もふもふ大好き家族が聖女召喚に巻き込まれる~時空神様からの気まぐれギフト・スキル『ルーム』で家族と愛犬守ります~

鐘ケ江 しのぶ

文字の大きさ
106 / 876
連載

馬車の旅④

 馬車の旅は順調。
 時折すれ違う馬車の集団には、笑顔でご挨拶。
 小さな宿場もあったけど、素通りした。
 一週間過ぎて、中間地点の宿場街、ノータに到着した。
「姉ちゃんどうする? 素通りする?」
「そうやねえ。一つくらい街を経由した方が良かかね」
 既に昼過ぎだから、これから街を抜けるのは、怪しまれるかな。ここまであった宿場街も素通りしたし、体裁的にノータに寄ることに。
 アルブレンとスカイランの間にある、一番大きな宿場街ノータ。
 街をぐるりと壁で覆われているが、街の周りには田畑が広がる。雰囲気はのんびりした街だ。門の前で晃太と冒険者カードを提示。ビアンカとルージュには、門番さん達は引いていた。
 駆け出しそうな元気とコハクにリードを着ける。
「じゅ、従魔のトラブルは主人の責任となりますので、気を付けてください」
 対応してくれた門番さんは、ビアンカとルージュの迫力に、どもるどもる。
「はい」
 宿の案内所はギルドの横だと。
 私はビアンカとルージュの主人なので、街等で宿泊する場合、冒険者ギルドに一言かけないといけない。晃太だけなら報告義務ないんだけどね。ノワールの手綱を引きながら歩く。
 ざわざわ、されながら通りを歩く。
 ギルドは門をまっすぐ行くと到着する。アルブレンのギルドより、狭いが、中には結構な人がいる。全員で入るには、狭いかも。
「晃太、ちょっと行ってくるね。ここで待っといて」
「大丈夫な姉ちゃん。ビアンカかルージュと一緒に」
「大丈夫やろ。すぐに戻ってくるけん」
 ちゃ、と報告して、ちゃ、と戻ろう。
 入り口から報告窓口はすぐだ。
 ビアンカとルージュを連れていたら、逆に目立つしね。
 私は報告窓口に並ぶ。
 ギルドには、併設された食堂が賑やかだ。昼間から呑んでる。まあ、働いて、稼いだお金で飲む分なら構わないよね。
 程なく順番。
「どうされました?」
 中年の男性が事務的な笑顔で対応。
「明日にはノータを出ます。到着報告だけです」
 私は冒険者ギルドカードを提示。
「ああ、連絡は受けています。はい、確認しました。宿の案内所はギルドの右隣になります」
「ありがとうございます」
 さ、出よう。
 入り口に向かうと、若いウェイトレスさんが酔っ払いに絡まれている。
 う、どうしよう。
 迷った瞬間、若いウェイトレスさんは手首を掴まれる。
「痛いッ」
 悲鳴を上げた瞬間、私は思わず声を上げる。
「止めんねッ」
 私が声を上げると、周りの視線が一斉に集まる。
「ああぁッ」
 酔っ払いは3人。かなり酔っているようで、顔色が赤い。
「うるせいッ」
「冒険者もどきが、うぜえんだよッ」
 冒険者もどき。冒険者カードを身分証代わりに持つ人を、本職の冒険者の人が呼ぶ呼称だ。あまり、いい気分ではないが、私は本当に冒険者もどきだ。
 凄みを効かせてくる。う、まずかったかもしれない。だけど、引くわけにはいかない。若いウェイトレスさんは助けを求める顔だ。
「手ば離さんね」
 私が言うと、酔っ払い冒険者は口を開きかけて、形相が変わる。
  グルルルルルルッ
 私のすぐ後ろで唸り声が上がる。
 ルージュだ。
 いつの間にかギルド内に入って来て、私の後ろから、眉間に深いシワを寄せ、牙を剥き出しにして、唸り声をあげている。
 ちらり、と視線を走らせると、入り口でビアンカも眉間にシワを寄せ、背中の毛を立たせている。冒険者の皆さんが、一斉に避難。
 若いウェイトレスさんが手を振りほどき、私の側に。
