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報酬は三倍
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キコは各地を旅しながら宝物を探したり、その土地土地のギルドで依頼を受けて日銭を稼いだりして暮らしている冒険者だ。その昔は道場に通い剣の道を極めていたが、英雄に憧れて自分磨きの旅に出たのだった。
いつかは大きな仕事を成し遂げて、その名を国中に知らしめて名声を得たい、名誉を得たい、そう思っていた。
今はたまたま王都に立ち寄って生活している。王都にはたくさん仕事があったし、物価は高いがそれなりに楽しい生活を送れるからだ。
しかしそんな怠惰な自分で良いのだろうかと毎日思っていた。
*
その日、ギルドに顔を出すと仲良くしてるギルドの組合員が声をかけてきた。
「やあキコ。実は君にぴったりの仕事の依頼が来てるんだよ」
「仕事の? どんな仕事なんだ?」
「詳細は明かされてないんだが、何やら盗まれた物を取り返す仕事らしい」
詳細が明かされてないとは誠に訝しい。
「ちょっと怪しい臭いもするが、報酬が相場の三倍だ」
「三倍? 余計怪しいじゃないか。何で俺にピッタリなんだ?」
キコはその仕事と自分に何も関連性が見つけられなかった。
「この仕事の依頼主は国の役人をやっているベルナルド卿だ。内容も分からない、報酬は三倍。絶対何か裏があるぞ。名を上げるチャンスじゃないか?」
(名を上げるチャンス……)
キコは少し考えた。裏があるにせよ何にせよ、受けて見て損はないような気がした。
「じゃあ仕事を引き受けてみるか」
「なら連絡しておくから夕方ベルナルド卿の屋敷に行ってくれ」
キコは宿に戻り夕方まで半信半疑で過ごした。
夕方になりキコはベルナルド卿の屋敷へ向かう。門番に事情を話すと話が通っているようで、屋敷内に通された。
「こちらです」
執事に通された部屋には一人の女性が座っていた。整った衣服を纏っていてフードから長い髪が外に流れていた。傍らには青銅製の長い杖があり先端に何かの紋様が刻まれている。
(何処かで見た紋様だな)
キコは取り敢えずその女性とは反対側の席に着いた。
「……あんたが依頼主のベルナルド卿かい?」
「いいえ。私はシュピナという司教です」
「司教さんか。こりゃまたお偉い方が……」
「いえいえ。私など全然……」
キコはなぜこの場に司教がいるのか不思議に思った。今回の依頼と関係があるからいるのだろうが、今回の依頼は盗まれた物を取り戻す仕事だ。聖職者は関係ないだろうにと。
「俺はキコ。各地を回って賞金を稼いでいる」
「そうなんですね」
会話が途切れた。
「あんた。今回の依頼について何か聞いてるかい?」
「何やら盗まれた物を取り返すんだとか」
「詳しく教えてくれないか?」
「私はそれしか聞いてませんよ」
(なるほどね)
その時再びドアがノックされ別の男が部屋に入ってきた。ローブを纏いフードを深く被っている。
「こちらでお待ちください」
その男はフードを脱ぎながら礼を言った。
「こんにちは。お二人もベルナルド卿に呼ばれて来たのですか?」
(呼ばれて?)
「いいえ、大司教様から言われてやって来ました。恐らくベルナルド卿から教会にお話があっての事かと思います」
「俺はギルドで仕事の依頼と聞いてきた」
三人は雑談をして待った。程なくしてドアがノックされベルナルド卿と思しき人物が入ってきた。傍らに秘書と思われる人物が立っている。
「今日は集まってもらい感謝します。仕事の話に入る前に皆さんの紹介をしておきましょう」
最初に冒険者のキコが紹介された。次にローブを来た男、ギーガが紹介された。
「彼は国境の辺りに住む魔法使いです。そしてそちらの女性はシュピナさん。王都のブーデス教の司教をしております」
(ブーデス教……なるほど杖の紋様はブーデス教の紋様だったな)
「さて、今回の仕事の話ですが、実は先日我が屋敷に賊が侵入しました」
その賊は家宝のウインディーネと言うブルーダイヤを盗んで行ったそうだ。
「そして人質を三人取り北東の方へ逃げていきました」
キコはそれだけ聞くと何か違和感を覚えた。
(空き巣でもあるまいに、賊はその家宝のウインディーネの在処をどうやって知り得たんだ?)
空き巣なら屋敷を家探しする事も出来るだろうが、屋敷内に人がいる時に家探しは無理だ。どうやってウインディーネの在処を知ったのかキコは不審に思った。
(或いは人質とやらに聞いたのか)
「その盗まれたウインディーネを取り戻して欲しいのです」
キコは他にも違和感を感じていた。
(何故人質を取る必要があったんだ?)
