文字の大きさ
大
中
小
317 / 878
連載
スカイランへ⑩
ノータから出発し、ノワールの馬車はブヒヒンと特急のように進む。
そして無事にスカイランに到着する。並んでいると、どうぞどうぞとコントのように促され、先に並んでいる人達にペコペコしながら進む。
1年ぶりのスカイランだ。うう、風が寒さが厳しくなってきた。
まずは到着報告、晃太は搬送物を納めにいく。
受付の女性は、赤髪の若い上品な人だ。
「はい、確認しました」
「ありがとうございます」
『ユイ、ダンジョンなのです』
『明日、行くの?』
「今、到着報告したばっかり」
ふごー、と鼻息荒かね、もう。
「わんわんっ」
「がうがうっ」
『ねぇね~、るりも~』
『くりちゅも~』
『ねえね~、ひすいもいきたい~』
「準備しようね~」
大型になってもかわいか仔達のおねだり。はいはい、聞きますよ~。
『私達と対応が違うのですっ』
『ひどいわっ』
「いやいや、あんた達がすると色々大変なんやけど」
確かに生活は支えて貰っているけどさ。ダンジョンに行くと、朝御飯して、片付け最中にちゅどんドカン。ドロップ品回収して、掃除して、2回目。ドロップ品回収して、ご飯準備して、3回目、もしくは移動。御昼御飯して、ちゅどんドカン。この間も御飯の準備や、仔達の世話。結構忙しいのよ。
『『ぶーぶー』』
「はいはい。せめて何日間か準備させて」
何日間ダンジョンに滞在するかで、両親達の食料品の準備もあるしね。宿を三日間取り、チェックインする。
さて、行動計画立てよう。
一軒家タイプの宿。ノワールも誘導して、私達もルームで寛ぐ。久しぶりにさくら庵のケーキセットにした。私とエマちゃん、マデリーンさんはホット柚子蜜ティーと和三盆のロールケーキと季節の果物添え。晃太はほうじ茶と抹茶のロールケーキ。ホークさんとテオ君はホットジンジャーと抹茶のティラミス。チュアンさんはホット柚子蜜ティーとブルーベリーソースのレアチーズケーキ。ミゲル君は柘榴酢のサイダーとチーズケーキと季節の果物添えだ。
ビアンカとルージュや仔達にもね、ロールケーキだ。
『足りないのですう』
『もう1つ欲しいわあ』
きゅるん。
「ダメよ、そんな顔しても」
ふーふーしてホット柚子蜜ティーを1口。
お茶しながら、今回の軍隊ダンジョンをどうするかだ。
30階への転移石があるし、ワイバーンの革さえ手に入ったらいいかな。はい、ビアンカとルージュからブーイングが飛ぶ。
晃太のスキルアップもあったねえ。でも、出来れば年末年始は家族揃いたい。ビアンカとルージュから仔達の訓練もしたいとあり、まずは中堅層に1週間挑み、一旦脱出。休息して転移石で30階から再開してワイバーンの革ゲットや、あ、お肉もね。年末には終了して、年越しはゆっくりしよう。いつマーファに帰るかだけど、雪に降られたら嫌だしね。うーん。それに年末年始に宿が空いているかだ。よし、明日確認して、もし空いてなければ、年越し前にスカイランを出よう。マーファに帰る途中で年越しだ。ダンジョン内では、サブ・ドアが開かないしね。そうしよう。
次の日はまず宿の確認。できればいまだに借りている宿がいいけど、残念、年末年始は予約あり。だけど、中堅層チャレンジ後は空いていたので予約する。別の宿も空いていないか確認すると、少し高額な宿なら空いているそうだ。考えて予約した。ダンジョンでてすぐに街をでるのもきついからね。それからマルシェで買い物してまわる。帰りにティム君のいる、孤児院に向かった。古びた建物だったけど、あちこち修繕されている。屋根とか窓枠、ドアなんて新品みたい。
「あ、テイマーのお姉ちゃんだーっ」
「「「「わーっ」」」」
『だから、なんで私が怖くないのですかーっ』
『好奇心の塊ねえ』
子供達がビアンカとルージュに群がる。仔達も大歓迎だ。人見知りのルリとクリスだが、以前訪ねたことがあるから、落ち着いてペロペロしている。ただ、元気だけは相変わらずなので、諦めのビアンカにリードを持ってもらう。
私は晃太、ホークさんに付き添われて牧師さんとお話しする。
「ああ、テイマー様、お久しぶりです」
