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馬車の旅⑦
宿は一軒家タイプだ。
ルージュに魔法のカーテンを広げてもらう。
室内に入りルームを開ける。従魔の足拭きをタップ。
ビアンカとルージュのお乳タイム開始。
「姉ちゃん、あのオルクの件で呼ばれてるんやろ? どうするん?」
晃太が嗽と手洗いをしてから聞いてくる。
「そうやね。あの様子なら、ゴブリンの巣みたいに助力お願いされると思うんよ」
「やろうね」
「でもね、オルクの巣はゴブリンの巣よりずっと奥なんよ。3倍やって。そうなるとさノワールはギルドで面倒見て貰えるけど、問題は」
ちら、とお乳に吸い付いている5匹の仔。尻尾、ぷりぷり。かわいかあ。頬擦りしたかあ。
「元気達ばさ、預けるとなると、長期間になるけん不安でさ」
「連れていけばよかやん」
「そうはいかんやろ? 絶対に誰か同行するやろし、何かあったときに皆ば避難させる時にルームを開けれんやろ」
「同行する人断ればよかやん。姉ちゃん、少し柔らかく考えようや。向こうからお願いしてくるやろうから、条件を付ければよかやん」
晃太は息をつく。
「姉ちゃんの事や。オルクの巣はどうにかしようって思っておるやろ?」
「まあねえ」
あの女の子や赤ちゃんを思いだす。もし、少しでも遅れていたらどうなっていたか。
「姉ちゃんの心配は元気達とルームやろ? なら同行者がおらんかったら何の問題もないやん。やからさ、オルクの巣はこっちでどうにかするから、付いてこないで下さいって言ったら? これで解決やん?」
「そうやね」
上手く行くかなあ。
『ユイ、オルクの巣に行くのですか?』
『明日行くの?』
「そうなるかね。とにかく一旦ギルドに行かんと。お乳が終わったら、一緒に行ってくれる?」
『分かったのです』
『分かったわ』
お乳タイムと補助食のゼリーも済み、毛繕い開始。
私は少し早くサブ・ドアを開ける。
父はまだ帰宅しておらず、母と花だけルームに。
「どうしたん? 今日は早かね」
夕御飯の準備をしていたのか、エプロン姿の母。
花が尻尾ぷりぷりしながら、ワガママボディをくねらせる。かわいかあ。たまらん。オルクの汚い顔が、霞のように消えていく。
花を撫でながら母に今日の件を説明。
「え? またな? 冒険者ギルドの人に任せんね」
母が一気に心配の顔だ。
「でも放っておけん」
『大丈夫なのです、ルージュと一緒なのですから』
『そうよ、大丈夫よ。ユイは私達が守るわ』
2人に言われてしぶしぶ納得している。
毛繕いが終わり、私はビアンカとルージュとギルド。母は花と共にマーファに戻り、宿には晃太に残ってもらう。
「あ、姉ちゃん」
「なんね?」
「あのさあ」
出掛ける前に、ちょっと晃太が言いにくそうに告げる。
「実はな、ダワーさんからもらった蛇のポーションあったやん」
「ああ、あれね」
蛇の目玉のポーションね。
晃太の話を聞くと、私達を追いかけた時に、元気達をギルド前の手綱持ちの子供に預けたそうだ。勿論、ギルド職員さん達もがっちり周りを警備してくれたが。
手綱持ちは小学生低学年の男の子と、赤ちゃんを背負った中学生くらいの女の子だったそうだ。お礼に銀貨を3枚渡すと、
「これでポーション買える?」
そう聞いてきた。
銀貨3枚、下級ポーション1本の値段や。それを伝えると、男の子はしゅんとした。
晃太が気になって話を聞くと、その子達の父親が、数ヵ月前に仕事帰りにケンカに巻き込まれて目を負傷し、片目は失明、もう片目もほぼ見えていない。父親はそれで仕事を失い、母親が朝から晩まで食堂で働いていると。
それを聞いた晃太が、紙袋にリンゴとオレンジを入れた。そして周りに分からない様に、紙袋の中でアイテムボックスから蛇のポーションを出して、隙間に入れて女の子に渡した。
「お父さんに食べさせりい」
と、女の子に念押しして。
女の子は紙袋をちらっと見て、何かを察知したのか、すぐに弟の手を引き帰っていった。
「やから、1本やったんよ」
「よかやん。元気達ば見てもらったんやから」
