もふもふ大好き家族が聖女召喚に巻き込まれる~時空神様からの気まぐれギフト・スキル『ルーム』で家族と愛犬守ります~

鐘ケ江 しのぶ

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バタバタ②

「余計な事言うな」
 と、エドワルドさんがケルンさんに関節技をかけてる。メキメキ言ってるよ。すぐにケルンさんがギブアップとエドワルドさんの腕を叩く。
「あたたたた、だが、ユリアレーナの古い貴族には、そんな風習あっただろ?」
「いつの時代の話をしてるんだよっ。今じゃそんな意味では使われないんだよっ」
 がーっ、と珍しくエドワルドさんが怒る。
「あの、どういう事ですか?」
 気になって聞いてみる。
 聞かれたエドワルドさんは、一瞬迷いの表情だ。
「あー、古い話ですよ」
 と、説明してくれそうや。
 ユリアレーナは建国300年。国として宣言して、アレーナ女王が初代国主として着任してからね。その前は複数のいわゆる部族が点々と存在していた。まずは、アレーナ女王は現在のマーファを拠点としていた自身の部族を纏め上げ、周辺の集落や遊牧民に様々な交渉し、吸収していった。そしてある程度の規模になり、周辺諸国とも調整して、国として宣言した。その時の立役者として活躍した各部族や集落の代表者に爵位の制度を作り進呈。その中にウルガー一族があった。ウルガー一族の役割は、戦闘だ。アレーナ女王の護衛や、必要時の武力ね。
 今では建国時の一族は半数。理由はユリアレーナ王国が拡大し、役職として爵位を得るものが増えたことが上げられる。
「で、その古い貴族、つまりうちみたいな所には、伝統みたいなのがありまして」
 特に、遊牧民とかではなく、ちゃんと集落を持つ部族ね。
「友好関係となった他家に、養子を出すことがあったんです。これは、自分の大事な子供を差し出す程の価値のある関係と示す為にね。養子先もそれを理解し、自分の子として受け入れるんです。これは跡継ぎとか全く関係なく行われていたんですよ」
「へー」
 色々あるんやね。
「そんなのずっと前の話で、今じゃそんなことする所は時代錯誤もいいところです」
「え? そうなの?」
 すう、と冷めた視線でケルンさんを見るエドワルドさん。
「あ、ごめんね」
 素直に謝ってる。
「今はどんな意味なんです?」
 何となく、聞いてみた。すると、エドワルドさんは再び迷いの表情をする。
「未成年の場合は養子で通るでしょうが、俺の場合は、婿養子だと受け取られますよ」
 ぶわっふ。むっ、婿養子って……………
 エドワルドさんが、ちら、とケルンさんを見る。どうやらケルンさんはその古い方の知識のみがあったみたい。ほら、サエキ様が私の保証人だし、現在その代理でエドワルドさんのお兄さん、アルベルトさんが務めてくれているから、それで思い付いたんやね。ウルガー子爵家から、ミズサワ家へ信頼の証として、ウルガー子爵三男のエドワルドさんを、ってね。
 うーん、長く生きていると、そんな勘違いもあるんやねー。
「ミ、ミズサワ家の皆様、忘れてください」
 小さくなってる最年長。まあ、いいですけど。
「悪くない話だと思ったんだがなあ」
 と、ぽつり、と呟くのはなんとヒェリさん。え? と、エドワルドさんが振り返る。
「対人関係に対して淡白なお前が悪くないって言うくらいだから、てっきり、居心地いいんだろうなって思ったんだけどなあ」
「そうじゃなあ、色々見てきた儂からしたら、ほっとできるんじゃがなあ」
 ………………………え? ヒェリさん、こんなこと言う人やっけ? 何だかいつも突っ込み役と言うか、セーブ役してるから、常識人のイメージがあるんやけど。隣でビールのジョッキを抱えたツヴァイクさんまで、うんうん、頷いているし。
「何が目的だ?」
 やけど、冷めたエドワルドさん再び。
「……………ばれたか?」
「やっぱりなあ、ばれたな」
 ヒェリさんとツヴァイクさんがごつい肩をすくめる。なんやろ?
「エドワルドがミズサワ家に入れば、コウタ殿が付いてきてくれるかもって」
「えっ? わいですかっ?」
 黙ったままG県のすっきり味の大吟醸をちびちびしていた晃太が、驚いている。
 それを見て、ヒェリさんとツヴァイクさんは更に肩をすくめる。
「やはり、自覚がないようでしたね」
「そうじゃないかと思うていましたがなぁ」
 やっぱり、みたいなヒェリさんとツヴァイクさん。
「いやいや、わいやなくて、姉やないですか?」
 違う違うと首を振るのにケルンさんも加わる。
「確かにユイさんの存在は大きいですが、貴方自身も自覚するべきですよ」
