喋る3匹の猫と天才の健太

福猫

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第4話

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「遅くなってすみません」

そう言って健太は耕介から目線を松本智弘に向けた。

松本智弘は席を立ち口を開いた。

「松本智弘です」

「松本智弘、あんたが」

「長尾健太さん、会えて嬉しいです」

「耕介さん、耕介さんの家に行きましょう」

そう言って健太がその場を離れると耕介も席を立ちその場を離れお金を支払い喫茶店を出ていった。

松本智弘は席に座りコーヒーを注文すると笑みを浮かべた。

ー喫茶店の前ー

「健太、急にどうしたんだ」

「耕介さん、行きましょう」

「あぁ…」

返事をすると耕介と健太は歩きだし喫茶店を離れていった。

30分後、耕介の家の前に着くと耕介は鍵をあけドアを開き中に入ると健太も中に入りドアを閉めた。

その後、耕介と健太は靴を脱ぎ玄関を離れるとリビングに向かった。

「健太、喫茶店で会った男性と何があったんだ」

「耕介さん…小梅…」

「小梅ってお前が発明で誕生させた三毛猫の?」

「はい」

「その三毛猫がどうかしたのか?」

「喫茶店で会った松本智弘は小梅を人間にした」

「え…」

「俺が人間にしたかったのにアイツが…」

悔し涙を健太が流すと耕介は健太を抱きしめ口を開いた。

「悔し涙を流す暇があったらお前しかできない発明をしろ」

「俺にしかできない発明…」

「……」

健太から離れ耕介は顔を見つめながら口を開いた。

「俺も手伝うから」

「耕介さん…」

「健太」

「……」

「……」

健太と耕介は見つめ合い健太が「耕介さん?」と問いかけると耕介は健太に顔を近づけ唇を重ねた。

その光景を歩きながらスマホで松本智弘が見つめていた。

そこへ人間になった小梅が現れ声をかけた。

「松本智弘」

「……」

立ち止まり振り向くと松本智弘は小梅に目線を向けた。

「やっと見つけたぞ」

「俺に何かようか」

「お前に人間にしてもらっても嬉しくない元の三毛猫に戻せ」

「お前は知ってたのか」

「何を」

「健太と耕介の関係」

そう言って松本智弘は耕介が健太にキスをしている姿をスマホで小梅に見せた。

「……」

無言で小梅は見つめた。

「……」

松本智弘は笑みを浮かべ小梅の耳元で囁いた。

「耕介に健太をとられてしまうぞ良いのか」

「健太…」

小梅が口にしたその時、小梅の身体の中でピンクの宝石ローズクォーツが生まれた。

その頃、灰色のハチワレ猫、律と茶トラ猫、和香は健太の力になろうと他の宝石を探すためあてもなく歩いていた。

ー耕介の家ー

リビングで立ったまま突然、耕介に唇を奪われた健太は驚きで言葉を失った。

「健太、大丈夫か?」

「……」

「健太」

「はい…」

「初めてのキスだった?」

「俺、他の宝石を探さないといけないので行きます」

そう言って健太が背を向けリビングから離れようとしたその時、耕介に手首を掴まれた。

その時、健太の胸がドキドキと高鳴った。

「……」

「健太」

「手を…離してください…」

ドキドキしながら健太が口にすると耕介は手を離した。

「……」

「……」

無言で振り向くと健太と耕介は見つめ合った。

その後、耕介がキスを迫る。

健太は抵抗せず耕介のキスを受け入れた。

「……」

ドキドキが更に高鳴り健太は耕介から離れリビングを出ると玄関に向かった。

その後、健太は靴を履きドアを開くと外に出てドアを閉めた。

健太は歩き耕介の家を離れた。

1時間後、人気のある道に出た健太は突然、背後から手首を掴まれ動きを止められた。

振り向くと小梅が立っていた。

「小梅!」

「健太、耕介のこと好きなのか?」

「急にどうした」

「松本智弘のスマホで健太と耕介がキスをしているところを見た」

「小梅、松本智弘と会ったのか」

「健太、答えろ」

「小梅こそ答えろ、松本智弘と会ったのか」

「三毛猫に戻してもらうために会いに行った」

「勝手に会いに行くなんて」

「健太、答えろ、耕介のこと」

「お前の言う通り耕介さんさんのこと好きだよ」

そう言って健太は小梅の手を払い除け離れていった。

小梅は健太を追いかけ再び手首を掴むとそのまま歩き人気のない道に着いた。

その後、小梅は立ち入り禁止の倉庫の中に入り手を離し口を開いた。

「俺は健太のことが好きだ」

「バカなこと言ってないで律と和香を連れて別荘に戻れ」

そう言って健太がその場から離れようと動き出したその時、小梅に抱き寄せられ唇を奪われそのまま身体を倒され覆い被された。

「……」

無言で健太が見つめると小梅が口を開いた。

「健太はバカなことと言うけど俺は本気なんだ」

「人間になっておかしくなったんじゃないのか」

「健太に誕生させてもらってから俺は健太が好きだった」

「小梅…」

「好きだ健太」

そう言って小梅は健太の唇を奪いその後、身体を重ねた。

歩きながら和香が律に向かって声をかけた。

「俺達だけで宝石を見つけられるのかな」

「……」

「聞いてるのか?」

和香が口にした後、律が立ち止まり和香も立ち止まると声をかけた。

「どうしたんだ?」

「真正面から嫌な感じの奴が近づいてくる」

「え…」

「……」

律と和香は真正面をじっと見つめた。

そしてスーツ姿の松本智弘が現れた。

「和香、気をつけろ」

「あぁ」

律と和香は警戒をしながら近づいてくる松本智弘を見つめた。

「松本智弘です」

「松本智弘って」

「俺達に何のようだ」

「お前達にもプレゼントだ」

そう言って松本智弘は赤い宝石ルビーを律と和香に向かって投げた。

驚いた律と和香は赤い宝石ルビーに目線を向けた。

「赤い宝石…」

「和香、やめろ」

触れようとする和香を止めるも間に合わず和香は赤い宝石ルビーに触れ和香と律の身体に異変が起きた。

灰色のハチワレ猫、律の身体が灰色と白の髪に灰色と白の私服、灰色と白の尻尾が生えた人間に変身した。

そして茶トラ猫、和香の身体も茶色の髪に茶色の私服、茶色の尻尾が生えた人間に変身した。

2人の変身後を見て松本智弘は笑みを浮かべた。

「素晴らしい、俺は天才だ」

「俺達を元に戻せ」

「元に…」

言いかけた和香が突然、倒れると律が松本智弘に向かって口を開いた。

「和香に何をした」

「俺は何もしていない、お前達を人間にしただけだ」

そう言って松本智弘は律に背を向け口を開いた。

「小梅、律、和香、お前達は健太に惚れていた」

「何、言ってんだ」

「人間になったら恋愛ができるぞ」

「……」

「キスや身体の交わりもできる」

そう言って振り向き律に向かって松本智弘が微笑むと律が口を開いた。

「お前の目的は何だ」

「俺と同じ天才の長尾健太を天才から下ろし俺のものにするそれが俺の目的だ」

そう言って松本智弘は律と和香の前から姿を消した。
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