422 / 876
連載
同郷?①
「ど、どういう事でしょうか」
深刻、の言葉に私は不安を覚える。
始祖神様はふう、と息をつく。
「此度の件、異世界人が起こした厄災に関連した、偶発的魔物の氾濫(スタンビード)と認識。創世時に律した、神による直接下界介入禁忌・過剰干渉不可の適用外と見なす」
ん? ん? なんや、難しい言葉が。
始祖神様が言っている間、後ろでバタバタ。ちら、と見ると皆さんそれぞれ膝をついている。ビアンカやルージュが、床に頭が着くくらい低くしているから、察してくれたかな。
「ふう、自分で律したとは言え、なんとももどかしいのう」
「始祖神様?」
本当になんやろ?
「お嬢さん」
「あ、はい」
きっと分からない事をいろいろ教えてくれるんやろうね。でも、まだ、ちゃんと報告してない。
「まずは危険な目に合わせて、申し訳なかったの」
あ、あの雨の中、ノワールに騎乗したことかな。
「大変だったのはホークさんやノワールでしたので」
私はただ乗ってただけ。
「で、お嬢さんの疑問に答えたいのじゃが。何から聞きたい?」
「えーっと、まずはあの雨を降らせていたのは? 何故、私達に依頼を? 何故今ごろになってビアンカやルージュが気がついたんですか?」
疑問。
以前、あの王冠山付近をビアンカとルージュが、アレスと共に走っても何も起きなかった。それなのに、何故今回反応があったのか?
何故、始祖神様は私達に、王冠山付近を廻るように指示したのか? こうなるって薄々分かっていたと思うのに。
そして何より、あんなゲリラ豪雨を降らせ、土石流まで発生させたのは何かだ。
「まあ、そうじゃろうな。では、一つずつ話そうかの」
始祖神様は息を着く。
「あの雨を降らせたのは、お嬢さん方がいう王冠山の内側に眠っていたのじゃよ」
眠っていた?
「少し長い話になるが、よいかの?」
「はい」
ならお茶の準備ば。
母が玉露を淹れて準備していた。
それは何千年か前の話。
別の世界から逃げ延びてきた一族があった。まだその時は別の世界からの移民を受けていた頃ね。
その一族は神子と呼ばれる人を筆頭として纏まっていた。彼らは未開の土地を根気よく開拓して、何とか生活。それでもこちらには魔物がいる。その魔物から一族を守っていたのは、連れてきた一匹の蛇だったと。いやや、蛇。
こちらの魔力と波長があったのか、普通サイズの蛇はあっという間に大蛇になり、襲い来る魔物を撃退。食べられる魔物の狩り、開拓に助けになる働き者の蛇で、一族の守り神と崇められていた。初めは30人程の集落だったが、年月が経ち、200人以上となった頃。
「感染症が原因で、呆気なく、な」
もとよりきちんとした感染対策がなされているわけなく、もう、数年も経たずに全滅。
「蛇だけは生き残った。いや、残された、じゃな。だがな、蛇はそれが理解できなかったのじゃよ」
蛇だもん。
「こちらの魔力と相性がよく、短期間に進化を繰り返し、ある程度の知能があったのだがなぁ」
蛇は、一族皆亡くなったのが分からず、それでも集落を守り続けた。何年も、何十年も、何百年も。その間も蛇は進化。すでに蛇と表現していいのかな?
「ある時、一体の魔物が襲ってきた」
それは進化し、強大になった蛇に挑んだ。
「皇帝竜(カイザードラゴン)じゃ」
……………………ん? まさか、ビアンカとルージュの言う、『主様』では? あまりいそうな感じもないし。
始祖神様は手を横にさっと払う。
ダイニングテーブルに現れたのは、近未来のような立体的な地図。すごか、さすが神様。
少し隆起のある地図。
「進化した蛇は、いつものようにかつて一族が住んでいた場所を守ろうと、皇帝竜(カイザードラゴン)と激しくぶつかり合った。その結果」
ぱちん、と指を鳴らす始祖神様。
すると地図は蠢く。まるで爆発でもあったような動き。いや、始祖神様の口振りや、爆発したんやないかな?
「衝撃波で、王冠山ができた」
どんな衝撃ー? 山ってそんな理由で出来るのー? 下手したら歴史的な大怪獣合戦やなかったのー?
