文字の大きさ
大
中
小
448 / 878
連載
ルーティ⑦
それからトラブルなくダンジョンアタックは過ぎ、最終階である18階まで移動した。
15階のドロップ品もたっぷりあるしね。ここのダンジョンの宝箱は色んなものが入っている。
ポーション系、宝石、宝飾品が多いが、楽器、布、糸、革、レース、インゴットなんかも出る。ただし、一度も武器類が出ない。今までのダンジョンと違うのは食べ物系が出ることだ。あのワインの後、胡椒がびっしり詰まった瓶が出たり、これまた大きな箱に隙間なく詰まったコーヒーやカカオ豆も出た。ディレックスに繋がる異世界への扉や、セレクトショップダリアのある私には珍しくないが、こちらにしたら貴重品だ。特にカカオやコーヒーは南の国からの輸入品がほぼだ。アスラ王国やユリアレーナ王国でも栽培を挑んでいるそうだけど、まだ始めたばかりなんだって。
さて、サブ・ドアも登録して、ちゅどん、どかんも済んだし。
「ユイさん、ドロップ品の回収済みました。宝箱でました」
「はい」
マデリーンさんが知らせてくれる。
わあ、また、サイズのでっかい宝箱が。
「ルージュ、お願いね」
『任せて。あ、これ、宝箱じゃないわ』
ん? てことは。
『擬態のやつね。えいっ』
ジャガーパンチ一発。
バキイッ、って音を立てて、宝箱が崩れる。うわあ、内側にびっしり牙が並んでるやん。あれで噛まれたら腕がなくなりそう。
擬態魔物が消えて、出てきたスーパーの籠サイズの宝箱をルージュがチェック。
『大丈夫よ』
「ありがとう」
わくわく。
開けると、しっかりした紙の箱に、ビロードの箱。なんやろ? 開けてみるとなんとボタン。えー、最終階のボス部屋でボタン? 色々なボタンがある、ほとんど木製だけど。全部開けたけど、全部ボタン。えー。
「ボタンって……………」
「あ、待ったミズサワさん」
がっかりしていると、リィマさんが声を上げる。
「こっちのボタンは、シェルのボタンだよ。そこそこするよ、これ」
示されたのはややピンクかかった乳白色のグラデーションのボタン。言われたら、綺麗やな。光に反射して煌めいている。
「それとこっちは、宝石だよ。ペリドットにアクアマリン、ラピスラズリ、アメジスト、瑪瑙にインカローズに…………」
「ガラスやないんですか?」
「まさか、ビロードのに入っているのは、全部宝石だよっ」
「ひゃー」
えーって思ってごめんなさい。結構な数だけど。
これは、どうしよう。母に聞いて、そうやパーカーさんにも見せよう。紙の箱のは、全部木製だった。
晃太に説明し、アイテムボックスに入れてもらう。
「さて、これでいいかね。皆さん、お疲れ様でした」
「「「「「お疲れ様ー」」」」」
さて、無事に最終日。
あれからだいぶボス部屋に挑んだ。ご褒美は出なかったけど、色んな宝箱が出た。ワインはもう一度出た。ファングさんとロッシュさんが、晃太の作ったリストを見て、表情が固まっていた。
『短いのです』
『もう、2、3日いいわよ』
『わーっはっはっはーっ』
『ヌシヨ、モウ出ルノカ?』
「なんば恐ろしい事ばいいようと? もう帰るよ」
仔達まで、ぶー、とな。くっ、かわいかっ。
だけど、そろそろ帰らんと、オシリスの鞍がね。騎乗訓練はずいぶんいいのか、米袋を60キロ抱えても、まったく支障はない。だけど、鞍と私とホークさんを合わせたら軽く100キロは越える。大丈夫かな? ホークさんとオシリスを信用するしかない。
脱出用魔法陣で、入った班に別れて順調に脱出する。
直ぐにダンジョン前で構えていたギルド職員さんに掴まり、晃太とチュアンさん、ビアンカ、ファングさん、ロッシュさんが向かう。私は後から合流ね。
パーティーハウスに戻ると、花がぽちゃぽちゃボディでお出迎え。あははん、かわいか。
