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行動計画⑧
モンスターボックス。
ボス部屋自体が魔力を持ち、その魔力を使い果たすまで魔物を召喚する。召喚されなくなり、すべての魔物を迎撃できればクリアとなる。簡単な解説だけど、実際はそんなわけない。
このモンスターボックス、かなり珍しく、ユリアレーナではモノコのスライムダンジョンの最上階にしかない。ただし、スライムダンジョンのモンスターボックスで出てくる魔物はスライムのみ。
で、どんな魔物が召喚されるか。
「始めはレベルの低いスライム等が出ます」
で、ある程度倒すと次に召喚されるのは、更に強いのが出る。出てくる数はかなり不規則になる、一匹の事もあれば、倍の数になったり。それが繰り返される。最終的にボス部屋の魔力がそこを付くか、挑んだ者達がついえるか、だ。
ボス部屋って、扉の開ける者のレベルで、内容っていうか、数が変わる。今回、フィールド型ダンジョンなために、ヤマタノオロチを討伐した瞬間に、ボス部屋にいる中で最高レベルの者に準ずる。
イシスって、レベルなんぼや? 厄災クラスやから、最低700はあるやろうけど。
「出てくる魔物は様々ですが、最大の問題点は、かなりの長期戦を強いられる事です」
フェリクスさんが静かに続ける。
「召喚と召喚の間の時間が空くこともありますが、こちらは戦闘を繰り返すので、疲労が蓄積します。しかし、向こうは万全の状態で出てきます。当然、討伐するとなれば時間がかかります」
うーん、聞けば聞くほど怖か。
いつものボス部屋は、扉を開けた時点で、勢揃いしている。いつまで続くかわからない戦闘を繰り返すって、肉体的にも、精神的にもきそう。
しかも、レベルの高さに準ずるなら、相当きつくない。
詳しいけど、フェリクスさん、挑んだ事あるんかね。なんと言っても冒険者が本職の人やし。
「で、ミズサワ殿。失礼を重々承知で伺いますが、貴女の従魔のレベルは?」
あ、やっぱり聞かれた。
隠しても仕方ない。
「イシス、レベルなんぼ?」
『788ダ』
「わっふ」
思ったより高かっ。
「優衣。おそらくヤマタノオロチを討伐した瞬間、イシスのレベルが1段階上がるはずや」
あはははん、て、ことは800ー。そういえば、ルーティのダンジョンの扉も、イシスが開けたらビアンカやルージュの倍近く出てた。それが1段階上がる。以前、時空神様が言ってたなあ。ボス部屋の出る魔物って、レベル100ずつで変わるって。
「現在、四捨五入で800です」
意味ないけど、誤魔化す。
サー、と冒険者の皆さん顔色が悪くなる。
「そうですか」
聞いたフェリクスさんが目蓋を閉じる。そして、流れる沈黙。く、痛か、沈黙が痛か。
痛い中で、イシスはビアンカとルージュになにやら相談。
「あ、そうや。ヤマタノオロチを討伐した後に、すぐにルームに避難して、皆が万全になるまで待てば良くない?」
我ながらいいアイデア。だって、私のルームは絶対安全地帯や。
だけど、父が首を横に振る。
「そう簡単にいかんやろう。問題点その二」
父が晃太の描いた地図を広げる。何本かの赤いラインが入っている。
「現在地はここ、この赤いラインは王冠山の地下で繋がるダンジョン」
ふむふむ、一本は鼻水君達のエリアみたいや。ここからあの蜘蛛達を先導した、特殊個体達がでて来たわけやね。
「ヤマタノオロチを討伐した瞬間に、その影響でダンジョンから魔物溢れ出す。つまり、魔物の氾濫(スンビード)や。これはモンスターボックスを掃討せん限り続く」
嘘やろ? 頭の中で、血まみれになりながらも牙を剥き出していた鼻水君が思い浮かぶ。それから赤ちゃんウルフ達やお母さんウルフ。恥を忍んでお肉を求めたお父さんウルフ達の姿が。
「姉ちゃん、どうする?」
晃太も顔色が悪い。
「出来るだけ最短で掃討するしかなかろう」
私はそう言うしかない。
出来るだけの準備をしよう。たくさんポーションを準備して、あ、それから冷蔵庫ダンジョンでは武器が出る。それをサブ・ウエポンにしてもらおう。私にはルームがあるから、交代で出撃してもらい、身体を休める時間を確保して。
「優衣、問題点その三がある」
「まだあるん?」
もう結構大変なことになっとるけど。
「ヤマタノオロチを討伐したとして、おそらくイシス達は満身創痍になるはず。そうなった場合、残りの戦力で、モンスターボックスの掃討は不可能や」
そ、そんな……………私は腹の奥底から絶望する。父の言葉に、皆さんの顔色を奪う。
この中で、誰かが、誰かが、犠牲になるの?
