文字の大きさ
大
中
小
561 / 877
連載
バタバタ②
「余計な事言うな」
と、エドワルドさんがケルンさんに関節技をかけてる。メキメキ言ってるよ。すぐにケルンさんがギブアップとエドワルドさんの腕を叩く。
「あたたたた、だが、ユリアレーナの古い貴族には、そんな風習あっただろ?」
「いつの時代の話をしてるんだよっ。今じゃそんな意味では使われないんだよっ」
がーっ、と珍しくエドワルドさんが怒る。
「あの、どういう事ですか?」
気になって聞いてみる。
聞かれたエドワルドさんは、一瞬迷いの表情だ。
「あー、古い話ですよ」
と、説明してくれそうや。
ユリアレーナは建国300年。国として宣言して、アレーナ女王が初代国主として着任してからね。その前は複数のいわゆる部族が点々と存在していた。まずは、アレーナ女王は現在のマーファを拠点としていた自身の部族を纏め上げ、周辺の集落や遊牧民に様々な交渉し、吸収していった。そしてある程度の規模になり、周辺諸国とも調整して、国として宣言した。その時の立役者として活躍した各部族や集落の代表者に爵位の制度を作り進呈。その中にウルガー一族があった。ウルガー一族の役割は、戦闘だ。アレーナ女王の護衛や、必要時の武力ね。
今では建国時の一族は半数。理由はユリアレーナ王国が拡大し、役職として爵位を得るものが増えたことが上げられる。
「で、その古い貴族、つまりうちみたいな所には、伝統みたいなのがありまして」
特に、遊牧民とかではなく、ちゃんと集落を持つ部族ね。
「友好関係となった他家に、養子を出すことがあったんです。これは、自分の大事な子供を差し出す程の価値のある関係と示す為にね。養子先もそれを理解し、自分の子として受け入れるんです。これは跡継ぎとか全く関係なく行われていたんですよ」
「へー」
色々あるんやね。
「そんなのずっと前の話で、今じゃそんなことする所は時代錯誤もいいところです」
「え? そうなの?」
すう、と冷めた視線でケルンさんを見るエドワルドさん。
「あ、ごめんね」
素直に謝ってる。
「今はどんな意味なんです?」
何となく、聞いてみた。すると、エドワルドさんは再び迷いの表情をする。
「未成年の場合は養子で通るでしょうが、俺の場合は、婿養子だと受け取られますよ」
ぶわっふ。むっ、婿養子って……………
エドワルドさんが、ちら、とケルンさんを見る。どうやらケルンさんはその古い方の知識のみがあったみたい。ほら、サエキ様が私の保証人だし、現在その代理でエドワルドさんのお兄さん、アルベルトさんが務めてくれているから、それで思い付いたんやね。ウルガー子爵家から、ミズサワ家へ信頼の証として、ウルガー子爵三男のエドワルドさんを、ってね。
うーん、長く生きていると、そんな勘違いもあるんやねー。
「ミ、ミズサワ家の皆様、忘れてください」
小さくなってる最年長。まあ、いいですけど。
「悪くない話だと思ったんだがなあ」
と、ぽつり、と呟くのはなんとヒェリさん。え? と、エドワルドさんが振り返る。
「対人関係に対して淡白なお前が悪くないって言うくらいだから、てっきり、居心地いいんだろうなって思ったんだけどなあ」
「そうじゃなあ、色々見てきた儂からしたら、ほっとできるんじゃがなあ」
………………………え? ヒェリさん、こんなこと言う人やっけ? 何だかいつも突っ込み役と言うか、セーブ役してるから、常識人のイメージがあるんやけど。隣でビールのジョッキを抱えたツヴァイクさんまで、うんうん、頷いているし。
「何が目的だ?」
やけど、冷めたエドワルドさん再び。
「……………ばれたか?」
「やっぱりなあ、ばれたな」
ヒェリさんとツヴァイクさんがごつい肩をすくめる。なんやろ?
