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IEWⅢ DISC‐1
68 強制
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「ルルリアナ!」
リースはルルリアナを守ろうと走り出す。しかし、どう考えても間に合いそうにない。
火の大精霊がルルリアナを握りつぶそうとした瞬間、ルルリアナとワインズの二人の姿が一瞬にして消える。ワインズを背中に乗せ飛び立とうとしてたアスタリアの姿も一緒に消えていた。
火の大精霊が、ルルリアナが消えたことに怒り再び体からマグマを噴き出す。
「どうしてあいつの封印が解けてるのよ?」
空から別行動していたアインスたちが登場する。
火の大精霊を復活させたのはお前だろうと言わんばかりにリースを睨みつけるアインスを、ムッとしてリースは睨みつける。アインスも負けじとリースを睨みつける。
「喧嘩している場合じゃないでしょ?あいつを何とかしないと!」
珍しくまともなことを言うツヴァイに二人は睨むのを止めて、火の大精霊へと視線を戻す。
「どうしてあいつはルルリアナを狙ったの?」
「それは決まってるだろう?ルルリアナはロクシティリアが愛する雪の華だよ?あの炎ちゃんは長い間、ロクシティリアに閉じ込められてたんだからルルリアナを殺してロクシティリアに復讐しようとしたに決まってるじゃん!」
ロクシティリアに感謝していたことも忘れ、リースはやはりロクシティリアという神はロクな奴じゃないところりと考えを変える。
「全く迷惑な!」
ルルリアナを探すように、デビルマ山脈の森へと火の大精霊は手を伸ばす。その度に木々に火が燃え広がり、四方八方に山火事が発生する。
ゲオルグは一生懸命に火の大精霊の気を引こうとしているが、怒り狂った火の大精霊はゲオルグのことなど眼中にもなかった。ゲオルグが握っていた緋の炎は再び瓶の中に納まっている。
「あいつを止めないと。でも、どうすればいい?」
「ここには大量の水もないしな」
マーカスが途方にくれた声をだす。
「あっちの火は消したのか?」
「もちろんよ。私とツヴァイがいたのよ?圧倒言う間にあんなろうそくのような火、一瞬で吹き飛ばしてやったわよ」
自信満々に答えたアインスの言葉に、ロークは安堵する。
「安心している場合じゃないぞ。三つの村を焼きつくした山火事は火は消えたかもしれないけれど、新たな山火事は今もそこら中で発生しているんだ。早くあいつを何とかしないと」
ルードヴィクの言葉にロークは気を引き締める。
「アインスとツヴァイはロクシティリアを知ってるんでしょ?だった火の大精霊とも知り合いじゃないの?だったら話し合いで解決できない?」
ローク達に聞こえないように囁いたリースの提案を、二人の魔女ははっきりと否定する。
「あいつは話し合いで納得するような奴じゃないのよ。ロクシティリアが封印する前も一度怒りだすと三日三晩目につくすべてを燃やし尽くして、落ち着くような奴だったのよ?話し合いなんてできると思う?」
「あたしに至ってはあいつの天敵みたいなもんだし」
「どういうこと?」
「昔のあたしもあいつみたいにカっとなりやすかったってこと」
「だったらあいつを倒すしかないね」
「あ~あ、それは無理よ」
少し考えて、アインスが断る。ツヴァイもアインスに賛成のようだ。
「どうして?いつもみたいに大魔法でやっつければいいでしょ?血が足りないなら、必要なだけあげる」
「そうじゃないんだよ、リース。あいつには水の魔法しか聞かないんだ。でも、あたしもアインスも、そしてフィーアも水の魔法は得意じゃない」
「水魔法なら俺が得意だ!」
ロークがツヴァイの言葉に飛びつくが、悲しいかなゲーム序盤の現在のロークのレベルは低い。ゲームのストーリーでもこの頃のロークはワインズに惨敗するのだ。
