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連載
王冠山へ⑥
「ブヒヒンッ」
順調に進んでいたノワールがゆっくり停車。
王冠山の麓に無事に到着したんかな。山肌がはっきり見える位置で、ノワールが止まる。王冠山は水面に水滴が落ちた時にできるような形。尖った所は遥か彼方だ。凹んだ場所でも富士山なみに高い。あの凹んだ所から、王冠山内に入る予定だ。
現在地もすでに麓の位置だけど、この先、傾斜が出始めている。
「ユイさん。一旦降りましょう」
「はい」
私はホークさんの首に腕を回す。毎回恥ずかしか。無事に着地。
「ノワール、お疲れ様」
「ぶひひん」
「ホークさんありがとうございます。無事に着きました」
「それが俺の役割ですから」
とりあえず、ルームに入ろう。アリスはノワールの側を並走していた。ルームを開けると、すぐに入る。シルフィ達が心配なんやね。
『妻よっ、妻よっ、ケガはないかっ、げふうっ』
高速ですり寄って来たアレスの顔面に、アリスのカウンターが入る。
『恥ずかしがりやなのだなっ』
めげない。
「皆、帰っておいで~」
周りを遊びながら付いてきた仔達を呼ぶ。オシリスもゆっくり着陸して、ルームに入る。
まずは三人娘が戻って来て、もふもふしてからルームに。
三人衆は何やら咥えている。元気はでっかい角の鹿、コハクはマダラ模様の蜥蜴、ホルスは牛みたいにデカイのに、鼠みたいなの。皆、牙やら爪やら鋭かね。
「わふんっ」
「がるぅっ」
「くるっ」
「なんね、お姉ちゃんにくれるとね? ありがとう、かわいかね」
勿論、もふもふ、もふもふ、もふもふん。晃太にアイテムボックスに入れてもらう。解体してもらって、美味しい所だけ頂こう。
三人衆が入ったのを確認して、私とノワールの手綱を引いたホークさんが入る。
「姉ちゃん、大丈夫ね」
「乗っとるだけやからね」
でも、寒か。雪がちらほら降り始めている。数日以内には本格的に降り積もる。その数日以内に積雪範囲内を抜けて帰らないと。移動が大変だからね。雪が降り始めたから、大討伐も一旦は休止となる。本来なら春先で終わる予定なんだけど、あのゲリラ豪雨のせいで魔物分布が変わったため、期間延長となったって。
「ユイさん、お茶どうぞっ」
「ありがとうエマちゃん」
温かいお茶がいいね。ホークさんにはテオ君が渡している。チュアンさんとミゲル君はノワールの馬具を外し、マデリーンさんが汚れを拭き取っている。
従魔の部屋からビアンカとルージュが出てくる。
『ユイ、いよいよなのです』
『今日、王冠山を覗くの?』
「そうやね。ちょっと休憩してね。私はよかけど、ホークさんに休んでもらわんと」
「んっ、ユイさん、俺なら大丈夫ですよ」
ホークさんが口元拭いながら言ってくる。
「いやいや、朝から走っていたやないですか。休憩ですよ、休憩」
うちはブラックやないですからね。お昼まで時間があるしね。
中庭を見ると、あ、移動販売車発見。慣れたもので、いま、山風の皆さんが購入している。幟もある。
「あ、肉まんっ」
「買っとるよ。念のために神様の分も」
晃太がアイテムボックスから、ビニール袋を出して見せる。あははん、いい匂い。直ぐにビアンカとルージュが晃太にすり寄っていく。
『一口なのです~』
『食べたいわ~』
「もう一個食べたやん」
食べたんかい。
今日は父は仕事、母は孤児院への炊き出しだ。お昼は、どうしようかな?
