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連載
馬車の旅⑧
少し酸味の香りがするけど、甘い紅茶だ。あら、美味しかあ。ミルクティーとかいいかも。
『ユイの飲んでいるの、果実の香りがするのです』
『甘い香りがするわ』
ビアンカとルージュが後ろから、くんくんしながら覗き込む。
「従魔殿もお気に召しましたかな?」
「そうみたいですね。果物の香りがするって」
「これは森で採れたベリーを使った紅茶で、このノータの名産なんですよ」
ドナートさんが息をつく。
「森は我々にとって恵をもたらしてくれる。もちろんリスクはありますが。あの森の浅い所は、比較的穏やかで時期になったら、一般人がベリー摘みに行くくらい。出てもスライム、悪くて角ウサギ。境界線さえ守れば、誰でも行けるような場所。それなのに、なんの前触れもなくオルクが出た」
ノータにも冒険者はいる。魔の森があるから、冒険者達が適宜入り、魔の森にしかない薬草を摘んだり、魔物を探したり。そんな中で、まったくオルクの気配はなかった。普通なら、何かしらの痕跡があったりして、中堅の冒険者なら気付くはずなのだと。
「オルクはゴブリン以上に賢く力もある。ノータにも戦える者はおるが、もし、オルク全てが今回の事でノータを襲うなら、持ちこたえられても、多くの犠牲が出たでしょうな」
ノータの戦力の規模は、ダンジョンを有し、騎士団を抱えるマーファの半分以下。
「だとしても、オルク程度で揺らぐような事はあってはならん。今回テイマー殿がいることで、安堵した者もおりました。皆ためらい、我こそは、という者がおらんかった」
なんだか、ドナートさんの空気が引き締まる。
「ウィークスとも話しましたが、中堅以下を鍛え直す事になりました。もちろん警備の者もです」
にやあ、と笑うドナートさん。
『あら、いい顔なのです』
『そうね』
お二人さん。お二人さん。
「しかし、ウィークスは内心がっかりしておるでしょうな」
「え? なんでです?」
「あいつはですね、元冒険者」
ウィークスさんは10年前まで冒険者で、今でも現役バリバリ。冒険者ランクはA。冒険者としてかなり高ランク。だいたい鷹の目のリーダーさんのランクCくらいまでなら地道に頑張れば上がれるそうだが、Bランクになると一気に難しくなる。なのでAランクのウィークスさんは冒険者としてかなり優秀、しかも現役時代から指導者としても優秀で、引退して直ぐにドナートさんが引っ張って来たそうだ。時折ある、高ランクの魔物の討伐には必ず指揮に入るか、援護者として参戦すると。
なので、冒険者時代の癖で、オルクが襲って来た時真っ先に、愛剣下げて駆けつけてくれたのか。
「久しぶりに血が騒いだのか、自分が行く気満々でしたよ。内心、がっかりしておりますよ」
「そうですか」
しばらくしてウィークスさんが戻って来た。
「お待たせしました」
ウィークスさんが書類を出す。
依頼内容 オルクの巣討伐
依頼者 ノータ冒険者ギルド
依頼到達基準 オルクの上位個体数
依頼達成料 100万 内容により変動
おう、100万とな。
「結構な額ですね」
「本来ならもっと高額なんですよ。テイマー殿のランクを指標にしていますからこの額。これだけの従魔を従えているテイマー殿に、この額は失礼なんですよ」
ウィークスさんがちょっと呆れた顔。
「え? そうなんですか?」
「そうですよ」
「あの、因みに、ビアンカとルージュくらいの従魔がいたら、ランクって普通どれくらいなんです」
私が聞くと、ドナートさんとウィークスさんが顔を見合わせる。
「Aランクですよ。どちらか一体でも有していれば最低」
肩を竦めるドナートさん。
「マーファのドラゴンの件から判断して、テイマー殿のランクはSランクでしょうな」
わっしょい。
因みにSランクは国に10人くらいしかいないそうだ。
皆さん、苦労してランク上げているのに。
Sランクともなれば、爵位持ちと同じ事になるそうだ。
まあ、いいや。今はいらないや。
私は書類にサインする。
「もし、失敗したらどうなります?」
「違約金が発生しますので、気を付けてください。ただ、この依頼には発生しませんよ。達成しない場合は支払いがないだけです」
「あの、もしですよ、後付けでそういった内容を追加されたらどうなります?」
ないとは思いたいが。
「たまにありますな。防止策として特殊インクを使用しております。魔力を込めながら書かないと色が付かず、またこのインクは一定時間に書かなければ色が途中で変わるのです。また、人によって微妙に変わり、後付けすると色彩が変わって一発で後付けとわかります。バレれば情状酌量されずに奴隷落ちさせられます」
うわあ。
私達が鷹の目の皆さんに護衛を依頼した時は、リーダーさんがその場にいたし、ギルド職員さん立ち会いだったため、特殊インクは使用しなかった。基本的に最低依頼料が100万越さないと、特殊インクは使われない。ただ、依頼主が大きい場合。この場合冒険者ギルド等、または大きな商会や行政からの依頼は、必ず特殊インクが使用されると。