「大丈夫ね?」
「はいっ、ありがとうございます」
 確認する間に、ルージュが上半身を低くしながら、酔っ払い冒険者との距離を一歩だけ詰める。酔っ払い冒険者3人は、腰を抜かしたように椅子からずりおちそうになっている。
「ルージュ、もうよかよ」
 唸り声がぴたり、と止む。
 いつものかわいかルージュに戻り、私に振り返る。
「ありがとうルージュ」
『ユイを守るのは当たり前よ』
 私はルージュと言う心強い味方を得て、ちらり、と酔っ払い冒険者を見る。
 ひー、と逃げ出す酔っ払い冒険者。
 何だかなあ。
 冒険者の人って、鷹の目や山風の皆さんのイメージが強くて、いい人達ばかりだと思っていたけどなあ。
 見送ると、その酔っ払い冒険者の前に、1人の男性が立ち塞がる。使い込まれたエプロンに、頭に手拭い。あ、シェフさんかな。手には、でかい、お玉。
「職員に手を出して、無銭飲食とは、いい度胸だなあ」
 うわあ、怖かあ。
 酔っ払い冒険者3人は、てきぱき連行されていく。
 酒は飲んでも飲まれるな、だねえ。
「ありがとうございました」
 若いウェイトレスさんは、もう一度お礼を丁寧に言ってきた。
 お玉を持った男性も、お礼を言ってきた。
 ルージュの迫力のお陰だからね。
「たいしたことしてませんから」
 私はそう言って、ルージュとギルドの外に。
 さささ、と人並みが、割れる。
 明らかに異様な物を見る目だ。これが嫌だったんだけどなあ。仕方なか。
「姉ちゃん、大丈夫な?」
「大丈夫よ。ビアンカもありがとう。さ、宿ば探そう」
 ノワールの手綱を引き、宿の案内所に。
「ノワールも大丈夫な宿があるとよかなあ」
「そうやね。晃太、手綱ば」
「ん」
 話していると、ふいに、ビアンカとルージュが顔を上げる。
『ユイ』
 ルージュが赤い目で、私に訴える。
「どうしたん?」
『オルクが、迫って来ているわ』
「オルク?」
『人型の魔物よ。ゴブリンより強く、知恵の魔物よ』
 オルクとは、緑のゴブリンより賢い上に集団戦できるほどの知恵がある。基本的には魔の森の中心を、生息圏としているそうだが、時折村や街を襲う。
 オルクは、幼い子供を食料にすると。
「え? 近いの?」
『まだ、少し距離はあるのです。やつらは、この壁の中まで来ないと思うのです』
「姉ちゃん」
 晃太が硬い声を出す。
「街の外の畑で、作業しよった人、おらんかったね?」
「そうや、おったね」
 私は頭から血の気が引いてくる。
「ねえ、一番近い人からも遠い?」
『すぐ近いわ』
「どっちか救助に行ってッ、人命最優先ッ」
『私が行くわッ』
 ルージュが街中を滑るように走り出す。
 悲鳴が上がる。
 私は近くにいた若い男性冒険者に、声をかける。ルージュが駆け出したのに、引いている。
「すみません、オルクが迫って来ています」
「は?」
「冒険者ギルドに知らせて、対応してもらうように言ってください」
『早くするのです』
「は? は? は、はいっ」
 若い男性冒険者は、ビアンカを見て、弾かれるように駈けていく。
「晃太、アップば」
「どうするん?」
「ルージュは1人でも大丈夫やろうけど、ケガした人が出ないとは言い切れん。私は行くけん。晃太、悪かけど、あとで馬車で来てん」
 私のアイテムボックス内に、大量のポーションがある。使う機会はなかったが、役に立つかも。
 ……………ポーションの出番がないのが、一番や。
「馬車?」
「ケガした人がおったら運ばんといかん。あ、元気達もよろしく」
「ん、分かった。アップ」
 ふわ、と温かくなる。
「よし、ビアンカ、行こう」
『分かったのです。元気、大人しくしているのですよ』
 私とビアンカは騒然となっている道を走り出した。
感想 851

