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連載
帰途②
私の言葉に、グアルダさんとアステリさんの顔がひきつる。なんだか、申し訳ない。
お茶を持ってきてくれたキーナさん、お盆の上で茶器がカチャカチャ鳴ってる。本当に申し訳ない気がしていた。だけど、ここで引けない。
ビアンカとルージュ、元気にルリにクリス、コハクにヒスイを守るためや。嫌な奴だと思われても仕方ない。
「ミ、ミズサワ様、あのですね。転移門に関してですが、本日役人が来ておりまして」
アステリさんが綺麗な額に汗が浮かんでいる。
「そうですか。ご足労頂いて申し訳ないです。手ぶらで申し訳ないです」
私は言葉に転移門は売りませんと、含める。
「どうしても手放さない、と?」
確認するように、私に聞いてくるグアルダさん。
「お金に困っていたら、売ったかもしれませんね。うちには優秀な従魔がいますので、食べるのは困らないし、何処に行ってもそれは変わらないでしょう? 私達はこちらではあまり歓迎されていないようですから」
我ながら嫌みだなあ。
ビアンカとルージュがいるだけで、ギルドは丁寧に対応してくれているのに。
「ミズサワ様、昨日の件でお怒りなのは重々承知しています」
「はい、怒ってます」
グアルダさんの言葉に、私は鋭く返す。
びくり、とするアステリさんとキーナさん。
「私、ああいった卑怯な手を使うの大嫌いなんです。自分では手を汚さないで、誰かにお金使ってとか、大嫌いなんです」
私は素直に言葉を並べる。
「結局、そのラーバフ伯爵だけではないでしょう? これからも私達に、いや、ビアンカとルージュ、子供達を手に入れようとしてくるはずです。私はビアンカとルージュ、そしてあの子達の主人です。皆を守る義務があります」
グアルダさんが沈黙する。
「ユリアレーナで冒険者になりましたが、そのユリアレーナが私達を守ってくれなければ、ここにいる必要はありませんよね? 他所できちんとあちこちに注意してくれる国を探すだけです。私達は移動手段に恵まれていますから」
一気に言ってみた。
逆効果じゃないことを祈りながら。
「では、国が方々に注意なり、警告をすれば?」
グアルダさんの答えに、私はお腹の中で、よし、と思う。
「そうですね。私達はただ、ビアンカやルージュ、子供達を守りたいだけなので。それさえ徹底していただいたら、転移門は国に献上しましょう」
私の答えに、グアルダさん、アステリさん、キーナさんがぎょっとした表情になる。
「転移門を献上ですか?」
疑うようにグアルダさんが聞いてくる。
「はい、献上します」
女に二言はなか。
それに爵位のある人達に、力のある人、財力がある人、権力がある人に、警告してくれるなら、相応の事をしないとね。
それが転移門献上だ。
グアルダさんが背筋を伸ばす。
「了解した。その様に手配しましょう。すべて手配するのに時間を頂きたい。中枢に働きかけるために、一旦、話を持っていきます。その間に何かあれば、ギルドが対応しましょう」
「ありがとうございます」
ほっ、良かった。
「所でミズサワ殿。転移門に関してですが、本当によろしいのですか? 数十億になるはずですぞ。多少安く譲るとしても、かなりの額になりますぞ」
あの折り畳み傘、そんなにするのッ。
しかし、女に二言はなか。
「構いません、献上します。こちらの要求が通れば問題はないので」
私はきっぱり言う。
「それから、私達これからマーファに帰りますので、手配が終わったらマーファに連絡ください」
これくらいしてもいいよね。
「もちろん」
「では、私はこれで失礼します」
さて、これでよか。
あまり長居せんどこう。
「ルージュ、行こうかね」
『分かったわ。コハク、起きなさい』
「にゃあ~」
私はルージュとコハクを連れて、応接室を出る。
