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連載
乗り越えよう⑤
戦闘しています、ご注意ください。
朝、ロッシュさんが付き添い父がファベルさんの工房に向かう。
私達は、元気達がしっかり覚醒してから、冷蔵庫ダンジョンに。母のお弁当オッケー。シュタインさんとハジェル君が、付き添ってくれる。
冷蔵庫ダンジョンの警備の人が、魔方陣のある小屋のドアを、さっと開けてくれたけど、すみません、本日は1階予定なんです。
へこへこしながら、冷蔵庫ダンジョンの扉に。何回も来たけど、正面玄関から入るの初めて。大きな鉄製で、ビアンカとルージュが並んで入っても、余裕がある。
ものすごい変な目で見られたけど、通してもらえる。
「ユイさん、1階なら俺達も付き合いますよ」
そう言ってくれたが、そこまで甘えられない。
シュタインさん達のご厚意は嬉しいが、帰ってもらった。
中は、原っぱだ。
子供や主婦らしき人が、あちこちでハーブを摘んでいる。
ものすごい視線が来るなか、
「あ、テイマーの姉ちゃんだあ」
と、弾んだ声。
あ、孤児院の子達だ。元気が飛びかかりそうになり、ビアンカがリードを押さえる。
わー、と私達の周りに子供達が集まる。
「どうしたのー?」
「なんでいるのー?」
「ハーブ採りに来たのー?」
質問攻め。
「スライムのコアが欲しくてね。ボス部屋はどこか知っとる?」
「知ってるよ」
私が聞くと、皆上機嫌で案内してくれる。
ボス部屋の前には冒険者パーティーが、何組か待っている。
皆さん一様にぎょっとした顔だ。
子供達は一通り、ビアンカとルージュをもふもふして、ハーブ摘みに戻る。
最後尾に並ぶと、タイミングよくボス部屋が空く。
「あの、空きましたよ」
すぐ前の冒険者さんが、言ってくれる。
「私達、スライムのコアが欲しくて」
「ああ、そうですか」
ほとんどのチームが素通りしてボス部屋を抜ける。
1階のボス部屋は復活に30分ほど、ただし、中に誰かいると30分越しても復活しないため、速やかに退出しなくてはならない。これ、どのダンジョンでもマナーだそうです。
元気達を素通りしていく冒険者さん達がかわいい、言ってくれる、鼻が高い。ビアンカとルージュとは、目を合わせないようにしている。
しばらくして、ボス部屋の前に到着。扉も閉まり、復活の合図だ。
さて、私が開けましょう。
『私が開けるのです』
「ちょっと、ビアンカ待ってん」
止める間もなく、ビアンカの前肢が扉を押し開ける。
嫌な予感。
『さあ、元気、好きなだけ走り回っていいのです』
「わんっ」
『コハクもいいわよ』
「にぁあっ」
「ちょっと待ってんっ」
放たれたビー玉みたいに、元気とコハクがボス部屋に。
いくら上位魔物でも、生後3ヶ月の赤ちゃんだってば。
慌てて、私と晃太がボス部屋に。
「ぎあぁぁぁぁぁっ」
「うわあぁぁぁぁっ」
目の前には、スライム、スライム、スライム。スライム、スライム、スライム。ゼリーみたいな球体が、壁に天井に床にびっしり張り付いてる。
スライムって、その、かわいいイメージあるけど、なんか蠢く姿、不気味やねん。トラウマになりそうやっ。いやいや、確か、シュタインさん10匹言ってなかった? え、10どころやないし、100とかでもないよ。それ以上、一杯おるやんっ。
ぱたん。
え?