「あなたの水魔法なんて、大火事にコップ一杯の水を掛けるようなものだわ」
「でも、やらないとわからないだろう?」
「無理よ。あなたの水魔法がコップ一杯だとしたら、私たちの水魔法はたかがバケツくらいの水量だもの」
アインスの言葉にその場にいた皆が絶望し、目の前で火の大精霊がデビルマ山脈の山々を燃やし尽くす様子をただ見ているしかなかった。
「まぁ、あいつもそこまで馬鹿じゃないから。三日後に話し合ってもいいかもしれないわよ?」
「三日も待っていられるか!デビルマ山脈は、この山々は俺が育った場所なんだぞ!故郷なんだ!あんな奴に焼き尽くされてたまるか!」
ロークがアインスに食ってかかる。マーカスがロークを羽交い絞めにしてアインスから遠ざける。
「でも、私たちが今できることは何もないじゃない」
うなだれるロークにどう声を掛けていいのかわからず、リースは途方に暮れる。ゲームのシナリオ通りにいった方がまだましだったかもしれない。火の大精霊を手に入れたワインズはロークをぶちのめした後、すぐに姿を消したのだから。ゲオルグみたいに火の大精霊を暴走させて、デビルマ山脈の火の海へと変えることなど起きなかったのだ。ワインズが悪役だったなら。
悔しさから地団太を踏むゲオルグの姿は、スマートな悪役だったワインズの代役が務まるとは思えなかった。
「そうだ!山火事が起きたとき、俺たちは迎え火で山火事を消火するんだ!水の魔法が苦手でも火の魔法なら!」
期待するように見つめるロークに、アインスは静かに首を振る。
「火の大精霊の炎を私たちの炎で打ち消せるとは思わないわ」
「でも、ツヴァイなら。伝説の赫き魔女のあなたなら」
囁くリースにツヴァイは殴られたようにショックを受け、ぎこちない仕草で首を振る。
「リース、ごめん。…あたしの火の魔法ならあいつに勝つことができるけど。あたし…、あたしにはできない」
「どうして?」
問い詰めるリースにツヴァイは視線を下に向け、黙り込んでしまう。アインスへと助けを求めるが、アインスは同情的にリースに頷くだけで何も言わなかった。
火の大精霊が突如がなり立てる。
火の大精霊はまるで歓喜に震えるように微笑んだのだった。そして、獲物が逃げ出せないようにデビルマ山脈を削りながら大きな丸を描く。
「もしかしてあそこにルルリアナがいるの?」
肩をすくめるアインスにリースは確信を深める。
「そうなんでしょ?アインス!どうしてもっと遠くにルルリアナを移動させなかったの?」
アインスの肩を激しく揺さぶるリースに、アインスもかっとなってリースを突き放す。
「私は魔女のいとこまでルルリアナと怪我人を移動させたわよ!あそこにいればあいつにルルリアナの居場所はばれなかったわ!ルルリアナが勝手に外に出たんでしょ!私のせいにしないで!」
アインスは何も間違っておらず、リースは悔しそうに唇を噛みしめると火の大精霊に視線を戻す。
火の大精霊はまるで大鍋に向かう魔女の様に激しく両手を動かしている。もしかしたら逃げ惑うルルリアナを見て、楽しんでいるのかもしれない。
「ツヴァイ!お願い…。あなただけがあいつを止めることができるの!ルルリアナを助けられるのはあなたしかいないの!」
リースの目から涙が次から次へと零れ落ち、ツヴァイに縋らないと立っていられなくなってしまった。リースの気力は、再びルルリアナを失うという恐怖に耐えられなかったのだ。
「リース…。あたしもルルリアナを助けたい…。でも、でもできないんだよ。リース!」
ツヴァイも泣いてリースへと縋る。
悲痛な表情を浮かべるツヴァイを、リースが見ることはなかった。なぜなら、リースは目をぎゅっと瞑っていて、ルルリアナを助けたいという思いに偏執していたのだから。
リースは目を開くことなくツヴァイに命令する。