元々タダでもらったポーションや、惜しくない。その姉弟は少しでも家計の足しにしようとして、末っ子背負って手綱持ちをしていたんだ。いい子やん。惜しくない。私が答えると、晃太は安心した顔をする。
「じゃあ、行ってくるね」
「ん」
私はビアンカとルージュと共にギルドに向かった。
ギルドに到着すると、すでにざわついていた。多分オルクが出たから集まっているのだろう。すぐに職員さんが私達に気付いて飛んできて、応接室に案内してくれた。
そこにはウィークスさんと別の高齢男性。年齢の割にはがっちりとした体格の人だ。
「お待ちしておりましたテイマー殿。どうぞお掛けください」
ウィークスさんが促してくれるので、ソファーに座る。ビアンカとルージュはソファーのすぐ後ろにお座りする。
「お待たせしました」
「いいえ、こちらがお願いしたのですから。テイマー殿、こちらは当冒険者ギルドマスターです」
ウィークスさんが紹介してくれる。
「ギルドマスターのドナートだ。今回はオルクの撃退感謝します」
「いえ。ビアンカとルージュが頑張ってくれただけです」
私はポーション振りかけて、赤ちゃん抱っこしただけ。そのポーションだって、冷蔵庫ダンジョンでビアンカとルージュがちゅどんどかんの結果だし、赤ちゃんはビアンカが助けてくれたしね。
女性職員さんが、お茶を出してくれる。
「それで早速で、申し訳ないのだが」
ドナートさんが話を切り出す。来た。来た。
「オルクは魔の森で集団生活をする。それはご存知ですかな?」
「はい」
「そのオルクの巣、掃討依頼を受けて頂きたい」
来ると思った。
「その内容は?」
「オルクの巣には計算しておそらく200はいるはず。なので、いくつかの冒険者パーティーと一緒に」
『邪魔なのです』
『足手まといね』
オブラート。
だが、反応したビアンカとルージュにドナートさんは、目を細める。
「やはり、言葉が分かっているようですな」
「では、何を言っているか分かります?」
「おそらく、自分達だけで十分だと。違います?」
『邪魔』
『足手まとい』
「オブラート」
私は突っ込む。その様子にドナートさんは噴き出す。
「ははは、我等は不要のようだ」
「不要というか、そのご足労頂かなくても大丈夫だと」
私は遅いと思ったけど、オブラートに包んで返事をする。
『邪魔』
『足手まとい』
「だからオブラートって」
「ははははは」
「すみません……」
「いやいや、頼もしいですな。アルブレンやマーファから連絡は受けていましたが。そちらの従魔ならばオルク程度でどうにかなることはありますまい。こちらが誰かを出すのは控えましょう」
『分かっているのですね』
『あら、気が利くわ』
お二人さん。
「ただ、討伐証明を持って来て頂きたい」
? あ、緑みたいに耳取るの? やだあ。
「耳? ですか?」
「いえ、オルクそのものを持って帰って頂きたい。オルクの上位種には魔石があるので、解体は出来んでしょう? ならば、そのまま持って帰って来てください。討伐証明として達成料の判断基準とします。弟殿はかなりのサイズのアイテムボックスがありましたな?」
「はい、ちょっと大きめですね」
オルクにも緑のゴブリンと同様に、ランクがある。集団生活の中で強い個体が生まれる。
下級はオルク、あの女の子や赤ちゃんを連れ去ろうしたのね。上位種はソルジャー、アーチャー、最上位はキャプテン。珍しいのはアサシンやメイジ。オルク自体に更に上位種がありハイ・オルクがいるが、かなり珍しいそうだ。
下級のオルクは魔石はあるがくず石なので、取り出す方が逆にコストがかかる。なのでソルジャー以上お持ち帰りだ。晃太の出番だ。
「分かりました。出来るだけ持って帰って来ます」
「ならば、お願いします。書類作成しますのでお待ちを」
ちら、とドナートさんがウィークスさんに頷くと、ウィークスさんは退室。
「少し、お時間いただきますがよろしいですか?」
「はい」
何時間もかかるわけないし、こちらのお願い聞いてくれたからね。待とう。
私は、せっかく出して頂いたお茶のカップを手にする。
