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福猫

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第3話

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「俺があの時の三毛猫だと信じてくれましたか?」

優しく幸雄を抱きしめながら人間姿のみっちゃんが問いかけると幸雄はみっちゃんから離れ口を開いた。

「俺が7歳の時に食パンを猫にあげたなんて誰も知らないのにみっちゃんは知ってた、信じるしかないよ」

「信じてくれてありがとう」

「何で人間に?」

「俺は食パンをくれたあなたに恋をした、猫が人間の恋人にはなれないだろだから俺は発明家の人に説明してこの石を作って貰い俺は人間になれた」

「俺は猫の方が良いな」

「え?」

「俺は猫が好きだから、もし猫に告白されたらOKをだすかも」

「人間の俺は嫌いですか?」

「嫌いじゃないですよ」

「俺と付き合ってくれますか?」

「……」

「返事に困ってるってことは…すみません…忘れてください」

そう言って人間姿のみっちゃんが離れようとしたその時、幸雄が口を開いた。

「俺の家に来ませんか?」

「……」

人間姿のみっちゃんは振り向き幸雄を見つめた。

「俺の家で話をしませんか?」

「行っても良いんですか?」

「良いに決まってるでしょ」

そう言って幸雄が手を差し出すと人間姿のみっちゃんはその手を掴み幸雄と人間姿のみっちゃんは歩きだした。

ー1時間後ー

幸雄の家の前に着いた幸雄と人間姿のみっちゃんは互いの手を離れさせ幸雄は鍵をあけドアを開いた。

「先にどうぞ」

「……」

人間姿のみっちゃんが先に家の中に入ると幸雄も入りドアを閉めた。

その後、幸雄が靴を脱ぎあがると人間姿のみっちゃんはあがらず立ち尽くした。

「どうしたの?」

「俺、裸足だからこのままあがったら汚れてしまう」

「そうか今のみっちゃんは人間だけど本当の姿は猫だもんね、濡れタオル持ってくるから待ってて」

そう言って幸雄は玄関を離れ浴室に向かった。

「……」

人間姿のみっちゃんは座り幸雄を待った。

「みっちゃん、先に濡れタオルで足を拭いて」

「……」

濡れタオルを受け取り人間姿のみっちゃんは汚れている左右の足を拭いた。

「これで濡れた足を拭いて」

「……」

濡れタオルを幸雄に渡し乾いたタオルを受け取り左右の足を拭いた。

その後、人間姿のみっちゃんは綺麗な足で床に立ち乾いたタオルを幸雄に渡した。

「タオルを浴室に持っていくからみっちゃんはリビングで待ってて」

そう言って幸雄がタオルを持って玄関を離れていくと人間姿のみっちゃんも玄関を離れリビングに向かった。

人間姿のみっちゃんはソファーに近づき座った。

「1人で住んでるのかな」

「1人で住んでるよ」

お茶が入った2個のコップを持って幸雄は人間姿のみっちゃんに近づき隣に座った。

「はい、お茶」

「……」

差し出されたコップを受け取り人間姿のみっちゃんはお茶を見つめた。

「水の方が良かった?」

「飲みます」

そう言って人間姿のみっちゃんは一気にお茶を飲み干した。

「美味しかった」

「まだ飲みたいなら飲んで良いよ」

「……」

コップを差し出しながら見つめる幸雄の姿に人間姿のみっちゃんは興奮してしまい空のコップを床に落とした。

「みっちゃん、大丈夫?」

「ダメだ…ダメだ…」

「ダメって何がダメなの?」

「あなたの顔を見つめていたら興奮してしまった」

「え!」

驚いた顔で幸雄が見つめると人間姿のみっちゃんは幸雄の身体を倒し覆い被さった。

その弾みでお茶が入ったコップが落ちお茶がこぼれた。

「お茶を拭かないと、みっちゃん退いて」

「……」

無言で人間姿のみっちゃんは顔を近づけ幸雄の唇を奪った。

その後、人間姿のみっちゃんは唇を離し幸雄を見つめた。

「……」

幸雄の目から涙が流れた。

「幸雄…」

悪いことをしてしまったそう思った人間姿のみっちゃんは幸雄から離れ家を出ていった。

幸雄は身体を起こし手で涙を拭い口を開いた。

「涙を流したからみっちゃんは慌てて出ていった、悪いことしちゃったな」

その頃、人間姿のみっちゃんは裸足でホストクラブ輝きに向かっていた。

ーホストクラブ輝きー

指名が入りホストの要で女性を接客していると裸足で人間姿のみっちゃんが現れた。

ホスト達と女性客達は人間姿のみっちゃんを見つめた。

スタッフの男性は近づき声をかけた。

「男性のお客様はお断りしてるんですが」

「俺は客じゃない」

「客じゃないならご用件はなんでしょうか?」

「要を呼んでくれ」

「オーナーを?」

「千代(ちよ)様、ちょっとすみません」

席を立ち要は人間姿のみっちゃんに近づき声をかけた。

「オーナー室に行きましょうか」

そう言って要は人間姿のみっちゃんをオーナー室に連れていった。

「あなた名前は?」

「みっちゃん」

「うちの猫と同じ名前だね」

そう言って要が振り向き見つめると人間姿のみっちゃんは人間から三毛猫に戻った。

「みっちゃん!」

要が驚いた顔で見つめると三毛猫のみっちゃんが口を開いた。

「要、俺は幸雄が好きだ」

「猫が喋った」

「要、今までありがとう、俺は幸雄に思いを言い続ける」

「みっちゃん!」

オーナー室を出ていく三毛猫を見つめながら要は立ち尽くした。

三毛猫のみっちゃんは夜道を走り続け別荘に着いた。

「悠人、いるか悠人」

ドアが開き白衣姿の悠人が現れた。

「どうした問題でもおきたか」

「俺を完全な人間にしてくれ」

「何かあったのか?」

「……」

「中に入れ」

そう言って悠人は三毛猫のみっちゃんを発明室に連れていった。

「椅子に座って」

「……」

悠人に言われた通り三毛猫のみっちゃんが椅子に飛び上がり座ると悠人も椅子に座り口を開いた。

「何で完全な人間になりたいのか話してもらおうか」

「……」

悠人と三毛猫のみっちゃんは見つめ合った。
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