「お久しぶりです」
「どうぞこちらに」
「はい」
私達は応接室に案内される。
「あのティム君は?」
「ええ、あれから元気に走り回っています。あの頃が嘘のようです」
「良かったです」
良かった良かった。
以前私がした寄付は、ほぼ建物の改修に使用された。危なかった床も張り替え、ロフトもあったが綺麗に改修されて勉強部屋になってると。3つあったシャワーブースの改修とぼろぼろだったテーブルとベッド、椅子を修繕と買い換えもした。500万程残ったが、すべて子供達の食費や生活品に回し、お風呂がないから、近くの公衆浴場に通う為の資金にしたと。
「すべてテイマー様のおかげ。それに新しい領主もここに予算を回してくれるようになって」
なんでも前領主が、持病が悪化したとかで引退。息子さん夫婦が引き継いだ。それからお妃レースに参加していた娘さん3人は、全員諦めて、それぞれの道を進みだしたと。長女はミーミル学園の教師、次女はどこかの男爵にトントン拍子で話が進んで、先月結婚。三女は首都の教会の事務の傍ら無料教室の講師を務めている。娘さん達にかかる費用がなくなり、新しい領主も質素倹約していて、あちこち街の壁の改修が進んでいる。
「今年の冬は憂いなく過ごせそうです」
そうなんや。でも、どうしよう、持って来ちゃったよ、寄付と温かいブランケット。渡してみたら大喜びしてくれた。あ、そうだ、薪。冬に向けて、いや、料理にいまだ釜戸率が高いから、薪を手に入れよう。軍隊ダンジョンでもおそらく、冷蔵庫ダンジョンのように切り株にすれば、一週間で戻るはず。それから林や森で果物植えてみよう。
よし、手に入れるリスト項目に、薪が追加された。ビアンカにお願いしよう。
牧師さんに挨拶して、子供達をぶら下げたビアンカとルージュの元に戻る。薪の説明をしたら、リクエストが飛ぶ。
『してもいいのですけど、油淋鶏が食べたいのですう』
『ずるいわ、私も。木くらい、魔法で斬り倒せるわよ』
「分かった。今日は中華にしようかね」
『早く帰るのですっ』
『エビエビエビ』
ふんがふんがいいながら、私に迫るビアンカとルージュ。もう、かわいかね。
「はいはい」
アルコールも解禁にするかね。
それからギルドに向かい、無料教室の寄付を申し出る。対応してくれたのは、綺麗なお姉さんアステリさんだった。新しい領主が色々してくれているそうだけど、給食の件もあるしね。小銭入れに白金貨2枚。
アステリさんに相談したら、ここでも給食に似た事をしていた。ただ、月に一回パンの支給だ。中にはその支給の日だけ、通わせる親がいるそうで、頭を悩ませていると。真面目に通わせている親や、通っている子供達にしたら、思うところあるよね。それに通っている子供を対象に渡しているんだから、そんな子供には渡すわけない。だが、パンを渡さなければ、質の悪い親は怒鳴り込んで来ると。まあ、そんなことしたら、警備の要注意人物のリストに上がっていて、2度と来れなくなる。ただ、可愛そうなのはその子供だ。中にはそれを理由にいじめをされている。無料教室の教師が間に入ったりして色々対応している。それから出来れば週2回通って欲しいがなかなか上手く行ってないみたい。
私の寄付は、給食費用に宛てられる。
調理場や人員の確保、材料の購入をして、出来れば最低月に2~3回行い、持ち帰りではなく、みんなで一緒に食べてから帰るスタイルに変えていくと。前から考えられていたことのようで、案外スムーズに行きそう。給食が出たら、通わせるいいきっかけになるからね。
「お願いします」
「必ず、実現させます」
アステリさん、綺麗やけど、カッコいい。女の私が惚れ惚れする礼をした。
そして無事にスカイランに到着する。並んでいると、どうぞどうぞとコントのように促され、先に並んでいる人達にペコペコしながら進む。
1年ぶりのスカイランだ。うう、風が寒さが厳しくなってきた。
まずは到着報告、晃太は搬送物を納めにいく。
受付の女性は、赤髪の若い上品な人だ。
「はい、確認しました」
「ありがとうございます」
『ユイ、ダンジョンなのです』
『明日、行くの?』
「今、到着報告したばっかり」