蠢いていた地図は、王冠山の形を作り動かなくなる。
「決着ははっきりつかず、皇帝竜(カイザードラゴン)に軍配はかろうじて上がったが、なんとか競り勝っただけじゃった。蛇も、その際のキズが原因で仮死状態となり、王冠山の内側で眠りについた」
それが起きたってことやね。だけど、蛇も災難だね、その一族の為に頑張ってさ。
「月日が流れ、王冠山の周囲は森から、魔の森へ、そして魔境となった」
なるほど。イシスが言ってたやつね。なら、今回雨を降らせたのはその蛇になるのかな? いやや、蛇。
「で、その蛇じゃが。従魔達よ、種族の予想はつくかの?」
急に話を振られて、戸惑いの表情を浮かべている。
『私は自信ないのです』
『私も。よく分からない気配でした』
ビアンカとルージュは、分からないみたい。
『イシスよ、分かるか? 我にはだいたいの予想は着くぞっ』
どやややぁっ、なアレス。
『ヒュドラノ亜種カト』
アレスが、がーんっ、みたいな。イシスが言っちゃったけど、同じ考えだったのかな。出し惜しみするからよ。
ヒュドラってたしか、あれよね、首が9もある蛇でしょ? やだあ、さらにやだあ。
「どうしてそう判断したのじゃ?」
始祖神様がイシスに聞く。
「本体ハヒトツ、シカシ、ソレニ付属シタヨウナ首ガ、ヤッツ。首ハソレゾレニ意思ガ有ルヨウデシタ」
ふーん、さすがイシスやなあ、よく分かった…………………
本体が1つで首が8つ? 首が8つの蛇?
え、聞いたことあるんですけどっ。えっ? あれ神話の話でしょ? 違う? めっちゃ、有名な話しなんですけどっ。
「お嬢さん、心当たりは?」
来たーっ。私に振るってことはそんなんやーっ。ちらっと晃太を見ると、似たような顔だ。
「ヤマタノオロチ、ですか?」
「正解」
嘘やろ?
て、ことは、その一族って。
「そう、お嬢さんと同郷じゃ。お嬢さん達にしたら、ずっと昔の先祖かの。その蛇も、向こうにいれば、相応の寿命じゃったんじゃが、こちらの魔力の波長と相性が良すぎたようでなあ。トントン拍子で進化したのじゃよ」
ヤマタノオロチって、神様が、神話に出てくるスサノオノミコトが倒したんやなかったっけ?
「本来ならば、ヤマタノオロチはそのまま王冠山内で眠り続け、静かに朽ち果てるはずだったのじゃが」
ふう、と始祖神様。
「地脈に含まれる魔力が乱れ、その刺激で、ヤマタノオロチが半覚醒しかけてな。そのまま再び眠りにつくか、覚醒するかよく分からんでなあ。だからといって儂らが刺激したら、王冠山どころか周辺一辺を吹き飛ばすからのう」
やめて。
「件の皇帝竜(カイザードラゴン)に神託を下そうかとも思ったのじゃが。絶対大惨事になりそうでなあ」
やめて。
「そこでまずはお嬢さん方にお願いしたんじゃ。複数のエリアボスクラスの魔物が近くにいて、ヤマタノオロチが排除に動き覚醒に近付くか、静観して眠りの体勢に入るか。まあ、結果あれじゃ。ヤマタノオロチの感知範囲外に出たから、今は静かになったがこのままならいずれは覚醒するじゃろう」
下手に刺激せんほうが、良かったんやない?
「一度は半覚醒してしまった。遅かれ早かれ覚醒はする。その時、ヤマタノオロチは混乱するじゃろう。周辺は年月が経ち過ぎて、変貌し、そこが一族と過ごした場所とは分からず、這い出す。そうなれば、魔の森は壊滅。魔境も無事にはすまん。周辺の町は瞬時に崩壊し、国すらも飲み込み、この大陸は火の海になるじゃろう」
やめて。絶対やめて。魔境には鼻水君達が。カルーラにはレディ・ロストークやパーヴェルさんやシスター・アモルさんが。リティアさんやタージェルさん、ダイアナちゃん、パーカーさん達の顔が浮かぶ。たくさんの人達の笑顔が浮かぶ。
「そうなった時、ヤマタノオロチと誰が対峙する?」
私はそっとイシスとアレスを見るが、視線を反らされた。厄災クラスのこの2人が無理なら、どうにもできんのかな、ああ、どうしよう。
ああ、うちらには無理やない? どうするん? そもそも地脈の魔力が乱れた原因は?
