52 / 876
連載
すべきこと①
ギルドを後にして、パーカーさんのお店へ。
「こんにちはパーカーさん」
冷蔵庫ダンジョンで手に入った、果物のお裾分けだ。私と晃太でお店に入る。
「ああ、ミズサワさん」
パーカーさんが、少し動揺した様子で、顔を上げる。あ、もしかして、お客様いたのかな?
「すみません、お忙しいですよね」
「いいえ、いいえ、違います。その、あの」
動揺しているパーカーさん。そこにジョシュアさんが出てくる。
「父さん、聞いてみようよ。父さん」
ジョシュアさんも余裕のない顔だ。
「そ、そうだな」
何だろう?
「あのミズサワさん、冷蔵庫ダンジョンに行かれたとお聞きしたのですが」
「はい、そうですが。どうされました?」
「もし、高ランクのポーションがあれば、譲っていただけないでしょうか? もちろんお代は払いますので」
「ポーション? 中級なら何本かありますが、上のはありません」
さあ、と絶望の色に染まるパーカーさんとジョシュアさん。
「どうされました?」
「その、実は…………」
言い淀むパーカーさん。
「ダイアナの、娘の容態が悪化して」
はよう言わんね。
子供部屋のベッドの側で、フィナさんがやつれた顔で項垂れている。
私はパーカーさんに無理を言って、おうちに上がらせてもらった。その前に、ロッシュさんにお願いして、父を呼んできてもらった。ビアンカとルージュはパーカーさんの家の前で待っていてもらう。
「フィナさん」
私がそっと声をかける。
「………ああ、ミズサワさん、でしたか」
青ざめた顔を上げるフィナさん。ベッドには小さな女の子が、眠っている。呼吸は浅く、顔色が悪い。私達が初めてパーカーさんを訪れた時は、軽い風邪くらいだったのが、一気に症状が悪化したと。熱が今だに下がらず、ほとんど何も口にしていない。ポーションも飲ませたが、吐き出す始末。ポーション苦いんだよね。小さな子にきつい。1本250ml位だけど、青臭いんだよね。ただ、出回っているポーション、比較的手に入るのは下級ポーション。ほとんどこれなので、わざわざ下級ポーションとは言わず、ポーションと呼ばれる。これは病気を治さない、病気で失った体力を回復させるくらいだ。漢方と併用が主だ。中級ポーションとなれば、ある程度病気にも効くらしいが、不味い。更に上級はえぐみがプラスされる。ディードリアンさん情報です。ただ、これを子供が飲むのは厳しいし、多分この状態では、高ランクのポーションも飲めないはずだ。
「少し、いいですか?」
「でも……」
「さあ」
私はフィナさんを子供部屋から連れ出す。
「お父さん、お願いね」
「ん」
子供部屋のドア横で、フィナさんの背中をさする。
父が直ぐに出てきた。厳しい表情だ。
「ちょっと、部屋から離れて話そう」
分からない顔のフィナさんを連れて、パーカーさん、ジョシュアさん、パトリックさんの待つ居間に向かう。
「風邪に起因した肺炎のようや。このまま、何もしないなら、恐らく1、2週間持たんかもしれません」
「はぁ………」
父の言葉に、崩れ落ちるフィナさん。
「ど、どうしてそんなことが、分かるんですか?」
パトリックさんが疑わしい顔だ。
「父はちょっと鑑定スキルが高くて」
フィナさんが咽び泣き出したので、パーカーさんはフィナさんの肩を抱く。
「ああ、始祖神様、どうか、どうか、ダイアナを連れて行かないでください。お願いします、連れて行かないでください…………」
フィナさんが掠れた声で繰り返す。
「お父さん、『何もせんなら』よね?」
「ん、そうやな」
「なら、『何か』をしよう。晃太の支援魔法は?」
「今のあん子の状態での支援は、体力がもたんやろう」
父は首を横に振る。
「そうね」
だけど、ここで、何もしない訳にはいかない。
あのベッドに横たわる女の子を見て、思い出す。かわいい従姉妹の子。重なる、あの子と。
何か出来るなら、何かせんといかん。何とかせんといかん。
私は、何かに迫られるような気がした。何とかせんといかん。
全ての事は偶然と必然。すべての事には意味がある。すべては行動の結果なのだよ。
始祖神様の声が響く。
