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連載
閑話 ルベル・アケル
話を聞いて初めは、宿代が浮く、そう思って受けたパーティーハウスの御用聞き。
でも、なぜパーティーランクがDになったばかりの自分達に話が来たかわからなかった。
事務局長のリティアさんは一言。
「貴女達の真面目な活動を評価してです」
その一言で、何か報われるような気がした。
中々パーティーランクが上がらず、武器の新調も出来ない。早々に自身がCランクになり、パーティー内実力が一番のセーシャは、一番貢献しているが、古い武器を整備しながら文句一つ言わない。
フォリアには、それが申し訳なかった。
御用聞きの時は、専用の詰所があり、最低限の生活必需品が揃っている。これで寒い冬場を凌げると思った。多少の蓄えができると。
御用聞きの仕事は問題なかった。一つは空き、もう一つは毎朝訪ねてもほとんど断られる。たまに買い物に荷物持ちにいくくらい。
そして、問題の最後の一つ。
高齢夫婦と小型犬。
件のテイマーの両親だ、リティアからくれぐれも失礼のないようにと釘を刺されていた。
構えていたが、高齢夫婦は穏やかで礼儀正しい夫婦だ。主人の方は、大工工房や孤児院の建設現場に行くくらい。妻は時折マルシェで買い物、それから小型犬の散歩だ。
で、この小型犬のかわいいこと。
初めは警戒されたが2週間もしたら、足にすがり付いてきた。毎日違うバンダナや小さな服を着て、自分達より衣装持ちだが、短い足で走りよって来る姿が可愛らしく、皆メロメロだ。
しばらくして、テイマーが帰って来た。黒髪のどこにでもいるような女性だ。そして、初めてフォレストガーディアンウルフとクリムゾンジャガーを間近で見たが、あまりの迫力で声が出なかった。
ドラゴンを一撃。
確かに、そうなんだろう。
彼らはすぐに改修された冷蔵庫ダンジョンに潜った。潜る前に、丁寧に残される両親を頼まれた、ああ、あの夫婦の子供だなと思った。
それから、もうすぐ御用聞きが終わる頃に、例の相談を受けて、エルバの一言で受ける事に。
テイマーの弟は、アイテムボックスが巨大くらいしかの話しは聞かなかったが、支援魔法を使えるようで、そのスキルアップの依頼だ。
支援魔法はよほどの魔法スキルがなければ、効果のない魔法だが、何か事情があるようだったが、報酬がいいし、何よりこの2体と行動できるならと、承諾した。
(うまく行けば、セーシャの新しい盾を新調できる。コーレンの剣もちょっとガタが来ているし。エルバの靴もぼろぼろだし)
フォリアはそう思った。
いざ、15階のボス部屋に挑んだ時、いつもなら総力戦なのに、支援魔法を受けると呆気なく終了した。
支援魔法は温かく、力が漲って来た。
いつもなら、ブルーメの魔法で足止めしながら、1体1体を相手するのだが、まさか自分が単独で首を刎ねることができるとは思わなかった。
ブルーメの風魔法の威力も、セーシャの身体強化・武器強化も明らかに威力が上がっていた。
支援魔法がここまでかと思ったが、肝心のコウタがそれでダウン。
休んでいた最中に、セーシャが思わずパーティーに入って欲しいと言ったが、そんなの無理だ。コウタが寄りかかっているフォレストガーディアンウルフがちらり、と見てきた。無理だ。本人は冗談なんだろうが。
ボス部屋に並んでいる間に、ユイと色々話した。
シーラのダンジョンの話しになった途端に異変が起きた。
クリムゾンジャガーが鼻息荒くユイに迫っていた、色々危険を感じたが、次の瞬間。
ごろん。
クリムゾンジャガーがごろん。
ユイがたまらないと抱きついている。
一瞬、フォリアも私も、と思ったがそんなこと出来ない。クリムゾンジャガーはユイが主人だから、甘えているんだろう。その後も低音でゴロゴロ言ってるクリムゾンジャガーは、ユイの足に巨大な頭をのせて甘えている。かわいいかもしれないが、サイズがでかすぎて、はっきりかわいいとは言いきれない。怖いからだ。向こうのフォレストガーディアンウルフは土煙を上げて尻尾をバタバタしている。まあ、かわいいかもしれない。こちらもサイズがでかすぎて、かわいいとは言いきれない。怖いからだ。
しばらくして、テイマーの従魔の実力をまざまざと見せられた。
クリムゾンジャガーの白い体に赤い花びらの模様が浮かび上がり、フォレストガーディアンウルフが開けた扉の向こうに飛び込んでいく。
そして、鼓膜に刺さるような破壊音。