「現在、ヤマタノオロチと対峙するだけの力があり、神託を下してすぐに動けるのは、皇帝竜(カイザードラゴン)のみ。そうなれば、辺り一帯は吹き飛ぶ、文字通りに」
「どうにもならないのでしょうか?」
それだけは絶対に避けないと。
予想以上に事態が深刻や。
「お嬢さん」
始祖神様が、私に向き合う。
「本来なら別大陸まで逃げなさいと、言うべきなのじゃろう。だが、お嬢さんならそんなことは望まないはず」
無理や、そんなこと。
失いたくないものが、いっぱいあるんやから。
始祖神様が立ち上がる。
「テイマー、ユイ・ミズサワよ」
フルネーム。初めてやない? 神様に名前呼ばれたの?
「この世界の創造主、始祖神より、そなたに神託を下す」
私は反射的に膝をつく。そうせんと、いかん、そんな気がした。
「王冠山に潜む、ヤマタノオロチを退治せよ」
静かに下されたその言葉に、腹の奥が引き締まる。
「もちろん、儂らがサポートしよう。その為の適応外にしたのじゃから」
本来、神様はこちらに干渉できないって、聞いた。限られた人に限られたスキルを通して、ほんの少しだけ。それにはいろいろ理由がある。神様の力を利用して、悪用する人がいるからだ。
「ヤマタノオロチが半覚醒した地脈の魔力の乱れ。それを引き起こしたのは、聖女カレン・ミヤノサワ達が起こした厄災じゃ」
あれから2年経ってもまだ、縁の切れない話になりそうや。
深刻、の言葉に私は不安を覚える。
始祖神様はふう、と息をつく。
「此度の件、異世界人が起こした厄災に関連した、偶発的魔物の氾濫(スタンビード)と認識。創世時に律した、神による直接下界介入禁忌・過剰干渉不可の適用外と見なす」
ん? ん? なんや、難しい言葉が。
始祖神様が言っている間、後ろでバタバタ。ちら、と見ると皆さんそれぞれ膝をついている。ビアンカやルージュが、床に頭が着くくらい低くしているから、察してくれたかな。
「ふう、自分で律したとは言え、なんとももどかしいのう」
「始祖神様?」
本当になんやろ?
「お嬢さん」
「あ、はい」
きっと分からない事をいろいろ教えてくれるんやろうね。でも、まだ、ちゃんと報告してない。
「まずは危険な目に合わせて、申し訳なかったの」
あ、あの雨の中、ノワールに騎乗したことかな。
「大変だったのはホークさんやノワールでしたので」
私はただ乗ってただけ。
「で、お嬢さんの疑問に答えたいのじゃが。何から聞きたい?」
「えーっと、まずはあの雨を降らせていたのは? 何故、私達に依頼を? 何故今ごろになってビアンカやルージュが気がついたんですか?」
疑問。
以前、あの王冠山付近をビアンカとルージュが、アレスと共に走っても何も起きなかった。それなのに、何故今回反応があったのか?
何故、始祖神様は私達に、王冠山付近を廻るように指示したのか? こうなるって薄々分かっていたと思うのに。
そして何より、あんなゲリラ豪雨を降らせ、土石流まで発生させたのは何かだ。
「まあ、そうじゃろうな。では、一つずつ話そうかの」
始祖神様は息を着く。
「あの雨を降らせたのは、お嬢さん方がいう王冠山の内側に眠っていたのじゃよ」
眠っていた?
「少し長い話になるが、よいかの?」
「はい」
ならお茶の準備ば。
母が玉露を淹れて準備していた。
それは何千年か前の話。
別の世界から逃げ延びてきた一族があった。まだその時は別の世界からの移民を受けていた頃ね。
その一族は神子と呼ばれる人を筆頭として纏まっていた。彼らは未開の土地を根気よく開拓して、何とか生活。それでもこちらには魔物がいる。その魔物から一族を守っていたのは、連れてきた一匹の蛇だったと。いやや、蛇。
こちらの魔力と波長があったのか、普通サイズの蛇はあっという間に大蛇になり、襲い来る魔物を撃退。食べられる魔物の狩り、開拓に助けになる働き者の蛇で、一族の守り神と崇められていた。初めは30人程の集落だったが、年月が経ち、200人以上となった頃。
「感染症が原因で、呆気なく、な」
もとよりきちんとした感染対策がなされているわけなく、もう、数年も経たずに全滅。
「蛇だけは生き残った。いや、残された、じゃな。だがな、蛇はそれが理解できなかったのじゃよ」
蛇だもん。
「こちらの魔力と相性がよく、短期間に進化を繰り返し、ある程度の知能があったのだがなぁ」
蛇は、一族皆亡くなったのが分からず、それでも集落を守り続けた。何年も、何十年も、何百年も。その間も蛇は進化。すでに蛇と表現していいのかな?