誰かが口を抑え、誰かが目を覆う。
『ナラバ、戦力ヲ増ヤセバイイノダ』
沈痛な沈黙を打ち破ったのは、最高レベル保有者のイシスだ。
『主ヨ、我々デ不足ナラバ、増セバイイ』
「いやいや、そう簡単に参戦してくれる人って? これは神様からの依頼やから、あんまり知られない方が」
『人ダカラ問題ナノダロウ? 我々デアレバイイハズ』
我々って、まさか。
『鼻水ダ、アレヲ加エレバイイ』
「鼻水君を?」
そりゃ確かに鼻水君は、ビアンカやルージュと引けは取らないし、エリアボスになるくらいだし。いいのかな?
『私が説得するのです』
うん、一発で頷きそう。鼻水君、ビアンカに夢中だからね。
『鼻水ハ火ノ魔法ヲ得意トシテイル』
イシスによると、援護に回るビアンカの代わりに鼻水君にでてもらい。モンスターボックスに突入の際は、ビアンカに出撃してもらうことになる。
『それからね。若手のウルフを数匹連れていこうと思うの』
「それは心強いけど、守りはどうするん? 赤ちゃんウルフやお母さんウルフ達が心配なんやけど」
『主ヨ、溢レ出テクルダンジョンノ場所サエ分カレバ心配ハナイ』
イシス曰く、出口に待ち構えて迎撃すれば問題はないって。出てくる場所さえ分かればだけど。
『問題ハナイ。私ニハ灯火ノ女神様ノブーストガアル』
「でしたね」
迷子にならずに、目的地までいけるしね。
「でも、他はどうするん?」
晃太が残りの赤いラインを示す。
「位置的には、全部魔境側にあるみたいやけど」
ふむ、とイシスが考える。
「只でさえ、あのゲリラ豪雨で魔物分布が変わったから、この件で更におかしな事にならんね?」
『ソウダナ。各エリアボスニ警告シヨウ。主ヨ、私ハシバラク離レルガ』
「そりゃかわまんけど。合流はどうする? それより他のエリアボス、イシスの言うこと信じてくれるかね?」
『ソレハ向コウ次第ダ』
「イシス、危なくないよね?」
他のエリアボスって知らないけど、イシスに友好的とは思えない。以前、他のエリアボスと会ったと言ったイシスを、ビアンカとルージュが心配していた。どうもあれば私にはひっかかっている。
『私ハ、コノ魔境デヤマタノオロチヲ除ケバ最強ダ。何モ心配ハイラナイ』
どやっ。
「ソウデスカ」
我ながら、恐ろしい、あ、やめよ。ピザピザと訴えて、羽角をピクピクさせてるイシス、かわいかし。
『合流ニ関シテナノダガ。少シ相談ガアル』
「なんね?」
す、と並ぶイシス、ビアンカ、ルージュ。
なんや、なんや。
『ユイ、私達は若手のウルフを短期間になるけど、鍛えようと思うのです』
『そう。母様式にね。この間は、私達は魔境に籠るわ』
『私ハ、各エリアボスニ警告後ソチラニ向カウ』
鬼教官リルさん式にって。
「え、ちょっと待ってん。まさか、ビアンカとルージュが? どれくらい?」
2、3日って訳やないやろうし。アレスのへいへいいくぜ行軍やなかろうし。今までずっと一緒やったから、あまり長い間離れるなんて想像がつかない。
『冬の間なのです』
『それでね、ユイ』
ビアンカとルージュが、一呼吸おく。
『元気とルリ、クリスも連れていくのです』
『コハクとヒスイもよ』
「「絶対にダメやっ」」
私と晃太は即座に反対した。
ボス部屋自体が魔力を持ち、その魔力を使い果たすまで魔物を召喚する。召喚されなくなり、すべての魔物を迎撃できればクリアとなる。簡単な解説だけど、実際はそんなわけない。
このモンスターボックス、かなり珍しく、ユリアレーナではモノコのスライムダンジョンの最上階にしかない。ただし、スライムダンジョンのモンスターボックスで出てくる魔物はスライムのみ。
で、どんな魔物が召喚されるか。
「始めはレベルの低いスライム等が出ます」
