53 / 876
連載
すべきこと②
パーティーハウスに戻り、母に事情説明。
母はすぐに納得してくれた。
「お母さん大変やけど、抗生剤と解熱剤を作るのには、お母さんの魔法が必要なんよ」
「そうね、分かった」
「姉ちゃん、わい、なんばすればいい?」
「そうやね。あ、記録お願いね」
「ん」
よし、ルームを開けて、異世界への扉を開ける。
ディレックスだ。
カゴ片手に回る。
さて、どうしよう。
こんな時はどうしたらいい?
のど越しのいいゼリーかな? 冷たいのは、うーん、いや、そう言ってはいられない。とりあえず、口に出来そうな物を思いつく限りカゴに入れる。
まずは子供用の内服ゼリー。それからパックに入った栄養ゼリー、プリン。かなり迷ったけどアイスクリームにシャーベット。一口くらいなら、いいかな? とりあえず、カゴに入れる。念のためスープのもとも入れる。最後に額に貼る冷却材だ。怪しまれるかもしれないけど、誤魔化そう。
ビニール袋を下げて出る。買ったゼリー等を器に移しアイテムボックスに入れる。準備したはいいが、ダイアナちゃんが起きてくれないと話にならない。無理に起こすのはかわいそうだが、どうしたものか。
無理に起こして嫌がられたら、それこそもともこもない。どうしよう?
悩みながらルームを出る。
「お父さんは?」
「まだたい」
「なら、私一旦パーカーさんとこに行って来るけん」
ビアンカには残ってもらい、私はルージュとパーティーハウスを出る。もし遅くなったら灯りを出してもらわないといけないし。そろそろロッシュさん達も帰る時間だ。
「俺達は大丈夫ですよ」
そうシュタインさんは言ってくれたけど、そこまで甘えられないが、付いてきてくれた。
『ねえ、ユイ、どうしてそこまでするの? あの子供の雌、かなり弱ってるわよ』
歩きながらルージュが聞いてきた。
「そやねえ、自己満足とか、偽善とかかな? なんかね、せんといかんって思うんよ。上手く説明出来んけどね」
『よく分からないわ、何かいいことあるの?』
「そうね。そうや、ねえルージュ、ルージュにお乳をくれて育ててくれたお母さん。ルージュが大人になってから、あれが欲しいとか、これしてとか言ってきた?」
『いいえ、ないわ』
「それと一緒たい」
ルージュが首を傾げる。
「何か返して欲しいわけやないと。ダイアナちゃんにね、よくなって欲しいだけよ」
ただ、それだけ。
ルージュは目を細める。
『そう。なら、いいわ。私はユイの従魔だから、従うだけよ』
「頼りにしてるけんね。でも、私はルージュやビアンカを従えている気はないけんね。家族やけんね」
『ふふふ、分かっているわ』
ルージュが頭をすり寄せてきた。私は腕を抱き寄せるように回した。
パーカーさんの家に到着。ルージュに外で待ってもらう。
「ミズサワさん」
ジョシュアさんが出てきた。
「フィナさんは?」
「母は今休んでます。父は店に戻りました。パトリックがいまダイアナについてます」
「そうですか」
子供部屋を覗くと、パトリックさんがベッド横の椅子に腰かけて、ダイアナちゃんをじっと見ている。
「失礼します」
ドアを小さくノックする。
顔を上げるパトリックさん。
「ダイアナちゃん、目を覚ましました?」
「いいえ」
疲労の滲んだ顔で、パトリックさんは首を振る。
私はアイテムボックスから色々出す。ゼリーに冷却材。
「これは何です?」
ジョシュアさんが額に貼る冷却材を見て聞いてくる。
「おでこに貼るんですよ。冷たくて気持ちいいですよ。どうぞ、貼ってみてください」
1枚渡す。パトリックさんが貼ってみて驚いている。
「冷たいけど、気持ちいい」
では、1枚ダイアナちゃんのおでこにぺたり。
さと、これからどうしよう?
悩んでいると、パトリックさんが声を上げる。
「ダイアナッ、ダイアナッ」
え、目が覚めた? あ、冷却材で目が覚めたかな?