「お帰り」
母も出てきて、ぱあっと仔達が群がる。
全員でパーティーハウスに入り、私は開けっ放しにしていたルームのドアを一度閉めてから、まず、ノワールを誘導する。それから改めて大きなサイズでドアを開き、開けっ放しにする。
アレスが早速仔達を引き連れて中庭に走り出している。
「皆さん、ゆっくりしていてくださいね」
私はギルドに向かう。ホークさんとエマちゃん、ルージュが付いてくれた。
ギルドに問題なく到着すると、直ぐに応接室に通される。
「あ、姉ちゃん」
晃太がのんびりお茶を飲んでいる。ファングさんとロッシュさんもだ。
対面に座る職員さんが、必死に書類を確認している。
「ああ、ミズサワ様、お待ちしておりましたっ」
「はあ」
どうしたんやろ? 私は晃太の隣に座る。
「何かありました?」
「いえ。そうではないのですが」
晃太が耳打ちする。
「数が多すぎるから、時間欲しいって」
「ああ、そうな」
申し訳ないが、明日のお昼過ぎにはカルーラに帰りたい。
「すみません、明日のお昼過ぎには出たいのですが」
「あ、はいっ。分かりました。明日の10時までにはすべて対応させていただきます」
「よろしくお願いします」
こちらで引き取るものは既に別にしているから、特に問題はない。
確認出きるものだけ提出し、晃太はチュアンさんと倉庫に向かう。私はいつものサインリレーだ。
ファングさんとロッシュさんも持って来られた書類にサインと魔力を流す。
私はせっせとサイン。ふう。
「テイマーさん、いつもこんな感じなのか?」
と、私の前に並んだ書類を見ながらファングさんがぽつり。
「ええ、そうですが。今回は少ない方ですよ。まだ、マーファの方が多いですけど」
「ははは、流石ですね」
乾いた笑みを浮かべるファングさん。
晃太が戻り、私達はご挨拶してギルドを後にした。
パーティーハウスに戻ると、既に日が傾き始めていた。時期的に日が落ちるのが早いからね。
入ると、誰もいない。ルームだね。
『いい匂いなのです』
『エビだわっ』
わーっ、とルームに走るビアンカとルージュ。
確かにいい匂いや。
ルームに入ると、ダイニングキッチンで、わいわいと作業している。
「あ、お帰りなさいユイさんっ」
エマちゃんがニコニコしながら迎えてくれる。そして、花のぽちゃぽちゃローリング。かわいか。母はせっせと揚げ物を揚げている。マデリーンさんがお手伝いに入ってる。山風の面々は、ミゲル君とブラッシングに入ってくれ、金の虎の面々はエマちゃんとテオ君と料理作業だ。
「ただいま、すぐに手伝うね」
嗽手洗いして、私も作業に入る。わあっ、いい匂いや。カキフライと海老フライと唐揚げ、それからポテトサラダだ。私はポテトサラダに入る。ホークさんはノワールのブラッシング。チュアンさんはロッシュさんと仔達のブラッシング。ファングさんはアルスさん対応。
「ユイちゃんの母ちゃん、俺、手伝うっ」
「アルス、油は危ないからな。こっちを手伝おうな」
「ぶー」
かわいかね。母も笑顔だ。
この牡蠣と海老は、フェリクスさんが言っていたターコイズオイスターとシュリンプだ。ターコイズオイスターは殻の溝に鮮やか水色がはいり、首都で購入したブルーオイスターよりやや大きめ。ターコイズシュリンプは、全体的に水色の海老で車海老みたいな感じ。次々揚げられるターコイズオイスターとターコイズシュリンプ。ターコイズシュリンプは頭をそのままで揚げられて、見た目が素晴らしい。唐揚げはルーティダンジョンの18階のウサギのお肉だ。生姜や醤油に漬け込まれていい匂い。
ターコイズシュリンプは各自三尾ずつ。レタス、トマト、レモンを添えて、うわあ、豪華や。