ギルドのロビーでは、元気が若い冒険者達に機嫌よく撫でられている。
「晃太、ビアンカ、お待たせ」
「ん、大丈夫ね?」
『終わったのですか?』
「なんとかね。帰ろうかね」
バギーの中では、やっと起きたルリ達が顔を出す。
うふふふん、かわいかあ。
ギルドから出て、手綱持ちの男の子に、銀貨1枚を渡す。男の子はニコニコだ。
晃太のアイテムボックスから馬車を出し、ノワールに繋ぐ。
馬車の中に5匹を乗せる。スカイランを出てから、ルームを開けて、従魔の部屋に移動させよう。
アステリさんとキーナさんが、ギルドの入り口まで見送ってくれた。私はぺこり、と頭を下げる。向こうもぺこり。
手綱を引きながら、スカイランを抜ける。
もうすぐ、スカイランの入り口という所に、ビアンカとルージュが顔を上げる。
『ユイ、こちらに来るのです』
『童達よ』
振り返ると、牧師さんに連れられて、子供達が走って来た。
皆、もへじ生活の服を着ている。
「お姉ちゃんッ」
ノワールを止める。
あのお花を売っていた女の子が、もへじ生活のワンピースと靴で見違えるようだ。
「テイマー様、お帰りになるとお聞きしましたので」
牧師さんがティム君を抱え直しながら言う。
他の子供達は、わー、とビアンカとルージュに群がる。
『私が恐くないのですかっ』
『もう、仕方ないわねぇ』
ビアンカとルージュは諦めモードだ。
「ねえ、お姉ちゃん、もう帰っちゃうの?」
「うん」
「つまんない」
ぶー、と女の子。かわいかね。
「あのね、これ、お姉ちゃんにあげる」
と、差し出したのはシロツメクサの花束だ。
なんだろう、胸が温かくなる。
無造作に束ねられた花束。
「ありがとう」
私は膝をついて、花束を受け取る。
嬉しい。
花束、シロツメクサを束ねただけのものは、今までもらった花の中で一番嬉しい。嬉しい。
「こら、きちんと挨拶しなさい」
「はーい。お姉ちゃん、お洋服ありがとうございます。また来てね」
女の子の純粋無垢の笑顔に、私の腹のそこにわだかまっていた、どろどろしたものを痛感させる。
さっき、ギルドで嫌味を言ってきたばかりの私には、笑顔が眩しいし、申し訳なさを沸き上がらせる。
私、この花束、受け取ってもいいのかな?
「テイマー様、本当にいろいろありがとうございます。さ、ティム、お礼を言いなさい」
抱えられたティム君は、キャッキャッ言って恥ずかしそうにこちらをチラチラ見て、結局牧師さんにしがみつく。かわいかね。
「テイマー様、本当にありがとうございます。道中、お気をつけてください。始祖神様のご加護がありますように」
「はい、ありがとうございます」
私は花束を胸に抱えて答える。
「こら皆離れなさい」
ビアンカとルージュに群がっていた子供達が、牧師さんの元に。
「さあ、皆でテイマー様をお見送りしましょう」
「「「はーい」」」
一列に並ぶ子供達。
「「「また、来てねー」」」
ぐ、と胸に来る。
純粋無垢な笑顔が、眩しい。なにより、嬉しい。心の奥底から嬉しい。
「うん、また来るね」
私は子供達に返事をする。
スカイランでいろいろあったけど、子供達に会えたのは、宝物かもしれない。ティム君がエリクサーで助かった。それだけで、スカイランに来た価値があることだ。
私は手を振る子供達に、見守られて御者台に座り、ベルトを締める。
「お姉ちゃん、また、来てね」
お花の女の子が、御者台の私に向かって、もう一度聞いてくる。
「うん、来るからね」
「待ってるー」
手を振る子供達に、私も手を振り返す。
ノワールがゆっくりとしたスピードで走り出す。
子供達は見えなくなるまで手を振ってくれた。
「私がスカイランでしたこと、間違ってなかったかね」
「そうやない? わざわざ、見送りに来てくれたんやからさ」
「そうやね。そうやね」
私はシロツメクサの花束を、そっと抱き締めた。