ダイアナちゃんはぼんやりしたような顔で、私達を見ている。
「ダイアナちゃん、分かる?」
「…………だれ?」
掠れた声のダイアナちゃん。パトリックさんが慌てて出ていく。
「ミズサワよ。お父さんから聞いてない? 大きなウルフとジャガーのテイマーよ」
私の言葉に思い出したのか、ダイアナちゃんはキョロキョロ。
「どこ?」
「外で待ってもらってるよ」
「いないの?」
「いるよ。会ってみたい?」
なんとなく聞いたけど、ダイアナちゃんの目が少し輝く。あ、いい感じかな。
「うん」
興味を引くことができたけど、どうしよう? 流石に家に入れるわけにはなあ。ちょっと狭いし。うーん、うーん、どうしよう? 病人の部屋に動物は、うーん、でも、期待に満ちた目に見上げられて、少しなら良かろうと思う。少しだけ。
後はどうやって会わせよう。いやまず、ご家族の許可を。
あ、そういえば、ここ1階だ。庭に面した窓がある。
「ジョシュアさん、お庭にルージュを入れてもいいですか?」
「え、ええ、いいですが」
ジョシュアさんが迷うが、ダイアナちゃんからじっと見上げられて、答えてくれる。
「はい、大丈夫です。誘導してきますね」
「お願いします。さて、ダイアナちゃん、ゼリー持ってきたけど食べれるかな?」
ダイアナちゃんは小さく首を横に振る。うーん、どうしよう?
「ああ、ダイアナッ、ダイアナッ」
フィナさんが子供部屋に駆け込んで来た。
震える手でダイアナちゃんの頭を撫でるフィナさん。
そんなフィナさんを見て、なんて、声をかけよう。多分、亡くなったローナちゃんとダイアナちゃんが被って見えるんだろうけど。子供が先に逝く、私には想像できない苦しみを抱えているのだろう。
私は、なんて、声を掛けたら、いい?
ゼリーの器を持ち、突っ立ったままで悩む。
「あのミズサワさん、ダイアナのおでこのは?」
「冷却材ですよ。冷たくて気持ちいいんです」
迷っているとフィナさんが聞いてきたので説明していると、窓から、ぬっとルージュが顔を出す。
ひい、とフィナさんが引く。大丈夫ですよと、声をかける。
『ユイ、どうしたの?』
「ちょっとね、ダイアナちゃん、クリムゾンジャガーのルージュよ。綺麗な目でしょう?」
『毛並みも自慢なのよ』
「はいはい」
ダイアナちゃんの顔を見ると、興味津々な様子だ。
「触ってみる?」
「うん」
「ルージュ、ちょっと寄って」
首を伸ばすルージュ。
「ほら、触ってみて、すべすべよ」
ゼリー片手に撫でると、ダイアナちゃんはおずおずと手を伸ばす。鼻先にちょっと触れている。
「すべすべだあ」
「でしょう?」
ルージュは大人しく撫でられていたが、急に私の持つゼリーの器に顔を寄せる。
「あらあら、ダイアナちゃん、食べないとルージュが食べちゃうよ」
そう言うと、ダイアナちゃんは何故か抵抗なく頷く。
良かった、食べる気になってくれた。
フィナさんが驚いた表情になっている。何日も口にしていない、フィナさん達も試行錯誤したはずなのに、あっさりダイアナちゃんが頷いたのに、驚いているのだろう。
「ちょっと起きようか。フィナさん、支えてください」
「は、はい」
ダイアナちゃんをフィナさんが支えて、私はゼリーを少しずつスプーンで口に運ぶ。
ぱくん、こくん、ぱくん、こくん。
喉とか大丈夫かな?
「もういい」
「はい、よく食べました。じゃあ、もうちょっと寝よっか」
「うん。ウルフは?」
「明日、連れてくるからね」
ダイアナちゃんを横たえて、布団を掛けなおす。
眠ったのを確認しフィナさんが、わなわな泣き出す。
「ああ、ミズサワさん、ありがとうございます。ダイアナが食べました。食べました」
「フィナさん、これからですよ」
第一段階かな。
母はすぐに納得してくれた。
「お母さん大変やけど、抗生剤と解熱剤を作るのには、お母さんの魔法が必要なんよ」
「そうね、分かった」
「姉ちゃん、わい、なんばすればいい?」
「そうやね。あ、記録お願いね」
「ん」
よし、ルームを開けて、異世界への扉を開ける。
ディレックスだ。
カゴ片手に回る。
さて、どうしよう。
こんな時はどうしたらいい?
