ヘビースモーカーと枯れ木の魔女

I.B

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渡した物

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「あー、その金額出せるならここまで売っても良い。どちらにしても他の人間との兼ね合いで少しこの辺りの土地少し余ってる。好きに使ってくれ。」


「あ、ありがとうございます!!」


「あんたの金額じゃ渡せるのはここまでだな。これ以上は住民と折り合い付けなきゃ渡せんし、そこまで含めた金額で他があんた以上提示してくれてる。どうしても欲しいならもう1本積んでこい。」


「わ、分かりました……。」


「次ぃ。」


 翌朝目を覚ました俺を待っていたのは、教会前に並ぶ沢山の人間達だった。

 薄情な奴らのようで、昨日までアーデルハイトを慕っていたのに、その土地全て俺の物になったと聞くや否や俺に押しかけてきたのだ。

 俺は朝一番でルシウスが持ってきた便利な魔道具の眼鏡のおかげでこの世界の文字が読めるようになり、アーデルハイトが持っていた土地、資源、人材などをそいつらと交渉し金に変えている。

 そんなに便利なものあるんだったら早くくれよと小突いたら、「それ高いんですから後で請求しますからね?」と反撃された。

 この件で入手した金は人数で分けるということで冒険者4人とは話が着いており、そのためなら4人とも協力するとも言ってくれ、今は各地へそれぞれ飛んで、現地調査を行ってくれている。



「大きい土地はあとここと、ここと、ここね。」


 ルシウスと一緒に来たソールが暇そうにしていたので、地図を持ってこさせ、俺の補佐として適当に使っている。

 性格は馬鹿だが要領が良く、帝国の土地、富裕層の連中に詳しいのでこの手の仕事は得意のようだ。


「一成さんって戦闘よりもこういうのの方が得意だったんですね。普通はこんなにスムーズには行かないと思いますが。」


 ルシウスが珍しく俺を褒める。

 ちなみにルシウスは俺に眼鏡を届けた後、そのまま居座って自分の残務を処理していた。


「やらねぇとレインと買い物に行けねぇだろうが。明後日一緒に行くって言っちまったんだよ。」


「レインさんが関わるとやたら律儀なんですけどねぇ……。」


「そうでなくてもちゃんと俺は律儀だよ。」


「じゃあ早くお金返してくださいね?」


 悪魔かこいつは。


「ほらほら一成。次の人来たわよ。」


 手を叩きながらソールが俺に教えてくれる。

 入ってきたのはどことなく見覚えがある女だった。


「あの、私……。」


「……お前どっかで会ったか?」


「アーデルハイトの屋敷の地下で閉じ込められていた奴隷の1人です……。」


「あいつらは軒並み家に返したと思ったが……。」


「帰る家が無かったのよ。多分、元冒険者でしょ?貴女。」


「はい……。」


 訳ありで職を探してるってことか。

 そういう連中の事を考えてなかったな。

 だが、実はあてが無いわけじゃない。


「お前、そういう連中を集めてもらえるか?ちょっと頼みたい仕事がある。」


「わ、分かりました。」




「最後に一成さんに頼まれた土地はここか。村があった形跡はあるが、廃屋に魔物が出入りしているところを見ると、かなり前に魔物に襲われたのか。」


 冒険者4人は一成の依頼でとある廃村に来ていた。

 帝都からかなり離れてはいるが土地は広く、有効活用したいとの事だ。


「……ん?おい、あれ人じゃねぇか?」


「こんな所に人がいる訳が……人だ。」


 村の入口近く。

 冒険者と思われる格好をした女達が、魔物達を討伐している。


「貴女達!!何をしているんですか!?」


 ランスが叫ぶと女達は振り向き、4人に駆け寄ってきた。

 10人以上居る彼女達は、小型の魔物を容易くねじ伏せている。

 だが、中には戦闘慣れしていない人間もおり、そのパーティはかなり違和感があった。


「一成さんからこれを渡せと言われて待っておりました。」


 そう言って手紙をランスに手渡すと、女達はまた魔物を狩り始めた。

 ランスはその手紙を開き、中を確認したと同時に驚愕の表情を浮かべ、その手紙を握ったまま動かなくなった。


「お、おい!!何が書かれてたんだ?」


 ブルがランスから手紙を奪い取り、残りの3人で内容を確認する。


『アーデルハイトがその土地を持っていたことは偶然だが、その場所はルシウスに当時の記憶から逆算させて辿り着いたお前達の育ったハーフの村だ。お前たちの手で復興させろ。人手は足りないだろうからアーデルハイトの所にいた奴隷達の中で行き場の無い連中を送っておいたから好きに使ってくれ。いつか世界が救われた後、俺と目が見えるようになったレインも厄介になる予定だから頼んだぞ。』


「言われてみれば確かに見覚えがある。あの家は、俺が元住んでいた家だ……。」


「裏に続きがあるわよ。」


『ついでに近くにジェイクスも居るから必要な時使え。ただ、奴隷達の中には奴に恨みがあるのもいるから慎重にな。当面の金の心配はするな。多分お前らが一生食いっぱぐれないだけはあるはずだ。じゃあまたな。』


「ほんと、勝手な人ね。」


「俺は嫌いじゃないぜ?」


「僕はまたこの村に帰って来れて嬉しい。」


「一成さん……。ありがとうございます。」


 4人は帝都の方角へ頭を下げ、奴隷達と協力しながら村に住まう魔物たちを討伐し、復興をすすめる。

 いずれまた出会うであろう一成に恥じないように。

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