振り返ると、扉が閉まっている。
『まずまずスライムがいるのです』
『そうね』
「ちょっとお二人さん、何とかしてんっ、ギャーッ」
ぺた、と頭に張り付く水風船サイズスライムを、私は手ではたき落とす。すると、ぺしゃと潰れるスライム。わあ、簡単に倒せた。
「姉ちゃん、頑張ってんっ」
いつの間にかビアンカとルージュの側に避難している晃太が、エールを送る。
「張り倒すよあんたっ、ギャーッ」
わらわら来る様々なサイズのスライム。ひーっ、気色悪いっ。
『ユイ、落ち着くのです』
『そうよ。スライムなのよ。息を吹き掛けても倒せるわ』
「四捨五入したらレベル500が何ば言いようとッ」
多分、ビアンカとルージュの息って、あれやない、火炎放射器みたいなブレス並みの威力じゃないん?
「ギャーッ、元気ーッ、ギャーッ、コハクーッ」
最初に飛び込んだ元気とコハクの姿が見えない。まさか、とは思うけど。ただ、張り付いてくるスライムをはたき落とすので、いっぱいいっぱい。
「姉ちゃん、おったばいッ」
晃太は足でぶちぶちとスライムを踏みつけながら指差す。
「わんわんっ」
「みぁーっ、みぁーっ」
スライム、プチプチ潰しながら弾けるように駆ける2匹。
あの2人が踏み潰せるならと、私は思いきって、近づいて来たスライムを蹴ってみた。サッカーボールサイズのスライムは、きれいに飛んで、別のスライムを巻き込んで消える。よ、弱い。スライムって、こんななの?
『ほら、こうして、爪を立てるのです』
『そうそう、腕をこう払うのよ。ヒスイ、やってみたいの? 大丈夫よ、私が見てるわ』
ビアンカとルージュによる、ルリ、クリス、ヒスイに指導が入る。ビアンカが簡単にスライムを押し潰し、ルージュが露も残さずスライムを一掃。2人が尻尾を払うだけで、それでもスライム潰れてますがな。
いや、あのね、まだね、皆、赤ちゃんやねん。
ルリとクリスとヒスイは今回見学やなかったん?
ルリとクリスはおっかなびっくりしながら、スライムに前肢をかけているが、なかなか潰れない。ころん、ころん、している。ヒスイに至ってはネコパンチ、いや、ベビージャガーパンチを放っているが当たらない。ころん、ころん、している。見てるだけなら微笑ましい、非常に微笑ましい、ぜひ、映像として残したいが。
わらわら寄って来るスライムに、私と晃太は四苦八苦。
ビアンカとルージュは数匹の小型スライムを倒さずに通し、それをルリとクリスとヒスイに相手にさせている。残りの近づこうとするスライムは、睨みを聞かせただけで、弾けてる。え? 念力? 視線でスライム、弾けてるよ。
どのくらいプチプチしたか。
てってれってー。
【レベル 37にアップしました】
【スキル ルーム レベル23にアップしました。HP3000追加されます】
久しぶりのてってれってー。
「姉ちゃんっ、スライムが集まりようばいっ」
「はいぃッ」
ぴょんぴょんとスライムが集まったと思ったら、一際大きなスライムになりよった。小さな王冠があるんですけど。
『あら、融合したのです』
『初めて見たわ』
呑気なレベル四捨五入500。
いやいやいや、あれ、やばくない?
王冠あるんやけど?