のど越しのいいゼリーかな? 冷たいのは、うーん、いや、そう言ってはいられない。とりあえず、口に出来そうな物を思いつく限りカゴに入れる。
まずは子供用の内服ゼリー。それからパックに入った栄養ゼリー、プリン。かなり迷ったけどアイスクリームにシャーベット。一口くらいなら、いいかな? とりあえず、カゴに入れる。念のためスープのもとも入れる。最後に額に貼る冷却材だ。怪しまれるかもしれないけど、誤魔化そう。
ビニール袋を下げて出る。買ったゼリー等を器に移しアイテムボックスに入れる。準備したはいいが、ダイアナちゃんが起きてくれないと話にならない。無理に起こすのはかわいそうだが、どうしたものか。
無理に起こして嫌がられたら、それこそもともこもない。どうしよう?
悩みながらルームを出る。
「お父さんは?」
「まだたい」
「なら、私一旦パーカーさんとこに行って来るけん」
ビアンカには残ってもらい、私はルージュとパーティーハウスを出る。もし遅くなったら灯りを出してもらわないといけないし。そろそろロッシュさん達も帰る時間だ。
「俺達は大丈夫ですよ」
そうシュタインさんは言ってくれたけど、そこまで甘えられないが、付いてきてくれた。
『ねえ、ユイ、どうしてそこまでするの? あの子供の雌、かなり弱ってるわよ』
歩きながらルージュが聞いてきた。
「そやねえ、自己満足とか、偽善とかかな? なんかね、せんといかんって思うんよ。上手く説明出来んけどね」
『よく分からないわ、何かいいことあるの?』
「そうね。そうや、ねえルージュ、ルージュにお乳をくれて育ててくれたお母さん。ルージュが大人になってから、あれが欲しいとか、これしてとか言ってきた?」
『いいえ、ないわ』
「それと一緒たい」
ルージュが首を傾げる。
「何か返して欲しいわけやないと。ダイアナちゃんにね、よくなって欲しいだけよ」
ただ、それだけ。
ルージュは目を細める。
『そう。なら、いいわ。私はユイの従魔だから、従うだけよ』
「頼りにしてるけんね。でも、私はルージュやビアンカを従えている気はないけんね。家族やけんね」
『ふふふ、分かっているわ』
ルージュが頭をすり寄せてきた。私は腕を抱き寄せるように回した。
パーカーさんの家に到着。ルージュに外で待ってもらう。
「ミズサワさん」
ジョシュアさんが出てきた。
「フィナさんは?」
「母は今休んでます。父は店に戻りました。パトリックがいまダイアナについてます」
「そうですか」
子供部屋を覗くと、パトリックさんがベッド横の椅子に腰かけて、ダイアナちゃんをじっと見ている。
「失礼します」
ドアを小さくノックする。
顔を上げるパトリックさん。
「ダイアナちゃん、目を覚ましました?」
「いいえ」
疲労の滲んだ顔で、パトリックさんは首を振る。
私はアイテムボックスから色々出す。ゼリーに冷却材。
「これは何です?」
ジョシュアさんが額に貼る冷却材を見て聞いてくる。
「おでこに貼るんですよ。冷たくて気持ちいいですよ。どうぞ、貼ってみてください」
1枚渡す。パトリックさんが貼ってみて驚いている。
「冷たいけど、気持ちいい」
では、1枚ダイアナちゃんのおでこにぺたり。
さと、これからどうしよう?
悩んでいると、パトリックさんが声を上げる。
「ダイアナッ、ダイアナッ」
え、目が覚めた? あ、冷却材で目が覚めたかな?
ダイアナちゃんはぼんやりしたような顔で、私達を見ている。
「ダイアナちゃん、分かる?」
「…………だれ?」
掠れた声のダイアナちゃん。パトリックさんが慌てて出ていく。
「ミズサワよ。お父さんから聞いてない? 大きなウルフとジャガーのテイマーよ」
私の言葉に思い出したのか、ダイアナちゃんはキョロキョロ。
「どこ?」
「外で待ってもらってるよ」
「いないの?」
「いるよ。会ってみたい?」
なんとなく聞いたけど、ダイアナちゃんの目が少し輝く。あ、いい感じかな。
「うん」
興味を引くことができたけど、どうしよう? 流石に家に入れるわけにはなあ。ちょっと狭いし。うーん、うーん、どうしよう? 病人の部屋に動物は、うーん、でも、期待に満ちた目に見上げられて、少しなら良かろうと思う。少しだけ。
後はどうやって会わせよう。いやまず、ご家族の許可を。
あ、そういえば、ここ1階だ。庭に面した窓がある。
「ジョシュアさん、お庭にルージュを入れてもいいですか?」
「え、ええ、いいですが」
ジョシュアさんが迷うが、ダイアナちゃんからじっと見上げられて、答えてくれる。
「はい、大丈夫です。誘導してきますね」
「お願いします。さて、ダイアナちゃん、ゼリー持ってきたけど食べれるかな?」
ダイアナちゃんは小さく首を横に振る。うーん、どうしよう?
