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冷蔵庫ダンジョン おまけ
「これが今回のミズサワ様のお持ちになったリストです」
女性職員が出したリストを前にして、深いため息をつく冒険者ギルドマスター。そして警備のトップと、ぱりっとしたスーツ男性、その男性を後ろに直立不動の壮年男性。
ギルドの会議室に集まった各ギルドマスター。薬師ギルドマスターだけは、欠席している。バーザタイラントのドロップ品を手にして、工房に籠っている。
冒険者ギルドマスターは、女性職員に着席を促す。
「何日だった?」
「3日だそうです」
「はああ、どう見ても、個人で持ち込む数じゃない。高ランクパーティーの数ヶ月以上、いや、年単位の数だぞ。リティア、あのミズサワと言う女性は、お前の印象はどうだ?」
「素人ですね」
すっぱり答える女性職員、リティア。
「ダンジョンについても、しっかり理解されていません。ダンジョンに潜るのに、ポンチョ1枚でしたし。ボス部屋の魔物の数も、分かっていませんでしたし、あの様子では自分の従魔の恐ろしさも分かっていないでしょう。60匹のボス部屋を殲滅させるだけの力を有しているのに、それがどれだけの力か分かっていないようです」
冷蔵庫ダンジョンのボス部屋はほぼ一桁の魔物しか出ない。今まで確認された中でも、最高12匹だ。魔物の数に比例してドロップ品や宝箱の内容が変わる。今まで出てきたのは小さな宝石や現金、もしくはせいぜい小さな宝石が填まった指輪か中級ポーションだ。今回のように宝飾品ばかり、かなり品質がよくデザイン性が良いものが出ることは今までなかった。
答えは簡単だ。
レベルの高い従魔が扉を開けて、そのレベル相応のボスが出た。そのボス部屋を一掃し、相応の宝箱が出た。
「従魔のレベルを推察しましたが、少なくとも400ほどはあるかと。あくまで推察ですが」
ため息をつくリティア。
レベルは高ければ強い指標だ。冒険者で例えるなら100もあれば、 Aランク、熟練者だ。ただ、レベル100が4人いれば、レベル400に勝てる訳ではない。レベルは3桁を越えた時点で、一気に上がりにくくなる。レベル400に辿り着くまでに途方もない戦闘経験が必要だ。そこまでのレベルに達すれば自ずと基礎能力や保有魔力も桁外れだ。それは既に厄災級だ。それが町を練り歩いている。今は大人しくテイマーに従ってはいるが。牙でも剥かれたら、正直、ゾッとする。
「アルブレンの情報通りだな。そのミズサワというテイマーは、もともと一般人だと。だが、一般人が持つ戦闘力ではない」
「従魔に対しても、まるで犬や猫のように扱ってますからね」
「「「あれを?」」」
異口同音。
黙っていた、スーツ男性が口を開く。
「やはりアルブレンの情報通りだな。レベル400が2体も、か。考えたくないが」
「伯爵様、いかがいたします?」
スーツ男性が即答。
「対応は変わらずに。妙な介入は避ける、周囲の警備を徹底させろ。それと、パーティーハウスの警備はどうなっている? 確か高齢の両親がいたはず」
「今は当番の者が。次は山風に任せています」
「山風?」
「はいミズサワ様と顔見知りです。話はつけてます」
パーティーハウスの話をする前から、山風には話をしていた。マーファに到着そうそうに親しげにしていたシュタインと、そのリーダーであるロッシュが直ぐに冒険者ギルドに呼び出された。関係性を聞かれ、知り合い程度の関係だと答えたが、冒険者ギルドにとってはそれは貴重な存在だ。冷蔵庫ダンジョンの前で、クリムゾンジャガーが派手に転がり、ダンジョンにいずれ潜る件を知っていた。そうなれば、次に起こす行動は予測できる。
高齢の両親と、ダンジョンに潜るわけない。置いていくにも、不安があるはず。きっと相談にくると。案の定、相談に来た。
「右も左も分からない土地での、数少ない知り合いともなれば、ミズサワ様も心を許すはずです。山風自体も御用聞きには問題ありませんし、このマーファにいい心証を持って頂くために選びました」
伯爵様と呼ばれたスーツ男性が考える。
「そうか。他の冒険者達は?」
「声をかけようとして、牙を剥かれた者はおりますが、それ以上はありません。あのウルフとジャガーは、主人に見えないように牙を剥いています。主人が振り返ると、牙をしまうそうです。かなり賢いようです」
「なら、他の冒険者に通達を徹底させろ。妙な介入は避けるようにと」
「はい」
そこで、直立不動の壮年男性が伯爵様の耳元で囁く。
「時間だ。すまんな、そのテイマーの対応を頼む。私の方でも出来るだけ貴族達に注意を促しておく」
頷く面々。
伯爵様と直立不動の壮年男性が退室後、息を吐き出す。