「ある時、一体の魔物が襲ってきた」
それは進化し、強大になった蛇に挑んだ。
「皇帝竜(カイザードラゴン)じゃ」
……………………ん? まさか、ビアンカとルージュの言う、『主様』では? あまりいそうな感じもないし。
始祖神様は手を横にさっと払う。
ダイニングテーブルに現れたのは、近未来のような立体的な地図。すごか、さすが神様。
少し隆起のある地図。
「進化した蛇は、いつものようにかつて一族が住んでいた場所を守ろうと、皇帝竜(カイザードラゴン)と激しくぶつかり合った。その結果」
ぱちん、と指を鳴らす始祖神様。
すると地図は蠢く。まるで爆発でもあったような動き。いや、始祖神様の口振りや、爆発したんやないかな?
「衝撃波で、王冠山ができた」
どんな衝撃ー? 山ってそんな理由で出来るのー? 下手したら歴史的な大怪獣合戦やなかったのー?
蠢いていた地図は、王冠山の形を作り動かなくなる。
「決着ははっきりつかず、皇帝竜(カイザードラゴン)に軍配はかろうじて上がったが、なんとか競り勝っただけじゃった。蛇も、その際のキズが原因で仮死状態となり、王冠山の内側で眠りについた」
それが起きたってことやね。だけど、蛇も災難だね、その一族の為に頑張ってさ。
「月日が流れ、王冠山の周囲は森から、魔の森へ、そして魔境となった」
なるほど。イシスが言ってたやつね。なら、今回雨を降らせたのはその蛇になるのかな? いやや、蛇。
「で、その蛇じゃが。従魔達よ、種族の予想はつくかの?」
急に話を振られて、戸惑いの表情を浮かべている。
『私は自信ないのです』
『私も。よく分からない気配でした』
ビアンカとルージュは、分からないみたい。
『イシスよ、分かるか? 我にはだいたいの予想は着くぞっ』
どやややぁっ、なアレス。
『ヒュドラノ亜種カト』
アレスが、がーんっ、みたいな。イシスが言っちゃったけど、同じ考えだったのかな。出し惜しみするからよ。
ヒュドラってたしか、あれよね、首が9もある蛇でしょ? やだあ、さらにやだあ。
「どうしてそう判断したのじゃ?」
始祖神様がイシスに聞く。
「本体ハヒトツ、シカシ、ソレニ付属シタヨウナ首ガ、ヤッツ。首ハソレゾレニ意思ガ有ルヨウデシタ」
ふーん、さすがイシスやなあ、よく分かった…………………
本体が1つで首が8つ? 首が8つの蛇?
え、聞いたことあるんですけどっ。えっ? あれ神話の話でしょ? 違う? めっちゃ、有名な話しなんですけどっ。
「お嬢さん、心当たりは?」
来たーっ。私に振るってことはそんなんやーっ。ちらっと晃太を見ると、似たような顔だ。
「ヤマタノオロチ、ですか?」
「正解」
嘘やろ?
て、ことは、その一族って。
「そう、お嬢さんと同郷じゃ。お嬢さん達にしたら、ずっと昔の先祖かの。その蛇も、向こうにいれば、相応の寿命じゃったんじゃが、こちらの魔力の波長と相性が良すぎたようでなあ。トントン拍子で進化したのじゃよ」
ヤマタノオロチって、神様が、神話に出てくるスサノオノミコトが倒したんやなかったっけ?