「ああ、ダイアナッ、ダイアナッ」
フィナさんが子供部屋に駆け込んで来た。
震える手でダイアナちゃんの頭を撫でるフィナさん。
そんなフィナさんを見て、なんて、声をかけよう。多分、亡くなったローナちゃんとダイアナちゃんが被って見えるんだろうけど。子供が先に逝く、私には想像できない苦しみを抱えているのだろう。
私は、なんて、声を掛けたら、いい?
ゼリーの器を持ち、突っ立ったままで悩む。
「あのミズサワさん、ダイアナのおでこのは?」
「冷却材ですよ。冷たくて気持ちいいんです」
迷っているとフィナさんが聞いてきたので説明していると、窓から、ぬっとルージュが顔を出す。
ひい、とフィナさんが引く。大丈夫ですよと、声をかける。
『ユイ、どうしたの?』
「ちょっとね、ダイアナちゃん、クリムゾンジャガーのルージュよ。綺麗な目でしょう?」
『毛並みも自慢なのよ』
「はいはい」
ダイアナちゃんの顔を見ると、興味津々な様子だ。
「触ってみる?」
「うん」
「ルージュ、ちょっと寄って」
首を伸ばすルージュ。
「ほら、触ってみて、すべすべよ」
ゼリー片手に撫でると、ダイアナちゃんはおずおずと手を伸ばす。鼻先にちょっと触れている。
「すべすべだあ」
「でしょう?」
ルージュは大人しく撫でられていたが、急に私の持つゼリーの器に顔を寄せる。
「あらあら、ダイアナちゃん、食べないとルージュが食べちゃうよ」
そう言うと、ダイアナちゃんは何故か抵抗なく頷く。
良かった、食べる気になってくれた。
フィナさんが驚いた表情になっている。何日も口にしていない、フィナさん達も試行錯誤したはずなのに、あっさりダイアナちゃんが頷いたのに、驚いているのだろう。
「ちょっと起きようか。フィナさん、支えてください」
「は、はい」
ダイアナちゃんをフィナさんが支えて、私はゼリーを少しずつスプーンで口に運ぶ。
ぱくん、こくん、ぱくん、こくん。
喉とか大丈夫かな?
「もういい」
「はい、よく食べました。じゃあ、もうちょっと寝よっか」
「うん。ウルフは?」
「明日、連れてくるからね」
ダイアナちゃんを横たえて、布団を掛けなおす。
眠ったのを確認しフィナさんが、わなわな泣き出す。
「ああ、ミズサワさん、ありがとうございます。ダイアナが食べました。食べました」
「フィナさん、これからですよ」
第一段階かな。
あなたにおすすめの小説
「三番以下を取りなさい」と五年言われ続けたので、公開試験で本気を出しました
歩人
ファンタジー
王立魔法学院、入学時首席のリュシエンヌは、婚約者レイナルト公爵令息から五年間「女は三番以下を取れ」と命じられてきた。学院の序列は国家序列の縮図。レイナルトは常に一位に居続けた。婚約披露を控えた十九歳の春、レイナルトが新しい婚約者を連れて告げる。「お前では並び立てぬ。学力も身分も、足りなすぎる」——リュシエンヌは微笑んで、その翌日の年次公開試験で、五年封じてきた本気を出した。国王臨席の場で、史上最高点。魔法局長官が教授陣に命じる。「過去五年間の彼女の実測点と、もし本気で受けていたら出せた推計点を、公表したまえ」。教授陣は震える手で数字を並べた。レイナルトの「首席」は、全て彼女が譲った場所だった。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
夫の不倫相手に「妻の座を譲れ」と言われたので、譲る代わりに全部置いていきます 〜行き先は老舗旅館。追いかけてきても、もう遅いです〜
なつめ
恋愛
夫の愛人に「妻の座を譲れ」と言い渡された主人公は、怒鳴り返すこともしがみつくこともせず、ただ静かに頷いた。