「中にはかなり巧妙な手段を使いあの手この手ですり抜ける者がおります。ギルドとしては書類偽造は看過出来ない問題、善良な冒険者を守る義務が我らにはあります。日々、目を光らせております」
おお、流石、ギルドマスターさん。かっこいい。
「テイマー殿も今後お気をつけください。従魔欲しさに妙な依頼をしてくる者が出てくるはず」
「依頼、ですか」
「例えば護衛依頼とか、特殊なドロップ品採取、高ランク魔物討伐とか」
そう言えば、マーファにいたとき、依頼が一つも来なかったけど。一度リティアさんが、ドラゴンの件の後で、ランクの話をしたがお断りした。私が倒したわけじゃないし、加勢すらしていない、それに一般人が数ヶ月でポンポンランクが上がるのも良くないかと思って。
「ランクがまだ低いですからね。しかし、そろそろ上がるはず。Cランクとなれば指名依頼が来ます」
「お断りって出来ないんですか?」
「出来んこともありませんが、あまり断るとペナルティーがありますよ」
ペナルティーかあ。私的には、ビアンカとルージュの為の冒険者ギルド登録だしなあ。
あ、ランク上がらなきゃいいんだ。
今ランクはEだから、Dになってからそれ以上は上がらないようにすればいい。
「ランクを上げなければと、思っています?」
「あ、分かります?」
「無理ですよ。これだけの従魔を従えておいて。そうですな、逆に高ランクになれば断っても支障はありませんよ。依頼制限できますから」
「そのランクは?」
「最低Aランク」
無理やん。
多分Cランクになったら、そう簡単にいきなりAランクになれるわけない。その上がるまでの間に、なんかありそう。
うん、ランクが上がる時に、考えよう。
「あ、そうだ。一つお願いがあります」
「何でしょう?」
「私達がオルクの巣に行っている間、ノワールを、うちの魔法馬を預かって頂きたいんですが」
「勿論、それくらいでよければ」
「ありがとうございます」
「いつ、出発されます?」
『明日にも行くのです』
『そうね』
「明日、出発します」
良かった。ノワールのご飯の準備しなくては。ニンジン、リンゴ、キャベツ………、マジックバッグに出来るだけ詰め込もう。ノワール、よく食べるんだよねえ。
頭の中で、買い物リストを書き出す。
私はドナートさんとウィークスさんに挨拶して、ギルドを後にした。
『ユイの飲んでいるの、果実の香りがするのです』
『甘い香りがするわ』
ビアンカとルージュが後ろから、くんくんしながら覗き込む。
「従魔殿もお気に召しましたかな?」
「そうみたいですね。果物の香りがするって」
「これは森で採れたベリーを使った紅茶で、このノータの名産なんですよ」
ドナートさんが息をつく。
「森は我々にとって恵をもたらしてくれる。もちろんリスクはありますが。あの森の浅い所は、比較的穏やかで時期になったら、一般人がベリー摘みに行くくらい。出てもスライム、悪くて角ウサギ。境界線さえ守れば、誰でも行けるような場所。それなのに、なんの前触れもなくオルクが出た」
ノータにも冒険者はいる。魔の森があるから、冒険者達が適宜入り、魔の森にしかない薬草を摘んだり、魔物を探したり。そんな中で、まったくオルクの気配はなかった。普通なら、何かしらの痕跡があったりして、中堅の冒険者なら気付くはずなのだと。
「オルクはゴブリン以上に賢く力もある。ノータにも戦える者はおるが、もし、オルク全てが今回の事でノータを襲うなら、持ちこたえられても、多くの犠牲が出たでしょうな」
ノータの戦力の規模は、ダンジョンを有し、騎士団を抱えるマーファの半分以下。
「だとしても、オルク程度で揺らぐような事はあってはならん。今回テイマー殿がいることで、安堵した者もおりました。皆ためらい、我こそは、という者がおらんかった」
なんだか、ドナートさんの空気が引き締まる。
「ウィークスとも話しましたが、中堅以下を鍛え直す事になりました。もちろん警備の者もです」
にやあ、と笑うドナートさん。
『あら、いい顔なのです』
『そうね』
お二人さん。お二人さん。
「しかし、ウィークスは内心がっかりしておるでしょうな」
「え? なんでです?」
「あいつはですね、元冒険者」
ウィークスさんは10年前まで冒険者で、今でも現役バリバリ。冒険者ランクはA。冒険者としてかなり高ランク。だいたい鷹の目のリーダーさんのランクCくらいまでなら地道に頑張れば上がれるそうだが、Bランクになると一気に難しくなる。なのでAランクのウィークスさんは冒険者としてかなり優秀、しかも現役時代から指導者としても優秀で、引退して直ぐにドナートさんが引っ張って来たそうだ。時折ある、高ランクの魔物の討伐には必ず指揮に入るか、援護者として参戦すると。
