569 / 876
連載
閑話 金の虎の盾士
アスラ王国の中規模の町で、ファングは生まれた。アスラ王国は獣人に対して、厳しい国だったが、国交を開いたユリアレーナ王国の影響か、住んでいた町の人達がそれを歓迎したのか、ひどい差別やいじめに合うこともなく育った。
成人して、見習いの警備になり、直ぐに幼馴染みと一緒になった。18になる前には父親になる。そして、見習いから正規の警備になる。しっかり一家の大黒柱になれる。
そう思っていた矢先。
「ファングッ、ファングッ、直ぐに教会へ行けっ、奥さんがっ」
いつも平静な上司が真っ青な顔で詰所に駆け込んできた。
それから、どうやって教会まで行ったか、覚えてなかった。
簡素なベッドに横たわる、大きなお腹の女性は、息をしていなかった。
眠るような顔。だが、いつも笑っていた温かい色合いの頬も、唇も、何もかも色を失っていた。真っ青になった手を握り締めて泣いているのは、妻が勤めていた、仕立て屋の中高年の女性だ。
その日、小雨が振っていた。女性は妻を近くまで見送った。何故、家まで送り届けなかったかと、涙ながらにファングと、駆けつけた妻の母親に謝る。昔の怪我のせいで、杖が無くては歩けない女性を、責めるような事が出来なかった。
ファングは膝から崩れ落ちてから、その先の記憶がまだらだ。
気が付いたら、喪服を着て、家にいた。
いつも温かい食事を作って待っていてくれた彼女がいない。
いない。いない。いない。いない。いない。
なぜ、いない?
発見された時、妻は既に息絶えていた。それでも発見者は一縷の望みをかけて、教会に走ってくれたが、既に手の施しようがなかった。
妻は階段の下で倒れていた。おそらく踏み外したのだろうと思われたが、初めての妊娠で慎重になっていたのに、階段を踏み外すなんて。誰かに、突き飛ばされたのではないか?
妻の母親と自分の両親もそう思ったようだが、結局、通らなかった。小雨の中、誰も目撃している者がいなかったからだ。
初孫を楽しみにしていた自分の母親は、風邪を引き呆気なく旅立ってしまい、父親も半年も経たずに後を追った。妻の母親とは、訴えを退けられてから疎遠になり、一人っ子のファングは、本当に一人になってしまった。
ファングは酒に溺れる生活になってしまい、警備の仕事もやめた。
町にいたら、思い出してしまうため、ファングはそれが辛かった。自然と町を出た。
町を出る時、どこで知ったか、妻の母親が来た。
「しっかりしなっ」
と、一言言って、去っていった。
俺に、どうしろってんだ?
ファングはやり場の無い気持ちになった。
酒に走り、金が無くなり、仕方なく冒険者やって、無茶をして、ケガをして、酒に走る。いつも顔色が悪く、頭がふらふらした。
数年間そんな生活を送っていたある日、安宿兼酒場で、いつものように安酒を飲んで、テーブルに突っ伏していた。
「やめてください……………」
掠れるような女の声を耳が捉えた。
ノロノロと顔を上げると、金髪の女性が、複数の男に絡まれている。金髪、妻と同じ髪。だが、似てない、妻と似てないが、妻の声が聞こえた気がした。
あの人、困っているわ、ファング、助けてあげて。
「「おい、やめろ」」
誰かとハモった。それがガリストだった。絡まれていたのはフリンダだった。
その場は、男達が引いたが、次の日も性懲りもなく、フリンダに絡んでいたのを、ファングが引き剥がした。それでも諦めない男達に絡まれていると、ガリストが加勢してくれた。
