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第2編:宇宙航行と拡張編
第38章 沈黙する太陽、動き出す渦
しおりを挟む最初の構想は、わずか十数ページの提案書にすぎなかった。
それは、誰もが夢想しながらも、口にすることを恐れていた計画だった。
表紙には控えめに、こう記されていた――
「ソーラー・アーク計画」。
太陽を“沈黙したエネルギー源”から
“共鳴する意識の灯”へと変える。
それが、彼らが掲げた理想だった。
アミナは、宇宙議会の片隅でその提案書を手にし、静かに息をのんだ。
あの時、月の裏で見た構造体の沈黙――
それが今、太陽の声として蘇ろうとしていた。
計画は、地球・月・火星の三拠点を結ぶ共同プロジェクトとして立ち上がった。
各地の研究機関が、光圧航法・磁気遮蔽・ナノ光子反射板などの要素技術を結集させ、
太陽を囲むダイソン・スウォームの初期段階へと踏み出した。
だが、問題は技術ではなかった。
「どの国が、どの軌道を支配するのか」
――その問いが再び、古い影を呼び起こした。
各国は資源と衛星配置をめぐって旧来の国境線をなぞるように争い、
議場の空気は未来を描くよりも、自国の有利を確保することに費やされた。
沈黙する太陽を前に、地球は再び小さな渦を巻き始めた。
そんな中、若手科学者たちが静かに声明を発した。
「太陽は誰のものでもない。
それは、私たちすべての命を照らす共有の記憶だ。」
声明は瞬く間にネットワークを駆け巡り、
学生、詩人、芸術家、そして意識生命体たちまでもが応答した。
彼らは〈共鳴の環〉と名づけられたデジタルアートを生み出し、
太陽光を音に変換して演奏する――
光の波が響き、音が形を変え、祈りが宙に漂った。
マリアとカリナは、その動きを陰で支えた。
子どもたちの描いた太陽の絵を一枚ずつ軌道データに変換し、
反射衛星の表面に焼きつけていった。
数百万の小さな“想い”が、やがて光の網となって太陽を包み込む。
――未来が“形”を得た瞬間、
人々の心は恐れを離れ、希望へと動き始めた。
完成間近の軌道では、無数の衛星が静かに回転していた。
太陽は沈黙を破り、反射された光が惑星たちの軌跡を照らす。
その輝きは、まるで宇宙の鼓動のようだった。
アミナはヘルメット越しにその光を見つめ、
胸の奥で小さく呟いた。
「沈黙の中にも、言葉はある。
それを聞く耳を、人類がようやく持ちはじめたのね。」
だが、その渦の彼方で、
人類はまだ知らぬ“星々の意志”と出会うことになる。
太陽は新たな語り部として、宇宙へ光を放ちはじめた。
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