1 / 7
プロローグ
しおりを挟む
「お前とは離縁する!」
得意満面でそう言い放つ夫に思わずため息が出そうになった。
夫の隣に立つ女もこちらを見て、勝ち誇った顔をしている。
…たしかに私はその言葉をずっと待っていた…
…しかしよりによって、今日この場を選ぶなんて…
本日、我がお屋敷にて開かれたパーティーはとても大切なパーティーだった。
彼が背負うべき伯爵家が進めている数々の事業が、成功するか否かのとても重要な日であったのに…。
大切なパーティーなので、当然義両親や親族一堂が勢揃いしている。
更に伯爵家と関係のある大切な方々や本日を機会にこれから関係を築きたい相手や事業に興味を持った高位な方々も招待していた。
まさか、そんな日を選ぶなんて…
彼等が、前々から私を追い出す計画を立てている事は知っていた。
いや、知ってはいたけれど…それを今日この会場で決行するとは…
多少予測をしていない事もなかったけれど…その後の事を考えれば普通はやらない…
…いや、彼等はそもそも普通では無かったのだった…
それにしても、まさか本当に実行するとは…
…
…
…まぁ、しょうがない。彼等が選んだ道だ。
「…わかりました。私たちの関係がこのような形で終わることは残念ですが、貴方の意思を尊重致します」
ひとまず彼へと返事をすると少し離れた場所にいる義両親達は顔を真っ青にしている。
周りにいた人々は、突然の事態に好奇や興奮を浮かべたり、怒りや侮蔑を浮かべたりと様々な反応をしている。
私の冷静な態度に不服そうな本日の主役の2人から視線を外し、私は人々へと向かい声を張る。
「…この様な場での突然のご報告となり、誠に申し訳ありません。私たちは彼からの希望により別々の道を歩むこととなりました」
私のキッパリとした発言に会場はいつの間にか静まり返っていた。
これなら、よく響いて聞き取り易いだろう。
「ここに、私たちが夫婦の縁を切ることを宣言いたします。皆様には、この決断の証人となっていただきたくお願い申し上げます。
…また、最後にこれまで私を支えてくださったすべての方々に感謝の気持ちとお礼を述べさせて頂きます。
ありがとうございました。
私はこの家の者ではなくなりますので今後事業に関わることはありませんが、皆様の今後の発展とご多幸をお祈り致します」
私は出来る限り美しくカーテシーをするとそのまま颯爽と会場を後にする。
去る時にチラリと見えた視線の先には赤い顔をした元義父と真っ青な顔の元義母が元夫と彼女の所に駆けつける様子が見えた。
大きく開いていた扉は私が退出するのに合わせてバタンと閉じられる。
閉めた扉の向こうから人々の騒めきや誰かの怒声が聞こえた気もするが、私にはもう関係のない出来事だ。
扉から退場すると、屋敷の者たちが私の元へと静かに駆け寄ってきた。
「…奥様!大丈夫ですか?」
心配そうな顔をする屋敷の者達に私は笑顔で返答をする。
「ふふ…もう奥様ではないのよ」
私の爽やかな笑顔に皆の顔に安堵の笑顔が浮かぶ。
「私はこのまま屋敷を出るわ。あなた達も今後は自分の事を大切にしてね…」
「おく…お嬢様…」
「…あなた達は素晴らしい人材よ。今後、この領地だけでなく他の領地でも重宝されるだけの能力を持ってるわ。
…だから、今後の事は自分の思うように…好きに生きて頂戴ね」
それだけを皆に伝えると、泣きそうな彼女達をそこに置いたまま足早にその場を後にする。
「…お嬢様…ありがとうございました…」
後ろからは口々にお礼の言葉が聞こえて来た。
私は後ろを振り返る事もなく…そのまま荷物を取りに自分の部屋だった場所へと足を進めた。
仲の良かった屋敷の者達には大分前から伝えてあったのだ。
元々、3年で離縁する予定での結婚だった事を。
その為の準備も既に終わっていた。
私は離縁後の事を常に考えて動いていたのに…どうやら、彼は3年の約束自体をすっかり忘れているようだ。
もう、付き合っていられない。
私は自由だ。
予定は少し早まったけれどお金も今後の事も準備は充分出来ている。
もう、あの阿保達がどうなろうと私には関係ない…
得意満面でそう言い放つ夫に思わずため息が出そうになった。
夫の隣に立つ女もこちらを見て、勝ち誇った顔をしている。
…たしかに私はその言葉をずっと待っていた…