それからなし崩し的に三人で会う内に、パーティーを組んだ。ガリストは盾士、フリンダはヒーラー。二人ともソロだった。不思議と三人でいると、酒の量が一気に減った。無茶ばかりしていたが、周りの状況を見るようになった。
そしてお互いの事情を知らないままのパーティーの結成。リーダーはファングがすることになった。
お互いになんとなく、気が付いていた。それぞれが、それぞれに、キズを負っていると。
ファングは身籠っていた妻を失っていた。
ガリストは結婚を控えていたのに、相手側の家の借金を理由に婚約者は父親より高齢男性の後妻として、売られるように嫁いでいった。ガリストは駆け落ちしようとしたが、女性は残される幼い三人の妹達のために、その手を振り切った。結果は無惨なものだった。二年後、女性は妊娠。不貞を疑われ、暴力を振るわれた。不貞の相手は、元婚約者のガリストだろうと罵られた。どうしたらそんな思考になるか、話を聞いたファングは分からなかった。その女性が嫁いだのは、馬車で何日も移動しなければならない町。しかも、ガリストは女性が嫁いでから自分が住む町を出ていないし、女性自身軟禁生活だったのに。結局、遺産問題や、新しい女を妻として迎えたかったから、女性に暴力を振るい、流産を狙った。それを理由に、離縁するつもりだったと。ガリストのいたサウザマーク王国は一夫一妻。第二夫人、愛人、妾なんて決して認められない。唯一例外は王族と侯爵以上の貴族のみ。それも、国会に申請、審議会を受けなければならない。離縁も難しい。特に子供がいると更に。だから、不貞を理由に暴力を振るい、流産されて、自己管理不足だといちゃもんつけて離縁を目論んだ。もともと借金で買ったガリストの元婚約者女性には、ある程度の金を渡せばいいと軽く考えたのだろう。女性は結局、流産。そして、出血多量で帰らぬ人に。当然、殺人となり、そいつは捕らえられた。処置したヒーラーや助産婦達に罪を擦り付けようとしたが、女性の身体中のアザが証拠となった。諦め悪く、ガリストと不貞していたと言ったが、通るわけ無い。何より、これを喜んだもの達がいたのに、ファングの怒りに火がつきそうだった。女性の両親が、慰謝料など、まとまった額を手に入れ、歓喜したそうだ。聞いただけでも、その両親を殴りたいと短気に思った。ガリスト自身、不貞を疑われたことより、身勝手な理由で身籠っていた彼女を暴行し殺した相手と、娘を売り飛ばして、その死に喪にも服さない両親に、生まれて初めて殺意を覚えた。話を聞いたガリストは冷静でいられなくなり、仕事に使う斧を持ち家から飛び出したが、父親と兄に止められた。そして、事情を話した警備にまで止められた。母に兄嫁に泣いて言われた。
彼女は、ガリストに犯罪者になってほしいと、思ってない
ガリストが冷静になるには時間がかかったが、あの時止めてくれた事を、感謝していると。そう思えるまで、実家の牧場の仕事以外は引きこもり、食事を受け付けなくなり、げっそりしていた。ガリストも町にいると彼女を思い出すし、家族に迷惑になると思い町を出た。ファングと出会った時も、まだ、頬が痩けていた。
話を聞いて、ふと、気になったのは。
「その三人の妹達はどうなったんだ?」
借金を理由に簡単に娘を売り、その死で得た金に歓喜した親だ。下の娘達にも同じことをするのでは?