「エドワルドがミズサワ家に入れば、コウタ殿が付いてきてくれるかもって」
「えっ? わいですかっ?」
黙ったままG県のすっきり味の大吟醸をちびちびしていた晃太が、驚いている。
それを見て、ヒェリさんとツヴァイクさんは更に肩をすくめる。
「やはり、自覚がないようでしたね」
「そうじゃないかと思うていましたがなぁ」
やっぱり、みたいなヒェリさんとツヴァイクさん。
「いやいや、わいやなくて、姉やないですか?」
違う違うと首を振るのにケルンさんも加わる。
「確かにユイさんの存在は大きいですが、貴方自身も自覚するべきですよ」
と、ケルンさんが指摘。
「規格外のアイテムボックス、的確な支援魔法。最高の後方支援者ですよ」
「でも、その、皆さんみたいにレベルの高い冒険者には、わいは力不足っていうか…………」
晃太はゴニョゴニョ。ちょっとにやけそうで、困った顔。確かに、近隣諸国でも最強の冒険者パーティーに、誉められているからね。エドワルドさんは、落ち着いたのか着席している。
「我々は確証もなくこんな話はしませんよ。何度かボス部屋ご一緒して、貴方の潜在魔力量から考えるとすでに中堅魔法職以上の保有量をお持ちのはず。後は実績さえあれば、トントン拍子でランク上がりますよ」
ケルンさんの指摘で詰まる晃太。晃太にも、私同様、経験値5倍のスキルがある。私がレベル100、晃太もかなり高いはず。最近レベル聞いてないけどね。
「冒険者なら、貴方は喉から手が出る程、欲しい人材ですよ」
なんや、前にホークさんと話した気がする。
「それに、貴方が来てくれたら、もしかしたら、心配したテイマー殿が、従魔を一体付けてくれる可能性もなきにしもあらずってね。それがなくても、是非に勧誘したいのは事実です」
「じゃあ、俺、ユイちゃんとこの子になるっ」
ぴゃー、と手を上げたのは、ボロネーゼをすすっていたアルスさん。口元、ちょっぴり汚してる。それにぎょっとした顔になるのは、金の虎の皆さん。
「こら、アルスッ」
「おやめアルスッ」
ファングさんとリィマさんが慌てて口を塞ぐ。だけど、アルスさんはぷるぷるして手を払う。
「なんで? ユイちゃんとこの子になったら、コータちゃん来るんでしょ?」
「こ、コータちゃんて…………」
三十路手前の晃太が、混乱してる。まさか、この歳で、ちゃん、付けされると思わなかったかもね。
「そしたら、ユイちゃんも来るでしょ? ユイちゃんの母ちゃんのご飯毎日食べられるよっ」
一瞬、ファングさんとリィマさん、ペコペコしていたガリストさんとフリンダさんが思考停止。
「悪くない、違うっ、アルス、この話はもう終わりだっ」
「ええぇぇぇっ」
ファングさんの、あれ、本音かね? ぷるぷるして振り払ってる。アルスさんは不満げ。
「ユイちゃん………………」
きゅーん、と効果音を放ちながら、こちらを見るアルスさん。なんや、胸からきゅん、て音がする。
はっ、いかん、自分から犯罪者臭がっ。
私もぷるぷる。
「ユイさん、大丈夫?」
エマちゃんが心配そうに聞いてくれる、申し訳ない。
「大丈夫よ。エマちゃん、何かおかわりいる?」
「えっとね。ロールケーキ食べたいな」
「はいはい、テオ君は?」
「俺も食べたいですっ」
うんうん、素直でよか。ホークさんのお馴染みの、こら、が飛ぶがよかよか。
リクエストを聞きながら、私は色々タップ。
私がタップしだしたので、養子、うんぬんの話は終わった。終わったけど。
食後、後片付けしていると、不安そうに、エマちゃんがそっと聞いてきた。
「ユイさん」
「んー、何ね?」
「エドワルドさん、ミズサワのおうちに婿養子に来るの?」
「ぶわっふ」
どうやら、エマちゃん、最近エドワルドさんがしかたないとは言え名目上私の周囲をがっちり固めているのに、不安になったみたい。私の後見人のひ孫さんやし、ユリアレーナ最強冒険者やし、ミズサワ家に入ったら、自分達の立ち位置が取られちゃう的に思ったみたい。なんせ、エドワルドさんが来たら、近隣諸国最強冒険者パーティーと色々懇意に出来て、晃太の支援魔法のスキルアップにもなるだろうからって。
多分エマちゃんの心配は、鷹の目がお役御免になるんじゃないかってことね。
「あのね、エマちゃん、さっきの話はありえんからね。ケルンさんの話は昔の話やし、だいたい、エドワルドさんのお兄さん達が、簡単に手放さんよ」