なので、冒険者時代の癖で、オルクが襲って来た時真っ先に、愛剣下げて駆けつけてくれたのか。
「久しぶりに血が騒いだのか、自分が行く気満々でしたよ。内心、がっかりしておりますよ」
「そうですか」
しばらくしてウィークスさんが戻って来た。
「お待たせしました」
ウィークスさんが書類を出す。
依頼内容 オルクの巣討伐
依頼者 ノータ冒険者ギルド
依頼到達基準 オルクの上位個体数
依頼達成料 100万 内容により変動
おう、100万とな。
「結構な額ですね」
「本来ならもっと高額なんですよ。テイマー殿のランクを指標にしていますからこの額。これだけの従魔を従えているテイマー殿に、この額は失礼なんですよ」
ウィークスさんがちょっと呆れた顔。
「え? そうなんですか?」
「そうですよ」
「あの、因みに、ビアンカとルージュくらいの従魔がいたら、ランクって普通どれくらいなんです」
私が聞くと、ドナートさんとウィークスさんが顔を見合わせる。
「Aランクですよ。どちらか一体でも有していれば最低」
肩を竦めるドナートさん。
「マーファのドラゴンの件から判断して、テイマー殿のランクはSランクでしょうな」
わっしょい。
因みにSランクは国に10人くらいしかいないそうだ。
皆さん、苦労してランク上げているのに。
Sランクともなれば、爵位持ちと同じ事になるそうだ。
まあ、いいや。今はいらないや。
私は書類にサインする。
「もし、失敗したらどうなります?」
「違約金が発生しますので、気を付けてください。ただ、この依頼には発生しませんよ。達成しない場合は支払いがないだけです」
「あの、もしですよ、後付けでそういった内容を追加されたらどうなります?」
ないとは思いたいが。
「たまにありますな。防止策として特殊インクを使用しております。魔力を込めながら書かないと色が付かず、またこのインクは一定時間に書かなければ色が途中で変わるのです。また、人によって微妙に変わり、後付けすると色彩が変わって一発で後付けとわかります。バレれば情状酌量されずに奴隷落ちさせられます」
うわあ。
私達が鷹の目の皆さんに護衛を依頼した時は、リーダーさんがその場にいたし、ギルド職員さん立ち会いだったため、特殊インクは使用しなかった。基本的に最低依頼料が100万越さないと、特殊インクは使われない。ただ、依頼主が大きい場合。この場合冒険者ギルド等、または大きな商会や行政からの依頼は、必ず特殊インクが使用されると。
「中にはかなり巧妙な手段を使いあの手この手ですり抜ける者がおります。ギルドとしては書類偽造は看過出来ない問題、善良な冒険者を守る義務が我らにはあります。日々、目を光らせております」
おお、流石、ギルドマスターさん。かっこいい。
「テイマー殿も今後お気をつけください。従魔欲しさに妙な依頼をしてくる者が出てくるはず」
「依頼、ですか」
「例えば護衛依頼とか、特殊なドロップ品採取、高ランク魔物討伐とか」
そう言えば、マーファにいたとき、依頼が一つも来なかったけど。一度リティアさんが、ドラゴンの件の後で、ランクの話をしたがお断りした。私が倒したわけじゃないし、加勢すらしていない、それに一般人が数ヶ月でポンポンランクが上がるのも良くないかと思って。
「ランクがまだ低いですからね。しかし、そろそろ上がるはず。Cランクとなれば指名依頼が来ます」
「お断りって出来ないんですか?」
「出来んこともありませんが、あまり断るとペナルティーがありますよ」
ペナルティーかあ。私的には、ビアンカとルージュの為の冒険者ギルド登録だしなあ。
あ、ランク上がらなきゃいいんだ。
今ランクはEだから、Dになってからそれ以上は上がらないようにすればいい。
「ランクを上げなければと、思っています?」
「あ、分かります?」
「無理ですよ。これだけの従魔を従えておいて。そうですな、逆に高ランクになれば断っても支障はありませんよ。依頼制限できますから」
「そのランクは?」
「最低Aランク」
無理やん。
多分Cランクになったら、そう簡単にいきなりAランクになれるわけない。その上がるまでの間に、なんかありそう。
うん、ランクが上がる時に、考えよう。
「あ、そうだ。一つお願いがあります」
「何でしょう?」
「私達がオルクの巣に行っている間、ノワールを、うちの魔法馬を預かって頂きたいんですが」
「勿論、それくらいでよければ」
「ありがとうございます」
「いつ、出発されます?」
『明日にも行くのです』
『そうね』
「明日、出発します」
良かった。ノワールのご飯の準備しなくては。ニンジン、リンゴ、キャベツ………、マジックバッグに出来るだけ詰め込もう。ノワール、よく食べるんだよねえ。
頭の中で、買い物リストを書き出す。
私はドナートさんとウィークスさんに挨拶して、ギルドを後にした。
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