「なら、お昼は肉まんやね。足りんから炒飯でも追加するね?」
「わい、辛味噌麺がよか」
「はいはい」
私は中庭に出る。他の皆さんのお昼の確認だ。
「はふっ、はっ、ゆひさんっ」
「ゆいはんっ」
マアデン君とハジェル君がはふはふ言いながら手を振ってくる。
ロッシュさんもすでに一口かぶりついている。しっかり飲み込んで。
「ユイさん、お疲れ様です。すみません、俺達先に食べてしまって」
恐縮しているロッシュさん。
「気にしないでください。いい匂いですもんね」
私とホークさんが移動中は、各パーティー好きにしてもらっている。私達のタイムテーブルに無理にあわせてもらうと、こちらも気になるしね。じっとしているって、苦痛な人もいるし。向こうも訓練の進み具合とかもあるだろうから、それを私達の移動で妨げたくないしね。ただ、夕食後に現在の進み具合の確認の為に、各リーダーさん達と短いけど話をしている。
「お昼どうされます?」
「これで済ませます」
と、肉まんを軽く持ち上げるロッシュさん。ちらり、と視界にシュタインさんが入る。あ、目が合った。いかん、いかん、自意識過剰や。そのシュタインさんの所にルリとクリスが尻尾ぷりぷりすり寄っている。よしよし、と笑顔のシュタインさん。思わず視線が行くと。
「わーっ」
ハジェル君が悲鳴を上げてる。思わず見ると、元気がもぐもぐしてる。そして空になったハジェル君の手。
「あ、こら、元気っ」
ごっくん元気、私は、め、する。だが、元気は次のターゲット、ロックオン。
「わーっ」
マアデン君に尻尾ぷりぷりしながら迫る。
「くうーん、くうーんっ」
「ダメだってっ」
しぶしぶ元気がお座りの体勢になる。だけど、視線は食べかけの肉まんにロックオンのままや。なんで、いっつも真っ先にハジェル君ば狙うんかね。ビアンカに曰く、元気はハジェル君を遊び相手と思っているようだと。ただ、じゃれて遊ぶコハクとは違う、おもちゃ感覚を持っているようだと。そう言えば、いっつもポケット探してるしね。由々しき事態やから、その都度元気に指導しているけど、聞いてない、何より覚えてない。私は元気に再び、め。
「ごめんね、ハジェル君」
悲しそうな顔のハジェル君。
私はメニューを確認。肉まん、チャーシューまん、あんまんの3種類だ。肉まんとチャーシューまんを購入する。
「ごめんねハジェル君。これば代わりに食べて。元気は叱っておくけん、ごめんね」
「あ、あ、大丈夫っす。ありがとうございますユイさんっ」
「ごめんね」
私はビニール袋をハジェル君に渡し、山風の皆さんに挨拶して、元気、ルリ、クリスを連れる。他のパーティーも肉まんでお昼を済ませるようだ。ただ、アルスさんだけ、むー、みたいな顔だったけどね。
元気を、もう一度、め、して、ルームに戻る。
「さ、お昼にしましょう」
ノワールのブラッシングや装備品を洗っていた鷹の目の皆さんに声をかける。
「エマちゃん、テオ君、お皿とかコップの準備してくれる?」
「「はいっ」」
さて、まずは神様に肉まんお供えやね。最近は朝のお供えしか消えない。きっとお忙しいんやろうね。
肉まんが入ったビニール袋をお地蔵様の前に。肉まんが10、チャーシューまんが10、あんまんが10だ。足りるかな? 消えなかったら、うちの従魔ズがのこさないしね。
いよいよ、ヤマタノオロチの目視圏内や。神様にお祈りしよう。
「神様、王冠山の麓に到着しました。ヤマタノオロチの目視に入ります。どうかお見守りください」
お祈り。すぐ後ろでチュアンさんがお祈りの姿勢。
