2人の王子

福猫

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第13話

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ー結城の家ー

翌日、ベッドで眠っていた結城は目を覚まし新しい服とズボンに着替えた。

その後、結城が部屋を出てドアを閉めたその時、理人も自分の部屋から出てきた。

「お兄ちゃん」

「理人、おはよう」

「お兄ちゃんに話がある」

「……」

結城は理人の部屋の中に入り口を開いた。

「話があるって何だ?」

「銀の国の王子、リタには気をつけて」

「何で?」

「ララさんとルークさんが言ったんだ、銀の国の王子、リタには気をつけろって」

「話は終わりか?」

「うん」

理人が頷くと結城は背を向けた。

「お兄ちゃん」

理人が声をかけると結城が口を開いた。

「わかった、気をつける」

「……」

部屋を出ていく結城の後ろ姿を理人は心配そうな顔で見つめた。

その後、結城と理人は朝食を食べ仕事に向かった。

ーファミリーレストランー

「おはようございます」

コック服姿の結城が挨拶をしながらキッチンに現れると店長が近づいてきた。

「結城君、客が来てるよ」

「はい」

キッチンを離れ出入り口に向かった結城は背を向けながら立っている女性に声をかけた。

「お待たせしました」

「……」

女性が振り返ると結城は驚いた。

「春菜!」

「仕事中にゴメンなさい」

「何かようか」

「結城に大事な話があるって私の家で待ってるの一緒に来て」

「今、仕事中だからゴメン」

断り結城が背を向けたその時、春菜が手首を掴んだ。

「春菜、手を」

振り向いた結城は春菜の銀色の瞳に驚いた。

「瞳の色どうしたんだ」

「結城…一緒に行こう」

「……」

春菜の銀色の瞳から目がそらせない結城は春菜に手首を掴まれたまま姿を消した。

その光景を店長は驚いた顔で見つめていた。

ー春菜の家ー

部屋の中に姿を現した春菜と結城。

「……」

「……」

春菜は結城の手首から手を離し部屋を出た。

「春菜…」

結城はドアに目線を向けた。

そして銀のマント付きタキシード姿のリタが現れた。

「銀色…」

理人の言葉を思い出した結城は後ずさりでリタから離れ警戒しながら見つめた。

リタはドアを閉め結城に近づいた。

結城は口を開いた。

「俺に何かしたら警察を呼びますよ」

スマホを取り出そうとポケットに手を入れた結城はコック服だと気づいた。

「……」

「スマホはあったか?」

「ありますよ」

ポケットに手を入れながら結城がそう答えるとリタはポケットに入れている手を掴みポケットから出した。

「……」

無言で結城が見つめるとリタが口を開いた。

「スマホは仕事場にある衣類のポケットかな」

「……」

「今から俺が君を襲っても助けを呼べないね」

口にした後、リタは結城をベッドに倒し覆い被さった。

「……」

「……」

リタと結城は見つめ合った。

その後、リタは結城の左右の手首を掴みながら唇を奪った。

「……」

リタは唇を離し結城とベッドから離れた。

「……」

身体を起こし結城が見つめるとリタは険しい顔でその場から姿を消した。

その瞬間、部屋の前で立っていた春菜が倒れた。
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