1人で出来ることは限られているけど、集まればなんとかの知恵だ。
私達には色々なスキルがある。
そう、始祖神様から頂いたスキルが。
このまま見ているだけなんて、絶対に嫌だ。神様の言葉ではないが、必然と偶然。そうだ、頂いたスキルで出来る限りのことをする時だ。
「パーカーさん、足掻きましょう」
「は?」
「足掻きましょう。最後まで足掻きましょう」
「ミズサワさん、何を仰っているんですか?」
分からない顔のパーカーさん。
「私達も出来る限りのお手伝いしますから。お父さん」
「ん」
私は父にアイコンタクト。
「お母さんと出番よ。抗生剤と解熱剤ば」
「ん」
父は理解してくれた。そう、ディレナスで抗生剤を作った。あの時は父の鑑定と、母の生活魔法で作り上げた。あれだけ弱ったダイアナちゃんの体でも、大丈夫な抗生剤と解熱剤。向こうなら点滴とかあるし、抗生剤だってたくさんあるけど、ここにはない。なら、経口から行くしかない。なんとか、少しでも改善させて、抗生剤が出来るまでに繋げないと。
どうしよう、小児の経験が私にはない。学生時代の実習くらいしかない。だけど、そんな事を言っている場合ではない。
「ロッシュさん、シュタインさん、父を薬膳屋に連れていってください」
「ミズサワさん、どうするつもりです?」
「これから説明しますから。お父さん、急いで」
「ん」
父がロッシュさんと出ていく。シュタインさんは残ってくれた。
「パーカーさん、いいですか?」
よく分からない表情のパーカーさん一家。
「まず、父は鑑定のスキルが高いのでダイアナちゃんに合った薬の配合を模索します。そしてそれを処理出来るのは母だけです。私達はその間を繋ぎましょう」
「繋ぐ? どうやって? これ以上祈れと?」
フィナさんが悲鳴のような声を上げる。
「いいえ、祈って助かるなら、誰も病死なんかしませんよ。だから、私達は行動するんです。まず、ダイアナちゃんが口に出来そうな物を準備します。準備するまでの間、皆さんで交代で休憩です。いいですね? 一旦休憩です。長丁場になりますよ。特にフィナさんが倒れたら、ダイアナちゃんが目を覚ました時に不安になりますよ。一旦休憩です。さあ、フィナさんを先に休ませて、交代でダイアナちゃんについてください」
「…………ミズサワさん」
指示を出す私に、フィナさんは涙で濡れた顔を上げる。
「ローナも、弱りきって死んでいきました。ダイアナもそうなりますか?」
確か、半成人前に亡くなった娘さんのことだろうけど。パーカーさんは言っていた、ダイアナちゃんは宝物だと。半成人を迎えられなかった上の娘さんにしてあげられなかったことを、出来る限りしてあげたいと。布を手にしていたあの時のパーカーさんとジョシュアさんの嬉しそうな顔が今でも浮かぶ。今はその面影は欠片もないほど、絶望している。
「フィナさん、まだ、諦めたくないですよね? ダイアナちゃんは宝物ですよね? だから、精一杯足掻きましょう。神様から頂いたスキルを最大限に使って、神様の元に行かないように。すべてに意味があるんですよ。私達がこのタイミングで、ダイアナちゃんの事を聞いたのも、意味があるはずです」
私は言葉を切る。
「私は一旦パーティーハウスに戻って、ダイアナちゃんが口に出来そうなものを持ってきます。必ず戻ります。それまでには、フィナさんは横になってください。いいですね」
戻る前に、神への祈りをしてみたが、発動しなかった。どうしてか分からないけど、もしかしたら、私達で対応しないといけないことかもしれない、と思って割りきった。手持ちのスポーツドリンクを渡し、パーティーハウスに急いで戻った。
「こんにちはパーカーさん」
冷蔵庫ダンジョンで手に入った、果物のお裾分けだ。私と晃太でお店に入る。
「ああ、ミズサワさん」
パーカーさんが、少し動揺した様子で、顔を上げる。あ、もしかして、お客様いたのかな?
「すみません、お忙しいですよね」
「いいえ、いいえ、違います。その、あの」
動揺しているパーカーさん。そこにジョシュアさんが出てくる。
「父さん、聞いてみようよ。父さん」
ジョシュアさんも余裕のない顔だ。
「そ、そうだな」
何だろう?
