プルートの逆襲

LongingMoon

文字の大きさ
4 / 29

四. 2303年 トリトン 

しおりを挟む
 海王星は1989年、惑星探査機ボイジャー2号によって、はじめて間近から撮影され、2191年には有人ロケットがその衛星トリトンに着陸した。
海王星は大気中のメタンが赤色の光を吸収するため、トリトンから青く見える。海王星の大気には木星の大赤斑に似た「大暗斑」という反時計まわりの渦がみえ、その上空には白い雲が浮かんでいる。
人類にとって、直接海王星に着陸するには大気の風速が強く、あまりメリットがなかった。人が居住して研究したり資源採取したりするという観点から、専ら焦点は衛星トリトンとそのラグランジェポイントにあるスペースコロニーにあった。
 海王星の月にあたるトリトンは、海王星の自転とは逆回転で海王星を周回しており、海王星と同じタイミングで誕生したわけではないと推測されていた。トリトンは、どこからか飛んできて海王星の重力にとらえられたものだと推測され続けていた。
トリトンの地表面は200mから300mの高低差しかなかった。トリトンは、海に近い川の石がツルツルになっているのと同じように、太陽系外から長い旅を続けてきた天体であるのか。あるいは、海王星自転との逆回転による潮汐作用によるものとされていた。そこでトリトンには、未知の物質や稀少物質が大量に存在し、調査・研究だけでなく、鉱物採掘活動も行われていた。
 
世界産業を取り仕切る3つのハイパーエンタプライズの1つであるジェネラル・ダイヤモンド・グループは、恒星間航行競争に勝ち残っていくことを目指していた。
まずは、太陽系で冥王星以遠にある小惑星の稀少鉱物採掘を主目的として、反物質ロケットを開発していた。

「やっと、ついたな。太陽系の最遠の惑星だぜ。ボウズ」
「ボウズは、やめてくれよ、キャプテン。これでも、もう25歳なんだぜ」

2303年、10人の科学者をのせたロケットは、5人の宇宙飛行士に導かれ海王星への試験飛行中であった。宇宙飛行士のメンバーは、数々のミッション経験をつんだメンバー4人に加えて、次世代への宇宙飛行士育成兼雑用係りとして1人のひよっ子パイロットも同行していた。科学者のミッションは4分野で、その内訳は「大気研究」1名、「センサー研究」3名、「鉱物研究」3名、「放射性物質研究」3名の計10名であった。そして、彼らはトリトンのラグランジェポイントのスペースコロニーとトリトンの往復を繰り返し、約1ヶ月間の研究・調査を終えた。

「あっという間だったな、ボウズ。少しは上達したか。でも、おまえは、まだまだ、これからだぜ。しっかり、経験を積んで立派な船乗りになるんだぜ」
「ありがとうございます。ぼくも、もっと経験を積んでキャプテンのようになるよ」

調査を終えて、そのミッションメンバーはトリトンのスペースコロニーから地球に向け出発した。
出発してから、何事もなく3日目が経過した時だった。

「グワッシャーン。ドッカーン。メキメキ。メリメリ・・・」
ありとあらゆる爆音が、ロケットを突然襲い、ロケットは半壊状態となった。
「大丈夫だ。このロケットは。みんな落ち着いて、避難用カプセルに移動するんだ」
「了解」
パイロットたちは、声を揃えて応答した。そして、動揺している科学者たちを誘導した。
「全員、無事か」
「キャッ、キャプテン。ボウズがやられたみたいだ。意識を失っている。出血も酷い」
「わかった。おまえは、すぐにボウズの応急処置を頼む」
「わかりました」
「科学者のみなさん。このロケットは、少々のことでは壊れません。幸い、このカプセルの非常通信機器は無事です。万一ロケットが爆発しても、このカプセルにいる限り安全です。すぐにトリトンから、救助隊が来てくれますので、落ち着いてください」
「クルーは、宇宙服を装備し、ロケットの修復にあたれ」

「しかし、キャプテン、原因がわからないのに、カプセルの外に出るのは危険じゃないですか」
「バカヤロー。宇宙飛行士が、これくらいの事故で任務を放りだしてどうすんだ」
キャプテンの発破に、クルー達はロケットの破壊状況調査と修復作業を開始した。

しかし、クルーが作業を開始して1時間ほどしてからロケットが、再度、衝撃とともに爆発し、カプセルを除いて木端微塵に吹き飛んでしまった。そして、重症を負った見習宇宙飛行士と9人の研究者は救命船で漂流しているところを救助された。
残念ながら4人の宇宙飛行士はロケットと共に帰らぬ人となった。研究者たちの話によると、宇宙船に2回目の強烈な衝撃が走り、照明が消え、自分たちが乗っているカプセル以外何も見えなくなってしまった。怪我をした若い宇宙飛行士は、再び意識を失い動けなくなっていた。
カプセルでロケットを脱出した研究者達の証言によると、クルーが修復作業を行っている最中に、一条の光がロケットにつきささり、ロケットは木っ端微塵に吹き飛んでしまったという。残りの1名の大気研究者は救助依頼を受けたトリトン救助隊の必死の捜査にもかかわらず、発見することができなかった。その後重症を負った見習宇宙飛行士は、トリトンのラグランジェポイントのスペースコロニー病院で一命をとりとめ、輸送船を乗り継いで故郷である地球のスペインに帰っていったという。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

アガルタ・クライシス ―接点―

来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。 九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。 同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。 不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。 古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。

リボーン&リライフ

廣瀬純七
SF
性別を変えて過去に戻って人生をやり直す男の話

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...