「本来ならば、ヤマタノオロチはそのまま王冠山内で眠り続け、静かに朽ち果てるはずだったのじゃが」
ふう、と始祖神様。
「地脈に含まれる魔力が乱れ、その刺激で、ヤマタノオロチが半覚醒しかけてな。そのまま再び眠りにつくか、覚醒するかよく分からんでなあ。だからといって儂らが刺激したら、王冠山どころか周辺一辺を吹き飛ばすからのう」
やめて。
「件の皇帝竜(カイザードラゴン)に神託を下そうかとも思ったのじゃが。絶対大惨事になりそうでなあ」
やめて。
「そこでまずはお嬢さん方にお願いしたんじゃ。複数のエリアボスクラスの魔物が近くにいて、ヤマタノオロチが排除に動き覚醒に近付くか、静観して眠りの体勢に入るか。まあ、結果あれじゃ。ヤマタノオロチの感知範囲外に出たから、今は静かになったがこのままならいずれは覚醒するじゃろう」
下手に刺激せんほうが、良かったんやない?
「一度は半覚醒してしまった。遅かれ早かれ覚醒はする。その時、ヤマタノオロチは混乱するじゃろう。周辺は年月が経ち過ぎて、変貌し、そこが一族と過ごした場所とは分からず、這い出す。そうなれば、魔の森は壊滅。魔境も無事にはすまん。周辺の町は瞬時に崩壊し、国すらも飲み込み、この大陸は火の海になるじゃろう」
やめて。絶対やめて。魔境には鼻水君達が。カルーラにはレディ・ロストークやパーヴェルさんやシスター・アモルさんが。リティアさんやタージェルさん、ダイアナちゃん、パーカーさん達の顔が浮かぶ。たくさんの人達の笑顔が浮かぶ。
「そうなった時、ヤマタノオロチと誰が対峙する?」
私はそっとイシスとアレスを見るが、視線を反らされた。厄災クラスのこの2人が無理なら、どうにもできんのかな、ああ、どうしよう。
ああ、うちらには無理やない? どうするん? そもそも地脈の魔力が乱れた原因は?
「現在、ヤマタノオロチと対峙するだけの力があり、神託を下してすぐに動けるのは、皇帝竜(カイザードラゴン)のみ。そうなれば、辺り一帯は吹き飛ぶ、文字通りに」
「どうにもならないのでしょうか?」
それだけは絶対に避けないと。
予想以上に事態が深刻や。
「お嬢さん」
始祖神様が、私に向き合う。
「本来なら別大陸まで逃げなさいと、言うべきなのじゃろう。だが、お嬢さんならそんなことは望まないはず」
無理や、そんなこと。
失いたくないものが、いっぱいあるんやから。
始祖神様が立ち上がる。
「テイマー、ユイ・ミズサワよ」
フルネーム。初めてやない? 神様に名前呼ばれたの?
「この世界の創造主、始祖神より、そなたに神託を下す」
私は反射的に膝をつく。そうせんと、いかん、そんな気がした。
「王冠山に潜む、ヤマタノオロチを退治せよ」
静かに下されたその言葉に、腹の奥が引き締まる。
「もちろん、儂らがサポートしよう。その為の適応外にしたのじゃから」
本来、神様はこちらに干渉できないって、聞いた。限られた人に限られたスキルを通して、ほんの少しだけ。それにはいろいろ理由がある。神様の力を利用して、悪用する人がいるからだ。
「ヤマタノオロチが半覚醒した地脈の魔力の乱れ。それを引き起こしたのは、聖女カレン・ミヤノサワ達が起こした厄災じゃ」
あれから2年経ってもまだ、縁の切れない話になりそうや。
あなたにおすすめの小説
「三番以下を取りなさい」と五年言われ続けたので、公開試験で本気を出しました
歩人
ファンタジー
王立魔法学院、入学時首席のリュシエンヌは、婚約者レイナルト公爵令息から五年間「女は三番以下を取れ」と命じられてきた。学院の序列は国家序列の縮図。レイナルトは常に一位に居続けた。婚約披露を控えた十九歳の春、レイナルトが新しい婚約者を連れて告げる。「お前では並び立てぬ。学力も身分も、足りなすぎる」——リュシエンヌは微笑んで、その翌日の年次公開試験で、五年封じてきた本気を出した。国王臨席の場で、史上最高点。魔法局長官が教授陣に命じる。「過去五年間の彼女の実測点と、もし本気で受けていたら出せた推計点を、公表したまえ」。教授陣は震える手で数字を並べた。レイナルトの「首席」は、全て彼女が譲った場所だった。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