「赫き魔女ツヴァイに主人であるリースが命じる。火の大精霊を赫き魔女の業火によって
剿滅せよ」
「リース!」
アインスが叫んだが、リースが目を開けることはなかった。
ツヴァイは諦めたように微笑む。その笑顔を見て、アインスは悔しそうにリースを睨みつけるのだった。
リースの左親指に嵌めていた赤い指輪が静かに光りはじめたかと思うと、ツヴァイの赤い髪が燃え盛る炎に変わり、褐色の肌も高熱で溶けた金属の様に赫く輝いたのだった。その姿は火の大精霊に似て非なるものであった。
「ツヴァイ?」
ルードヴィクの心配したような声にツヴァイは安心させるように微笑む。しかし、ツヴァイの瞳には癒えることのない大きな傷が映し出されていた。
ルードヴィクはツヴァイの瞳に映し出された悲しみを打ち消してしまいたいと願っている自分に気が付き、ツヴァイに差し伸べていた手をそっと引っ込めてしまったのだった。
ツヴァイはルードヴィクの手をちらりと見つめると、火の大精霊に向け厳しい視線を向ける。ツヴァイが片手を火の大精霊に伸ばすと、火の大精霊を赫き雪の結晶が取り囲む。
赫き雪の結晶は複雑な魔法陣だった。丸い魔法陣よりも複雑な魔法陣は、マーカスもルードヴィクもロークも初めて見る魔法陣で、あまりの美しさに言葉を失う。瞬きするのも忘れ、魅入られたのだった。
赫き雪の結晶に気が付いた火の大精霊は、暴れまわる炎で溶かそうとするが赫き雪の結晶は綺麗な形を保ったままだった。
ツヴァイが拳を握ると、赫き雪の結晶から炎の鎖が浮かび上がり、火の大精霊の全身を這うようにして縛り上げていく。火の大精霊の動きを封じると、鎖は激しく燃え上がる。火の大精霊を包み込んだ鎖の炎は徐々に小さくなりパッと消え去る。
ツヴァイが握っていた手をゆっくりと広げると、ツヴァイの手のひらには卵大の炎がぴょんぴょんと抗議するように跳ねまわっていた。
ツヴァイの手に握られている炎こそが、ツヴァイの業火に焼かれた火の大精霊の代わり果てた姿だった。
リースはルルリアナを守ろうと走り出す。しかし、どう考えても間に合いそうにない。
火の大精霊がルルリアナを握りつぶそうとした瞬間、ルルリアナとワインズの二人の姿が一瞬にして消える。ワインズを背中に乗せ飛び立とうとしてたアスタリアの姿も一緒に消えていた。
火の大精霊が、ルルリアナが消えたことに怒り再び体からマグマを噴き出す。
「どうしてあいつの封印が解けてるのよ?」
空から別行動していたアインスたちが登場する。
火の大精霊を復活させたのはお前だろうと言わんばかりにリースを睨みつけるアインスを、ムッとしてリースは睨みつける。アインスも負けじとリースを睨みつける。
「喧嘩している場合じゃないでしょ?あいつを何とかしないと!」
珍しくまともなことを言うツヴァイに二人は睨むのを止めて、火の大精霊へと視線を戻す。
「どうしてあいつはルルリアナを狙ったの?」
「それは決まってるだろう?ルルリアナはロクシティリアが愛する雪の華だよ?あの炎ちゃんは長い間、ロクシティリアに閉じ込められてたんだからルルリアナを殺してロクシティリアに復讐しようとしたに決まってるじゃん!」
ロクシティリアに感謝していたことも忘れ、リースはやはりロクシティリアという神はロクな奴じゃないところりと考えを変える。
「全く迷惑な!」
ルルリアナを探すように、デビルマ山脈の森へと火の大精霊は手を伸ばす。その度に木々に火が燃え広がり、四方八方に山火事が発生する。
ゲオルグは一生懸命に火の大精霊の気を引こうとしているが、怒り狂った火の大精霊はゲオルグのことなど眼中にもなかった。ゲオルグが握っていた緋の炎は再び瓶の中に納まっている。
「あいつを止めないと。でも、どうすればいい?」
「ここには大量の水もないしな」
マーカスが途方にくれた声をだす。