その前に、よだれ垂れ流す面々をどうにかするかね。てんこ盛りにカキフライ、海老フライ、唐揚げを盛る。ビアンカとルージュには、下にたっぷりレタスを隠す。仔達の分もいいかな。猫舌の晃太がうちわで軽く冷ましている。
「熱いからね」
『あっついのですーっ』
『熱いわっ』
『あふうっ』
『コレハッアツイッ』
「ぐうーっ」
「言ったやん」
もう、騒がしかね。
かわいかけど。仔達は晃太が冷ましたおかげか、そこまで騒ぎに。
「わふんっ」
「がっ」
『あついーっ』
『あちゅい~』
『あちゅい~』
「ぐるーっ」
冷やしが足りなかったかな。
もう、かわいかね。更にうちわで冷まそうかと思ったけど、食べてしまった。大騒ぎしながら。
私達もわいわいと準備して、と。
15階のドロップ品もたっぷりあるしね。ここのダンジョンの宝箱は色んなものが入っている。
ポーション系、宝石、宝飾品が多いが、楽器、布、糸、革、レース、インゴットなんかも出る。ただし、一度も武器類が出ない。今までのダンジョンと違うのは食べ物系が出ることだ。あのワインの後、胡椒がびっしり詰まった瓶が出たり、これまた大きな箱に隙間なく詰まったコーヒーやカカオ豆も出た。ディレックスに繋がる異世界への扉や、セレクトショップダリアのある私には珍しくないが、こちらにしたら貴重品だ。特にカカオやコーヒーは南の国からの輸入品がほぼだ。アスラ王国やユリアレーナ王国でも栽培を挑んでいるそうだけど、まだ始めたばかりなんだって。
さて、サブ・ドアも登録して、ちゅどん、どかんも済んだし。
「ユイさん、ドロップ品の回収済みました。宝箱でました」
「はい」
マデリーンさんが知らせてくれる。
わあ、また、サイズのでっかい宝箱が。
「ルージュ、お願いね」
『任せて。あ、これ、宝箱じゃないわ』
ん? てことは。
『擬態のやつね。えいっ』
ジャガーパンチ一発。
バキイッ、って音を立てて、宝箱が崩れる。うわあ、内側にびっしり牙が並んでるやん。あれで噛まれたら腕がなくなりそう。
擬態魔物が消えて、出てきたスーパーの籠サイズの宝箱をルージュがチェック。
『大丈夫よ』
「ありがとう」
わくわく。
開けると、しっかりした紙の箱に、ビロードの箱。なんやろ? 開けてみるとなんとボタン。えー、最終階のボス部屋でボタン? 色々なボタンがある、ほとんど木製だけど。全部開けたけど、全部ボタン。えー。
「ボタンって……………」
「あ、待ったミズサワさん」
がっかりしていると、リィマさんが声を上げる。
「こっちのボタンは、シェルのボタンだよ。そこそこするよ、これ」
示されたのはややピンクかかった乳白色のグラデーションのボタン。言われたら、綺麗やな。光に反射して煌めいている。
「それとこっちは、宝石だよ。ペリドットにアクアマリン、ラピスラズリ、アメジスト、瑪瑙にインカローズに…………」
「ガラスやないんですか?」
「まさか、ビロードのに入っているのは、全部宝石だよっ」
「ひゃー」
えーって思ってごめんなさい。結構な数だけど。
これは、どうしよう。母に聞いて、そうやパーカーさんにも見せよう。紙の箱のは、全部木製だった。
晃太に説明し、アイテムボックスに入れてもらう。
「さて、これでいいかね。皆さん、お疲れ様でした」
「「「「「お疲れ様ー」」」」」
さて、無事に最終日。
あれからだいぶボス部屋に挑んだ。ご褒美は出なかったけど、色んな宝箱が出た。ワインはもう一度出た。ファングさんとロッシュさんが、晃太の作ったリストを見て、表情が固まっていた。
『短いのです』
『もう、2、3日いいわよ』
『わーっはっはっはーっ』
『ヌシヨ、モウ出ルノカ?』
「なんば恐ろしい事ばいいようと? もう帰るよ」
仔達まで、ぶー、とな。くっ、かわいかっ。