夫の不倫相手に「妻の座を譲れ」と言われたので、譲る代わりに全部置いていきます 〜行き先は老舗旅館。追いかけてきても、もう遅いです〜
なつめ
恋愛
夫の愛人に「妻の座を譲れ」と言い渡された主人公は、怒鳴り返すこともしがみつくこともせず、ただ静かに頷いた。
家のこと、食事のこと、社交のこと、義実家のこと、会社の裏方のこと。 誰も価値を知らなかった“妻の座”の中身を、そっくりそのまま置いて家を出る。
向かった先は、かつて傷ついた自分を受け入れてくれた老舗旅館。 再建に奔走する若旦那とともに働く中で、主人公は初めて「役に立つから愛される」のではなく、「あなた自身がいてほしい」と言われる温かさを知っていく。
一方、主人公を軽んじた元夫の家では、生活も体裁も仕事もじわじわと崩壊を始める。 これは、何も持たずに出ていったはずの女が、自分の人生を取り戻し、最後には新しい恋と居場所を手に入れる再生の物語。
見た目の良すぎる双子の兄を持った妹は、引きこもっている理由を不細工だからと勘違いされていましたが、身内にも誤解されていたようです
珠宮さくら
恋愛
ルベロン国の第1王女として生まれたシャルレーヌは、引きこもっていた。
その理由は、見目の良い両親と双子の兄に劣るどころか。他の腹違いの弟妹たちより、不細工な顔をしているからだと噂されていたが、実際のところは全然違っていたのだが、そんな片割れを心配して、外に出そうとした兄は自分を頼ると思っていた。
それが、全く頼らないことになるどころか。自分の方が残念になってしまう結末になるとは思っていなかった。
夫が私にそっくりな下の娘ばかりをかわいがるのですけど!
山科ひさき
恋愛
「子供達をお願い」 そう言い残して、私はこの世を去った。愛する夫が子供達に私の分も愛情を注いでくれると信じていたから、不安はなかった。けれど死後の世界から見ている夫は下の娘ばかりをかわいがり、上の娘をないがしろにしている。許せない。そんな時、私に不思議な声が呼びかけてきて……。
「お前の泥だらけの手で触るな、気持ち悪い」と追放された令嬢——王宮の食器が一枚も焼けなくなった
歩人
ファンタジー
「お前の泥だらけの手で触るな、気持ち悪い」——王宮御用達の食器を焼く伯爵令嬢エルザは、婚約者の第二王子に手の荒れを嗤われて追放された。十二歳から十年間、王宮の全ての食器を手ずから焼いてきた。彼女の食器は特殊な土と焼成技術で魔力を通し、毒に触れると色が変わる。料理の温度も保つ。追放から三ヶ月後、晩餐会で新しい食器を使ったところ、毒が検知されず隣国の大使が倒れた。外交問題に発展する中、第二王子が「食器くらい誰でも焼ける」と窯に立った結果、出来上がったのは歪んだ灰色の皿だった。
元の世界に帰らせていただきます!
にゃみ3
恋愛
淡い夢物語のように、望む全てが叶うとは限らない。
そう分かっていたとしても、私は敵ばかりの世界で妬まれ、嫌われ、疎まれることに、耐えられなかったの。
「ごめんね、バイバイ……」
限界なので、元いた世界に帰らせていただきます。
・・・
数話で完結します、ハピエン!
「貧相な小娘」と罵った第一王子へ。番(つがい)は貴方ではなく、国王陛下(お父様)でした
しえろ あい
恋愛
「お父様、わたくし、あの方と目が合った瞬間、分かってしまったのです」
十六歳のデビュタントの夜、ルーセント侯爵令嬢フェリシアを待っていたのは、残酷な罵倒だった。第一王子カシウスは、可憐な白いドレスを纏った彼女を「貧相な小娘」と呼び、己の番(つがい)であることを真っ向から否定する。
会場に響く冷笑と、愛用の刺繍に込めた自信さえ打ち砕くような屈辱。しかし、絶望の淵に立たされた彼女を見つめていたのは、王子ではなく、圧倒的な威厳を放つ「ある男」だった。
魂を焦がすような熱い視線が重なり、静まり返る謁見の間。この出会いが、王室を揺るがす大事件の幕開けになるとは、まだ誰も知らない。自身の価値を否定された少女が、真実の愛によって世界で最も幸福な王妃へと駆け上がる、逆転溺愛ストーリー。
※小説家になろう様にも投稿しています※