家を訪ねて三千里

Lam

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17.ヒャッハーはいけません!

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皆さん、こんにちは…ベルです。
只今、昼の休憩中…お兄ちゃんと私は疲労困憊でマットに寝そべり、爆喰い中の獣人さん達を見ています。
お昼は彼らのリクエストで、ダンジョンで食べたモ○バーガーとサブ○ェイです。ちなみに飲み物はベリー種のミックスジュースです。彼等は護衛と馬車の操縦があるので禁酒です!
飲酒運転は、絶対にNO!です。
と言うか、危なくて飲ませられません!!
何しろ私達がダウンしているのは、お酒も飲んでいないのに飲酒運転みたいな操縦をした彼等のせいなんですから!!


ちなみにここは、街から街道を馬車で3時間ほど走って着いた広い草原です。
町を出るまでは、並足くらいの速さで走っていた馬車が、街道に出て街が見えなくなったなーと思った途端、急激にスピードを上げ、爆走しだしたのです。
御者はジークですが、隣にハリーが座っている事から、初めのうちは彼が止めてくれると思っていました。
が、それは間違いだったのです。
何故かスピードが上がった途端、彼等のテンションもMAXまで跳ね上がりヒャッハーしながら交互に操縦しだしたのです。
その時、気がついたんです。この馬車には中から御者席に声をかける窓がない事に!?
そうです、前後左右に外が見えるガラス窓は付いていて見晴らしは良いんですよ…でもね?それは御者と話すための開く窓ではなかったのです。なので、現行では馬車を停めて扉を開けないと御者と話せないと言う状況に陥っていたのでした。と言うことは、馬車が停まらない今は何もできなかったのです。
そして馬車は、悲鳴をあげる私とお兄ちゃんを乗せたまま、途中一度も止まる事なく見晴らしが良いこの草原まで走り抜け、そろそろお腹も空いたしここなら昼の休憩に良いんじゃない?などど言う御者達の適当な気分でやっとで停まったのです。
この時点で街を出てから3時間。町からのここまでの走行距離が45里です。
分かりやすくキロに直すと約180キロ…
皆さん何が言いたいか分かります?
いくら馬の性能が良くて馬車が頑丈だとはいっても、舗装されてない凸凹道(←ここ重要ですから!)を時速60キロで走るなんて!!ありえませんし、普通なら考えられません!!
やめて下さい!どこの暴走族ですかっ!!
いえ、暴走族より酷いです。だって暴走族は砂利道を暴走したりしません!
だいたい普通の馬車なら空中分解してますからねっ!!
と言うか、実はこの馬車も2、3度危ない状況になっていました。たまたま私がバリアを張れて、その結果壊れなかっただけです。
が…中に座っていた私とお兄ちゃんは死ぬかと思いました!!本当に死ぬかと思いました!!
大事な事だから2回言いました(怒)
馬車の中は、マジでシェイカーで混ぜられてるカクテル状態でしたよ?だから、あの揺れの中なぜヒルダだけ平然としていたのかは今持って謎です!
草原に着いてから、ヒルダに聞いても

「え?バランスを取れば良いんじゃ無いですか?こう体をギュとして、揺れたらパッと動いて、弾んだら後ろにシュって感じで動くんです」

あのー?『ギュ』とか『パッ』とか『シュ』とか感覚的な事言われてもわかりません!
それは獣人さんの感覚なのですか?
ちなみに、ハリーやジークには聞いていません。
何しろあの2人は、時速60キロのスピードを出している御者席で、立って操縦していたんですよ!!
どんなバランス感覚してるんですか!?もう、問題外です!人外ですから!ああ…獣人さんだった…
だいたい、誰ですか?早起きさせて悪いね馬車の中で寝たら良いとか言ったヤツはっ!!
気絶以外じゃ寝れませんよ(激怒)
魔法を使えば良いんじゃない?と言われるかもしれませんが…そんな事考えられないほどの揺れで、自分も辛いのに抱いて風魔法で守ってたお兄ちゃんがいなければ、たぶん全身打撲でムチウチになっていたはずです。
なので、私は決心しました!
この馬車を魔改造してやると!!!!
そんな硬い決心をした私の隣で、気怠げにお兄ちゃんがこれからの予定を聞いています。

「ハリー達ちょっと良いかな?今日ってどこまで行く予定なの?」

と聞かれたハリーが

「そうだなぁ…今日は天気も良くて馬車が走りやすいからなぁ~後5時間くらい走って、あの山の麓まで行きたいな!」

は?山の麓ってどこですか?
私には…
遥か草原を一掴みの雲が風もなく彷徨い飛んで行くのが見えるくらいで、山もなく谷もなく何も見えません!
え?このずっーと先に山が見える?
さっきのスピードで5時間走れば余裕で着ける?


ふーざーけーるーなー!


私は無言でアイテムボックスから<結界装置いないないばあ>を取り出してお兄ちゃんに杭と金槌を渡し、馬車の周囲30間(約50m)四方に打ち付けてくれるように頼みました。そして自分は、結界で囲われた中央部分に魔石付きの杭を刺して魔石が吸収する限界まで魔力を流し込みました。
これで2日は結界が働いているでしょう。
なので私は宣言します!

「今日明日は、ここで野営します!そして、野営している間にこの馬車を改造します!改造が終わるまで絶対に移動しないからーーー!」

その宣言に獣人さん達だけは驚きの声を上げましたが

「「「えーーー?」」」

お兄ちゃんだけは

「そーだよねー!」

と、頷いてくれました!





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