だけど、そろそろ帰らんと、オシリスの鞍がね。騎乗訓練はずいぶんいいのか、米袋を60キロ抱えても、まったく支障はない。だけど、鞍と私とホークさんを合わせたら軽く100キロは越える。大丈夫かな? ホークさんとオシリスを信用するしかない。
脱出用魔法陣で、入った班に別れて順調に脱出する。
直ぐにダンジョン前で構えていたギルド職員さんに掴まり、晃太とチュアンさん、ビアンカ、ファングさん、ロッシュさんが向かう。私は後から合流ね。
パーティーハウスに戻ると、花がぽちゃぽちゃボディでお出迎え。あははん、かわいか。
「お帰り」
母も出てきて、ぱあっと仔達が群がる。
全員でパーティーハウスに入り、私は開けっ放しにしていたルームのドアを一度閉めてから、まず、ノワールを誘導する。それから改めて大きなサイズでドアを開き、開けっ放しにする。
アレスが早速仔達を引き連れて中庭に走り出している。
「皆さん、ゆっくりしていてくださいね」
私はギルドに向かう。ホークさんとエマちゃん、ルージュが付いてくれた。
ギルドに問題なく到着すると、直ぐに応接室に通される。
「あ、姉ちゃん」
晃太がのんびりお茶を飲んでいる。ファングさんとロッシュさんもだ。
対面に座る職員さんが、必死に書類を確認している。
「ああ、ミズサワ様、お待ちしておりましたっ」
「はあ」
どうしたんやろ? 私は晃太の隣に座る。
「何かありました?」
「いえ。そうではないのですが」
晃太が耳打ちする。
「数が多すぎるから、時間欲しいって」
「ああ、そうな」
申し訳ないが、明日のお昼過ぎにはカルーラに帰りたい。
「すみません、明日のお昼過ぎには出たいのですが」
「あ、はいっ。分かりました。明日の10時までにはすべて対応させていただきます」
「よろしくお願いします」
こちらで引き取るものは既に別にしているから、特に問題はない。
確認出きるものだけ提出し、晃太はチュアンさんと倉庫に向かう。私はいつものサインリレーだ。
ファングさんとロッシュさんも持って来られた書類にサインと魔力を流す。
私はせっせとサイン。ふう。
「テイマーさん、いつもこんな感じなのか?」
と、私の前に並んだ書類を見ながらファングさんがぽつり。
「ええ、そうですが。今回は少ない方ですよ。まだ、マーファの方が多いですけど」
「ははは、流石ですね」
乾いた笑みを浮かべるファングさん。
晃太が戻り、私達はご挨拶してギルドを後にした。
パーティーハウスに戻ると、既に日が傾き始めていた。時期的に日が落ちるのが早いからね。
入ると、誰もいない。ルームだね。
『いい匂いなのです』
『エビだわっ』
わーっ、とルームに走るビアンカとルージュ。
確かにいい匂いや。
ルームに入ると、ダイニングキッチンで、わいわいと作業している。
「あ、お帰りなさいユイさんっ」
エマちゃんがニコニコしながら迎えてくれる。そして、花のぽちゃぽちゃローリング。かわいか。母はせっせと揚げ物を揚げている。マデリーンさんがお手伝いに入ってる。山風の面々は、ミゲル君とブラッシングに入ってくれ、金の虎の面々はエマちゃんとテオ君と料理作業だ。
「ただいま、すぐに手伝うね」
嗽手洗いして、私も作業に入る。わあっ、いい匂いや。カキフライと海老フライと唐揚げ、それからポテトサラダだ。私はポテトサラダに入る。ホークさんはノワールのブラッシング。チュアンさんはロッシュさんと仔達のブラッシング。ファングさんはアルスさん対応。
「ユイちゃんの母ちゃん、俺、手伝うっ」
「アルス、油は危ないからな。こっちを手伝おうな」
「ぶー」
かわいかね。母も笑顔だ。