「わんわんっ」
「みぁーっ」
果敢に飛びかかる元気とコハク。
だけど、ぽよん、と弾かれて転がる元気とコハク。
弾かれてキョトン、としている2匹に、王冠スライムが、蠢くように近づく。
あ、元気とコハクがっ。
「晃太っ、アップばっ」
「りょ、了解、アップッ」
私は忘れていた武器用のフライパンをアイテムボックスから抜く。足先から、全身が暖かくなる。よくわからんけど、きっと王冠、弱点やない? 私は晃太の支援で、驚く程の跳躍力で飛び、フライパンを力一杯王冠を目掛けて振り下ろす。
王冠がへしゃげて、スライムの体を貫通。なんか、融合までして出てきてくれたけど、あっという間に王冠スライムが消える。
すまん、元気とコハクが大事なんよ。
てってれってー。
【レベル 38にアップしました】
朝、ロッシュさんが付き添い父がファベルさんの工房に向かう。
私達は、元気達がしっかり覚醒してから、冷蔵庫ダンジョンに。母のお弁当オッケー。シュタインさんとハジェル君が、付き添ってくれる。
冷蔵庫ダンジョンの警備の人が、魔方陣のある小屋のドアを、さっと開けてくれたけど、すみません、本日は1階予定なんです。
へこへこしながら、冷蔵庫ダンジョンの扉に。何回も来たけど、正面玄関から入るの初めて。大きな鉄製で、ビアンカとルージュが並んで入っても、余裕がある。
ものすごい変な目で見られたけど、通してもらえる。
「ユイさん、1階なら俺達も付き合いますよ」
そう言ってくれたが、そこまで甘えられない。
シュタインさん達のご厚意は嬉しいが、帰ってもらった。
中は、原っぱだ。
子供や主婦らしき人が、あちこちでハーブを摘んでいる。
ものすごい視線が来るなか、
「あ、テイマーの姉ちゃんだあ」
と、弾んだ声。
あ、孤児院の子達だ。元気が飛びかかりそうになり、ビアンカがリードを押さえる。
わー、と私達の周りに子供達が集まる。
「どうしたのー?」
「なんでいるのー?」
「ハーブ採りに来たのー?」
質問攻め。
「スライムのコアが欲しくてね。ボス部屋はどこか知っとる?」
「知ってるよ」
私が聞くと、皆上機嫌で案内してくれる。
ボス部屋の前には冒険者パーティーが、何組か待っている。
皆さん一様にぎょっとした顔だ。
子供達は一通り、ビアンカとルージュをもふもふして、ハーブ摘みに戻る。
最後尾に並ぶと、タイミングよくボス部屋が空く。
「あの、空きましたよ」
すぐ前の冒険者さんが、言ってくれる。
「私達、スライムのコアが欲しくて」
「ああ、そうですか」
ほとんどのチームが素通りしてボス部屋を抜ける。
1階のボス部屋は復活に30分ほど、ただし、中に誰かいると30分越しても復活しないため、速やかに退出しなくてはならない。これ、どのダンジョンでもマナーだそうです。
元気達を素通りしていく冒険者さん達がかわいい、言ってくれる、鼻が高い。ビアンカとルージュとは、目を合わせないようにしている。
しばらくして、ボス部屋の前に到着。扉も閉まり、復活の合図だ。
さて、私が開けましょう。
『私が開けるのです』
「ちょっと、ビアンカ待ってん」
止める間もなく、ビアンカの前肢が扉を押し開ける。
嫌な予感。
『さあ、元気、好きなだけ走り回っていいのです』
「わんっ」
『コハクもいいわよ』
「にぁあっ」
「ちょっと待ってんっ」
放たれたビー玉みたいに、元気とコハクがボス部屋に。
いくら上位魔物でも、生後3ヶ月の赤ちゃんだってば。
慌てて、私と晃太がボス部屋に。
「ぎあぁぁぁぁぁっ」
「うわあぁぁぁぁっ」
目の前には、スライム、スライム、スライム。スライム、スライム、スライム。ゼリーみたいな球体が、壁に天井に床にびっしり張り付いてる。
スライムって、その、かわいいイメージあるけど、なんか蠢く姿、不気味やねん。トラウマになりそうやっ。いやいや、確か、シュタインさん10匹言ってなかった? え、10どころやないし、100とかでもないよ。それ以上、一杯おるやんっ。
ぱたん。
え?