「あのミズサワさん、冷蔵庫ダンジョンに行かれたとお聞きしたのですが」
「はい、そうですが。どうされました?」
「もし、高ランクのポーションがあれば、譲っていただけないでしょうか? もちろんお代は払いますので」
「ポーション? 中級なら何本かありますが、上のはありません」
さあ、と絶望の色に染まるパーカーさんとジョシュアさん。
「どうされました?」
「その、実は…………」
言い淀むパーカーさん。
「ダイアナの、娘の容態が悪化して」
はよう言わんね。
子供部屋のベッドの側で、フィナさんがやつれた顔で項垂れている。
私はパーカーさんに無理を言って、おうちに上がらせてもらった。その前に、ロッシュさんにお願いして、父を呼んできてもらった。ビアンカとルージュはパーカーさんの家の前で待っていてもらう。
「フィナさん」
私がそっと声をかける。
「………ああ、ミズサワさん、でしたか」
青ざめた顔を上げるフィナさん。ベッドには小さな女の子が、眠っている。呼吸は浅く、顔色が悪い。私達が初めてパーカーさんを訪れた時は、軽い風邪くらいだったのが、一気に症状が悪化したと。熱が今だに下がらず、ほとんど何も口にしていない。ポーションも飲ませたが、吐き出す始末。ポーション苦いんだよね。小さな子にきつい。1本250ml位だけど、青臭いんだよね。ただ、出回っているポーション、比較的手に入るのは下級ポーション。ほとんどこれなので、わざわざ下級ポーションとは言わず、ポーションと呼ばれる。これは病気を治さない、病気で失った体力を回復させるくらいだ。漢方と併用が主だ。中級ポーションとなれば、ある程度病気にも効くらしいが、不味い。更に上級はえぐみがプラスされる。ディードリアンさん情報です。ただ、これを子供が飲むのは厳しいし、多分この状態では、高ランクのポーションも飲めないはずだ。
「少し、いいですか?」
「でも……」
「さあ」
私はフィナさんを子供部屋から連れ出す。
「お父さん、お願いね」
「ん」
子供部屋のドア横で、フィナさんの背中をさする。
父が直ぐに出てきた。厳しい表情だ。
「ちょっと、部屋から離れて話そう」
分からない顔のフィナさんを連れて、パーカーさん、ジョシュアさん、パトリックさんの待つ居間に向かう。
「風邪に起因した肺炎のようや。このまま、何もしないなら、恐らく1、2週間持たんかもしれません」
「はぁ………」
父の言葉に、崩れ落ちるフィナさん。
「ど、どうしてそんなことが、分かるんですか?」
パトリックさんが疑わしい顔だ。
「父はちょっと鑑定スキルが高くて」
フィナさんが咽び泣き出したので、パーカーさんはフィナさんの肩を抱く。
「ああ、始祖神様、どうか、どうか、ダイアナを連れて行かないでください。お願いします、連れて行かないでください…………」
フィナさんが掠れた声で繰り返す。
「お父さん、『何もせんなら』よね?」
「ん、そうやな」
「なら、『何か』をしよう。晃太の支援魔法は?」
「今のあん子の状態での支援は、体力がもたんやろう」
父は首を横に振る。
「そうね」
だけど、ここで、何もしない訳にはいかない。
あのベッドに横たわる女の子を見て、思い出す。かわいい従姉妹の子。重なる、あの子と。
何か出来るなら、何かせんといかん。何とかせんといかん。
私は、何かに迫られるような気がした。何とかせんといかん。
全ての事は偶然と必然。すべての事には意味がある。すべては行動の結果なのだよ。
始祖神様の声が響く。
1人で出来ることは限られているけど、集まればなんとかの知恵だ。
私達には色々なスキルがある。
そう、始祖神様から頂いたスキルが。
このまま見ているだけなんて、絶対に嫌だ。神様の言葉ではないが、必然と偶然。そうだ、頂いたスキルで出来る限りのことをする時だ。
「パーカーさん、足掻きましょう」
「は?」
「足掻きましょう。最後まで足掻きましょう」
「ミズサワさん、何を仰っているんですか?」
分からない顔のパーカーさん。
「私達も出来る限りのお手伝いしますから。お父さん」
「ん」