この牡蠣と海老は、フェリクスさんが言っていたターコイズオイスターとシュリンプだ。ターコイズオイスターは殻の溝に鮮やか水色がはいり、首都で購入したブルーオイスターよりやや大きめ。ターコイズシュリンプは、全体的に水色の海老で車海老みたいな感じ。次々揚げられるターコイズオイスターとターコイズシュリンプ。ターコイズシュリンプは頭をそのままで揚げられて、見た目が素晴らしい。唐揚げはルーティダンジョンの18階のウサギのお肉だ。生姜や醤油に漬け込まれていい匂い。
ターコイズシュリンプは各自三尾ずつ。レタス、トマト、レモンを添えて、うわあ、豪華や。
その前に、よだれ垂れ流す面々をどうにかするかね。てんこ盛りにカキフライ、海老フライ、唐揚げを盛る。ビアンカとルージュには、下にたっぷりレタスを隠す。仔達の分もいいかな。猫舌の晃太がうちわで軽く冷ましている。
「熱いからね」
『あっついのですーっ』
『熱いわっ』
『あふうっ』
『コレハッアツイッ』
「ぐうーっ」
「言ったやん」
もう、騒がしかね。
かわいかけど。仔達は晃太が冷ましたおかげか、そこまで騒ぎに。
「わふんっ」
「がっ」
『あついーっ』
『あちゅい~』
『あちゅい~』
「ぐるーっ」
冷やしが足りなかったかな。
もう、かわいかね。更にうちわで冷まそうかと思ったけど、食べてしまった。大騒ぎしながら。
私達もわいわいと準備して、と。
感想 867
あなたにおすすめの小説
「今日限りで君を解雇する」――20年仕えた地味なメイドですが、料理も手紙も暗殺者対策も私がやっていました
「エナメル。今日限りで君を解雇する」
20年仕えた屋敷をクビになった、地味なエルフのメイド・エナメル。
だが、晩餐会の料理も、侯爵への手紙も、調度品の手配も、屋敷を狙う暗殺者の処理も――すべて彼女が陰で支えていたものだった。
エナメルが去ったあと、屋敷は少しずつ綻び始める。
一方の本人は、そんなことも知らず。
「さて。次はどこで雇っていただきましょう」
地味で目立たないベテランメイド・エナメルの、新しい奉公先探しが始まる。
※本作は『メイドのエナメルは今日も静かにお仕えします』シリーズの第1作です。本作単体でもお楽しみいただけます。
異世界転移した僕と彼のスキルは「貯金箱」と「犬」だったので即追放。でもこれが意外と強かった
高校の英語の授業中、勇者召喚で僕たちクラスメイト7名は異世界にやって来た。
目的は魔王討伐では無くて、高難易度ダンジョンの封印?!
でも僕ユイトのスキルは「貯金箱」、エイジは「犬」。
役立たず認定で、二人とも城を追放されてしまった。
のんびり暮らそうとしたけどそうもいかなくなって。
僕たちは奇妙なスキルを駆使して異世界で生き延びる。
緩~いファンタージ物語です。のんびりと書いていきます。
本文はなるべく簡潔に、サクサク進むようにしています。
暇つぶしに読んでいただいて、楽しんでくださると嬉しいです。
なろう様にも投稿。
捨てられた幼女ですが、公爵家に拾われたら家族みんなの愛が重すぎました
幼い頃に母親に捨てられ、孤児院で暮らしていた少女リリア。
「役に立たなければ、また捨てられる」
そう思い、いつも“いい子”でいようとしていた彼女は、ある日、公爵家の馬車を助けたことをきっかけに屋敷へ招かれる。
そこで待っていたのは、娘に甘すぎる公爵夫妻に、妹を構いたがるレオン、そしてリリアを甘やかしたい使用人たち。
戸惑いながらも、少しずつ公爵家に居場所を見つけていくリリア。やがて夫妻から「私たちの娘になってほしい」と告げられて――。
これは、捨てられないために“いい子”でいようとしていた少女が、重すぎるほどの愛情に包まれ、本当の家族を見つけていく物語。
初夜のあとに愛する人がいると言われたので祝福で身体の時間を一日戻しました
夫婦となって初めて迎えた夜、セレンティアは夫リオールから「俺には、愛する人がいる」と告げられる。