首都でお世話になったオスヴァルトさん、お会いしたことがない、アルベルトさん。それからお母さんがご存命だからね、簡単に息子を、はい、どうぞ、と手放さすとは思えない。だって、家族だよ、ユリアレーナ最強よ、エドワルドさん。そんな古い風習で、簡単に手放さないと思う。
「そう?」
「大丈夫よ、エマちゃん。エマちゃんが心配するようなことにはならんけんね」
まだ、不安そうやけど、私の言葉にやっとほっとしたようなエマちゃん。
あははん、かわいか。なんや、もう、親子に間違われても、ウェルカムな気分。
それから、ちょっぴり私とエマちゃんはくっついて、お皿を一緒に洗った。
と、エドワルドさんがケルンさんに関節技をかけてる。メキメキ言ってるよ。すぐにケルンさんがギブアップとエドワルドさんの腕を叩く。
「あたたたた、だが、ユリアレーナの古い貴族には、そんな風習あっただろ?」
「いつの時代の話をしてるんだよっ。今じゃそんな意味では使われないんだよっ」
がーっ、と珍しくエドワルドさんが怒る。
「あの、どういう事ですか?」
気になって聞いてみる。
聞かれたエドワルドさんは、一瞬迷いの表情だ。
「あー、古い話ですよ」
と、説明してくれそうや。
ユリアレーナは建国300年。国として宣言して、アレーナ女王が初代国主として着任してからね。その前は複数のいわゆる部族が点々と存在していた。まずは、アレーナ女王は現在のマーファを拠点としていた自身の部族を纏め上げ、周辺の集落や遊牧民に様々な交渉し、吸収していった。そしてある程度の規模になり、周辺諸国とも調整して、国として宣言した。その時の立役者として活躍した各部族や集落の代表者に爵位の制度を作り進呈。その中にウルガー一族があった。ウルガー一族の役割は、戦闘だ。アレーナ女王の護衛や、必要時の武力ね。
今では建国時の一族は半数。理由はユリアレーナ王国が拡大し、役職として爵位を得るものが増えたことが上げられる。
「で、その古い貴族、つまりうちみたいな所には、伝統みたいなのがありまして」
特に、遊牧民とかではなく、ちゃんと集落を持つ部族ね。
「友好関係となった他家に、養子を出すことがあったんです。これは、自分の大事な子供を差し出す程の価値のある関係と示す為にね。養子先もそれを理解し、自分の子として受け入れるんです。これは跡継ぎとか全く関係なく行われていたんですよ」
「へー」
色々あるんやね。
「そんなのずっと前の話で、今じゃそんなことする所は時代錯誤もいいところです」
「え? そうなの?」
すう、と冷めた視線でケルンさんを見るエドワルドさん。
「あ、ごめんね」
素直に謝ってる。
「今はどんな意味なんです?」
何となく、聞いてみた。すると、エドワルドさんは再び迷いの表情をする。
「未成年の場合は養子で通るでしょうが、俺の場合は、婿養子だと受け取られますよ」
ぶわっふ。むっ、婿養子って……………
エドワルドさんが、ちら、とケルンさんを見る。どうやらケルンさんはその古い方の知識のみがあったみたい。ほら、サエキ様が私の保証人だし、現在その代理でエドワルドさんのお兄さん、アルベルトさんが務めてくれているから、それで思い付いたんやね。ウルガー子爵家から、ミズサワ家へ信頼の証として、ウルガー子爵三男のエドワルドさんを、ってね。
うーん、長く生きていると、そんな勘違いもあるんやねー。
「ミ、ミズサワ家の皆様、忘れてください」
小さくなってる最年長。まあ、いいですけど。
「悪くない話だと思ったんだがなあ」
と、ぽつり、と呟くのはなんとヒェリさん。え? と、エドワルドさんが振り返る。
「対人関係に対して淡白なお前が悪くないって言うくらいだから、てっきり、居心地いいんだろうなって思ったんだけどなあ」
「そうじゃなあ、色々見てきた儂からしたら、ほっとできるんじゃがなあ」
………………………え? ヒェリさん、こんなこと言う人やっけ? 何だかいつも突っ込み役と言うか、セーブ役してるから、常識人のイメージがあるんやけど。隣でビールのジョッキを抱えたツヴァイクさんまで、うんうん、頷いているし。
「何が目的だ?」
やけど、冷めたエドワルドさん再び。
「……………ばれたか?」
「やっぱりなあ、ばれたな」
ヒェリさんとツヴァイクさんがごつい肩をすくめる。なんやろ?