ふごー、と鼻息荒かね、もう。
「わんわんっ」
「がうがうっ」
『ねぇね~、るりも~』
『くりちゅも~』
『ねえね~、ひすいもいきたい~』
「準備しようね~」
大型になってもかわいか仔達のおねだり。はいはい、聞きますよ~。
『私達と対応が違うのですっ』
『ひどいわっ』
「いやいや、あんた達がすると色々大変なんやけど」
確かに生活は支えて貰っているけどさ。ダンジョンに行くと、朝御飯して、片付け最中にちゅどんドカン。ドロップ品回収して、掃除して、2回目。ドロップ品回収して、ご飯準備して、3回目、もしくは移動。御昼御飯して、ちゅどんドカン。この間も御飯の準備や、仔達の世話。結構忙しいのよ。
『『ぶーぶー』』
「はいはい。せめて何日間か準備させて」
何日間ダンジョンに滞在するかで、両親達の食料品の準備もあるしね。宿を三日間取り、チェックインする。
さて、行動計画立てよう。
一軒家タイプの宿。ノワールも誘導して、私達もルームで寛ぐ。久しぶりにさくら庵のケーキセットにした。私とエマちゃん、マデリーンさんはホット柚子蜜ティーと和三盆のロールケーキと季節の果物添え。晃太はほうじ茶と抹茶のロールケーキ。ホークさんとテオ君はホットジンジャーと抹茶のティラミス。チュアンさんはホット柚子蜜ティーとブルーベリーソースのレアチーズケーキ。ミゲル君は柘榴酢のサイダーとチーズケーキと季節の果物添えだ。
ビアンカとルージュや仔達にもね、ロールケーキだ。
『足りないのですう』
『もう1つ欲しいわあ』
きゅるん。
「ダメよ、そんな顔しても」
ふーふーしてホット柚子蜜ティーを1口。
お茶しながら、今回の軍隊ダンジョンをどうするかだ。
30階への転移石があるし、ワイバーンの革さえ手に入ったらいいかな。はい、ビアンカとルージュからブーイングが飛ぶ。
晃太のスキルアップもあったねえ。でも、出来れば年末年始は家族揃いたい。ビアンカとルージュから仔達の訓練もしたいとあり、まずは中堅層に1週間挑み、一旦脱出。休息して転移石で30階から再開してワイバーンの革ゲットや、あ、お肉もね。年末には終了して、年越しはゆっくりしよう。いつマーファに帰るかだけど、雪に降られたら嫌だしね。うーん。それに年末年始に宿が空いているかだ。よし、明日確認して、もし空いてなければ、年越し前にスカイランを出よう。マーファに帰る途中で年越しだ。ダンジョン内では、サブ・ドアが開かないしね。そうしよう。
次の日はまず宿の確認。できればいまだに借りている宿がいいけど、残念、年末年始は予約あり。だけど、中堅層チャレンジ後は空いていたので予約する。別の宿も空いていないか確認すると、少し高額な宿なら空いているそうだ。考えて予約した。ダンジョンでてすぐに街をでるのもきついからね。それからマルシェで買い物してまわる。帰りにティム君のいる、孤児院に向かった。古びた建物だったけど、あちこち修繕されている。屋根とか窓枠、ドアなんて新品みたい。
「あ、テイマーのお姉ちゃんだーっ」
「「「「わーっ」」」」
『だから、なんで私が怖くないのですかーっ』
『好奇心の塊ねえ』
子供達がビアンカとルージュに群がる。仔達も大歓迎だ。人見知りのルリとクリスだが、以前訪ねたことがあるから、落ち着いてペロペロしている。ただ、元気だけは相変わらずなので、諦めのビアンカにリードを持ってもらう。
私は晃太、ホークさんに付き添われて牧師さんとお話しする。
「ああ、テイマー様、お久しぶりです」
「お久しぶりです」
「どうぞこちらに」
「はい」
私達は応接室に案内される。
「あのティム君は?」
「ええ、あれから元気に走り回っています。あの頃が嘘のようです」
「良かったです」
良かった良かった。
以前私がした寄付は、ほぼ建物の改修に使用された。危なかった床も張り替え、ロフトもあったが綺麗に改修されて勉強部屋になってると。3つあったシャワーブースの改修とぼろぼろだったテーブルとベッド、椅子を修繕と買い換えもした。500万程残ったが、すべて子供達の食費や生活品に回し、お風呂がないから、近くの公衆浴場に通う為の資金にしたと。