彼が初夜を済ませた理由は、三年後に白い結婚として婚姻無効を申し立てられないようにするためだった。
けれどリオールは知らなかった。セレンティアの祝福《一日回帰》が、自分自身の身体にも使えることを。
セレンティアは自分の身体の時間を一日前へ戻し、三年間、侯爵家の妻として務めを果たすことを決める。
夫に愛されるためではない。三年後、白い結婚としてこの家を出ていくために。
番の証が出ないと捨てられたので、神様に確かめてもらいます
「番の証が出ぬからだ」
和平のために獣人国へ嫁いで四年。獣王ガイウス様との儀式は三度、三度とも証は出ませんでした。「人間の娘では神は認めぬ」——そう言われて、離宮へ。
雨漏りの下で眠り、井戸をさらい、畑を耕して。泣かなかったのは強いからではありません。獣人には、匂いでわかってしまうから。
嫁ぐ前に三年かけて読み込んだ婚姻法典。その第四章に、こうありました。
『既に誓いを結びたる者が、重ねて他者と誓いを立てんとする時、神は後の誓いを認めず』
——証が出なかったのは、わたしが人間だからではない。
長老会に申し立てたのは、解釈の確認だけ。わたしは悪くない、とは一言も書きませんでした。
遡誓の儀で神殿に浮かんだのは、六年前の秋の「成立」と、わたしの三度の「不成立(重複)」でした。
飛べないと捨てられたので、竜ごと出て行きます
「お前は竜に乗れもしない、ただの妻だろう」
竜騎士団長の夫はそう言って、飛べる従騎士の娘を選びましたわ。
ええ、わたくしは飛べません。十二年、地上におりました。
夜明け前に三十一頭の寝息を数え、歯を磨き、爪の砂を取り、冬に毛布を掛け、契約を編んで。——この国でただひとりの「調律者」として。
竜は、人を乗せない生き物ですのよ。竜自身が「乗せてもいい」と決めない限り。そして竜が誰の言葉で頷いてきたか、あの方は十二年、一度もお考えにならなかった。
離縁されて、わたくしは竜舎を出ました。
三日後から、竜は一頭も飛ばなくなりましたの。
怒っているのではありませんのよ。竜は報復をしませんもの。ただ——寂しいのです。
そして来月は、三年に一度の、契約更新日ですわ。
土下座する王妃の座などいらないので、冒険者に転職します。
「私が愛しているのはエルナ。君だけだ」
エルナは自分の夫でありハーメルン王国の国王であるカメルを愛していた。
彼がどれほど自分より隣国の聖女を優先しようとも。
結婚して二年が経っても初夜を迎えたことがなかろうとも。
しかし。
「エルナ。君に失望した。聖女を陥れていじめるとはな。罪を認め、ひざまずいて謝罪するように」
一年に一度の建国記念宴会であり結婚記念日に、カメルはすべての貴族や外国の使節団が見ている前で、エルナに身に覚えのない罪を認めろと断罪した。
愛が壊れるのは一瞬。
だからこそ、エルナはその場でひざまずいた。頭を地面にこすりつけて謝罪した。
「聖女を陰謀にかけた大罪人エルナは、この時間をもって王妃の座から退き、平民となりますことをお許しください。聖女様とどうかお幸せに」
*ゆるい設定です。不快に思われる方はブラウザバックをお願いします。
婚約破棄を受け入れた瞬間、王太子殿下が青ざめました
王都でもっとも華やかな春の夜会。その中央で、王太子エドワードは冷ややかな目を婚約者へ向けていた。
「リリアーナ・フォン・アルベルト公爵令嬢。君との婚約を、ここで破棄する」
会場が一瞬で静まり返る。
リリアーナは淡い金髪を揺らし、静かに王太子を見つめ返した。
「理由を、お聞きしてもよろしいでしょうか」
「理由など明白だ。君は嫉妬深く、心が狭い。それに比べ、私は真実の愛を見つけた」
そう言ってエドワードが隣へ引き寄せたのは、男爵令嬢のセシリアだった。