきりするので、タバコを吸えなくなった、或いはタバコを吸うことを阻止された時点で俺の負けが確定する。
俺はタバコの火を消さないように、タバコそのものを斬られないように守りながら戦うしかなかった。
最も危険なタイミングは、タバコを吸いきってから次のタバコを吸うまでのほんの数秒。
そろそろ今吸っているタバコが消える。
恐らくノブナガにはその程度のことは悟られているため、一瞬でもやつの隙を作るしか無かった。
「オラァ!!」
「おっと、我にとってはその程度、そよ風にしかならんぞ?」
正拳突きで前方広範囲に砂塵を撒き散らす。
その間に咥えていたタバコを吐き捨て、次のタバコを咥える。
「あ……マズイな……。」
ここに至るまで戦闘続きで流石に吸いすぎたか。
ストックが残り3本しか無かった。
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