私は父にアイコンタクト。
「お母さんと出番よ。抗生剤と解熱剤ば」
「ん」
父は理解してくれた。そう、ディレナスで抗生剤を作った。あの時は父の鑑定と、母の生活魔法で作り上げた。あれだけ弱ったダイアナちゃんの体でも、大丈夫な抗生剤と解熱剤。向こうなら点滴とかあるし、抗生剤だってたくさんあるけど、ここにはない。なら、経口から行くしかない。なんとか、少しでも改善させて、抗生剤が出来るまでに繋げないと。
どうしよう、小児の経験が私にはない。学生時代の実習くらいしかない。だけど、そんな事を言っている場合ではない。
「ロッシュさん、シュタインさん、父を薬膳屋に連れていってください」
「ミズサワさん、どうするつもりです?」
「これから説明しますから。お父さん、急いで」
「ん」
父がロッシュさんと出ていく。シュタインさんは残ってくれた。
「パーカーさん、いいですか?」
よく分からない表情のパーカーさん一家。
「まず、父は鑑定のスキルが高いのでダイアナちゃんに合った薬の配合を模索します。そしてそれを処理出来るのは母だけです。私達はその間を繋ぎましょう」
「繋ぐ? どうやって? これ以上祈れと?」
フィナさんが悲鳴のような声を上げる。
「いいえ、祈って助かるなら、誰も病死なんかしませんよ。だから、私達は行動するんです。まず、ダイアナちゃんが口に出来そうな物を準備します。準備するまでの間、皆さんで交代で休憩です。いいですね? 一旦休憩です。長丁場になりますよ。特にフィナさんが倒れたら、ダイアナちゃんが目を覚ました時に不安になりますよ。一旦休憩です。さあ、フィナさんを先に休ませて、交代でダイアナちゃんについてください」
「…………ミズサワさん」
指示を出す私に、フィナさんは涙で濡れた顔を上げる。
「ローナも、弱りきって死んでいきました。ダイアナもそうなりますか?」
確か、半成人前に亡くなった娘さんのことだろうけど。パーカーさんは言っていた、ダイアナちゃんは宝物だと。半成人を迎えられなかった上の娘さんにしてあげられなかったことを、出来る限りしてあげたいと。布を手にしていたあの時のパーカーさんとジョシュアさんの嬉しそうな顔が今でも浮かぶ。今はその面影は欠片もないほど、絶望している。
「フィナさん、まだ、諦めたくないですよね? ダイアナちゃんは宝物ですよね? だから、精一杯足掻きましょう。神様から頂いたスキルを最大限に使って、神様の元に行かないように。すべてに意味があるんですよ。私達がこのタイミングで、ダイアナちゃんの事を聞いたのも、意味があるはずです」
私は言葉を切る。
「私は一旦パーティーハウスに戻って、ダイアナちゃんが口に出来そうなものを持ってきます。必ず戻ります。それまでには、フィナさんは横になってください。いいですね」
戻る前に、神への祈りをしてみたが、発動しなかった。どうしてか分からないけど、もしかしたら、私達で対応しないといけないことかもしれない、と思って割りきった。手持ちのスポーツドリンクを渡し、パーティーハウスに急いで戻った。
あなたにおすすめの小説
「三番以下を取りなさい」と五年言われ続けたので、公開試験で本気を出しました
歩人
ファンタジー
王立魔法学院、入学時首席のリュシエンヌは、婚約者レイナルト公爵令息から五年間「女は三番以下を取れ」と命じられてきた。学院の序列は国家序列の縮図。レイナルトは常に一位に居続けた。婚約披露を控えた十九歳の春、レイナルトが新しい婚約者を連れて告げる。「お前では並び立てぬ。学力も身分も、足りなすぎる」——リュシエンヌは微笑んで、その翌日の年次公開試験で、五年封じてきた本気を出した。国王臨席の場で、史上最高点。魔法局長官が教授陣に命じる。「過去五年間の彼女の実測点と、もし本気で受けていたら出せた推計点を、公表したまえ」。教授陣は震える手で数字を並べた。レイナルトの「首席」は、全て彼女が譲った場所だった。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