感謝の気持ちが詰まった花束を、しばらく抱えていた。
お茶を持ってきてくれたキーナさん、お盆の上で茶器がカチャカチャ鳴ってる。本当に申し訳ない気がしていた。だけど、ここで引けない。
ビアンカとルージュ、元気にルリにクリス、コハクにヒスイを守るためや。嫌な奴だと思われても仕方ない。
「ミ、ミズサワ様、あのですね。転移門に関してですが、本日役人が来ておりまして」
アステリさんが綺麗な額に汗が浮かんでいる。
「そうですか。ご足労頂いて申し訳ないです。手ぶらで申し訳ないです」
私は言葉に転移門は売りませんと、含める。
「どうしても手放さない、と?」
確認するように、私に聞いてくるグアルダさん。
「お金に困っていたら、売ったかもしれませんね。うちには優秀な従魔がいますので、食べるのは困らないし、何処に行ってもそれは変わらないでしょう? 私達はこちらではあまり歓迎されていないようですから」
我ながら嫌みだなあ。
ビアンカとルージュがいるだけで、ギルドは丁寧に対応してくれているのに。
「ミズサワ様、昨日の件でお怒りなのは重々承知しています」
「はい、怒ってます」
グアルダさんの言葉に、私は鋭く返す。
びくり、とするアステリさんとキーナさん。
「私、ああいった卑怯な手を使うの大嫌いなんです。自分では手を汚さないで、誰かにお金使ってとか、大嫌いなんです」
私は素直に言葉を並べる。
「結局、そのラーバフ伯爵だけではないでしょう? これからも私達に、いや、ビアンカとルージュ、子供達を手に入れようとしてくるはずです。私はビアンカとルージュ、そしてあの子達の主人です。皆を守る義務があります」
グアルダさんが沈黙する。
「ユリアレーナで冒険者になりましたが、そのユリアレーナが私達を守ってくれなければ、ここにいる必要はありませんよね? 他所できちんとあちこちに注意してくれる国を探すだけです。私達は移動手段に恵まれていますから」
一気に言ってみた。
逆効果じゃないことを祈りながら。
「では、国が方々に注意なり、警告をすれば?」
グアルダさんの答えに、私はお腹の中で、よし、と思う。
「そうですね。私達はただ、ビアンカやルージュ、子供達を守りたいだけなので。それさえ徹底していただいたら、転移門は国に献上しましょう」
私の答えに、グアルダさん、アステリさん、キーナさんがぎょっとした表情になる。
「転移門を献上ですか?」
疑うようにグアルダさんが聞いてくる。
「はい、献上します」
女に二言はなか。
それに爵位のある人達に、力のある人、財力がある人、権力がある人に、警告してくれるなら、相応の事をしないとね。
それが転移門献上だ。
グアルダさんが背筋を伸ばす。
「了解した。その様に手配しましょう。すべて手配するのに時間を頂きたい。中枢に働きかけるために、一旦、話を持っていきます。その間に何かあれば、ギルドが対応しましょう」
「ありがとうございます」
ほっ、良かった。
「所でミズサワ殿。転移門に関してですが、本当によろしいのですか? 数十億になるはずですぞ。多少安く譲るとしても、かなりの額になりますぞ」
あの折り畳み傘、そんなにするのッ。
しかし、女に二言はなか。
「構いません、献上します。こちらの要求が通れば問題はないので」
私はきっぱり言う。
「それから、私達これからマーファに帰りますので、手配が終わったらマーファに連絡ください」
これくらいしてもいいよね。
「もちろん」
「では、私はこれで失礼します」
さて、これでよか。
あまり長居せんどこう。
「ルージュ、行こうかね」
『分かったわ。コハク、起きなさい』
「にゃあ~」
私はルージュとコハクを連れて、応接室を出る。
ギルドのロビーでは、元気が若い冒険者達に機嫌よく撫でられている。
「晃太、ビアンカ、お待たせ」
「ん、大丈夫ね?」
『終わったのですか?』
「なんとかね。帰ろうかね」