…しかしよりによって、今日この場を選ぶなんて…
本日、我がお屋敷にて開かれたパーティーはとても大切なパーティーだった。
彼が背負うべき伯爵家が進めている数々の事業が、成功するか否かのとても重要な日であったのに…。
大切なパーティーなので、当然義両親や親族一堂が勢揃いしている。
更に伯爵家と関係のある大切な方々や本日を機会にこれから関係を築きたい相手や事業に興味を持った高位な方々も招待していた。
まさか、そんな日を選ぶなんて…
彼等が、前々から私を追い出す計画を立てている事は知っていた。
いや、知ってはいたけれど…それを今日この会場で決行するとは…
多少予測をしていない事もなかったけれど…その後の事を考えれば普通はやらない…
…いや、彼等はそもそも普通では無かったのだった…
それにしても、まさか本当に実行するとは…
…
…
…まぁ、しょうがない。彼等が選んだ道だ。
「…わかりました。私たちの関係がこのような形で終わることは残念ですが、貴方の意思を尊重致します」
ひとまず彼へと返事をすると少し離れた場所にいる義両親達は顔を真っ青にしている。
周りにいた人々は、突然の事態に好奇や興奮を浮かべたり、怒りや侮蔑を浮かべたりと様々な反応をしている。
私の冷静な態度に不服そうな本日の主役の2人から視線を外し、私は人々へと向かい声を張る。
「…この様な場での突然のご報告となり、誠に申し訳ありません。私たちは彼からの希望により別々の道を歩むこととなりました」
私のキッパリとした発言に会場はいつの間にか静まり返っていた。
これなら、よく響いて聞き取り易いだろう。
「ここに、私たちが夫婦の縁を切ることを宣言いたします。皆様には、この決断の証人となっていただきたくお願い申し上げます。
…また、最後にこれまで私を支えてくださったすべての方々に感謝の気持ちとお礼を述べさせて頂きます。
ありがとうございました。
私はこの家の者ではなくなりますので今後事業に関わることはありませんが、皆様の今後の発展とご多幸をお祈り致します」
私は出来る限り美しくカーテシーをするとそのまま颯爽と会場を後にする。
去る時にチラリと見えた視線の先には赤い顔をした元義父と真っ青な顔の元義母が元夫と彼女の所に駆けつける様子が見えた。
大きく開いていた扉は私が退出するのに合わせてバタンと閉じられる。
閉めた扉の向こうから人々の騒めきや誰かの怒声が聞こえた気もするが、私にはもう関係のない出来事だ。
扉から退場すると、屋敷の者たちが私の元へと静かに駆け寄ってきた。
「…奥様!大丈夫ですか?」
心配そうな顔をする屋敷の者達に私は笑顔で返答をする。
「ふふ…もう奥様ではないのよ」
私の爽やかな笑顔に皆の顔に安堵の笑顔が浮かぶ。
「私はこのまま屋敷を出るわ。あなた達も今後は自分の事を大切にしてね…」
「おく…お嬢様…」
「…あなた達は素晴らしい人材よ。今後、この領地だけでなく他の領地でも重宝されるだけの能力を持ってるわ。
…だから、今後の事は自分の思うように…好きに生きて頂戴ね」
それだけを皆に伝えると、泣きそうな彼女達をそこに置いたまま足早にその場を後にする。
「…お嬢様…ありがとうございました…」
後ろからは口々にお礼の言葉が聞こえて来た。
私は後ろを振り返る事もなく…そのまま荷物を取りに自分の部屋だった場所へと足を進めた。
仲の良かった屋敷の者達には大分前から伝えてあったのだ。
元々、3年で離縁する予定での結婚だった事を。
その為の準備も既に終わっていた。
私は離縁後の事を常に考えて動いていたのに…どうやら、彼は3年の約束自体をすっかり忘れているようだ。
もう、付き合っていられない。
私は自由だ。
予定は少し早まったけれどお金も今後の事も準備は充分出来ている。
もう、あの阿保達がどうなろうと私には関係ない…
2,137
あなたにおすすめの小説
夫から「用済み」と言われ追い出されましたけれども
神々廻
恋愛
2人でいつも通り朝食をとっていたら、「お前はもう用済みだ。門の前に最低限の荷物をまとめさせた。朝食をとったら出ていけ」
と言われてしまいました。夫とは恋愛結婚だと思っていたのですが違ったようです。
大人しく出ていきますが、後悔しないで下さいね。
文字数が少ないのでサクッと読めます。お気に入り登録、コメントください!
