ホワイトストーン

福猫

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第6話

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精森は誠に近づき首筋に目線を向けた。

その後、精森は険しい顔で立ち上がり恭一に向かって口を開いた。

「噛まれてる」

「龍二が噛んだのか?」

恭一が声をかけたその時、龍二の耳元にジュノの声が聞こえた。

「龍二、俺の元に戻ってこい」

「わかった、すぐ戻る」

「……」

「……」

恭一と精森は驚いた顔でその場から姿を消す龍二を見つめた。

「龍二が消えた」

「恭一、俺が戻るまでこの家から出るな、渉が戻ってきても家から出るな」

「わかった」

「それと誠が目を覚ましたらこの薬を飲ませろ」

そう言って精森は小さな白い薬を恭一に渡しその場から姿を消した。

「……」

恭一は誠を寝室に運びベッドに仰向けで寝かせた。

「誠…」

「ううう…」

「誠、俺の声が聞こえるか、誠」

「……」

ゆっくり誠が目を覚ますと恭一は小さな白い薬を口に含みそのまま誠の唇に唇を重ね薬を飲ませた。

その後、恭一は唇を離し誠に声をかけた。

「誠、大丈夫か?」

「恭一、俺…」

「今はゆっくり安め」

そう言って恭一が寝室から離れていくと誠は目を閉じ眠りについた。

ーリビングー

ソファーに座りながら考え事をしていると渉が瑠璃を連れて戻ってきた。

「恭一、どうしたんだ?」

「渉、瑠璃」

恭一は起きた出来事を話した。

「それで誠は?」

「精森がくれた薬を飲んで眠ってる」

「龍二は?」

「いなくなった」

「誠の様子を見てくる」

そう言って瑠璃が寝室に向かうと渉が口を開いた。

「精森は?」

「どこかにでかけた、それで精森が俺が戻るまでこの家から出るなって」

「わかった」

渉と恭一が会話をする頃、瑠璃は険しい顔で誠の首筋を見つめていた。

その頃、精森は森林の中を歩いていた。

30分後、精森は1軒の家の前に着いた。

そして精森は家から出てきた人間と同じ大きさの黒猫、也英(やえ)に出くわした。

「久しぶりだな」

「お前に相談があって来た」

「龍二のことだろ」

「お見通しか」

「誠の傷も見たいし家に行こうか」

「それもお見通しか」

「行くぞ」

ドアを閉め也英が歩き出すと精森も歩き出した。

ー宇宙船、地下の部屋ー

自分の元に戻ってきた龍二をヴァンパイア、ジュノは龍二の唇に何度も唇を重ねた。

その後、ジュノは唇を離し苦しみだした。

「貴様…何を飲ませた…」

「……」

苦しむジュノを龍二はじっと見つめた。

「はぁはぁ…はぁはぁ…」

息が荒れながらジュノは倒れた。

その時、ヴァンパイア、ジュンが現れた。

「ジュン」

龍二が優しい顔で見つめるとジュンは龍二に近づきジュノを見つめた。

「ジュン、貴様」

苦しみながらジュノは立ち上がりジュンを睨みつけた。

ジュンはジュノに近づき耳元で囁いた。

「兄貴、いやジュノ、俺はお前が嫌いだ」

「ジュン…」

「お前のものは全て奪ってやる」

「はぁはぁ…はぁはぁ…」

「龍二は俺が貰う、ジュノは安心して死にな」

そう言ってジュンは龍二の側に近づき命が消えていくジュノの前で口づけを交わした。

「ジュン…」

龍二と口づけを交わすジュンの姿を睨みながら見つめるとジュノは倒れ姿が消えた。

消えたジュノの行き先は精森の兄、腰まで長い緑の髪に足首まで長いフード付きの緑の服を着た聖葉(せいは)がいる森林。

「……」

聖葉は宙に浮いているジュノをお姫様抱っこしそのまま家に向かった。

その後、聖葉はジュノをベッドに寝かせ左右の手を向け治療を始めた。

それから暫くしてジュノが目を覚ますと聖葉は治療を止め声をかけた。

「具合はどうだ」

「お前が俺の命を救ったのか」

「救いたくなかったんだがお前の命が消えたら龍二の命も消える、だからお前の命を救った」

「……」

ジュノは身体を起こしベッドからおり口を開いた。

「治療をしてくれてありがとう」

「どこに行くんだ」

「ジュンは俺から龍二を奪い俺を裏切った許せない」

「お前を行かせる訳にはいかない」

そう言って聖葉は魔法でジュノと共に姿を消した。

ー中村家、寝室ー

ベッドで眠る人間と同じ大きさの三毛猫、誠を恭一と人間と同じ大きさの黄色のキジトラ猫、渉と人間と同じ大きさの灰色のキジトラ猫、瑠璃と腰まで長い緑の髪に足首まで長いフード付きの緑の服を着た精森と黒猫、也英が見つめているとジュノを連れて聖葉が現れた。

恭一と渉と瑠璃と精森と也英は驚いた顔で見つめた。

「何でヴァンパイアと一緒にいるんだ、そいつは龍二をヴァンパイアにした敵だ」

怒った口調で精森が口にすると聖葉が口を開いた。

「こいつの命を奪いたいか?」

「こいつのせいで龍二はヴァンパイアになり誠も…」

口にしながら恭一が誠を見つめると聖葉が口を開いた。

「こいつの命を奪ったら龍二と誠の命が消えるぞ」

「嘘だろ」

「だから俺は消えかけたこいつの命を救った」

「消えかけた命ってどういうことだよ」

恭一の言葉にジュノが口を開いた。

「弟のジュンに命を奪われたが俺は命を救われた」

「弟に命を奪われそうになるなんて情けないな」

精森が口にしたその時、聖葉が口を開いた。

「精森、そういう言い方はやめろ」

「…ゴメン…」

「……」

聖葉は誠に目線を向け口を開いた。

「ジュノ、お前の力で誠の傷を治せるか?」

「治せる」

そう言ってジュノはベッドに近づき口を開いた。

「俺が噛んだあと傷口が悪化しないように薬が塗られたガーゼで塞げそうすれば綺麗に傷口は消える」

「わかった」

聖葉が返事をするとジュノは龍二が噛んだ誠の首筋に顔を近づけ噛んだ。

その後、ジュノが誠の首筋から離れると聖葉は薬が塗られたガーゼをジュノが噛んだ傷口に貼った。

「ありがとう」

「綺麗に傷口が消えれば目を覚ます」

「わかった,ありがとう」

「ヴァンパイアに何度も礼を言うな」

そう言ってジュノは寝室を出ていった。

「……」

聖葉と恭一と渉と瑠璃と也英は安心した顔で誠を見つめた。

「……」

精森はジュノを追いかけ家を出て道を歩いていくジュノに駆け寄り声をかけた。

「待てよ」

「……」

無言でジュノは立ち止まり振り返ると精森とジュノは見つめ合った。
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