「エドワルドがミズサワ家に入れば、コウタ殿が付いてきてくれるかもって」
「えっ? わいですかっ?」
黙ったままG県のすっきり味の大吟醸をちびちびしていた晃太が、驚いている。
それを見て、ヒェリさんとツヴァイクさんは更に肩をすくめる。
「やはり、自覚がないようでしたね」
「そうじゃないかと思うていましたがなぁ」
やっぱり、みたいなヒェリさんとツヴァイクさん。
「いやいや、わいやなくて、姉やないですか?」
違う違うと首を振るのにケルンさんも加わる。
「確かにユイさんの存在は大きいですが、貴方自身も自覚するべきですよ」
と、ケルンさんが指摘。
「規格外のアイテムボックス、的確な支援魔法。最高の後方支援者ですよ」
「でも、その、皆さんみたいにレベルの高い冒険者には、わいは力不足っていうか…………」
晃太はゴニョゴニョ。ちょっとにやけそうで、困った顔。確かに、近隣諸国でも最強の冒険者パーティーに、誉められているからね。エドワルドさんは、落ち着いたのか着席している。
「我々は確証もなくこんな話はしませんよ。何度かボス部屋ご一緒して、貴方の潜在魔力量から考えるとすでに中堅魔法職以上の保有量をお持ちのはず。後は実績さえあれば、トントン拍子でランク上がりますよ」
ケルンさんの指摘で詰まる晃太。晃太にも、私同様、経験値5倍のスキルがある。私がレベル100、晃太もかなり高いはず。最近レベル聞いてないけどね。
「冒険者なら、貴方は喉から手が出る程、欲しい人材ですよ」
なんや、前にホークさんと話した気がする。
「それに、貴方が来てくれたら、もしかしたら、心配したテイマー殿が、従魔を一体付けてくれる可能性もなきにしもあらずってね。それがなくても、是非に勧誘したいのは事実です」
「じゃあ、俺、ユイちゃんとこの子になるっ」
ぴゃー、と手を上げたのは、ボロネーゼをすすっていたアルスさん。口元、ちょっぴり汚してる。それにぎょっとした顔になるのは、金の虎の皆さん。
「こら、アルスッ」
「おやめアルスッ」
ファングさんとリィマさんが慌てて口を塞ぐ。だけど、アルスさんはぷるぷるして手を払う。
「なんで? ユイちゃんとこの子になったら、コータちゃん来るんでしょ?」
「こ、コータちゃんて…………」
三十路手前の晃太が、混乱してる。まさか、この歳で、ちゃん、付けされると思わなかったかもね。
「そしたら、ユイちゃんも来るでしょ? ユイちゃんの母ちゃんのご飯毎日食べられるよっ」
一瞬、ファングさんとリィマさん、ペコペコしていたガリストさんとフリンダさんが思考停止。
「悪くない、違うっ、アルス、この話はもう終わりだっ」
「ええぇぇぇっ」
ファングさんの、あれ、本音かね? ぷるぷるして振り払ってる。アルスさんは不満げ。
「ユイちゃん………………」
きゅーん、と効果音を放ちながら、こちらを見るアルスさん。なんや、胸からきゅん、て音がする。
はっ、いかん、自分から犯罪者臭がっ。
私もぷるぷる。
「ユイさん、大丈夫?」
エマちゃんが心配そうに聞いてくれる、申し訳ない。
「大丈夫よ。エマちゃん、何かおかわりいる?」
「えっとね。ロールケーキ食べたいな」
「はいはい、テオ君は?」
「俺も食べたいですっ」
うんうん、素直でよか。ホークさんのお馴染みの、こら、が飛ぶがよかよか。
リクエストを聞きながら、私は色々タップ。
私がタップしだしたので、養子、うんぬんの話は終わった。終わったけど。
食後、後片付けしていると、不安そうに、エマちゃんがそっと聞いてきた。
「ユイさん」
「んー、何ね?」
「エドワルドさん、ミズサワのおうちに婿養子に来るの?」
「ぶわっふ」