振り返ると、扉が閉まっている。
『まずまずスライムがいるのです』
『そうね』
「ちょっとお二人さん、何とかしてんっ、ギャーッ」
ぺた、と頭に張り付く水風船サイズスライムを、私は手ではたき落とす。すると、ぺしゃと潰れるスライム。わあ、簡単に倒せた。
「姉ちゃん、頑張ってんっ」
いつの間にかビアンカとルージュの側に避難している晃太が、エールを送る。
「張り倒すよあんたっ、ギャーッ」
わらわら来る様々なサイズのスライム。ひーっ、気色悪いっ。
『ユイ、落ち着くのです』
『そうよ。スライムなのよ。息を吹き掛けても倒せるわ』
「四捨五入したらレベル500が何ば言いようとッ」
多分、ビアンカとルージュの息って、あれやない、火炎放射器みたいなブレス並みの威力じゃないん?
「ギャーッ、元気ーッ、ギャーッ、コハクーッ」
最初に飛び込んだ元気とコハクの姿が見えない。まさか、とは思うけど。ただ、張り付いてくるスライムをはたき落とすので、いっぱいいっぱい。
「姉ちゃん、おったばいッ」
晃太は足でぶちぶちとスライムを踏みつけながら指差す。
「わんわんっ」
「みぁーっ、みぁーっ」
スライム、プチプチ潰しながら弾けるように駆ける2匹。
あの2人が踏み潰せるならと、私は思いきって、近づいて来たスライムを蹴ってみた。サッカーボールサイズのスライムは、きれいに飛んで、別のスライムを巻き込んで消える。よ、弱い。スライムって、こんななの?
『ほら、こうして、爪を立てるのです』
『そうそう、腕をこう払うのよ。ヒスイ、やってみたいの? 大丈夫よ、私が見てるわ』
ビアンカとルージュによる、ルリ、クリス、ヒスイに指導が入る。ビアンカが簡単にスライムを押し潰し、ルージュが露も残さずスライムを一掃。2人が尻尾を払うだけで、それでもスライム潰れてますがな。
いや、あのね、まだね、皆、赤ちゃんやねん。
ルリとクリスとヒスイは今回見学やなかったん?
ルリとクリスはおっかなびっくりしながら、スライムに前肢をかけているが、なかなか潰れない。ころん、ころん、している。ヒスイに至ってはネコパンチ、いや、ベビージャガーパンチを放っているが当たらない。ころん、ころん、している。見てるだけなら微笑ましい、非常に微笑ましい、ぜひ、映像として残したいが。
わらわら寄って来るスライムに、私と晃太は四苦八苦。
ビアンカとルージュは数匹の小型スライムを倒さずに通し、それをルリとクリスとヒスイに相手にさせている。残りの近づこうとするスライムは、睨みを聞かせただけで、弾けてる。え? 念力? 視線でスライム、弾けてるよ。
どのくらいプチプチしたか。
てってれってー。
【レベル 37にアップしました】
【スキル ルーム レベル23にアップしました。HP3000追加されます】
久しぶりのてってれってー。
「姉ちゃんっ、スライムが集まりようばいっ」
「はいぃッ」
ぴょんぴょんとスライムが集まったと思ったら、一際大きなスライムになりよった。小さな王冠があるんですけど。
『あら、融合したのです』
『初めて見たわ』
呑気なレベル四捨五入500。
いやいやいや、あれ、やばくない?
王冠あるんやけど?
「わんわんっ」
「みぁーっ」
果敢に飛びかかる元気とコハク。
だけど、ぽよん、と弾かれて転がる元気とコハク。
弾かれてキョトン、としている2匹に、王冠スライムが、蠢くように近づく。
あ、元気とコハクがっ。
「晃太っ、アップばっ」
「りょ、了解、アップッ」
私は忘れていた武器用のフライパンをアイテムボックスから抜く。足先から、全身が暖かくなる。よくわからんけど、きっと王冠、弱点やない? 私は晃太の支援で、驚く程の跳躍力で飛び、フライパンを力一杯王冠を目掛けて振り下ろす。
王冠がへしゃげて、スライムの体を貫通。なんか、融合までして出てきてくれたけど、あっという間に王冠スライムが消える。
すまん、元気とコハクが大事なんよ。
てってれってー。
【レベル 38にアップしました】
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※小説家になろう様にも投稿しています※