ルージュに魔法のカーテンを広げてもらう。
室内に入りルームを開ける。従魔の足拭きをタップ。
ビアンカとルージュのお乳タイム開始。
「姉ちゃん、あのオルクの件で呼ばれてるんやろ? どうするん?」
晃太が嗽と手洗いをしてから聞いてくる。
「そうやね。あの様子なら、ゴブリンの巣みたいに助力お願いされると思うんよ」
「やろうね」
「でもね、オルクの巣はゴブリンの巣よりずっと奥なんよ。3倍やって。そうなるとさノワールはギルドで面倒見て貰えるけど、問題は」
ちら、とお乳に吸い付いている5匹の仔。尻尾、ぷりぷり。かわいかあ。頬擦りしたかあ。
「元気達ばさ、預けるとなると、長期間になるけん不安でさ」
「連れていけばよかやん」
「そうはいかんやろ? 絶対に誰か同行するやろし、何かあったときに皆ば避難させる時にルームを開けれんやろ」
「同行する人断ればよかやん。姉ちゃん、少し柔らかく考えようや。向こうからお願いしてくるやろうから、条件を付ければよかやん」
晃太は息をつく。
「姉ちゃんの事や。オルクの巣はどうにかしようって思っておるやろ?」
「まあねえ」
あの女の子や赤ちゃんを思いだす。もし、少しでも遅れていたらどうなっていたか。
「姉ちゃんの心配は元気達とルームやろ? なら同行者がおらんかったら何の問題もないやん。やからさ、オルクの巣はこっちでどうにかするから、付いてこないで下さいって言ったら? これで解決やん?」
「そうやね」
上手く行くかなあ。
『ユイ、オルクの巣に行くのですか?』
『明日行くの?』
「そうなるかね。とにかく一旦ギルドに行かんと。お乳が終わったら、一緒に行ってくれる?」
『分かったのです』
『分かったわ』
お乳タイムと補助食のゼリーも済み、毛繕い開始。
私は少し早くサブ・ドアを開ける。
父はまだ帰宅しておらず、母と花だけルームに。
「どうしたん? 今日は早かね」
夕御飯の準備をしていたのか、エプロン姿の母。
花が尻尾ぷりぷりしながら、ワガママボディをくねらせる。かわいかあ。たまらん。オルクの汚い顔が、霞のように消えていく。
花を撫でながら母に今日の件を説明。
「え? またな? 冒険者ギルドの人に任せんね」
母が一気に心配の顔だ。
「でも放っておけん」
『大丈夫なのです、ルージュと一緒なのですから』
『そうよ、大丈夫よ。ユイは私達が守るわ』
2人に言われてしぶしぶ納得している。
毛繕いが終わり、私はビアンカとルージュとギルド。母は花と共にマーファに戻り、宿には晃太に残ってもらう。
「あ、姉ちゃん」
「なんね?」
「あのさあ」
出掛ける前に、ちょっと晃太が言いにくそうに告げる。
「実はな、ダワーさんからもらった蛇のポーションあったやん」
「ああ、あれね」
蛇の目玉のポーションね。
晃太の話を聞くと、私達を追いかけた時に、元気達をギルド前の手綱持ちの子供に預けたそうだ。勿論、ギルド職員さん達もがっちり周りを警備してくれたが。
手綱持ちは小学生低学年の男の子と、赤ちゃんを背負った中学生くらいの女の子だったそうだ。お礼に銀貨を3枚渡すと、
「これでポーション買える?」
そう聞いてきた。
銀貨3枚、下級ポーション1本の値段や。それを伝えると、男の子はしゅんとした。
晃太が気になって話を聞くと、その子達の父親が、数ヵ月前に仕事帰りにケンカに巻き込まれて目を負傷し、片目は失明、もう片目もほぼ見えていない。父親はそれで仕事を失い、母親が朝から晩まで食堂で働いていると。
それを聞いた晃太が、紙袋にリンゴとオレンジを入れた。そして周りに分からない様に、紙袋の中でアイテムボックスから蛇のポーションを出して、隙間に入れて女の子に渡した。
「お父さんに食べさせりい」
と、女の子に念押しして。
女の子は紙袋をちらっと見て、何かを察知したのか、すぐに弟の手を引き帰っていった。
「やから、1本やったんよ」
「よかやん。元気達ば見てもらったんやから」
元々タダでもらったポーションや、惜しくない。その姉弟は少しでも家計の足しにしようとして、末っ子背負って手綱持ちをしていたんだ。いい子やん。惜しくない。私が答えると、晃太は安心した顔をする。