「あっちの火は消したのか?」
「もちろんよ。私とツヴァイがいたのよ?圧倒言う間にあんなろうそくのような火、一瞬で吹き飛ばしてやったわよ」
自信満々に答えたアインスの言葉に、ロークは安堵する。
「安心している場合じゃないぞ。三つの村を焼きつくした山火事は火は消えたかもしれないけれど、新たな山火事は今もそこら中で発生しているんだ。早くあいつを何とかしないと」
ルードヴィクの言葉にロークは気を引き締める。
「アインスとツヴァイはロクシティリアを知ってるんでしょ?だった火の大精霊とも知り合いじゃないの?だったら話し合いで解決できない?」
ローク達に聞こえないように囁いたリースの提案を、二人の魔女ははっきりと否定する。
「あいつは話し合いで納得するような奴じゃないのよ。ロクシティリアが封印する前も一度怒りだすと三日三晩目につくすべてを燃やし尽くして、落ち着くような奴だったのよ?話し合いなんてできると思う?」
「あたしに至ってはあいつの天敵みたいなもんだし」
「どういうこと?」
「昔のあたしもあいつみたいにカっとなりやすかったってこと」
「だったらあいつを倒すしかないね」
「あ~あ、それは無理よ」
少し考えて、アインスが断る。ツヴァイもアインスに賛成のようだ。
「どうして?いつもみたいに大魔法でやっつければいいでしょ?血が足りないなら、必要なだけあげる」
「そうじゃないんだよ、リース。あいつには水の魔法しか聞かないんだ。でも、あたしもアインスも、そしてフィーアも水の魔法は得意じゃない」
「水魔法なら俺が得意だ!」
ロークがツヴァイの言葉に飛びつくが、悲しいかなゲーム序盤の現在のロークのレベルは低い。ゲームのストーリーでもこの頃のロークはワインズに惨敗するのだ。
「あなたの水魔法なんて、大火事にコップ一杯の水を掛けるようなものだわ」
「でも、やらないとわからないだろう?」
「無理よ。あなたの水魔法がコップ一杯だとしたら、私たちの水魔法はたかがバケツくらいの水量だもの」
アインスの言葉にその場にいた皆が絶望し、目の前で火の大精霊がデビルマ山脈の山々を燃やし尽くす様子をただ見ているしかなかった。
「まぁ、あいつもそこまで馬鹿じゃないから。三日後に話し合ってもいいかもしれないわよ?」
「三日も待っていられるか!デビルマ山脈は、この山々は俺が育った場所なんだぞ!故郷なんだ!あんな奴に焼き尽くされてたまるか!」
ロークがアインスに食ってかかる。マーカスがロークを羽交い絞めにしてアインスから遠ざける。
「でも、私たちが今できることは何もないじゃない」
うなだれるロークにどう声を掛けていいのかわからず、リースは途方に暮れる。ゲームのシナリオ通りにいった方がまだましだったかもしれない。火の大精霊を手に入れたワインズはロークをぶちのめした後、すぐに姿を消したのだから。ゲオルグみたいに火の大精霊を暴走させて、デビルマ山脈の火の海へと変えることなど起きなかったのだ。ワインズが悪役だったなら。
悔しさから地団太を踏むゲオルグの姿は、スマートな悪役だったワインズの代役が務まるとは思えなかった。
「そうだ!山火事が起きたとき、俺たちは迎え火で山火事を消火するんだ!水の魔法が苦手でも火の魔法なら!」
期待するように見つめるロークに、アインスは静かに首を振る。
「火の大精霊の炎を私たちの炎で打ち消せるとは思わないわ」
「でも、ツヴァイなら。伝説の赫き魔女のあなたなら」
囁くリースにツヴァイは殴られたようにショックを受け、ぎこちない仕草で首を振る。
「リース、ごめん。…あたしの火の魔法ならあいつに勝つことができるけど。あたし…、あたしにはできない」
「どうして?」
問い詰めるリースにツヴァイは視線を下に向け、黙り込んでしまう。アインスへと助けを求めるが、アインスは同情的にリースに頷くだけで何も言わなかった。