で、ある程度倒すと次に召喚されるのは、更に強いのが出る。出てくる数はかなり不規則になる、一匹の事もあれば、倍の数になったり。それが繰り返される。最終的にボス部屋の魔力がそこを付くか、挑んだ者達がついえるか、だ。
ボス部屋って、扉の開ける者のレベルで、内容っていうか、数が変わる。今回、フィールド型ダンジョンなために、ヤマタノオロチを討伐した瞬間に、ボス部屋にいる中で最高レベルの者に準ずる。
イシスって、レベルなんぼや? 厄災クラスやから、最低700はあるやろうけど。
「出てくる魔物は様々ですが、最大の問題点は、かなりの長期戦を強いられる事です」
フェリクスさんが静かに続ける。
「召喚と召喚の間の時間が空くこともありますが、こちらは戦闘を繰り返すので、疲労が蓄積します。しかし、向こうは万全の状態で出てきます。当然、討伐するとなれば時間がかかります」
うーん、聞けば聞くほど怖か。
いつものボス部屋は、扉を開けた時点で、勢揃いしている。いつまで続くかわからない戦闘を繰り返すって、肉体的にも、精神的にもきそう。
しかも、レベルの高さに準ずるなら、相当きつくない。
詳しいけど、フェリクスさん、挑んだ事あるんかね。なんと言っても冒険者が本職の人やし。
「で、ミズサワ殿。失礼を重々承知で伺いますが、貴女の従魔のレベルは?」
あ、やっぱり聞かれた。
隠しても仕方ない。
「イシス、レベルなんぼ?」
『788ダ』
「わっふ」
思ったより高かっ。
「優衣。おそらくヤマタノオロチを討伐した瞬間、イシスのレベルが1段階上がるはずや」
あはははん、て、ことは800ー。そういえば、ルーティのダンジョンの扉も、イシスが開けたらビアンカやルージュの倍近く出てた。それが1段階上がる。以前、時空神様が言ってたなあ。ボス部屋の出る魔物って、レベル100ずつで変わるって。
「現在、四捨五入で800です」
意味ないけど、誤魔化す。
サー、と冒険者の皆さん顔色が悪くなる。
「そうですか」
聞いたフェリクスさんが目蓋を閉じる。そして、流れる沈黙。く、痛か、沈黙が痛か。
痛い中で、イシスはビアンカとルージュになにやら相談。
「あ、そうや。ヤマタノオロチを討伐した後に、すぐにルームに避難して、皆が万全になるまで待てば良くない?」
我ながらいいアイデア。だって、私のルームは絶対安全地帯や。
だけど、父が首を横に振る。
「そう簡単にいかんやろう。問題点その二」
父が晃太の描いた地図を広げる。何本かの赤いラインが入っている。
「現在地はここ、この赤いラインは王冠山の地下で繋がるダンジョン」
ふむふむ、一本は鼻水君達のエリアみたいや。ここからあの蜘蛛達を先導した、特殊個体達がでて来たわけやね。
「ヤマタノオロチを討伐した瞬間に、その影響でダンジョンから魔物溢れ出す。つまり、魔物の氾濫(スンビード)や。これはモンスターボックスを掃討せん限り続く」
嘘やろ? 頭の中で、血まみれになりながらも牙を剥き出していた鼻水君が思い浮かぶ。それから赤ちゃんウルフ達やお母さんウルフ。恥を忍んでお肉を求めたお父さんウルフ達の姿が。
「姉ちゃん、どうする?」
晃太も顔色が悪い。
「出来るだけ最短で掃討するしかなかろう」
私はそう言うしかない。
出来るだけの準備をしよう。たくさんポーションを準備して、あ、それから冷蔵庫ダンジョンでは武器が出る。それをサブ・ウエポンにしてもらおう。私にはルームがあるから、交代で出撃してもらい、身体を休める時間を確保して。
「優衣、問題点その三がある」
「まだあるん?」
もう結構大変なことになっとるけど。
「ヤマタノオロチを討伐したとして、おそらくイシス達は満身創痍になるはず。そうなった場合、残りの戦力で、モンスターボックスの掃討は不可能や」
そ、そんな……………私は腹の奥底から絶望する。父の言葉に、皆さんの顔色を奪う。
この中で、誰かが、誰かが、犠牲になるの?