「すべてテイマー様のおかげ。それに新しい領主もここに予算を回してくれるようになって」
なんでも前領主が、持病が悪化したとかで引退。息子さん夫婦が引き継いだ。それからお妃レースに参加していた娘さん3人は、全員諦めて、それぞれの道を進みだしたと。長女はミーミル学園の教師、次女はどこかの男爵にトントン拍子で話が進んで、先月結婚。三女は首都の教会の事務の傍ら無料教室の講師を務めている。娘さん達にかかる費用がなくなり、新しい領主も質素倹約していて、あちこち街の壁の改修が進んでいる。
「今年の冬は憂いなく過ごせそうです」
そうなんや。でも、どうしよう、持って来ちゃったよ、寄付と温かいブランケット。渡してみたら大喜びしてくれた。あ、そうだ、薪。冬に向けて、いや、料理にいまだ釜戸率が高いから、薪を手に入れよう。軍隊ダンジョンでもおそらく、冷蔵庫ダンジョンのように切り株にすれば、一週間で戻るはず。それから林や森で果物植えてみよう。
よし、手に入れるリスト項目に、薪が追加された。ビアンカにお願いしよう。
牧師さんに挨拶して、子供達をぶら下げたビアンカとルージュの元に戻る。薪の説明をしたら、リクエストが飛ぶ。
『してもいいのですけど、油淋鶏が食べたいのですう』
『ずるいわ、私も。木くらい、魔法で斬り倒せるわよ』
「分かった。今日は中華にしようかね」
『早く帰るのですっ』
『エビエビエビ』
ふんがふんがいいながら、私に迫るビアンカとルージュ。もう、かわいかね。
「はいはい」
アルコールも解禁にするかね。
それからギルドに向かい、無料教室の寄付を申し出る。対応してくれたのは、綺麗なお姉さんアステリさんだった。新しい領主が色々してくれているそうだけど、給食の件もあるしね。小銭入れに白金貨2枚。
アステリさんに相談したら、ここでも給食に似た事をしていた。ただ、月に一回パンの支給だ。中にはその支給の日だけ、通わせる親がいるそうで、頭を悩ませていると。真面目に通わせている親や、通っている子供達にしたら、思うところあるよね。それに通っている子供を対象に渡しているんだから、そんな子供には渡すわけない。だが、パンを渡さなければ、質の悪い親は怒鳴り込んで来ると。まあ、そんなことしたら、警備の要注意人物のリストに上がっていて、2度と来れなくなる。ただ、可愛そうなのはその子供だ。中にはそれを理由にいじめをされている。無料教室の教師が間に入ったりして色々対応している。それから出来れば週2回通って欲しいがなかなか上手く行ってないみたい。
私の寄付は、給食費用に宛てられる。
調理場や人員の確保、材料の購入をして、出来れば最低月に2~3回行い、持ち帰りではなく、みんなで一緒に食べてから帰るスタイルに変えていくと。前から考えられていたことのようで、案外スムーズに行きそう。給食が出たら、通わせるいいきっかけになるからね。
「お願いします」
「必ず、実現させます」
アステリさん、綺麗やけど、カッコいい。女の私が惚れ惚れする礼をした。
感想 867
あなたにおすすめの小説
「今日限りで君を解雇する」――20年仕えた地味なメイドですが、料理も手紙も暗殺者対策も私がやっていました
「エナメル。今日限りで君を解雇する」
20年仕えた屋敷をクビになった、地味なエルフのメイド・エナメル。
だが、晩餐会の料理も、侯爵への手紙も、調度品の手配も、屋敷を狙う暗殺者の処理も――すべて彼女が陰で支えていたものだった。
エナメルが去ったあと、屋敷は少しずつ綻び始める。
一方の本人は、そんなことも知らず。
「さて。次はどこで雇っていただきましょう」
地味で目立たないベテランメイド・エナメルの、新しい奉公先探しが始まる。
※本作は『メイドのエナメルは今日も静かにお仕えします』シリーズの第1作です。本作単体でもお楽しみいただけます。
異世界転移した僕と彼のスキルは「貯金箱」と「犬」だったので即追放。でもこれが意外と強かった
高校の英語の授業中、勇者召喚で僕たちクラスメイト7名は異世界にやって来た。
目的は魔王討伐では無くて、高難易度ダンジョンの封印?!
