56 / 75
第3編:セレスティア(星海)航海編
第56章:反重力1万年戦争
しおりを挟む反重力――それは解放であり、呪いでもあった。
重力の束縛から自由になった瞬間、人類は銀河の至る所へ進出できるようになった。惑星の大気圏を離れることはもはや子どもの遊びのようであり、恒星間の輸送も一世代のうちに可能となった。
だが、その技術は同時に、無限の落下と破壊をも意味していた。
恒星そのものを引き裂き、惑星の核を暴き、文明を無音の瓦礫と化す「重力反転爆弾」が開発され、対立する勢力は競い合うようにそれを用いた。
最初の火花は、銀河腕の片隅に存在した二つの惑星同盟から始まった。
資源採掘権をめぐる争いは、瞬く間に「重力兵器」の実験戦場と化し、恒星系ごと消失する惨劇が続いた。
やがて戦火は広がり、物理生命体の大国、意識生命体の集団、双方が分裂しながら参戦することになる。
「我らは介入すべきか」
「超越した存在として、争いに関与するべきではない」
「いや、仲間を守るためには力を振るうしかない」
意識生命体は、存在の在り方そのものを揺るがす議論の末、ついに二つの大陣営に割れた。
一方、物理生命体の諸勢力は帝国主義を掲げる者と共存を模索する者とに分裂し、同じ血を分けた同族同士が数千年単位で殺し合った。
戦場は星々そのものであった。
反重力砲が放たれれば、惑星の地殻がひっくり返り、海が空へと舞い上がった。
恒星を巡るオービタル都市群は、重力の反転で自壊し、住民たちは光速を超えた衝撃波に呑まれ消えた。
人々は、この戦争をこう呼んだ。
「反重力1万年戦争」。
長きにわたり続いたこの争いに、勝者は存在しなかった。
最初の1000年で、双方の科学的進歩は停滞し、戦術と報復の連鎖が全てを支配した。
5000年を過ぎる頃には、無数の文明が灰燼に帰し、銀河の一角は暗黒の空白地帯となっていた。
1万年の終焉を迎える頃、戦争は「勝利」ではなく「疲弊」によって終息する。
誰もが気づいたのだ。
重力を反転させても、愛する者の死を反転させることはできない。
力の均衡を崩しても、孤独だけは均衡しない。
戦火の果て、意識生命体も物理生命体も共に問い続けた。
「なぜ、ここまで戦わねばならなかったのか」
「我々は技術に仕えたのか、それとも技術が我々に仕えたのか」
その問いに、答えはなかった。
ただ、焼け跡の星々に立つ者たちは、心の底で願った。
二度とこのような戦いを繰り返すべきではない、と。
やがて、荒廃の銀河に、一人の旅人の姿が現れる。
反重力戦争の廃墟を渡り歩き、亡き者の魂に祈りを捧げる存在。
その姿は人ともつかず、意識体ともつかず。
やがて人々は彼をこう呼ぶようになる。
**「星をめぐる僧侶」**と。
彼の歩みが、やがて「銀河88星座巡り」と呼ばれる新たな巡礼の始まりとなり、銀河の心に残る傷跡を癒していくことになるのだった。
0
あなたにおすすめの小説
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