家のこと、食事のこと、社交のこと、義実家のこと、会社の裏方のこと。 誰も価値を知らなかった“妻の座”の中身を、そっくりそのまま置いて家を出る。
向かった先は、かつて傷ついた自分を受け入れてくれた老舗旅館。 再建に奔走する若旦那とともに働く中で、主人公は初めて「役に立つから愛される」のではなく、「あなた自身がいてほしい」と言われる温かさを知っていく。
一方、主人公を軽んじた元夫の家では、生活も体裁も仕事もじわじわと崩壊を始める。 これは、何も持たずに出ていったはずの女が、自分の人生を取り戻し、最後には新しい恋と居場所を手に入れる再生の物語。
見た目の良すぎる双子の兄を持った妹は、引きこもっている理由を不細工だからと勘違いされていましたが、身内にも誤解されていたようです
珠宮さくら
恋愛
ルベロン国の第1王女として生まれたシャルレーヌは、引きこもっていた。
その理由は、見目の良い両親と双子の兄に劣るどころか。他の腹違いの弟妹たちより、不細工な顔をしているからだと噂されていたが、実際のところは全然違っていたのだが、そんな片割れを心配して、外に出そうとした兄は自分を頼ると思っていた。
それが、全く頼らないことになるどころか。自分の方が残念になってしまう結末になるとは思っていなかった。
夫が私にそっくりな下の娘ばかりをかわいがるのですけど!
山科ひさき
恋愛
「子供達をお願い」 そう言い残して、私はこの世を去った。愛する夫が子供達に私の分も愛情を注いでくれると信じていたから、不安はなかった。けれど死後の世界から見ている夫は下の娘ばかりをかわいがり、上の娘をないがしろにしている。許せない。そんな時、私に不思議な声が呼びかけてきて……。
「お前の泥だらけの手で触るな、気持ち悪い」と追放された令嬢——王宮の食器が一枚も焼けなくなった
歩人
ファンタジー
「お前の泥だらけの手で触るな、気持ち悪い」——王宮御用達の食器を焼く伯爵令嬢エルザは、婚約者の第二王子に手の荒れを嗤われて追放された。十二歳から十年間、王宮の全ての食器を手ずから焼いてきた。彼女の食器は特殊な土と焼成技術で魔力を通し、毒に触れると色が変わる。料理の温度も保つ。追放から三ヶ月後、晩餐会で新しい食器を使ったところ、毒が検知されず隣国の大使が倒れた。外交問題に発展する中、第二王子が「食器くらい誰でも焼ける」と窯に立った結果、出来上がったのは歪んだ灰色の皿だった。
元の世界に帰らせていただきます!
にゃみ3
恋愛
淡い夢物語のように、望む全てが叶うとは限らない。
そう分かっていたとしても、私は敵ばかりの世界で妬まれ、嫌われ、疎まれることに、耐えられなかったの。
「ごめんね、バイバイ……」
限界なので、元いた世界に帰らせていただきます。
・・・
数話で完結します、ハピエン!
「貧相な小娘」と罵った第一王子へ。番(つがい)は貴方ではなく、国王陛下(お父様)でした
しえろ あい
恋愛
「お父様、わたくし、あの方と目が合った瞬間、分かってしまったのです」
十六歳のデビュタントの夜、ルーセント侯爵令嬢フェリシアを待っていたのは、残酷な罵倒だった。第一王子カシウスは、可憐な白いドレスを纏った彼女を「貧相な小娘」と呼び、己の番(つがい)であることを真っ向から否定する。
会場に響く冷笑と、愛用の刺繍に込めた自信さえ打ち砕くような屈辱。しかし、絶望の淵に立たされた彼女を見つめていたのは、王子ではなく、圧倒的な威厳を放つ「ある男」だった。
魂を焦がすような熱い視線が重なり、静まり返る謁見の間。この出会いが、王室を揺るがす大事件の幕開けになるとは、まだ誰も知らない。自身の価値を否定された少女が、真実の愛によって世界で最も幸福な王妃へと駆け上がる、逆転溺愛ストーリー。
※小説家になろう様にも投稿しています※