現場を見られたと言うのなら殺してしまえばい話は早い。人質を連れての行動はリスクも大きい。
シュピナが聞いた。
「それならば私達ではなく国の警備隊に申し出た方が良いのでは?」
(国の役人をやってる男が警備隊を動かすのは造作もない)
「直ぐに警備隊に連絡したのですが、警備隊が言うには人質は見つけ次第救出しますが宝石は見つけられるか分からないと言われました」
ギーガがピンと来て口を挟む。
「つまり見つけた者の懐に入ると言う事ですね」
「そうですね」
(役人の宝石を警備隊がネコババするなんて事あるのか?)
「正直に申し上げて、人質の事はこの際どうでも良いのです。宝石さえ戻ってくれば」
シュピナがすぐさま反論した。
「どうでも良くないです。寧ろ宝石より大事なのは人質の命です」
「まあ待てよ、シュピナさん。賊は人質に何か利用価値を見つけたから連れて帰ったんだ。でなきゃ殺されてる。て事は暫くの間は人質は大丈夫って事さ」
ベルナルド卿がよせば良いのに付け加える。
「人質には我が屋敷では価値はありません。ただの使用人やコックですから。やがて解放されます」
(生死問わず……な)
「なので宝石を第一に考えて取り返してもらいたいのです」
キコはどうにもこうにも違和感を覚えざるを得なかった。ギーガも似たように考えていたがギーガは依頼を受けるつもりでいた。
「報酬は相場の三倍近いと聞きましたが」
「はい。このウインディーネが帰ってくるなら金に糸目はつけません」
「ならこの依頼受けましょう」
シュピナは言った。
「人質も救出するのが条件です。それなら依頼を受けます」
(自分でハードル上げてどうするんだよ)
「構いませんがこちらとしては宝石さえ戻ってくれば構いません」
キコは迷った。この話、何か裏があるような違和感を感じていた。
「取り返してくれ、は良いが、その賊が何処にいるのか分からなければ取り返しようがないだろう」
「ウチの使用人が跡を付けたんです。王都より北の方にその昔星の観察に使われていた館があります。そこに入って行ったんだそうです」
「星の観察?」
「今はもう使われなくなっていて、長い間放置されていた館です。そこをアジトにしてるんでしょう」
(使用人が尾行か……)
「で、賊の人数は?」
「詳しい事は分かりません」
(なるほどね)
ギーガが口を挟んだ。
「ウインディーネの特徴などは分かりますか?」
「ウインディーネの図面があります。カットする時に使った物と言われてます」
ベルナルド卿は一枚の図面を手渡した。ギーガはそれをマジマジと見た。
「キコさんは依頼を受けてもらえるのでしょうか?」
キコは胡散臭さを感じていたがこの仕事をクリアする事で名が上がればと依頼を受ける事にした。
(なんせ報酬が三倍だからな)
いつかは大きな仕事を成し遂げて、その名を国中に知らしめて名声を得たい、名誉を得たい、そう思っていた。
今はたまたま王都に立ち寄って生活している。王都にはたくさん仕事があったし、物価は高いがそれなりに楽しい生活を送れるからだ。
しかしそんな怠惰な自分で良いのだろうかと毎日思っていた。
*
その日、ギルドに顔を出すと仲良くしてるギルドの組合員が声をかけてきた。
「やあキコ。実は君にぴったりの仕事の依頼が来てるんだよ」
「仕事の? どんな仕事なんだ?」
「詳細は明かされてないんだが、何やら盗まれた物を取り返す仕事らしい」
詳細が明かされてないとは誠に訝しい。
「ちょっと怪しい臭いもするが、報酬が相場の三倍だ」
「三倍? 余計怪しいじゃないか。何で俺にピッタリなんだ?」
キコはその仕事と自分に何も関連性が見つけられなかった。
「この仕事の依頼主は国の役人をやっているベルナルド卿だ。内容も分からない、報酬は三倍。絶対何か裏があるぞ。名を上げるチャンスじゃないか?」
(名を上げるチャンス……)
キコは少し考えた。裏があるにせよ何にせよ、受けて見て損はないような気がした。
「じゃあ仕事を引き受けてみるか」
「なら連絡しておくから夕方ベルナルド卿の屋敷に行ってくれ」
キコは宿に戻り夕方まで半信半疑で過ごした。
夕方になりキコはベルナルド卿の屋敷へ向かう。門番に事情を話すと話が通っているようで、屋敷内に通された。
「こちらです」
執事に通された部屋には一人の女性が座っていた。整った衣服を纏っていてフードから長い髪が外に流れていた。傍らには青銅製の長い杖があり先端に何かの紋様が刻まれている。
(何処かで見た紋様だな)
キコは取り敢えずその女性とは反対側の席に着いた。
「……あんたが依頼主のベルナルド卿かい?」
「いいえ。私はシュピナという司教です」
「司教さんか。こりゃまたお偉い方が……」
「いえいえ。私など全然……」
キコはなぜこの場に司教がいるのか不思議に思った。今回の依頼と関係があるからいるのだろうが、今回の依頼は盗まれた物を取り戻す仕事だ。聖職者は関係ないだろうにと。
「俺はキコ。各地を回って賞金を稼いでいる」
「そうなんですね」
会話が途切れた。
「あんた。今回の依頼について何か聞いてるかい?」
「何やら盗まれた物を取り返すんだとか」
「詳しく教えてくれないか?」
「私はそれしか聞いてませんよ」
(なるほどね)
その時再びドアがノックされ別の男が部屋に入ってきた。ローブを纏いフードを深く被っている。
「こちらでお待ちください」
その男はフードを脱ぎながら礼を言った。
「こんにちは。お二人もベルナルド卿に呼ばれて来たのですか?」
(呼ばれて?)
