聖女な過去(前世)は黒歴史?

青太郎

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王宮からの依頼

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ギルドの一室で、私と佐藤くんはギルドマスターであるルミエール様の前に座っていました。

これは、最近ではよくある光景です。

そんな私たちの前にある机の上には、一通の書状が広げられていました。

「王宮から正式な依頼が届いたわ。」

ルミエール様は淡々とした口調で言いましたが、その視線は私達の反応を見極めようとしているようでした。

私は視線でルミエール様の許可を貰うと静かに書状を手に取り、内容を確認します。

「……勇者一行の護衛?」

「ええ。最近の活躍を評価されてのことよ」

佐藤くんとオマケの私の二つ名は、不本意ながらすでにギルドの中でも有名になりつつありました。

魔物討伐への対策や討伐方法、魔物に合わせた罠の準備や実際の応用性、実際の魔物討伐の効率上昇…等等により、佐藤くんは多くの冒険者から好意的かつ一目置かれるようになったのです。

そして、オマケの私はちょっとしたお手伝いしていただけなのに何故か一緒に名を上げる形となっていました。


佐藤くんは苦々しく書状を睨みつけました。

「……なんで今さら、僕たちに…?」

彼の声には警戒の色がにじんでいました。

当然です。王宮はかつて自分たちを見捨てた存在な筈なのに、そんな彼らが他の優秀な冒険者達を差し置いてわざわざ私達に指名依頼を頼むなんて何か裏があるに違いないと思ってもしょうがないでしょう。

「王宮は、今の“勇者”たちの実力に不安を抱いているのかもしれないわ」

ルミエール様が意味深に微笑むので私たちは小さく首を傾げます。

「どういうことですか?」

「最近の情報では、“勇者”たちは思ったほどの力を発揮できていないらしいわ。練習での成果も今ひとつで、既にやる気すら失っているそうよ……。…そんな彼らの様子に騎士達からの不満も強まっているようで…彼らの魔王討伐への帯同を拒否する者が出てきているらしいわ…」

「…なるほど。だから、ある程度名を上げている冒険者に護衛を頼もうって事ですか…?…でも、それにしても…」

何故よりによって私達なのでしょうか…?

私はつい困った顔をしてしまいます。

佐藤くんも横で苦笑いを浮かべながら、息を吐き出します。

「笑えるね。僕たちを追放したくせに、護衛が必要になったら頼ってくるなんて」

そんな私達の様子を見ていたルミエール様は少しだけ苦々しい声で言いました。

「…それが、もっと面白いことにね……王宮は、あなたたちが誰なのか気づいていないようなの」

ルミエール様の言葉に、私と佐藤くんは同時に目を見開きました。

「えっ……?」

「まさか……?」

「あなたたちは、王宮にいたときに…その、あまり目立っていなかったでしょう…?」

ルミエール様は言葉を選ぶように少し困った様子で話を続けます。


「…平民で有用な“スキル”も無い者なんてお城の人達からすると眼中にないのよ。…それに何より、彼らは『役に立たないから追放した者』がここまで活躍しているなんて、思いもしないのでしょうね」

ルミエール様が困ったように肩をすくめます。

「…つまり、彼らは私たちをただの最近評判の良い冒険者だと思って依頼を?」

「…ええ。面白いでしょう?」

私は思わず複雑な表情で書状を見つめてしまいました。

佐藤くんは横で苦笑いを浮かべています。

「さて……どうする?」

ルミエール様はじっと私達の答えを待ってくれています。

うーん…これは、ちょうど良いのでは…?


私は書状を見つめたまま、ぽつりと呟きました。

「行きます」

「……え?」

何故か驚いた声を上げたのは佐藤くんでした。

佐藤くんは勢いよく身を乗り出してこちらを見つめます。

「え、受けるの?…あいつらの事を守るの?」

佐藤くん…クラスメートを“あいつら”なんて、少しヤンチャになっちゃいましたね。

私は軽く肩をすくめながら微笑みます。

「…えっと、うん、まあ……私には守るって程の力も無いし、依頼の事はまだ考えてる途中だけど……ちょうどクラスメートのみんなの様子も気になってたところだったし…」

一度お城へ様子を見に行こうと思っていたのですよね。

てへっと笑いながらそう言った私に佐藤くんは困った顔をしました。

「…いや、それは僕も気に…なる…けど…」

佐藤くんは納得できないように言葉を濁します。

「…まだ依頼を受けるかどうかまではわかりませんが、一度様子は見たいと思っていたので…あ、もし抵抗があるなら佐藤くんは待ってても…」

「いや、僕も一緒に行くよ!僕も気になってたし!」

私の言葉に何故か佐藤くんは慌てて一緒に来る事を伝えてくれました。

無理にお城に行く事はないと思っていたのですが…

…やはり、優しい佐藤くんはクラスメート達の事が心の底では心配だったのでしょう。

「……なんだか…。…いえ、まぁ、いいわ」

私達の様子を見ていたルミエール様が何故か呆れたように微笑んでいました。

「でも、そうね……私も興味が出てきたわ」

「…ルミエール様も?」

「ええ。王宮があなたたちの正体に気づかずに依頼を出してきたということは、単純に人手不足ってわけじゃないはずよ。
…実力は確かな…でも新人を指名って事はある程度使いやすくて強い存在を求めてるのね…勇者一行の状況も気になるけど王宮の思惑も探っておきたいところだわ…」

「…確かに……」

強くて優秀な冒険者を求めるのなら、私たちよりももっとベテランの人や実績の多い信用出来る存在だっていた筈です。

そこをわざわざ、まだ最近ちょっと評判になっただけの私達へと依頼するなんて…

私は思わず考えるように顎に手を当てました。

同じように佐藤くんも横で考え込んでいます。

ルミエール様はそんな私たちを見て不敵に微笑みました。

「それに、どうせ行くなら頼もしい同行者が必要でしょう?…もう1人、ちょうど良いのがいるのよ」

「……?」

「ふふ、ちょうど良いところに昔の知り合いが来ていてね。…彼も興味を持つはずだし誘うわ」

そう話すルミエール様の声と表情は明るく、少しだけ以前の、一緒に旅をした時のルミエール様を彷彿とさせました。

でも、何故そんな表情をしているのかわからなかった私と佐藤くんはルミエール様の言葉にただ頷く事しか出来ません。



「…少しだけ面白くなってきたわ」

ルミエールは満足げに微笑むと立ち上がってドアへと向かいます。

「じゃあ、戦士を呼んでくるわ。あなたたちは準備をしておいて」

…え、せんし…?


こうして、私と佐藤くんはこの後、過去“勇者パーティー”の仲間であった“戦士”をルミエール様によって紹介される事となったのです。

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