バギーの中では、やっと起きたルリ達が顔を出す。
うふふふん、かわいかあ。
ギルドから出て、手綱持ちの男の子に、銀貨1枚を渡す。男の子はニコニコだ。
晃太のアイテムボックスから馬車を出し、ノワールに繋ぐ。
馬車の中に5匹を乗せる。スカイランを出てから、ルームを開けて、従魔の部屋に移動させよう。
アステリさんとキーナさんが、ギルドの入り口まで見送ってくれた。私はぺこり、と頭を下げる。向こうもぺこり。
手綱を引きながら、スカイランを抜ける。
もうすぐ、スカイランの入り口という所に、ビアンカとルージュが顔を上げる。
『ユイ、こちらに来るのです』
『童達よ』
振り返ると、牧師さんに連れられて、子供達が走って来た。
皆、もへじ生活の服を着ている。
「お姉ちゃんッ」
ノワールを止める。
あのお花を売っていた女の子が、もへじ生活のワンピースと靴で見違えるようだ。
「テイマー様、お帰りになるとお聞きしましたので」
牧師さんがティム君を抱え直しながら言う。
他の子供達は、わー、とビアンカとルージュに群がる。
『私が恐くないのですかっ』
『もう、仕方ないわねぇ』
ビアンカとルージュは諦めモードだ。
「ねえ、お姉ちゃん、もう帰っちゃうの?」
「うん」
「つまんない」
ぶー、と女の子。かわいかね。
「あのね、これ、お姉ちゃんにあげる」
と、差し出したのはシロツメクサの花束だ。
なんだろう、胸が温かくなる。
無造作に束ねられた花束。
「ありがとう」
私は膝をついて、花束を受け取る。
嬉しい。
花束、シロツメクサを束ねただけのものは、今までもらった花の中で一番嬉しい。嬉しい。
「こら、きちんと挨拶しなさい」
「はーい。お姉ちゃん、お洋服ありがとうございます。また来てね」
女の子の純粋無垢の笑顔に、私の腹のそこにわだかまっていた、どろどろしたものを痛感させる。
さっき、ギルドで嫌味を言ってきたばかりの私には、笑顔が眩しいし、申し訳なさを沸き上がらせる。
私、この花束、受け取ってもいいのかな?
「テイマー様、本当にいろいろありがとうございます。さ、ティム、お礼を言いなさい」
抱えられたティム君は、キャッキャッ言って恥ずかしそうにこちらをチラチラ見て、結局牧師さんにしがみつく。かわいかね。
「テイマー様、本当にありがとうございます。道中、お気をつけてください。始祖神様のご加護がありますように」
「はい、ありがとうございます」
私は花束を胸に抱えて答える。
「こら皆離れなさい」
ビアンカとルージュに群がっていた子供達が、牧師さんの元に。
「さあ、皆でテイマー様をお見送りしましょう」
「「「はーい」」」
一列に並ぶ子供達。
「「「また、来てねー」」」
ぐ、と胸に来る。
純粋無垢な笑顔が、眩しい。なにより、嬉しい。心の奥底から嬉しい。
「うん、また来るね」
私は子供達に返事をする。
スカイランでいろいろあったけど、子供達に会えたのは、宝物かもしれない。ティム君がエリクサーで助かった。それだけで、スカイランに来た価値があることだ。
私は手を振る子供達に、見守られて御者台に座り、ベルトを締める。
「お姉ちゃん、また、来てね」
お花の女の子が、御者台の私に向かって、もう一度聞いてくる。
「うん、来るからね」
「待ってるー」
手を振る子供達に、私も手を振り返す。
ノワールがゆっくりとしたスピードで走り出す。
子供達は見えなくなるまで手を振ってくれた。
「私がスカイランでしたこと、間違ってなかったかね」
「そうやない? わざわざ、見送りに来てくれたんやからさ」
「そうやね。そうやね」
私はシロツメクサの花束を、そっと抱き締めた。
感謝の気持ちが詰まった花束を、しばらく抱えていた。
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※小説家になろう様にも投稿しています※