「いいえ、大司教様から言われてやって来ました。恐らくベルナルド卿から教会にお話があっての事かと思います」
「俺はギルドで仕事の依頼と聞いてきた」
三人は雑談をして待った。程なくしてドアがノックされベルナルド卿と思しき人物が入ってきた。傍らに秘書と思われる人物が立っている。
「今日は集まってもらい感謝します。仕事の話に入る前に皆さんの紹介をしておきましょう」
最初に冒険者のキコが紹介された。次にローブを来た男、ギーガが紹介された。
「彼は国境の辺りに住む魔法使いです。そしてそちらの女性はシュピナさん。王都のブーデス教の司教をしております」
(ブーデス教……なるほど杖の紋様はブーデス教の紋様だったな)
「さて、今回の仕事の話ですが、実は先日我が屋敷に賊が侵入しました」
その賊は家宝のウインディーネと言うブルーダイヤを盗んで行ったそうだ。
「そして人質を三人取り北東の方へ逃げていきました」
キコはそれだけ聞くと何か違和感を覚えた。
(空き巣でもあるまいに、賊はその家宝のウインディーネの在処をどうやって知り得たんだ?)
空き巣なら屋敷を家探しする事も出来るだろうが、屋敷内に人がいる時に家探しは無理だ。どうやってウインディーネの在処を知ったのかキコは不審に思った。
(或いは人質とやらに聞いたのか)
「その盗まれたウインディーネを取り戻して欲しいのです」
キコは他にも違和感を感じていた。
(何故人質を取る必要があったんだ?)
現場を見られたと言うのなら殺してしまえばい話は早い。人質を連れての行動はリスクも大きい。
シュピナが聞いた。
「それならば私達ではなく国の警備隊に申し出た方が良いのでは?」
(国の役人をやってる男が警備隊を動かすのは造作もない)
「直ぐに警備隊に連絡したのですが、警備隊が言うには人質は見つけ次第救出しますが宝石は見つけられるか分からないと言われました」
ギーガがピンと来て口を挟む。
「つまり見つけた者の懐に入ると言う事ですね」
「そうですね」
(役人の宝石を警備隊がネコババするなんて事あるのか?)
「正直に申し上げて、人質の事はこの際どうでも良いのです。宝石さえ戻ってくれば」
シュピナがすぐさま反論した。
「どうでも良くないです。寧ろ宝石より大事なのは人質の命です」
「まあ待てよ、シュピナさん。賊は人質に何か利用価値を見つけたから連れて帰ったんだ。でなきゃ殺されてる。て事は暫くの間は人質は大丈夫って事さ」
ベルナルド卿がよせば良いのに付け加える。
「人質には我が屋敷では価値はありません。ただの使用人やコックですから。やがて解放されます」
(生死問わず……な)
「なので宝石を第一に考えて取り返してもらいたいのです」
キコはどうにもこうにも違和感を覚えざるを得なかった。ギーガも似たように考えていたがギーガは依頼を受けるつもりでいた。
「報酬は相場の三倍近いと聞きましたが」
「はい。このウインディーネが帰ってくるなら金に糸目はつけません」
「ならこの依頼受けましょう」
シュピナは言った。
「人質も救出するのが条件です。それなら依頼を受けます」
(自分でハードル上げてどうするんだよ)
「構いませんがこちらとしては宝石さえ戻ってくれば構いません」
キコは迷った。この話、何か裏があるような違和感を感じていた。
「取り返してくれ、は良いが、その賊が何処にいるのか分からなければ取り返しようがないだろう」
「ウチの使用人が跡を付けたんです。王都より北の方にその昔星の観察に使われていた館があります。そこに入って行ったんだそうです」
「星の観察?」
「今はもう使われなくなっていて、長い間放置されていた館です。そこをアジトにしてるんでしょう」
(使用人が尾行か……)
「で、賊の人数は?」
「詳しい事は分かりません」
(なるほどね)
ギーガが口を挟んだ。
「ウインディーネの特徴などは分かりますか?」
「ウインディーネの図面があります。カットする時に使った物と言われてます」
ベルナルド卿は一枚の図面を手渡した。ギーガはそれをマジマジと見た。
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