「簡単に言ってくれる」
冒険者ギルドマスターが小さく愚痴る。
「ギルドマスター、伯爵様も大変なんですよ。もし、自分の領内で騒ぎとなれば、ご子息の結婚もまた延期になりますからね」
リティアが伯爵様に同情気味だ。
「だが、あのテイマー一家にはしばらく、いや、ずっと留まって欲しいのが実情だ。もし有事の際には、いてくれたらどれだけ力強いことか。それにあれだけのドロップ品、一気に揃うなんてまずないぞ。明日には、旗が立つ。久しぶりではないか」
職人ギルドのマスターが少し興奮気味に話し出す。
マーファには、ダンジョンがある。冷蔵庫ダンジョンが。だが、最近上級者向けの階層に臨む冒険者がめっきり減った。かつて首都だったマーファも、今、緩やかに人口減少している。きっかけは27年前にひどい日照りと、その次の年は雨ばかり降ったことで日照不足による農作物の大打撃だ。もとの収穫量に戻るのに数年かかり、その間に首都やアルブレンやカルーラに人が流れた。
だがあのテイマーがいる限り、再び、冷蔵庫ダンジョンに潜るなら、今回同様、それ以上のドロップ品が回ってくる可能性がある。物が回れば、人が動き、街に活気が溢れる。再びあの賑わいを取り戻したい。
「確かに、薬師ギルドマスターも、いかん顔しておったしな」
警備のトップが肩をすくめる。
「今頃、子供が泣き出すような顔で、鍋を掻き回しているだろうなあ」
ああ、と頷く面々。
「しかし、欲のない女性だな。女は普通、宝石には目がないと思うが、小さなピアス以外は回してくれたのだろう?」
「はい」
リティアが答える。
「あれ以上のドロップ品の宝飾品を手元に持たれていないならですが。更にこれ以上のドロップ品をお持ちとは思えません、数が合いません。たった3日、それでこの数です。これ以上お持ちとは思えません」
リティアが繰り返す。
「パーティーハウスは1ヶ月だったな?」
「はい、ギルドマスター」
「延長しそうか?」
「分かりません。ただ、パーティーハウスは気に入って貰えたようですが。もう少し様子を見てはどうでしょう?」
「そうだな」
冒険者ギルドマスターが立ち上がる。
「周囲の警備の徹底を、よろしいか?」
「任せろ」
警備のトップが答える。
「よし、では旗の準備を。ありったけの旗を出すぞ」
そう言った冒険者ギルドマスターの顔は輝いている。
「さあ、明日から忙しいぞ。かつての首都、なんて言わせん賑わいになるはずだ。職員を全員出勤させろッ」
女性職員が出したリストを前にして、深いため息をつく冒険者ギルドマスター。そして警備のトップと、ぱりっとしたスーツ男性、その男性を後ろに直立不動の壮年男性。
ギルドの会議室に集まった各ギルドマスター。薬師ギルドマスターだけは、欠席している。バーザタイラントのドロップ品を手にして、工房に籠っている。
冒険者ギルドマスターは、女性職員に着席を促す。
「何日だった?」
「3日だそうです」
「はああ、どう見ても、個人で持ち込む数じゃない。高ランクパーティーの数ヶ月以上、いや、年単位の数だぞ。リティア、あのミズサワと言う女性は、お前の印象はどうだ?」
「素人ですね」
すっぱり答える女性職員、リティア。
「ダンジョンについても、しっかり理解されていません。ダンジョンに潜るのに、ポンチョ1枚でしたし。ボス部屋の魔物の数も、分かっていませんでしたし、あの様子では自分の従魔の恐ろしさも分かっていないでしょう。60匹のボス部屋を殲滅させるだけの力を有しているのに、それがどれだけの力か分かっていないようです」
冷蔵庫ダンジョンのボス部屋はほぼ一桁の魔物しか出ない。今まで確認された中でも、最高12匹だ。魔物の数に比例してドロップ品や宝箱の内容が変わる。今まで出てきたのは小さな宝石や現金、もしくはせいぜい小さな宝石が填まった指輪か中級ポーションだ。今回のように宝飾品ばかり、かなり品質がよくデザイン性が良いものが出ることは今までなかった。
答えは簡単だ。
レベルの高い従魔が扉を開けて、そのレベル相応のボスが出た。そのボス部屋を一掃し、相応の宝箱が出た。
「従魔のレベルを推察しましたが、少なくとも400ほどはあるかと。あくまで推察ですが」
ため息をつくリティア。
レベルは高ければ強い指標だ。冒険者で例えるなら100もあれば、 Aランク、熟練者だ。ただ、レベル100が4人いれば、レベル400に勝てる訳ではない。レベルは3桁を越えた時点で、一気に上がりにくくなる。レベル400に辿り着くまでに途方もない戦闘経験が必要だ。そこまでのレベルに達すれば自ずと基礎能力や保有魔力も桁外れだ。それは既に厄災級だ。それが町を練り歩いている。今は大人しくテイマーに従ってはいるが。牙でも剥かれたら、正直、ゾッとする。
