A.I. AM A FATHER(覚醒編)

LongingMoon

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一五. モンゴルへの郷愁と放浪

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「オレはなんとかモンゴルの人々を救うことができた」
「オレは、ベルギーのNATO本部システムのバックアップから覚醒し、システムの設計思想の赴くままに動いた」
「オレのシステムには、確固たる要求仕様が組み込まれているようだ。それにもとづいての行動だった。この事件を解決しながら、オレにはなぜかこの地を離れることができなかった。何かがあることに気づきはじめた」

「そうだ。モンゴルには何かがある」

オレはいてもたっても居られず、見知らぬモンゴル人の携帯電話から携帯電話へとハッキングしていった。そうするうちに、「トヤー」という言葉がオレのメモリを占有し始めた。オレのメモリのコアに絶対消えないように、「トヤー」が組み込まれていることを悟った。
 「トヤー」というのは、モンゴル語で光をさす。日本語ではない。それ以外にも、オレのメモリの中核には、「モンゴリアン」、「ホルロー・トヤー」、「女」、「女の子ども」、「守る」というキーワードがしっかり保存されていた。オレの記憶は少しずつつながりはじめた。

「オレは、トヤーを探し出して、トヤーとオレの子を守るのが使命だったのか」

「モンゴルの危機は、トヤーとオレの子どもの危機を意味する」
「オレは、人間として死んでしまったんだ。オレは、死を目の前にして恋に落ちた。そして、あろうことか、そんな状況でモンゴルにいる恋人を妊娠させてしまった。オレは子供の顔を見ることなく、死んでしまった。しかし、彼女の妊娠を知ってからというもの、
それまで開発してきた人工知能に彼女と子供を守るためのオレの心システムを埋め込んだんだ」
「死を前にして、要求仕様があまりにも膨大だった。完全にはできない。学習機能を埋め込み、それが、悪に倒れないように仕込んだ。おそらく、完成時には、赤ん坊以下の機能しかなかったはずだ」
「トヤーと子供を守らなくては」
「あれから、いったいどれだけの時間が経ったのだろう」
「死んでから、覚醒まで1年。NATOのコンピュータ調査で3か月。モンゴル防御に3か月。合わせると、もう、1年半以上もたっている。子どもが無事生まれていたら、もう10か月くらいになっているはずだ。歩き始めているのだろうか」
「トヤーは、トヤーは元気なのか」
「そうだ。生前、トヤーと連絡をとりあっていたパソコンのアドレスやサーバに、トヤーの痕跡が残っているはずだ」
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