「……………ファングは優しいな」
ガリストは呟いた。
三人の妹の最年長が15になった日に、下の妹二人を連れて家出。自分が意に添わない相手に、姉の様に売られる話を聞いてしまったから。妹達を残して逃げられないと思い、そのまま教会に逃げ込んだ。事情を聞いた牧師達が直ぐに保護をしてくれ、境遇に恵まれない女性達や犯罪に巻き込まれ自活出来なくなった女性を保護する修道院に入るように手続きしてくれた。
「一番上の子はシスターになったと聞いた。下の子は知らないが、サウザマークでも堅牢な修道院だ。無事だと思う」
そう、穏やかに言うガリストが、何か割りきっているんだと思った。亡くなった元婚約者の女性が、身を呈して守った妹達の安否が、そうさせたのか。自分はまだ、引きずっているのに。
「そうじゃないんだよファング。今でも後悔と安堵を繰り返しているんだ。あの時、彼女を連れて逃げなかった事に後悔している。きっと、一生な。それと彼女が守ろうとしたあの子達の安否を思うだけで、彼女の意思を守って貰えたっていう思い。もし、彼女を連れていったら、あの妹達がどんな仕打ちを受けたかという事や、あのまま斧を持って飛び出していたらって言う恐怖や後悔。一生、一生、一生、そんな気持ちに苛まれる。俺はそれを受け入れているだけだ」
だからな、ファング。
「引きずっているのは、悪くないことなんだよ。愛しているんだろう? それは今も。だから、一生、一緒にその気持ちを大事にして生きていかないと」
その言葉に、ファングの心に無数に引っ掛かった釣り針の様な痛みが、少しだけ取れた気がした。
成人して、見習いの警備になり、直ぐに幼馴染みと一緒になった。18になる前には父親になる。そして、見習いから正規の警備になる。しっかり一家の大黒柱になれる。
そう思っていた矢先。
「ファングッ、ファングッ、直ぐに教会へ行けっ、奥さんがっ」
いつも平静な上司が真っ青な顔で詰所に駆け込んできた。
それから、どうやって教会まで行ったか、覚えてなかった。
簡素なベッドに横たわる、大きなお腹の女性は、息をしていなかった。
眠るような顔。だが、いつも笑っていた温かい色合いの頬も、唇も、何もかも色を失っていた。真っ青になった手を握り締めて泣いているのは、妻が勤めていた、仕立て屋の中高年の女性だ。
その日、小雨が振っていた。女性は妻を近くまで見送った。何故、家まで送り届けなかったかと、涙ながらにファングと、駆けつけた妻の母親に謝る。昔の怪我のせいで、杖が無くては歩けない女性を、責めるような事が出来なかった。
ファングは膝から崩れ落ちてから、その先の記憶がまだらだ。
気が付いたら、喪服を着て、家にいた。
いつも温かい食事を作って待っていてくれた彼女がいない。
いない。いない。いない。いない。いない。
なぜ、いない?
発見された時、妻は既に息絶えていた。それでも発見者は一縷の望みをかけて、教会に走ってくれたが、既に手の施しようがなかった。
妻は階段の下で倒れていた。おそらく踏み外したのだろうと思われたが、初めての妊娠で慎重になっていたのに、階段を踏み外すなんて。誰かに、突き飛ばされたのではないか?
妻の母親と自分の両親もそう思ったようだが、結局、通らなかった。小雨の中、誰も目撃している者がいなかったからだ。
初孫を楽しみにしていた自分の母親は、風邪を引き呆気なく旅立ってしまい、父親も半年も経たずに後を追った。妻の母親とは、訴えを退けられてから疎遠になり、一人っ子のファングは、本当に一人になってしまった。
ファングは酒に溺れる生活になってしまい、警備の仕事もやめた。
町にいたら、思い出してしまうため、ファングはそれが辛かった。自然と町を出た。
町を出る時、どこで知ったか、妻の母親が来た。
「しっかりしなっ」
と、一言言って、去っていった。
俺に、どうしろってんだ?