「アルブレンの情報通りだな。そのミズサワというテイマーは、もともと一般人だと。だが、一般人が持つ戦闘力ではない」
「従魔に対しても、まるで犬や猫のように扱ってますからね」
「「「あれを?」」」
異口同音。
黙っていた、スーツ男性が口を開く。
「やはりアルブレンの情報通りだな。レベル400が2体も、か。考えたくないが」
「伯爵様、いかがいたします?」
スーツ男性が即答。
「対応は変わらずに。妙な介入は避ける、周囲の警備を徹底させろ。それと、パーティーハウスの警備はどうなっている? 確か高齢の両親がいたはず」
「今は当番の者が。次は山風に任せています」
「山風?」
「はいミズサワ様と顔見知りです。話はつけてます」
パーティーハウスの話をする前から、山風には話をしていた。マーファに到着そうそうに親しげにしていたシュタインと、そのリーダーであるロッシュが直ぐに冒険者ギルドに呼び出された。関係性を聞かれ、知り合い程度の関係だと答えたが、冒険者ギルドにとってはそれは貴重な存在だ。冷蔵庫ダンジョンの前で、クリムゾンジャガーが派手に転がり、ダンジョンにいずれ潜る件を知っていた。そうなれば、次に起こす行動は予測できる。
高齢の両親と、ダンジョンに潜るわけない。置いていくにも、不安があるはず。きっと相談にくると。案の定、相談に来た。
「右も左も分からない土地での、数少ない知り合いともなれば、ミズサワ様も心を許すはずです。山風自体も御用聞きには問題ありませんし、このマーファにいい心証を持って頂くために選びました」
伯爵様と呼ばれたスーツ男性が考える。
「そうか。他の冒険者達は?」
「声をかけようとして、牙を剥かれた者はおりますが、それ以上はありません。あのウルフとジャガーは、主人に見えないように牙を剥いています。主人が振り返ると、牙をしまうそうです。かなり賢いようです」
「なら、他の冒険者に通達を徹底させろ。妙な介入は避けるようにと」
「はい」
そこで、直立不動の壮年男性が伯爵様の耳元で囁く。
「時間だ。すまんな、そのテイマーの対応を頼む。私の方でも出来るだけ貴族達に注意を促しておく」
頷く面々。
伯爵様と直立不動の壮年男性が退室後、息を吐き出す。
「簡単に言ってくれる」
冒険者ギルドマスターが小さく愚痴る。
「ギルドマスター、伯爵様も大変なんですよ。もし、自分の領内で騒ぎとなれば、ご子息の結婚もまた延期になりますからね」
リティアが伯爵様に同情気味だ。
「だが、あのテイマー一家にはしばらく、いや、ずっと留まって欲しいのが実情だ。もし有事の際には、いてくれたらどれだけ力強いことか。それにあれだけのドロップ品、一気に揃うなんてまずないぞ。明日には、旗が立つ。久しぶりではないか」
職人ギルドのマスターが少し興奮気味に話し出す。
マーファには、ダンジョンがある。冷蔵庫ダンジョンが。だが、最近上級者向けの階層に臨む冒険者がめっきり減った。かつて首都だったマーファも、今、緩やかに人口減少している。きっかけは27年前にひどい日照りと、その次の年は雨ばかり降ったことで日照不足による農作物の大打撃だ。もとの収穫量に戻るのに数年かかり、その間に首都やアルブレンやカルーラに人が流れた。
だがあのテイマーがいる限り、再び、冷蔵庫ダンジョンに潜るなら、今回同様、それ以上のドロップ品が回ってくる可能性がある。物が回れば、人が動き、街に活気が溢れる。再びあの賑わいを取り戻したい。
「確かに、薬師ギルドマスターも、いかん顔しておったしな」
警備のトップが肩をすくめる。
「今頃、子供が泣き出すような顔で、鍋を掻き回しているだろうなあ」
ああ、と頷く面々。
「しかし、欲のない女性だな。女は普通、宝石には目がないと思うが、小さなピアス以外は回してくれたのだろう?」
「はい」
リティアが答える。
「あれ以上のドロップ品の宝飾品を手元に持たれていないならですが。更にこれ以上のドロップ品をお持ちとは思えません、数が合いません。たった3日、それでこの数です。これ以上お持ちとは思えません」
リティアが繰り返す。
「パーティーハウスは1ヶ月だったな?」
「はい、ギルドマスター」
「延長しそうか?」
「分かりません。ただ、パーティーハウスは気に入って貰えたようですが。もう少し様子を見てはどうでしょう?」
「そうだな」
冒険者ギルドマスターが立ち上がる。
「周囲の警備の徹底を、よろしいか?」
「任せろ」
警備のトップが答える。
「よし、では旗の準備を。ありったけの旗を出すぞ」
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