火の大精霊が突如がなり立てる。
火の大精霊はまるで歓喜に震えるように微笑んだのだった。そして、獲物が逃げ出せないようにデビルマ山脈を削りながら大きな丸を描く。
「もしかしてあそこにルルリアナがいるの?」
肩をすくめるアインスにリースは確信を深める。
「そうなんでしょ?アインス!どうしてもっと遠くにルルリアナを移動させなかったの?」
アインスの肩を激しく揺さぶるリースに、アインスもかっとなってリースを突き放す。
「私は魔女のいとこまでルルリアナと怪我人を移動させたわよ!あそこにいればあいつにルルリアナの居場所はばれなかったわ!ルルリアナが勝手に外に出たんでしょ!私のせいにしないで!」
アインスは何も間違っておらず、リースは悔しそうに唇を噛みしめると火の大精霊に視線を戻す。
火の大精霊はまるで大鍋に向かう魔女の様に激しく両手を動かしている。もしかしたら逃げ惑うルルリアナを見て、楽しんでいるのかもしれない。
「ツヴァイ!お願い…。あなただけがあいつを止めることができるの!ルルリアナを助けられるのはあなたしかいないの!」
リースの目から涙が次から次へと零れ落ち、ツヴァイに縋らないと立っていられなくなってしまった。リースの気力は、再びルルリアナを失うという恐怖に耐えられなかったのだ。
「リース…。あたしもルルリアナを助けたい…。でも、でもできないんだよ。リース!」
ツヴァイも泣いてリースへと縋る。
悲痛な表情を浮かべるツヴァイを、リースが見ることはなかった。なぜなら、リースは目をぎゅっと瞑っていて、ルルリアナを助けたいという思いに偏執していたのだから。
リースは目を開くことなくツヴァイに命令する。
「赫き魔女ツヴァイに主人であるリースが命じる。火の大精霊を赫き魔女の業火によって
剿滅せよ」
「リース!」
アインスが叫んだが、リースが目を開けることはなかった。
ツヴァイは諦めたように微笑む。その笑顔を見て、アインスは悔しそうにリースを睨みつけるのだった。
リースの左親指に嵌めていた赤い指輪が静かに光りはじめたかと思うと、ツヴァイの赤い髪が燃え盛る炎に変わり、褐色の肌も高熱で溶けた金属の様に赫く輝いたのだった。その姿は火の大精霊に似て非なるものであった。
「ツヴァイ?」
ルードヴィクの心配したような声にツヴァイは安心させるように微笑む。しかし、ツヴァイの瞳には癒えることのない大きな傷が映し出されていた。
ルードヴィクはツヴァイの瞳に映し出された悲しみを打ち消してしまいたいと願っている自分に気が付き、ツヴァイに差し伸べていた手をそっと引っ込めてしまったのだった。
ツヴァイはルードヴィクの手をちらりと見つめると、火の大精霊に向け厳しい視線を向ける。ツヴァイが片手を火の大精霊に伸ばすと、火の大精霊を赫き雪の結晶が取り囲む。
赫き雪の結晶は複雑な魔法陣だった。丸い魔法陣よりも複雑な魔法陣は、マーカスもルードヴィクもロークも初めて見る魔法陣で、あまりの美しさに言葉を失う。瞬きするのも忘れ、魅入られたのだった。
赫き雪の結晶に気が付いた火の大精霊は、暴れまわる炎で溶かそうとするが赫き雪の結晶は綺麗な形を保ったままだった。
ツヴァイが拳を握ると、赫き雪の結晶から炎の鎖が浮かび上がり、火の大精霊の全身を這うようにして縛り上げていく。火の大精霊の動きを封じると、鎖は激しく燃え上がる。火の大精霊を包み込んだ鎖の炎は徐々に小さくなりパッと消え去る。
ツヴァイが握っていた手をゆっくりと広げると、ツヴァイの手のひらには卵大の炎がぴょんぴょんと抗議するように跳ねまわっていた。
ツヴァイの手に握られている炎こそが、ツヴァイの業火に焼かれた火の大精霊の代わり果てた姿だった。
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