自分達だけではない、並んでいた他の冒険者パーティー達まで口を開けたままになっている。
ユイ達がドロップ品を拾っている時に、恐る恐る覗くと、とんでもない量のドロップ品が転がっている。
ドロップ品だけでも、十分だと言ったわけが分かった。
手伝ったが、やはりとんでもない量だった。おそらく少なくとも10倍以上はある。最後に出てきた宝箱の蝶のブローチを、そういった依頼内容だからと、ユイは受け取らなかった。
ギルドに出したら、なんと35万になった。他のドロップ品と含めて50万近くになった。たった1日でダンジョンに数日分の潜った稼ぎだ。しかも、豪華な昼つき。白パンは食べたことはあるが、あんなに美味しいのは初めてだった。白いクリームの入ったパンもゴマにチーズの入ったパンも絶品だった。大食漢のセーシャは、倍以上食べれてうらやましい。ユイの母親の手作りだと言っていたが、材料費がかかっているのでは、と思ったが、旨いので手が止まらなかった。
査定を終えて、ギルドから出て、受け取って良かったのだろうか、とフォリアは悩んだ。
「そう言った内容で契約したんだろ? 受け取らないと、契約違反だよ」
セーシャがそう言った。
「そうね、でも予想以上だわ」
「ドラゴンを一撃なんだ、それくらいの差は出るさ。あの従魔と主人に手を出すな、ギルドの通達がよく分かったよ」
「従魔もそうだけど、ねえセーシャ、あのコウタさんの支援魔法どう思う?」
肩をすくめるセーシャ。
「あれだけの精度の支援魔法、本来ならどこかの騎士団に所属なりスカウトが来るレベルだよ。スキルレベルが低いのを、魔力操作で補っている感じだね。今のままでも、十分だろうけど、こんな依頼を出すんだから何か訳があるんだろ。フリーのままならその内に問題になるかもね」
「他の冒険者からスカウトが来る?」
「来るさ。しかも巨大アイテムボックスまであるんだ。でも、あの従魔を従えている姉を納得させればね」
「手放すとは思えないわね」
「だろうね。で、どうするんだい?」
「そうね。やっぱり契約した以上受け取りましょう。この依頼の間、ミズサワさん達の為に私達ができる全てをして、応えましょう」
フォリアの決断に誰も異論はない。
その後、賄いと称し、豪華な昼飯が出て、それが何よりも楽しみになった。柔らかいパンに挟まった、分厚い肉、しゃきしゃきの野菜、絶品のソース。米の上に卵で和えた分厚い肉は、噛むと肉汁があふれる。旨い、とにかく旨い。明日のお昼はなんだろう。そんなことを考えながら、真剣にユイ達が継続依頼を出さないか、それを受けれないかメンバーで話し合った。稼ぎもいいが、とにかく賄いと言って出される食事が旨い。そんな話をした金曜日。
異常な数のスライムに、思わず悲鳴。
冷蔵庫ダンジョンの1階のスライム部屋は、10匹程度しか出ない。もし、レベルの高い従魔が開けても、相手はスライムだ。たかをくくっていたが、想像以上のスライムに、情けなくも気持ち悪くて、受け入れられずに叫び声をあげてしまった。
「わんっ」
ゲンキ、と呼ばれていたフォレストガーディアンウルフの雄の子供が吠えた。
バリィィィッ
と、クラウンスライムの体が半分弾けた。そして残った半分になったクラウンスライムをユイがフライパンで仕留めた。フライパンだ、フライパン。あのフライパンだ、台所にあるフライパン。くどいがフライパンだ。
もう、どう突っ込んだらいいかわからなかった。
上位魔物だが、まだ生後一年も経っていない幼体が、魔法、しかも上位魔法の雷を使ったのだ。しかも威力が凄まじい。クラウンスライムはランク的にはCランクの魔物で、『ルベル・アケル』でも倒せなくはないが、巨体の為に時間と労力が必要だ。それをほぼ一撃で、半分を吹き飛ばしたのだ。魔法職のブルーメが首を振る。
「あり得ないわ、雷よ、覚醒するのが稀なのに、更にコントロールが難しい魔法なのよ。なんなのあの威力、おかしいわ、おかしいわよ。いくらフォレストガーディアンウルフでもあり得ないわ」
「まあ、使っているからそうなんだろうよ。あのドラゴンを一撃したやつの子供なんだ、私達の常識は当てはまらないよ」
セーシャは冷静に言い聞かせている。
最後の金曜日。それまで色々あったが、再び同じ依頼を出すことを聞いて、運良く受けられる事になった。
思うことはあるが、自分達の常識は抜きにして、この依頼を受けようと言うことになった。
「ねえ、次は何が食べられるかな?」
よく分かっていないエルバだけが、あっけらかんと笑っていた。
でも、なぜパーティーランクがDになったばかりの自分達に話が来たかわからなかった。
事務局長のリティアさんは一言。
「貴女達の真面目な活動を評価してです」
その一言で、何か報われるような気がした。
中々パーティーランクが上がらず、武器の新調も出来ない。早々に自身がCランクになり、パーティー内実力が一番のセーシャは、一番貢献しているが、古い武器を整備しながら文句一つ言わない。
フォリアには、それが申し訳なかった。
御用聞きの時は、専用の詰所があり、最低限の生活必需品が揃っている。これで寒い冬場を凌げると思った。多少の蓄えができると。
御用聞きの仕事は問題なかった。一つは空き、もう一つは毎朝訪ねてもほとんど断られる。たまに買い物に荷物持ちにいくくらい。
そして、問題の最後の一つ。
高齢夫婦と小型犬。
件のテイマーの両親だ、リティアからくれぐれも失礼のないようにと釘を刺されていた。
構えていたが、高齢夫婦は穏やかで礼儀正しい夫婦だ。主人の方は、大工工房や孤児院の建設現場に行くくらい。妻は時折マルシェで買い物、それから小型犬の散歩だ。
で、この小型犬のかわいいこと。
初めは警戒されたが2週間もしたら、足にすがり付いてきた。毎日違うバンダナや小さな服を着て、自分達より衣装持ちだが、短い足で走りよって来る姿が可愛らしく、皆メロメロだ。
しばらくして、テイマーが帰って来た。黒髪のどこにでもいるような女性だ。そして、初めてフォレストガーディアンウルフとクリムゾンジャガーを間近で見たが、あまりの迫力で声が出なかった。
ドラゴンを一撃。
確かに、そうなんだろう。
彼らはすぐに改修された冷蔵庫ダンジョンに潜った。潜る前に、丁寧に残される両親を頼まれた、ああ、あの夫婦の子供だなと思った。
それから、もうすぐ御用聞きが終わる頃に、例の相談を受けて、エルバの一言で受ける事に。
テイマーの弟は、アイテムボックスが巨大くらいしかの話しは聞かなかったが、支援魔法を使えるようで、そのスキルアップの依頼だ。
支援魔法はよほどの魔法スキルがなければ、効果のない魔法だが、何か事情があるようだったが、報酬がいいし、何よりこの2体と行動できるならと、承諾した。
(うまく行けば、セーシャの新しい盾を新調できる。コーレンの剣もちょっとガタが来ているし。エルバの靴もぼろぼろだし)
フォリアはそう思った。
いざ、15階のボス部屋に挑んだ時、いつもなら総力戦なのに、支援魔法を受けると呆気なく終了した。
支援魔法は温かく、力が漲って来た。
いつもなら、ブルーメの魔法で足止めしながら、1体1体を相手するのだが、まさか自分が単独で首を刎ねることができるとは思わなかった。
ブルーメの風魔法の威力も、セーシャの身体強化・武器強化も明らかに威力が上がっていた。
支援魔法がここまでかと思ったが、肝心のコウタがそれでダウン。
休んでいた最中に、セーシャが思わずパーティーに入って欲しいと言ったが、そんなの無理だ。コウタが寄りかかっているフォレストガーディアンウルフがちらり、と見てきた。無理だ。本人は冗談なんだろうが。
ボス部屋に並んでいる間に、ユイと色々話した。
シーラのダンジョンの話しになった途端に異変が起きた。
クリムゾンジャガーが鼻息荒くユイに迫っていた、色々危険を感じたが、次の瞬間。
ごろん。
クリムゾンジャガーがごろん。
ユイがたまらないと抱きついている。
一瞬、フォリアも私も、と思ったがそんなこと出来ない。クリムゾンジャガーはユイが主人だから、甘えているんだろう。その後も低音でゴロゴロ言ってるクリムゾンジャガーは、ユイの足に巨大な頭をのせて甘えている。かわいいかもしれないが、サイズがでかすぎて、はっきりかわいいとは言いきれない。怖いからだ。向こうのフォレストガーディアンウルフは土煙を上げて尻尾をバタバタしている。まあ、かわいいかもしれない。こちらもサイズがでかすぎて、かわいいとは言いきれない。怖いからだ。
しばらくして、テイマーの従魔の実力をまざまざと見せられた。
クリムゾンジャガーの白い体に赤い花びらの模様が浮かび上がり、フォレストガーディアンウルフが開けた扉の向こうに飛び込んでいく。
そして、鼓膜に刺さるような破壊音。
自分達だけではない、並んでいた他の冒険者パーティー達まで口を開けたままになっている。
ユイ達がドロップ品を拾っている時に、恐る恐る覗くと、とんでもない量のドロップ品が転がっている。
ドロップ品だけでも、十分だと言ったわけが分かった。
手伝ったが、やはりとんでもない量だった。おそらく少なくとも10倍以上はある。最後に出てきた宝箱の蝶のブローチを、そういった依頼内容だからと、ユイは受け取らなかった。
ギルドに出したら、なんと35万になった。他のドロップ品と含めて50万近くになった。たった1日でダンジョンに数日分の潜った稼ぎだ。しかも、豪華な昼つき。白パンは食べたことはあるが、あんなに美味しいのは初めてだった。白いクリームの入ったパンもゴマにチーズの入ったパンも絶品だった。大食漢のセーシャは、倍以上食べれてうらやましい。ユイの母親の手作りだと言っていたが、材料費がかかっているのでは、と思ったが、旨いので手が止まらなかった。
査定を終えて、ギルドから出て、受け取って良かったのだろうか、とフォリアは悩んだ。
「そう言った内容で契約したんだろ? 受け取らないと、契約違反だよ」
セーシャがそう言った。
「そうね、でも予想以上だわ」
「ドラゴンを一撃なんだ、それくらいの差は出るさ。あの従魔と主人に手を出すな、ギルドの通達がよく分かったよ」
「従魔もそうだけど、ねえセーシャ、あのコウタさんの支援魔法どう思う?」
肩をすくめるセーシャ。
「あれだけの精度の支援魔法、本来ならどこかの騎士団に所属なりスカウトが来るレベルだよ。スキルレベルが低いのを、魔力操作で補っている感じだね。今のままでも、十分だろうけど、こんな依頼を出すんだから何か訳があるんだろ。フリーのままならその内に問題になるかもね」
「他の冒険者からスカウトが来る?」
「来るさ。しかも巨大アイテムボックスまであるんだ。でも、あの従魔を従えている姉を納得させればね」
「手放すとは思えないわね」
「だろうね。で、どうするんだい?」
「そうね。やっぱり契約した以上受け取りましょう。この依頼の間、ミズサワさん達の為に私達ができる全てをして、応えましょう」
フォリアの決断に誰も異論はない。
その後、賄いと称し、豪華な昼飯が出て、それが何よりも楽しみになった。柔らかいパンに挟まった、分厚い肉、しゃきしゃきの野菜、絶品のソース。米の上に卵で和えた分厚い肉は、噛むと肉汁があふれる。旨い、とにかく旨い。明日のお昼はなんだろう。そんなことを考えながら、真剣にユイ達が継続依頼を出さないか、それを受けれないかメンバーで話し合った。稼ぎもいいが、とにかく賄いと言って出される食事が旨い。そんな話をした金曜日。
異常な数のスライムに、思わず悲鳴。
冷蔵庫ダンジョンの1階のスライム部屋は、10匹程度しか出ない。もし、レベルの高い従魔が開けても、相手はスライムだ。たかをくくっていたが、想像以上のスライムに、情けなくも気持ち悪くて、受け入れられずに叫び声をあげてしまった。
「わんっ」
ゲンキ、と呼ばれていたフォレストガーディアンウルフの雄の子供が吠えた。
バリィィィッ
と、クラウンスライムの体が半分弾けた。そして残った半分になったクラウンスライムをユイがフライパンで仕留めた。フライパンだ、フライパン。あのフライパンだ、台所にあるフライパン。くどいがフライパンだ。
もう、どう突っ込んだらいいかわからなかった。
上位魔物だが、まだ生後一年も経っていない幼体が、魔法、しかも上位魔法の雷を使ったのだ。しかも威力が凄まじい。クラウンスライムはランク的にはCランクの魔物で、『ルベル・アケル』でも倒せなくはないが、巨体の為に時間と労力が必要だ。それをほぼ一撃で、半分を吹き飛ばしたのだ。魔法職のブルーメが首を振る。
「あり得ないわ、雷よ、覚醒するのが稀なのに、更にコントロールが難しい魔法なのよ。なんなのあの威力、おかしいわ、おかしいわよ。いくらフォレストガーディアンウルフでもあり得ないわ」
「まあ、使っているからそうなんだろうよ。あのドラゴンを一撃したやつの子供なんだ、私達の常識は当てはまらないよ」
セーシャは冷静に言い聞かせている。
最後の金曜日。それまで色々あったが、再び同じ依頼を出すことを聞いて、運良く受けられる事になった。
思うことはあるが、自分達の常識は抜きにして、この依頼を受けようと言うことになった。
「ねえ、次は何が食べられるかな?」
よく分かっていないエルバだけが、あっけらかんと笑っていた。
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※小説家になろう様にも投稿しています※