夫の不倫相手に「妻の座を譲れ」と言われたので、譲る代わりに全部置いていきます 〜行き先は老舗旅館。追いかけてきても、もう遅いです〜
なつめ
恋愛
夫の愛人に「妻の座を譲れ」と言い渡された主人公は、怒鳴り返すこともしがみつくこともせず、ただ静かに頷いた。
家のこと、食事のこと、社交のこと、義実家のこと、会社の裏方のこと。 誰も価値を知らなかった“妻の座”の中身を、そっくりそのまま置いて家を出る。
向かった先は、かつて傷ついた自分を受け入れてくれた老舗旅館。 再建に奔走する若旦那とともに働く中で、主人公は初めて「役に立つから愛される」のではなく、「あなた自身がいてほしい」と言われる温かさを知っていく。
一方、主人公を軽んじた元夫の家では、生活も体裁も仕事もじわじわと崩壊を始める。 これは、何も持たずに出ていったはずの女が、自分の人生を取り戻し、最後には新しい恋と居場所を手に入れる再生の物語。
見た目の良すぎる双子の兄を持った妹は、引きこもっている理由を不細工だからと勘違いされていましたが、身内にも誤解されていたようです
珠宮さくら
恋愛
ルベロン国の第1王女として生まれたシャルレーヌは、引きこもっていた。
その理由は、見目の良い両親と双子の兄に劣るどころか。他の腹違いの弟妹たちより、不細工な顔をしているからだと噂されていたが、実際のところは全然違っていたのだが、そんな片割れを心配して、外に出そうとした兄は自分を頼ると思っていた。
それが、全く頼らないことになるどころか。自分の方が残念になってしまう結末になるとは思っていなかった。
夫が私にそっくりな下の娘ばかりをかわいがるのですけど!
山科ひさき
恋愛
「子供達をお願い」 そう言い残して、私はこの世を去った。愛する夫が子供達に私の分も愛情を注いでくれると信じていたから、不安はなかった。けれど死後の世界から見ている夫は下の娘ばかりをかわいがり、上の娘をないがしろにしている。許せない。そんな時、私に不思議な声が呼びかけてきて……。
「お前の泥だらけの手で触るな、気持ち悪い」と追放された令嬢——王宮の食器が一枚も焼けなくなった
歩人
ファンタジー
「お前の泥だらけの手で触るな、気持ち悪い」——王宮御用達の食器を焼く伯爵令嬢エルザは、婚約者の第二王子に手の荒れを嗤われて追放された。十二歳から十年間、王宮の全ての食器を手ずから焼いてきた。彼女の食器は特殊な土と焼成技術で魔力を通し、毒に触れると色が変わる。料理の温度も保つ。追放から三ヶ月後、晩餐会で新しい食器を使ったところ、毒が検知されず隣国の大使が倒れた。外交問題に発展する中、第二王子が「食器くらい誰でも焼ける」と窯に立った結果、出来上がったのは歪んだ灰色の皿だった。
元の世界に帰らせていただきます!
にゃみ3
恋愛
淡い夢物語のように、望む全てが叶うとは限らない。
そう分かっていたとしても、私は敵ばかりの世界で妬まれ、嫌われ、疎まれることに、耐えられなかったの。
「ごめんね、バイバイ……」
限界なので、元いた世界に帰らせていただきます。
・・・
数話で完結します、ハピエン!
「貧相な小娘」と罵った第一王子へ。番(つがい)は貴方ではなく、国王陛下(お父様)でした
しえろ あい
恋愛
「お父様、わたくし、あの方と目が合った瞬間、分かってしまったのです」
十六歳のデビュタントの夜、ルーセント侯爵令嬢フェリシアを待っていたのは、残酷な罵倒だった。第一王子カシウスは、可憐な白いドレスを纏った彼女を「貧相な小娘」と呼び、己の番(つがい)であることを真っ向から否定する。
会場に響く冷笑と、愛用の刺繍に込めた自信さえ打ち砕くような屈辱。しかし、絶望の淵に立たされた彼女を見つめていたのは、王子ではなく、圧倒的な威厳を放つ「ある男」だった。
魂を焦がすような熱い視線が重なり、静まり返る謁見の間。この出会いが、王室を揺るがす大事件の幕開けになるとは、まだ誰も知らない。自身の価値を否定された少女が、真実の愛によって世界で最も幸福な王妃へと駆け上がる、逆転溺愛ストーリー。
※小説家になろう様にも投稿しています※