どうやら、エマちゃん、最近エドワルドさんがしかたないとは言え名目上私の周囲をがっちり固めているのに、不安になったみたい。私の後見人のひ孫さんやし、ユリアレーナ最強冒険者やし、ミズサワ家に入ったら、自分達の立ち位置が取られちゃう的に思ったみたい。なんせ、エドワルドさんが来たら、近隣諸国最強冒険者パーティーと色々懇意に出来て、晃太の支援魔法のスキルアップにもなるだろうからって。
多分エマちゃんの心配は、鷹の目がお役御免になるんじゃないかってことね。
「あのね、エマちゃん、さっきの話はありえんからね。ケルンさんの話は昔の話やし、だいたい、エドワルドさんのお兄さん達が、簡単に手放さんよ」
首都でお世話になったオスヴァルトさん、お会いしたことがない、アルベルトさん。それからお母さんがご存命だからね、簡単に息子を、はい、どうぞ、と手放さすとは思えない。だって、家族だよ、ユリアレーナ最強よ、エドワルドさん。そんな古い風習で、簡単に手放さないと思う。
「そう?」
「大丈夫よ、エマちゃん。エマちゃんが心配するようなことにはならんけんね」
まだ、不安そうやけど、私の言葉にやっとほっとしたようなエマちゃん。
あははん、かわいか。なんや、もう、親子に間違われても、ウェルカムな気分。
それから、ちょっぴり私とエマちゃんはくっついて、お皿を一緒に洗った。
感想 854
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されたので、王都の端で小さな香水店を開きます 〜「匂いしか分からない無能令嬢」と捨てられましたが、実は人の嘘と運命を嗅ぎ分ける王国唯
鳳凰院暁月刃夜婚約破棄されたので、王都の端で小さな香水店を開きます
〜「匂いしか分からない無能令嬢」と捨てられましたが、実は人の嘘と運命を嗅ぎ分ける王国唯一の調香師でした〜
☆あらすじ☆
王太子から婚約破棄され、家族にも見捨てられた公爵令嬢リリアーナ。
妹をいじめた悪女。
匂いしか分からない無能令嬢。
王妃にふさわしくない女。
夜会場でそう笑われた彼女は、すべてを失った――はずだった。
けれどリリアーナの嗅覚は、ただ香りを嗅ぎ分けるだけのものではない。
人の嘘。
隠された悪意。
病の兆し。
呪いの残り香。
そして、運命の匂いまで嗅ぎ分ける、王国唯一の異能だった。
公爵家を出たリリアーナは、亡き祖母が残した王都の端の小さな香水店「夜明けの瓶」を開く。
最初は誰にも見向きされない店だった。
けれど、眠れない少女を救い、毒を盛られた貴婦人を助け、夫婦の嘘をほどいていくうちに、店は王都中の秘密が集まる場所になっていく。
そんな彼女の前に現れたのは、冷血公爵と恐れられる辺境公爵ヴァルト。
彼は王宮由来の呪いに蝕まれていた。
リリアーナは彼の呪いを解くため、契約婚約を結ぶことになる。
不器用すぎる公爵に守られ、時に振り回されながら、彼女は王宮に隠された大きな嘘へと近づいていく。
なぜ王太子は婚約破棄を急いだのか。
なぜ妹は姉を憎み続けるのか。
なぜ王宮には、焦げた薔薇の匂いが漂っているのか。
無能と捨てられた令嬢は、もう誰かの言いなりにはならない。
「私は、私の鼻で生きていきます」
香水店から始まる、婚約破棄令嬢の逆転恋愛ファンタジー。
ざまぁあり、契約婚約あり、冷血公爵の不器用な溺愛あり。
最後には、彼女を捨てた者たちが気づくことになる。
本当に失ってはいけなかったのは、彼女だったのだと。
王妃教育を辞退したら「困る」と国王陛下が直接迎えに来ました ~婚約破棄された私に、王太子ではなく国王陛下が求婚してきます〜
由香【全一話完結】
王太子の心変わりによって婚約を破棄された侯爵令嬢リリアーナ。
十年以上受け続けた王妃教育も辞退し、ようやく自由になれると思っていた。
ところが数日後、侯爵家を訪れたのは国王陛下本人。
「王妃教育を辞退されると困る。私の妃になってほしい」
努力を踏みにじった王太子はすべてを失い、選ばれたのは誠実に生きてきた彼女だった。