でも僕ユイトのスキルは「貯金箱」、エイジは「犬」。
役立たず認定で、二人とも城を追放されてしまった。
のんびり暮らそうとしたけどそうもいかなくなって。
僕たちは奇妙なスキルを駆使して異世界で生き延びる。
緩~いファンタージ物語です。のんびりと書いていきます。
本文はなるべく簡潔に、サクサク進むようにしています。
暇つぶしに読んでいただいて、楽しんでくださると嬉しいです。
なろう様にも投稿。
捨てられた幼女ですが、公爵家に拾われたら家族みんなの愛が重すぎました
幼い頃に母親に捨てられ、孤児院で暮らしていた少女リリア。
「役に立たなければ、また捨てられる」
そう思い、いつも“いい子”でいようとしていた彼女は、ある日、公爵家の馬車を助けたことをきっかけに屋敷へ招かれる。
そこで待っていたのは、娘に甘すぎる公爵夫妻に、妹を構いたがるレオン、そしてリリアを甘やかしたい使用人たち。
戸惑いながらも、少しずつ公爵家に居場所を見つけていくリリア。やがて夫妻から「私たちの娘になってほしい」と告げられて――。
これは、捨てられないために“いい子”でいようとしていた少女が、重すぎるほどの愛情に包まれ、本当の家族を見つけていく物語。
初夜のあとに愛する人がいると言われたので祝福で身体の時間を一日戻しました
夫婦となって初めて迎えた夜、セレンティアは夫リオールから「俺には、愛する人がいる」と告げられる。
彼が初夜を済ませた理由は、三年後に白い結婚として婚姻無効を申し立てられないようにするためだった。
けれどリオールは知らなかった。セレンティアの祝福《一日回帰》が、自分自身の身体にも使えることを。
セレンティアは自分の身体の時間を一日前へ戻し、三年間、侯爵家の妻として務めを果たすことを決める。
夫に愛されるためではない。三年後、白い結婚としてこの家を出ていくために。
番の証が出ないと捨てられたので、神様に確かめてもらいます
「番の証が出ぬからだ」
和平のために獣人国へ嫁いで四年。獣王ガイウス様との儀式は三度、三度とも証は出ませんでした。「人間の娘では神は認めぬ」——そう言われて、離宮へ。
雨漏りの下で眠り、井戸をさらい、畑を耕して。泣かなかったのは強いからではありません。獣人には、匂いでわかってしまうから。
嫁ぐ前に三年かけて読み込んだ婚姻法典。その第四章に、こうありました。
『既に誓いを結びたる者が、重ねて他者と誓いを立てんとする時、神は後の誓いを認めず』
——証が出なかったのは、わたしが人間だからではない。
長老会に申し立てたのは、解釈の確認だけ。わたしは悪くない、とは一言も書きませんでした。
遡誓の儀で神殿に浮かんだのは、六年前の秋の「成立」と、わたしの三度の「不成立(重複)」でした。
飛べないと捨てられたので、竜ごと出て行きます
「お前は竜に乗れもしない、ただの妻だろう」
竜騎士団長の夫はそう言って、飛べる従騎士の娘を選びましたわ。
ええ、わたくしは飛べません。十二年、地上におりました。
夜明け前に三十一頭の寝息を数え、歯を磨き、爪の砂を取り、冬に毛布を掛け、契約を編んで。——この国でただひとりの「調律者」として。
竜は、人を乗せない生き物ですのよ。竜自身が「乗せてもいい」と決めない限り。そして竜が誰の言葉で頷いてきたか、あの方は十二年、一度もお考えにならなかった。
離縁されて、わたくしは竜舎を出ました。
三日後から、竜は一頭も飛ばなくなりましたの。
怒っているのではありませんのよ。竜は報復をしませんもの。ただ——寂しいのです。
そして来月は、三年に一度の、契約更新日ですわ。
土下座する王妃の座などいらないので、冒険者に転職します。
「私が愛しているのはエルナ。君だけだ」
エルナは自分の夫でありハーメルン王国の国王であるカメルを愛していた。
彼がどれほど自分より隣国の聖女を優先しようとも。
結婚して二年が経っても初夜を迎えたことがなかろうとも。
しかし。
「エルナ。君に失望した。聖女を陥れていじめるとはな。罪を認め、ひざまずいて謝罪するように」
一年に一度の建国記念宴会であり結婚記念日に、カメルはすべての貴族や外国の使節団が見ている前で、エルナに身に覚えのない罪を認めろと断罪した。
愛が壊れるのは一瞬。
だからこそ、エルナはその場でひざまずいた。頭を地面にこすりつけて謝罪した。
「聖女を陰謀にかけた大罪人エルナは、この時間をもって王妃の座から退き、平民となりますことをお許しください。聖女様とどうかお幸せに」
*ゆるい設定です。不快に思われる方はブラウザバックをお願いします。
婚約破棄を受け入れた瞬間、王太子殿下が青ざめました
王都でもっとも華やかな春の夜会。その中央で、王太子エドワードは冷ややかな目を婚約者へ向けていた。
「リリアーナ・フォン・アルベルト公爵令嬢。君との婚約を、ここで破棄する」
会場が一瞬で静まり返る。
リリアーナは淡い金髪を揺らし、静かに王太子を見つめ返した。
「理由を、お聞きしてもよろしいでしょうか」
「理由など明白だ。君は嫉妬深く、心が狭い。それに比べ、私は真実の愛を見つけた」
そう言ってエドワードが隣へ引き寄せたのは、男爵令嬢のセシリアだった。