あなたにおすすめの小説

「三番以下を取りなさい」と五年言われ続けたので、公開試験で本気を出しました

歩人
ファンタジー
王立魔法学院、入学時首席のリュシエンヌは、婚約者レイナルト公爵令息から五年間「女は三番以下を取れ」と命じられてきた。学院の序列は国家序列の縮図。レイナルトは常に一位に居続けた。婚約披露を控えた十九歳の春、レイナルトが新しい婚約者を連れて告げる。「お前では並び立てぬ。学力も身分も、足りなすぎる」——リュシエンヌは微笑んで、その翌日の年次公開試験で、五年封じてきた本気を出した。国王臨席の場で、史上最高点。魔法局長官が教授陣に命じる。「過去五年間の彼女の実測点と、もし本気で受けていたら出せた推計点を、公表したまえ」。教授陣は震える手で数字を並べた。レイナルトの「首席」は、全て彼女が譲った場所だった。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

夫の不倫相手に「妻の座を譲れ」と言われたので、譲る代わりに全部置いていきます 〜行き先は老舗旅館。追いかけてきても、もう遅いです〜 

なつめ
恋愛
夫の愛人に「妻の座を譲れ」と言い渡された主人公は、怒鳴り返すこともしがみつくこともせず、ただ静かに頷いた。 家のこと、食事のこと、社交のこと、義実家のこと、会社の裏方のこと。 誰も価値を知らなかった“妻の座”の中身を、そっくりそのまま置いて家を出る。 向かった先は、かつて傷ついた自分を受け入れてくれた老舗旅館。 再建に奔走する若旦那とともに働く中で、主人公は初めて「役に立つから愛される」のではなく、「あなた自身がいてほしい」と言われる温かさを知っていく。 一方、主人公を軽んじた元夫の家では、生活も体裁も仕事もじわじわと崩壊を始める。 これは、何も持たずに出ていったはずの女が、自分の人生を取り戻し、最後には新しい恋と居場所を手に入れる再生の物語。

見た目の良すぎる双子の兄を持った妹は、引きこもっている理由を不細工だからと勘違いされていましたが、身内にも誤解されていたようです

珠宮さくら
恋愛
ルベロン国の第1王女として生まれたシャルレーヌは、引きこもっていた。 その理由は、見目の良い両親と双子の兄に劣るどころか。他の腹違いの弟妹たちより、不細工な顔をしているからだと噂されていたが、実際のところは全然違っていたのだが、そんな片割れを心配して、外に出そうとした兄は自分を頼ると思っていた。 それが、全く頼らないことになるどころか。自分の方が残念になってしまう結末になるとは思っていなかった。

夫が私にそっくりな下の娘ばかりをかわいがるのですけど!

山科ひさき
恋愛
「子供達をお願い」 そう言い残して、私はこの世を去った。愛する夫が子供達に私の分も愛情を注いでくれると信じていたから、不安はなかった。けれど死後の世界から見ている夫は下の娘ばかりをかわいがり、上の娘をないがしろにしている。許せない。そんな時、私に不思議な声が呼びかけてきて……。

「お前の泥だらけの手で触るな、気持ち悪い」と追放された令嬢——王宮の食器が一枚も焼けなくなった

歩人
ファンタジー
「お前の泥だらけの手で触るな、気持ち悪い」——王宮御用達の食器を焼く伯爵令嬢エルザは、婚約者の第二王子に手の荒れを嗤われて追放された。十二歳から十年間、王宮の全ての食器を手ずから焼いてきた。彼女の食器は特殊な土と焼成技術で魔力を通し、毒に触れると色が変わる。料理の温度も保つ。追放から三ヶ月後、晩餐会で新しい食器を使ったところ、毒が検知されず隣国の大使が倒れた。外交問題に発展する中、第二王子が「食器くらい誰でも焼ける」と窯に立った結果、出来上がったのは歪んだ灰色の皿だった。

元の世界に帰らせていただきます!

にゃみ3
恋愛
淡い夢物語のように、望む全てが叶うとは限らない。 そう分かっていたとしても、私は敵ばかりの世界で妬まれ、嫌われ、疎まれることに、耐えられなかったの。 「ごめんね、バイバイ……」 限界なので、元いた世界に帰らせていただきます。 ・・・ 数話で完結します、ハピエン!

「貧相な小娘」と罵った第一王子へ。番(つがい)は貴方ではなく、国王陛下(お父様)でした

しえろ あい
恋愛
「お父様、わたくし、あの方と目が合った瞬間、分かってしまったのです」 十六歳のデビュタントの夜、ルーセント侯爵令嬢フェリシアを待っていたのは、残酷な罵倒だった。第一王子カシウスは、可憐な白いドレスを纏った彼女を「貧相な小娘」と呼び、己の番(つがい)であることを真っ向から否定する。 会場に響く冷笑と、愛用の刺繍に込めた自信さえ打ち砕くような屈辱。しかし、絶望の淵に立たされた彼女を見つめていたのは、王子ではなく、圧倒的な威厳を放つ「ある男」だった。 魂を焦がすような熱い視線が重なり、静まり返る謁見の間。この出会いが、王室を揺るがす大事件の幕開けになるとは、まだ誰も知らない。自身の価値を否定された少女が、真実の愛によって世界で最も幸福な王妃へと駆け上がる、逆転溺愛ストーリー。 ※小説家になろう様にも投稿しています※