 と、ケルンさんが指摘。
「規格外のアイテムボックス、的確な支援魔法。最高の後方支援者ですよ」
「でも、その、皆さんみたいにレベルの高い冒険者には、わいは力不足っていうか…………」
 晃太はゴニョゴニョ。ちょっとにやけそうで、困った顔。確かに、近隣諸国でも最強の冒険者パーティーに、誉められているからね。エドワルドさんは、落ち着いたのか着席している。
「我々は確証もなくこんな話はしませんよ。何度かボス部屋ご一緒して、貴方の潜在魔力量から考えるとすでに中堅魔法職以上の保有量をお持ちのはず。後は実績さえあれば、トントン拍子でランク上がりますよ」
 ケルンさんの指摘で詰まる晃太。晃太にも、私同様、経験値5倍のスキルがある。私がレベル100、晃太もかなり高いはず。最近レベル聞いてないけどね。
「冒険者なら、貴方は喉から手が出る程、欲しい人材ですよ」
 なんや、前にホークさんと話した気がする。
「それに、貴方が来てくれたら、もしかしたら、心配したテイマー殿が、従魔を一体付けてくれる可能性もなきにしもあらずってね。それがなくても、是非に勧誘したいのは事実です」
「じゃあ、俺、ユイちゃんとこの子になるっ」
 ぴゃー、と手を上げたのは、ボロネーゼをすすっていたアルスさん。口元、ちょっぴり汚してる。それにぎょっとした顔になるのは、金の虎の皆さん。
「こら、アルスッ」
「おやめアルスッ」
 ファングさんとリィマさんが慌てて口を塞ぐ。だけど、アルスさんはぷるぷるして手を払う。
「なんで? ユイちゃんとこの子になったら、コータちゃん来るんでしょ?」
「こ、コータちゃんて…………」
 三十路手前の晃太が、混乱してる。まさか、この歳で、ちゃん、付けされると思わなかったかもね。
「そしたら、ユイちゃんも来るでしょ? ユイちゃんの母ちゃんのご飯毎日食べられるよっ」
 一瞬、ファングさんとリィマさん、ペコペコしていたガリストさんとフリンダさんが思考停止。
「悪くない、違うっ、アルス、この話はもう終わりだっ」
「ええぇぇぇっ」
 ファングさんの、あれ、本音かね? ぷるぷるして振り払ってる。アルスさんは不満げ。
「ユイちゃん………………」
 きゅーん、と効果音を放ちながら、こちらを見るアルスさん。なんや、胸からきゅん、て音がする。
 はっ、いかん、自分から犯罪者臭がっ。
 私もぷるぷる。
「ユイさん、大丈夫?」
 エマちゃんが心配そうに聞いてくれる、申し訳ない。
「大丈夫よ。エマちゃん、何かおかわりいる?」
「えっとね。ロールケーキ食べたいな」
「はいはい、テオ君は?」
「俺も食べたいですっ」
 うんうん、素直でよか。ホークさんのお馴染みの、こら、が飛ぶがよかよか。
 リクエストを聞きながら、私は色々タップ。
 私がタップしだしたので、養子、うんぬんの話は終わった。終わったけど。
 食後、後片付けしていると、不安そうに、エマちゃんがそっと聞いてきた。
「ユイさん」
「んー、何ね?」
「エドワルドさん、ミズサワのおうちに婿養子に来るの?」
「ぶわっふ」
 どうやら、エマちゃん、最近エドワルドさんがしかたないとは言え名目上私の周囲をがっちり固めているのに、不安になったみたい。私の後見人のひ孫さんやし、ユリアレーナ最強冒険者やし、ミズサワ家に入ったら、自分達の立ち位置が取られちゃう的に思ったみたい。なんせ、エドワルドさんが来たら、近隣諸国最強冒険者パーティーと色々懇意に出来て、晃太の支援魔法のスキルアップにもなるだろうからって。
 多分エマちゃんの心配は、鷹の目がお役御免になるんじゃないかってことね。
「あのね、エマちゃん、さっきの話はありえんからね。ケルンさんの話は昔の話やし、だいたい、エドワルドさんのお兄さん達が、簡単に手放さんよ」
 首都でお世話になったオスヴァルトさん、お会いしたことがない、アルベルトさん。それからお母さんがご存命だからね、簡単に息子を、はい、どうぞ、と手放さすとは思えない。だって、家族だよ、ユリアレーナ最強よ、エドワルドさん。そんな古い風習で、簡単に手放さないと思う。
「そう?」
「大丈夫よ、エマちゃん。エマちゃんが心配するようなことにはならんけんね」
 まだ、不安そうやけど、私の言葉にやっとほっとしたようなエマちゃん。
 あははん、かわいか。なんや、もう、親子に間違われても、ウェルカムな気分。
 それから、ちょっぴり私とエマちゃんはくっついて、お皿を一緒に洗った。
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