「じゃあ、行ってくるね」
「ん」
私はビアンカとルージュと共にギルドに向かった。
ギルドに到着すると、すでにざわついていた。多分オルクが出たから集まっているのだろう。すぐに職員さんが私達に気付いて飛んできて、応接室に案内してくれた。
そこにはウィークスさんと別の高齢男性。年齢の割にはがっちりとした体格の人だ。
「お待ちしておりましたテイマー殿。どうぞお掛けください」
ウィークスさんが促してくれるので、ソファーに座る。ビアンカとルージュはソファーのすぐ後ろにお座りする。
「お待たせしました」
「いいえ、こちらがお願いしたのですから。テイマー殿、こちらは当冒険者ギルドマスターです」
ウィークスさんが紹介してくれる。
「ギルドマスターのドナートだ。今回はオルクの撃退感謝します」
「いえ。ビアンカとルージュが頑張ってくれただけです」
私はポーション振りかけて、赤ちゃん抱っこしただけ。そのポーションだって、冷蔵庫ダンジョンでビアンカとルージュがちゅどんどかんの結果だし、赤ちゃんはビアンカが助けてくれたしね。
女性職員さんが、お茶を出してくれる。
「それで早速で、申し訳ないのだが」
ドナートさんが話を切り出す。来た。来た。
「オルクは魔の森で集団生活をする。それはご存知ですかな?」
「はい」
「そのオルクの巣、掃討依頼を受けて頂きたい」
来ると思った。
「その内容は?」
「オルクの巣には計算しておそらく200はいるはず。なので、いくつかの冒険者パーティーと一緒に」
『邪魔なのです』
『足手まといね』
オブラート。
だが、反応したビアンカとルージュにドナートさんは、目を細める。
「やはり、言葉が分かっているようですな」
「では、何を言っているか分かります?」
「おそらく、自分達だけで十分だと。違います?」
『邪魔』
『足手まとい』
「オブラート」
私は突っ込む。その様子にドナートさんは噴き出す。
「ははは、我等は不要のようだ」
「不要というか、そのご足労頂かなくても大丈夫だと」
私は遅いと思ったけど、オブラートに包んで返事をする。
『邪魔』
『足手まとい』
「だからオブラートって」
「ははははは」
「すみません……」
「いやいや、頼もしいですな。アルブレンやマーファから連絡は受けていましたが。そちらの従魔ならばオルク程度でどうにかなることはありますまい。こちらが誰かを出すのは控えましょう」
『分かっているのですね』
『あら、気が利くわ』
お二人さん。
「ただ、討伐証明を持って来て頂きたい」
? あ、緑みたいに耳取るの? やだあ。
「耳? ですか?」
「いえ、オルクそのものを持って帰って頂きたい。オルクの上位種には魔石があるので、解体は出来んでしょう? ならば、そのまま持って帰って来てください。討伐証明として達成料の判断基準とします。弟殿はかなりのサイズのアイテムボックスがありましたな?」
「はい、ちょっと大きめですね」
オルクにも緑のゴブリンと同様に、ランクがある。集団生活の中で強い個体が生まれる。
下級はオルク、あの女の子や赤ちゃんを連れ去ろうしたのね。上位種はソルジャー、アーチャー、最上位はキャプテン。珍しいのはアサシンやメイジ。オルク自体に更に上位種がありハイ・オルクがいるが、かなり珍しいそうだ。
下級のオルクは魔石はあるがくず石なので、取り出す方が逆にコストがかかる。なのでソルジャー以上お持ち帰りだ。晃太の出番だ。
「分かりました。出来るだけ持って帰って来ます」
「ならば、お願いします。書類作成しますのでお待ちを」
ちら、とドナートさんがウィークスさんに頷くと、ウィークスさんは退室。
「少し、お時間いただきますがよろしいですか?」
「はい」
何時間もかかるわけないし、こちらのお願い聞いてくれたからね。待とう。
私は、せっかく出して頂いたお茶のカップを手にする。
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