誰かが口を抑え、誰かが目を覆う。
『ナラバ、戦力ヲ増ヤセバイイノダ』
沈痛な沈黙を打ち破ったのは、最高レベル保有者のイシスだ。
『主ヨ、我々デ不足ナラバ、増セバイイ』
「いやいや、そう簡単に参戦してくれる人って? これは神様からの依頼やから、あんまり知られない方が」
『人ダカラ問題ナノダロウ? 我々デアレバイイハズ』
我々って、まさか。
『鼻水ダ、アレヲ加エレバイイ』
「鼻水君を?」
そりゃ確かに鼻水君は、ビアンカやルージュと引けは取らないし、エリアボスになるくらいだし。いいのかな?
『私が説得するのです』
うん、一発で頷きそう。鼻水君、ビアンカに夢中だからね。
『鼻水ハ火ノ魔法ヲ得意トシテイル』
イシスによると、援護に回るビアンカの代わりに鼻水君にでてもらい。モンスターボックスに突入の際は、ビアンカに出撃してもらうことになる。
『それからね。若手のウルフを数匹連れていこうと思うの』
「それは心強いけど、守りはどうするん? 赤ちゃんウルフやお母さんウルフ達が心配なんやけど」
『主ヨ、溢レ出テクルダンジョンノ場所サエ分カレバ心配ハナイ』
イシス曰く、出口に待ち構えて迎撃すれば問題はないって。出てくる場所さえ分かればだけど。
『問題ハナイ。私ニハ灯火ノ女神様ノブーストガアル』
「でしたね」
迷子にならずに、目的地までいけるしね。
「でも、他はどうするん?」
晃太が残りの赤いラインを示す。
「位置的には、全部魔境側にあるみたいやけど」
ふむ、とイシスが考える。
「只でさえ、あのゲリラ豪雨で魔物分布が変わったから、この件で更におかしな事にならんね?」
『ソウダナ。各エリアボスニ警告シヨウ。主ヨ、私ハシバラク離レルガ』
「そりゃかわまんけど。合流はどうする? それより他のエリアボス、イシスの言うこと信じてくれるかね?」
『ソレハ向コウ次第ダ』
「イシス、危なくないよね?」
他のエリアボスって知らないけど、イシスに友好的とは思えない。以前、他のエリアボスと会ったと言ったイシスを、ビアンカとルージュが心配していた。どうもあれば私にはひっかかっている。
『私ハ、コノ魔境デヤマタノオロチヲ除ケバ最強ダ。何モ心配ハイラナイ』
どやっ。
「ソウデスカ」
我ながら、恐ろしい、あ、やめよ。ピザピザと訴えて、羽角をピクピクさせてるイシス、かわいかし。
『合流ニ関シテナノダガ。少シ相談ガアル』
「なんね?」
す、と並ぶイシス、ビアンカ、ルージュ。
なんや、なんや。
『ユイ、私達は若手のウルフを短期間になるけど、鍛えようと思うのです』
『そう。母様式にね。この間は、私達は魔境に籠るわ』
『私ハ、各エリアボスニ警告後ソチラニ向カウ』
鬼教官リルさん式にって。
「え、ちょっと待ってん。まさか、ビアンカとルージュが? どれくらい?」
2、3日って訳やないやろうし。アレスのへいへいいくぜ行軍やなかろうし。今までずっと一緒やったから、あまり長い間離れるなんて想像がつかない。
『冬の間なのです』
『それでね、ユイ』
ビアンカとルージュが、一呼吸おく。
『元気とルリ、クリスも連れていくのです』
『コハクとヒスイもよ』
「「絶対にダメやっ」」
私と晃太は即座に反対した。
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