お母様と婚姻したければどうぞご自由に!
haru.
恋愛
私の婚約者は何かある度に、君のお母様だったら...という。
「君のお母様だったらもっと優雅にカーテシーをきめられる。」
「君のお母様だったらもっと私を立てて会話をする事が出来る。」
「君のお母様だったらそんな引きつった笑顔はしない。...見苦しい。」
会う度に何度も何度も繰り返し言われる言葉。
それも家族や友人の前でさえも...
家族からは申し訳なさそうに憐れまれ、友人からは自分の婚約者の方がマシだと同情された。
「何故私の婚約者は君なのだろう。君のお母様だったらどれ程良かっただろうか!」
吐き捨てるように言われた言葉。
そして平気な振りをして我慢していた私の心が崩壊した。
そこまで言うのなら婚約止めてあげるわよ。
そんなにお母様が良かったらお母様を口説いて婚姻でもなんでも好きにしたら!
愚か者が自滅するのを、近くで見ていただけですから
越智屋ノマ
恋愛
宮中舞踏会の最中、侯爵令嬢ルクレツィアは王太子グレゴリオから一方的に婚約破棄を宣告される。新たな婚約者は、平民出身で才女と名高い女官ピア・スミス。
新たな時代の象徴を気取る王太子夫妻の華やかな振る舞いは、やがて国中の不満を集め、王家は静かに綻び始めていく。
一方、表舞台から退いたはずのルクレツィアは、親友である王女アリアンヌと再会する。――崩れゆく王家を前に、それぞれの役割を選び取った『親友』たちの結末は?
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
あなたの破滅のはじまり
nanahi
恋愛
家同士の契約で結婚した私。夫は男爵令嬢を愛人にし、私の事は放ったらかし。でも我慢も今日まで。あなたとの婚姻契約は今日で終わるのですから。
え?離縁をやめる?今更何を慌てているのです?契約条件に目を通していなかったんですか?
あなたを待っているのは破滅ですよ。
※Ep.2 追加しました。
マルグリッタの魔女の血を色濃く受け継ぐ娘ヴィヴィアン。そんなヴィヴィアンの元に隣の大陸の王ジェハスより婚姻の話が舞い込む。
子爵の五男アレクに淡い恋心を抱くも、行き違いから失恋したと思い込んでいるヴィヴィアン。アレクのことが忘れられずにいたヴィヴィアンは婚姻話を断るつもりだったが、王命により強制的に婚姻させられてしまう。
だが、ジェハス王はゴールダー家の巨万の富が目的だった。王妃として迎えられたヴィヴィアンだったが、お飾りの王妃として扱われて冷遇される。しかも、ジェハスには側妃がすでに5人もいた。
婚約破棄で見限られたもの
志位斗 茂家波
恋愛
‥‥‥ミアス・フォン・レーラ侯爵令嬢は、パスタリアン王国の王子から婚約破棄を言い渡され、ありもしない冤罪を言われ、彼女は国外へ追放されてしまう。
すでにその国を見限っていた彼女は、これ幸いとばかりに別の国でやりたかったことを始めるのだが‥‥‥
よくある婚約破棄ざまぁもの?思い付きと勢いだけでなぜか出来上がってしまった。
婚約破棄は喜んで
nanahi
恋愛
「お前はもう美しくない。婚約破棄だ」
他の女を愛するあなたは私にそう言い放った。あなたの国を守るため、聖なる力を搾り取られ、みじめに痩せ細った私に。
え!いいんですか?喜んで私は去ります。子爵令嬢さん、厄災の件、あとはよろしく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる