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スカイランへ⑤
「戦車馬(チャリオット・ホース)やな」
父が帰って来てから、ノワールの鑑定。
ホークさんの説明だと、現在戦場を駆ける馬としては最強だと。
「何人も乗せた重い戦車を牽いて、縦横無尽に駆け抜けたことから付いた名前です」
と、ホークさん。へー。
「これであのレッサードラゴンの馬具を付けたら、騎士の小隊、いや中隊くらいでは歯が立たないでしょうね」
「アハハハ」
真面目にホークさんが言うので、生ぬるく笑うしかない。ノワール君や、君は何がしたいんやねん。いっつもブヒヒヒンッブヒヒヒンッ言って、亀やら猪やら蹴飛ばしてるけど。
「優衣。ノワール、属性魔法があるようや。風のようや」
更に強くなってるのに、属性魔法までっ。嫌な予感っ。
「ブヒヒヒンッ、ブヒヒヒンッ、ブヒヒヒーンッ」
『ユイ、訓練したいって言ってるのです』
『今から、ダンジョンに行く?』
「今日帰って来たばっかりっ。もう、そうやねえ。ギルドの地下訓練所は無理やね。ノワールはあの階段降りるのは」
ノワールの魔法の訓練。そこら辺でできない。なら、人気のないダンジョン内が最適かな?
「せめて、少し休ませてよ。査定もあるし、エマちゃんとマデリーンさんの装備品も出来上がるし」
「ブルブル…………」
く、戦車馬(チャリオット・ホース)になっても哀愁攻撃の凄かこと。
仕方ない、日帰りで考えよう。そろそろスカイランへ行かんといかんし。
ホークさんと日程確認する。
明日はノワールの種族名変更手続き、エマちゃんとマデリーンさんの装備品の受け取り。明後日は査定の受け取りし、そのまま日帰りダンジョン。明明後日は、母がアノで買い物したいと言うので、買い出しだ。その次の日、日帰りダンジョン。それからスカイランへ出発ね。結構忙しか。
今回、ドロップ品の買取がないから、ホークさん達も取り分ない。なので、何か希望がないか聞いてみた。
「日頃から頂きすぎですから」
「そんな訳には行きませんよ」
結局。
何か欲しいものがないか聞いてみた。日常生活品でもいいからと。
皆さん、お悩み。
ホークさんは電気髭剃り、チュアンさんはY県の有名な日本酒、マデリーンさんは美容液、ミゲル君は自分専用の裁縫道具一式、エマちゃんとテオ君はセレクトショップダリアの贈答用のお菓子詰め合わせ。
ホークさんは、元々前からちょっと無精髭があったんだけど、私が何気なく髭がないほうが似合うなんて言ってしまい、こまめに剃るようになった。別に無精髭が似合わないわけないんだけど。ホークさんは欧州のような顔立ちだからね。どちらかと言うと髭がないほうが若々しい感じがしたので、ポロッと言ってしまったのがきっかけ。本来の冒険者は髭なんて構っていられないんだけどね。せっかくルームがあるからと、電気髭剃りを希望した。チュアンさんは日本酒に目覚めている。アルコール解禁日には、いつも晃太オススメのお酒を大事に飲んでる。マデリーンさんは、お肌が最近乾くからと。一応、私が愛用している化粧水と乳液は必要品として渡してはあるけど、美容液の存在を知り、欲しかったと。言ってくれたら良かったのに。化粧水と乳液は日用品としてこれからも渡し、美容液は今後自分のお金でご褒美として買うそうだ。ミゲル君はてっきりビールかと思ったけど。どうやら昔取った杵柄か、何か作りたいと。エマちゃんとテオ君は、お地蔵様にお供えしているのを見て、前から気になっていたそうだ。
渡すと、皆さん嬉しそうだ。
『ユイ、私はケーキなのです。果実のたくさんのったやつなのです』
『私はパリパリの皮に果実を包んだのね』
『大きいのです』
『大きいのよ』
ビアンカとルージュまでっ。
「後ろ」
呆れて私が示すと。
『お、お母さんっ』
『ふ、太ってないはずよっ』
凄まじい形相の母に、必死にきゅるん、きゅるん。あまりにも必死にきゅるん、きゅるんしたので、ワンホールではなくカットケーキで妥協していた。
次の日、ノワールの登録を滞りなく終了。
そしてマデリーンさんとエマちゃんの装備品を取りに行く。
「おお、いい感じやん」
早速装着。
うん、マデリーンさんはワンピースの上から着て、剣でも持ったらまるで魔法剣士や。エマちゃんはジャケットがあるので、ベストのようなデザイン。うんうん、いい感じ。新しい籠手も着けて、うん、いい感じ。桜の刻印ありますよ。マデリーンさんは右肩、エマちゃんは右胸の辺りに。これで大体の装備品が揃ったかな? うーん、前線で斧で戦うチュアンさんに何か欲しいかな。玄武のドロップ品は未だに誰からもいい返事はない。うーん。
「まず、ユイさんとコウタさんの装備品を優先してください」
チュアンさんにまで、ホークさんと同じこと言われた。そうだね、ワイバーンの革で、ポンチョ作ってもらおう。それからホークさんから、大型のマントの希望あり。ノワールに乗るなら、私とホークさんをすっぽり包めるマントが欲しいと。防御の面からね。
うーん。マントにすっぽりかあ、ちょっと恥ずかしいが、背に腹はかえられぬ。
スカイランで、良いのが手に入りますように。がんばるのはビアンカとルージュなんだけどね。あ、ノワールもね。
出発までバタバタした。
一度だけ、ホークさんとチュアンさんが、ギルド主催の戦闘訓練に参加した。なんと講師はフェリクスさん。対象はCランク以上の戦闘職のみ。戦闘奴隷だけど、フェリクスさんは快く受けてくれた。私は外野で野次馬見学した。やっぱりSランクの冒険者の戦闘みたいもん。
野次馬で見たけど、流石Sランク冒険者。どうしたら、あんな金属の鎧で動けるんだろう? それも鋭いんだよ。木製の槍が空気を切り裂くような音を立てて、対戦相手を吹き飛ばしてる。相手は、なんと『金の虎』のガリストさん。全く手が出せないようで、鋭い突きで、ガリストさんが後ろに吹き飛んでいた。あの大柄のガリストさんが。
「動きは悪くない。だが、硬い。盾を併用するなら…………」
フェリクスさんがガリストさんに指導を続けている間に、アルスさんがこちらを見ているのに、気がついた。ぺこり、しておいた。アルスさんはお姉さんのリィマさんの影に隠れている。その近くでしゃがみこんだファングさんをフリンダさんが治療している。
ガリストさんは息を整え一礼して下がる。
いよいよホークさんとチュアンさんの番になる。
まずはチュアンさん。肉弾戦を希望して、ガチに殴り合いだ。フェリクスさんは最小限の動きで避けて、たった一撃、チュアンさんに与えただけで、膝をつかせた。速いなあ、フェリクスさんの動きが。
「チュアンさん、大丈夫ですか?」
「はい、問題はありません」
後ろに倒れた大きな体を起こすチュアンさん。100キロ超えてるのに、一撃だよ。これで武器でもあったらおしまいだ。
指導が終わり、チュアンさんが一礼して下がる。次はホークさんだ。木刀を持つホークさん、何故か足元にへっへいってる元気。はい、回収。
「くーん、くーん」
「ダメよ元気。お邪魔やろうもん」
「くーん」
リードを着けて、ビアンカに持ってもらう。すみません。
いざ、打ち合い。だけど、数回でホークさんの木刀が弾き飛ばされてしまう。
「基礎に従った動き、柔軟性もあるし、悪くはないがそれを生かしきれていない」
それからも指導されて、無事に終了した。
「いい経験になったな」
「そうだな」
帰り際、ホークさんとチュアンさんが戦闘訓練の反省会している。
「ユイちゃんっ」
何となく聞いていると、アルスさんが駆け寄って来た。かわいか。かわいか未成年が、駆け寄ってくる。一直線に、一直線に。
反省会していたホークさんとチュアンさんが、ば、と私の前に立つ。途端に、ぶー、みたいなアルスさん。か、かわいか。あ、新しい鎧着てる。
「アルスさん、どうしましたー」
ホークさんとチュアンさんの向こうのアルスさんに声をかける。
アルスさんが言葉を発する前に、リィマさんと復活したファングさんが慌てて回収する。
「アルス、お止めっ」
「すまないテイマーさんっ、また、今度ーっ」
「ユイちゃん、俺、むーっ」
ファングさんがごつい手でアルスさんの口を塞ぐ。
なんやなんや。
ファングさんとガリストさんが神輿のようにアルスさんを担ぎ上げて、嵐のように去っていった。
な、なんやったんやろう? 結局、分からなかった。
その後、買い出し、日帰りダンジョンを済ませ、やっとスカイランに向かう日となった。
父が帰って来てから、ノワールの鑑定。
ホークさんの説明だと、現在戦場を駆ける馬としては最強だと。
「何人も乗せた重い戦車を牽いて、縦横無尽に駆け抜けたことから付いた名前です」
と、ホークさん。へー。
「これであのレッサードラゴンの馬具を付けたら、騎士の小隊、いや中隊くらいでは歯が立たないでしょうね」
「アハハハ」
真面目にホークさんが言うので、生ぬるく笑うしかない。ノワール君や、君は何がしたいんやねん。いっつもブヒヒヒンッブヒヒヒンッ言って、亀やら猪やら蹴飛ばしてるけど。
「優衣。ノワール、属性魔法があるようや。風のようや」
更に強くなってるのに、属性魔法までっ。嫌な予感っ。
「ブヒヒヒンッ、ブヒヒヒンッ、ブヒヒヒーンッ」
『ユイ、訓練したいって言ってるのです』
『今から、ダンジョンに行く?』
「今日帰って来たばっかりっ。もう、そうやねえ。ギルドの地下訓練所は無理やね。ノワールはあの階段降りるのは」
ノワールの魔法の訓練。そこら辺でできない。なら、人気のないダンジョン内が最適かな?
「せめて、少し休ませてよ。査定もあるし、エマちゃんとマデリーンさんの装備品も出来上がるし」
「ブルブル…………」
く、戦車馬(チャリオット・ホース)になっても哀愁攻撃の凄かこと。
仕方ない、日帰りで考えよう。そろそろスカイランへ行かんといかんし。
ホークさんと日程確認する。
明日はノワールの種族名変更手続き、エマちゃんとマデリーンさんの装備品の受け取り。明後日は査定の受け取りし、そのまま日帰りダンジョン。明明後日は、母がアノで買い物したいと言うので、買い出しだ。その次の日、日帰りダンジョン。それからスカイランへ出発ね。結構忙しか。
今回、ドロップ品の買取がないから、ホークさん達も取り分ない。なので、何か希望がないか聞いてみた。
「日頃から頂きすぎですから」
「そんな訳には行きませんよ」
結局。
何か欲しいものがないか聞いてみた。日常生活品でもいいからと。
皆さん、お悩み。
ホークさんは電気髭剃り、チュアンさんはY県の有名な日本酒、マデリーンさんは美容液、ミゲル君は自分専用の裁縫道具一式、エマちゃんとテオ君はセレクトショップダリアの贈答用のお菓子詰め合わせ。
ホークさんは、元々前からちょっと無精髭があったんだけど、私が何気なく髭がないほうが似合うなんて言ってしまい、こまめに剃るようになった。別に無精髭が似合わないわけないんだけど。ホークさんは欧州のような顔立ちだからね。どちらかと言うと髭がないほうが若々しい感じがしたので、ポロッと言ってしまったのがきっかけ。本来の冒険者は髭なんて構っていられないんだけどね。せっかくルームがあるからと、電気髭剃りを希望した。チュアンさんは日本酒に目覚めている。アルコール解禁日には、いつも晃太オススメのお酒を大事に飲んでる。マデリーンさんは、お肌が最近乾くからと。一応、私が愛用している化粧水と乳液は必要品として渡してはあるけど、美容液の存在を知り、欲しかったと。言ってくれたら良かったのに。化粧水と乳液は日用品としてこれからも渡し、美容液は今後自分のお金でご褒美として買うそうだ。ミゲル君はてっきりビールかと思ったけど。どうやら昔取った杵柄か、何か作りたいと。エマちゃんとテオ君は、お地蔵様にお供えしているのを見て、前から気になっていたそうだ。
渡すと、皆さん嬉しそうだ。
『ユイ、私はケーキなのです。果実のたくさんのったやつなのです』
『私はパリパリの皮に果実を包んだのね』
『大きいのです』
『大きいのよ』
ビアンカとルージュまでっ。
「後ろ」
呆れて私が示すと。
『お、お母さんっ』
『ふ、太ってないはずよっ』
凄まじい形相の母に、必死にきゅるん、きゅるん。あまりにも必死にきゅるん、きゅるんしたので、ワンホールではなくカットケーキで妥協していた。
次の日、ノワールの登録を滞りなく終了。
そしてマデリーンさんとエマちゃんの装備品を取りに行く。
「おお、いい感じやん」
早速装着。
うん、マデリーンさんはワンピースの上から着て、剣でも持ったらまるで魔法剣士や。エマちゃんはジャケットがあるので、ベストのようなデザイン。うんうん、いい感じ。新しい籠手も着けて、うん、いい感じ。桜の刻印ありますよ。マデリーンさんは右肩、エマちゃんは右胸の辺りに。これで大体の装備品が揃ったかな? うーん、前線で斧で戦うチュアンさんに何か欲しいかな。玄武のドロップ品は未だに誰からもいい返事はない。うーん。
「まず、ユイさんとコウタさんの装備品を優先してください」
チュアンさんにまで、ホークさんと同じこと言われた。そうだね、ワイバーンの革で、ポンチョ作ってもらおう。それからホークさんから、大型のマントの希望あり。ノワールに乗るなら、私とホークさんをすっぽり包めるマントが欲しいと。防御の面からね。
うーん。マントにすっぽりかあ、ちょっと恥ずかしいが、背に腹はかえられぬ。
スカイランで、良いのが手に入りますように。がんばるのはビアンカとルージュなんだけどね。あ、ノワールもね。
出発までバタバタした。
一度だけ、ホークさんとチュアンさんが、ギルド主催の戦闘訓練に参加した。なんと講師はフェリクスさん。対象はCランク以上の戦闘職のみ。戦闘奴隷だけど、フェリクスさんは快く受けてくれた。私は外野で野次馬見学した。やっぱりSランクの冒険者の戦闘みたいもん。
野次馬で見たけど、流石Sランク冒険者。どうしたら、あんな金属の鎧で動けるんだろう? それも鋭いんだよ。木製の槍が空気を切り裂くような音を立てて、対戦相手を吹き飛ばしてる。相手は、なんと『金の虎』のガリストさん。全く手が出せないようで、鋭い突きで、ガリストさんが後ろに吹き飛んでいた。あの大柄のガリストさんが。
「動きは悪くない。だが、硬い。盾を併用するなら…………」
フェリクスさんがガリストさんに指導を続けている間に、アルスさんがこちらを見ているのに、気がついた。ぺこり、しておいた。アルスさんはお姉さんのリィマさんの影に隠れている。その近くでしゃがみこんだファングさんをフリンダさんが治療している。
ガリストさんは息を整え一礼して下がる。
いよいよホークさんとチュアンさんの番になる。
まずはチュアンさん。肉弾戦を希望して、ガチに殴り合いだ。フェリクスさんは最小限の動きで避けて、たった一撃、チュアンさんに与えただけで、膝をつかせた。速いなあ、フェリクスさんの動きが。
「チュアンさん、大丈夫ですか?」
「はい、問題はありません」
後ろに倒れた大きな体を起こすチュアンさん。100キロ超えてるのに、一撃だよ。これで武器でもあったらおしまいだ。
指導が終わり、チュアンさんが一礼して下がる。次はホークさんだ。木刀を持つホークさん、何故か足元にへっへいってる元気。はい、回収。
「くーん、くーん」
「ダメよ元気。お邪魔やろうもん」
「くーん」
リードを着けて、ビアンカに持ってもらう。すみません。
いざ、打ち合い。だけど、数回でホークさんの木刀が弾き飛ばされてしまう。
「基礎に従った動き、柔軟性もあるし、悪くはないがそれを生かしきれていない」
それからも指導されて、無事に終了した。
「いい経験になったな」
「そうだな」
帰り際、ホークさんとチュアンさんが戦闘訓練の反省会している。
「ユイちゃんっ」
何となく聞いていると、アルスさんが駆け寄って来た。かわいか。かわいか未成年が、駆け寄ってくる。一直線に、一直線に。
反省会していたホークさんとチュアンさんが、ば、と私の前に立つ。途端に、ぶー、みたいなアルスさん。か、かわいか。あ、新しい鎧着てる。
「アルスさん、どうしましたー」
ホークさんとチュアンさんの向こうのアルスさんに声をかける。
アルスさんが言葉を発する前に、リィマさんと復活したファングさんが慌てて回収する。
「アルス、お止めっ」
「すまないテイマーさんっ、また、今度ーっ」
「ユイちゃん、俺、むーっ」
ファングさんがごつい手でアルスさんの口を塞ぐ。
なんやなんや。
ファングさんとガリストさんが神輿のようにアルスさんを担ぎ上げて、嵐のように去っていった。
な、なんやったんやろう? 結局、分からなかった。
その後、買い出し、日帰りダンジョンを済ませ、やっとスカイランに向かう日となった。
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