これは、年上国王に溺愛されながら、世界一幸せな王妃になるまでの逆転ラブストーリー。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
聖女って無給で無休なんですか?じゃあやらないです
こじまき異世界に聖女として召喚されたイラストレーターのチヒロ。しかし聖女には給料も休みもないことを知って「じゃあやらないです」と聖女就任を断る。
「国と人を救う崇高な仕事には、私どもからの感謝を捧げよう」
「心底いらないです」
異世界でまで、やりがい搾取されてたまるかよ。
※小説家になろうにも投稿しています
婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています
由香婚約破棄のその日、
悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。
王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。
だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。
再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。
広場で語られる真実。
そして、無自覚に人を惹きつけてしまうリリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。
これは、悪役令嬢として断罪された少女が、「誰かの物語の脇役」ではなく、自分自身の人生を取り戻す物語。
過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。
五年も笑わなかった辺境伯の娘が、追放された保育係の令嬢の前で初めて笑った
歩人(あゆと)侯爵令嬢クラリスは、五年間、兄夫婦の公爵家で三人の御子の保育を任されてきた。表向きは「下女扱い」だったが、彼女の保育記録には毎日の歌・手作りの絵札・夜泣きの記録が綿密に綴られていた。「育児など侍女の手伝い。本物の貴族のすることではないわ」兄嫁の侮辱に、クラリスは保育記録帳を置いて去る。訪ねた先は、妻を亡くした辺境伯ロタールの屋敷だった。彼の娘リーリャは六歳、母を亡くして以来、誰の前でも笑わなかった。「五年、御子さま方を見続けたあなたなら、リーリャの心も読めるだろうか」ロタールの不器用な依頼に、クラリスは静かに頷く。春が来る頃、リーリャは初めて声を上げて笑った。クラリスの隣で、ロタールも気づくと微笑んでいた——五年ぶりに。
【完結済】ワザと醜い令嬢をしていた令嬢一家華麗に亡命する
satomi醜く自らに魔法をかけてケルリール王国王太子と婚約をしていた侯爵家令嬢のアメリア=キートウェル。フェルナン=ケルリール王太子から醜いという理由で婚約破棄を言い渡されました。
もう王太子は能無しですし、ケルリール王国から一家で亡命してしまう事にしちゃいます!
【完結】妹は庶子、文句があるか? 常識なんてぶっ飛ばせ!
青空一夏(ざまぁ×癒し×溺愛)
庶子として公爵家に引き取られたアメリアは、
王立学園で冷たい視線に晒されながらも、ほんの少しの希望を胸に通っていた。
――だが、彼女はまだ知らなかった。
「庶子」の立場が、どれほど理不尽な扱いを受けるものかを。
心が折れかけたそのとき。
彼女を迎えに現れたのは、兄――オルディアーク公爵、レオニルだった。
「大丈夫。……次は、俺が一緒に通うから」
妹を守るためなら、学園にだって入る!
冷酷なはずの公爵閣下は、妹にだけとことん甘くて最強です。
※兄が妹を溺愛するお話しです。
※ざまぁはありますが、それがメインではありません。
※某サイトコンテスト用なので、いつもと少し雰囲気が違いますが、楽しんでいただけたら嬉しいです。