おーい、そっちに行ってもいいかー。
あ、お久し振りの時空神様や。ブーストで聞きたい事があったし。ポイント。ポイント。ポイント。ぐふふ。
「はい、大丈夫です。チュアンさん」
振り返ると、すでにチュアンさんからモーター音が聞こえていた。
順調に進んでいたノワールがゆっくり停車。
王冠山の麓に無事に到着したんかな。山肌がはっきり見える位置で、ノワールが止まる。王冠山は水面に水滴が落ちた時にできるような形。尖った所は遥か彼方だ。凹んだ場所でも富士山なみに高い。あの凹んだ所から、王冠山内に入る予定だ。
現在地もすでに麓の位置だけど、この先、傾斜が出始めている。
「ユイさん。一旦降りましょう」
「はい」
私はホークさんの首に腕を回す。毎回恥ずかしか。無事に着地。
「ノワール、お疲れ様」
「ぶひひん」
「ホークさんありがとうございます。無事に着きました」
「それが俺の役割ですから」
とりあえず、ルームに入ろう。アリスはノワールの側を並走していた。ルームを開けると、すぐに入る。シルフィ達が心配なんやね。
『妻よっ、妻よっ、ケガはないかっ、げふうっ』
高速ですり寄って来たアレスの顔面に、アリスのカウンターが入る。
『恥ずかしがりやなのだなっ』
めげない。
「皆、帰っておいで~」
周りを遊びながら付いてきた仔達を呼ぶ。オシリスもゆっくり着陸して、ルームに入る。
まずは三人娘が戻って来て、もふもふしてからルームに。
三人衆は何やら咥えている。元気はでっかい角の鹿、コハクはマダラ模様の蜥蜴、ホルスは牛みたいにデカイのに、鼠みたいなの。皆、牙やら爪やら鋭かね。
「わふんっ」
「がるぅっ」
「くるっ」
「なんね、お姉ちゃんにくれるとね? ありがとう、かわいかね」
勿論、もふもふ、もふもふ、もふもふん。晃太にアイテムボックスに入れてもらう。解体してもらって、美味しい所だけ頂こう。
三人衆が入ったのを確認して、私とノワールの手綱を引いたホークさんが入る。
「姉ちゃん、大丈夫ね」
「乗っとるだけやからね」
でも、寒か。雪がちらほら降り始めている。数日以内には本格的に降り積もる。その数日以内に積雪範囲内を抜けて帰らないと。移動が大変だからね。雪が降り始めたから、大討伐も一旦は休止となる。本来なら春先で終わる予定なんだけど、あのゲリラ豪雨のせいで魔物分布が変わったため、期間延長となったって。
「ユイさん、お茶どうぞっ」
「ありがとうエマちゃん」
温かいお茶がいいね。ホークさんにはテオ君が渡している。チュアンさんとミゲル君はノワールの馬具を外し、マデリーンさんが汚れを拭き取っている。
従魔の部屋からビアンカとルージュが出てくる。
『ユイ、いよいよなのです』
『今日、王冠山を覗くの?』
「そうやね。ちょっと休憩してね。私はよかけど、ホークさんに休んでもらわんと」
「んっ、ユイさん、俺なら大丈夫ですよ」
ホークさんが口元拭いながら言ってくる。
「いやいや、朝から走っていたやないですか。休憩ですよ、休憩」
うちはブラックやないですからね。お昼まで時間があるしね。
中庭を見ると、あ、移動販売車発見。慣れたもので、いま、山風の皆さんが購入している。幟もある。
「あ、肉まんっ」
「買っとるよ。念のために神様の分も」
晃太がアイテムボックスから、ビニール袋を出して見せる。あははん、いい匂い。直ぐにビアンカとルージュが晃太にすり寄っていく。
『一口なのです~』
『食べたいわ~』
「もう一個食べたやん」
食べたんかい。
今日は父は仕事、母は孤児院への炊き出しだ。お昼は、どうしようかな?
「なら、お昼は肉まんやね。足りんから炒飯でも追加するね?」
「わい、辛味噌麺がよか」
「はいはい」
私は中庭に出る。他の皆さんのお昼の確認だ。
「はふっ、はっ、ゆひさんっ」
「ゆいはんっ」
マアデン君とハジェル君がはふはふ言いながら手を振ってくる。
ロッシュさんもすでに一口かぶりついている。しっかり飲み込んで。
「ユイさん、お疲れ様です。すみません、俺達先に食べてしまって」
恐縮しているロッシュさん。
「気にしないでください。いい匂いですもんね」
私とホークさんが移動中は、各パーティー好きにしてもらっている。私達のタイムテーブルに無理にあわせてもらうと、こちらも気になるしね。じっとしているって、苦痛な人もいるし。向こうも訓練の進み具合とかもあるだろうから、それを私達の移動で妨げたくないしね。ただ、夕食後に現在の進み具合の確認の為に、各リーダーさん達と短いけど話をしている。
「お昼どうされます?」
「これで済ませます」
と、肉まんを軽く持ち上げるロッシュさん。ちらり、と視界にシュタインさんが入る。あ、目が合った。いかん、いかん、自意識過剰や。そのシュタインさんの所にルリとクリスが尻尾ぷりぷりすり寄っている。よしよし、と笑顔のシュタインさん。思わず視線が行くと。
「わーっ」
ハジェル君が悲鳴を上げてる。思わず見ると、元気がもぐもぐしてる。そして空になったハジェル君の手。
「あ、こら、元気っ」
ごっくん元気、私は、め、する。だが、元気は次のターゲット、ロックオン。
「わーっ」
マアデン君に尻尾ぷりぷりしながら迫る。
「くうーん、くうーんっ」
「ダメだってっ」
しぶしぶ元気がお座りの体勢になる。だけど、視線は食べかけの肉まんにロックオンのままや。なんで、いっつも真っ先にハジェル君ば狙うんかね。ビアンカに曰く、元気はハジェル君を遊び相手と思っているようだと。ただ、じゃれて遊ぶコハクとは違う、おもちゃ感覚を持っているようだと。そう言えば、いっつもポケット探してるしね。由々しき事態やから、その都度元気に指導しているけど、聞いてない、何より覚えてない。私は元気に再び、め。
「ごめんね、ハジェル君」
悲しそうな顔のハジェル君。
私はメニューを確認。肉まん、チャーシューまん、あんまんの3種類だ。肉まんとチャーシューまんを購入する。
「ごめんねハジェル君。これば代わりに食べて。元気は叱っておくけん、ごめんね」
「あ、あ、大丈夫っす。ありがとうございますユイさんっ」
「ごめんね」
私はビニール袋をハジェル君に渡し、山風の皆さんに挨拶して、元気、ルリ、クリスを連れる。他のパーティーも肉まんでお昼を済ませるようだ。ただ、アルスさんだけ、むー、みたいな顔だったけどね。
元気を、もう一度、め、して、ルームに戻る。
「さ、お昼にしましょう」
ノワールのブラッシングや装備品を洗っていた鷹の目の皆さんに声をかける。
「エマちゃん、テオ君、お皿とかコップの準備してくれる?」
「「はいっ」」
さて、まずは神様に肉まんお供えやね。最近は朝のお供えしか消えない。きっとお忙しいんやろうね。
肉まんが入ったビニール袋をお地蔵様の前に。肉まんが10、チャーシューまんが10、あんまんが10だ。足りるかな? 消えなかったら、うちの従魔ズがのこさないしね。
いよいよ、ヤマタノオロチの目視圏内や。神様にお祈りしよう。
「神様、王冠山の麓に到着しました。ヤマタノオロチの目視に入ります。どうかお見守りください」
お祈り。すぐ後ろでチュアンさんがお祈りの姿勢。
おーい、そっちに行ってもいいかー。
あ、お久し振りの時空神様や。ブーストで聞きたい事があったし。ポイント。ポイント。ポイント。ぐふふ。
「はい、大丈夫です。チュアンさん」
振り返ると、すでにチュアンさんからモーター音が聞こえていた。
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※小説家になろう様にも投稿しています※