ファングはやり場の無い気持ちになった。
酒に走り、金が無くなり、仕方なく冒険者やって、無茶をして、ケガをして、酒に走る。いつも顔色が悪く、頭がふらふらした。
数年間そんな生活を送っていたある日、安宿兼酒場で、いつものように安酒を飲んで、テーブルに突っ伏していた。
「やめてください……………」
掠れるような女の声を耳が捉えた。
ノロノロと顔を上げると、金髪の女性が、複数の男に絡まれている。金髪、妻と同じ髪。だが、似てない、妻と似てないが、妻の声が聞こえた気がした。
あの人、困っているわ、ファング、助けてあげて。
「「おい、やめろ」」
誰かとハモった。それがガリストだった。絡まれていたのはフリンダだった。
その場は、男達が引いたが、次の日も性懲りもなく、フリンダに絡んでいたのを、ファングが引き剥がした。それでも諦めない男達に絡まれていると、ガリストが加勢してくれた。
それからなし崩し的に三人で会う内に、パーティーを組んだ。ガリストは盾士、フリンダはヒーラー。二人ともソロだった。不思議と三人でいると、酒の量が一気に減った。無茶ばかりしていたが、周りの状況を見るようになった。
そしてお互いの事情を知らないままのパーティーの結成。リーダーはファングがすることになった。
お互いになんとなく、気が付いていた。それぞれが、それぞれに、キズを負っていると。
ファングは身籠っていた妻を失っていた。
ガリストは結婚を控えていたのに、相手側の家の借金を理由に婚約者は父親より高齢男性の後妻として、売られるように嫁いでいった。ガリストは駆け落ちしようとしたが、女性は残される幼い三人の妹達のために、その手を振り切った。結果は無惨なものだった。二年後、女性は妊娠。不貞を疑われ、暴力を振るわれた。不貞の相手は、元婚約者のガリストだろうと罵られた。どうしたらそんな思考になるか、話を聞いたファングは分からなかった。その女性が嫁いだのは、馬車で何日も移動しなければならない町。しかも、ガリストは女性が嫁いでから自分が住む町を出ていないし、女性自身軟禁生活だったのに。結局、遺産問題や、新しい女を妻として迎えたかったから、女性に暴力を振るい、流産を狙った。それを理由に、離縁するつもりだったと。ガリストのいたサウザマーク王国は一夫一妻。第二夫人、愛人、妾なんて決して認められない。唯一例外は王族と侯爵以上の貴族のみ。それも、国会に申請、審議会を受けなければならない。離縁も難しい。特に子供がいると更に。だから、不貞を理由に暴力を振るい、流産されて、自己管理不足だといちゃもんつけて離縁を目論んだ。もともと借金で買ったガリストの元婚約者女性には、ある程度の金を渡せばいいと軽く考えたのだろう。女性は結局、流産。そして、出血多量で帰らぬ人に。当然、殺人となり、そいつは捕らえられた。処置したヒーラーや助産婦達に罪を擦り付けようとしたが、女性の身体中のアザが証拠となった。諦め悪く、ガリストと不貞していたと言ったが、通るわけ無い。何より、これを喜んだもの達がいたのに、ファングの怒りに火がつきそうだった。女性の両親が、慰謝料など、まとまった額を手に入れ、歓喜したそうだ。聞いただけでも、その両親を殴りたいと短気に思った。ガリスト自身、不貞を疑われたことより、身勝手な理由で身籠っていた彼女を暴行し殺した相手と、娘を売り飛ばして、その死に喪にも服さない両親に、生まれて初めて殺意を覚えた。話を聞いたガリストは冷静でいられなくなり、仕事に使う斧を持ち家から飛び出したが、父親と兄に止められた。そして、事情を話した警備にまで止められた。母に兄嫁に泣いて言われた。
彼女は、ガリストに犯罪者になってほしいと、思ってない
ガリストが冷静になるには時間がかかったが、あの時止めてくれた事を、感謝していると。そう思えるまで、実家の牧場の仕事以外は引きこもり、食事を受け付けなくなり、げっそりしていた。ガリストも町にいると彼女を思い出すし、家族に迷惑になると思い町を出た。ファングと出会った時も、まだ、頬が痩けていた。
話を聞いて、ふと、気になったのは。
「その三人の妹達はどうなったんだ?」
借金を理由に簡単に娘を売り、その死で得た金に歓喜した親だ。下の娘達にも同じことをするのでは?
「……………ファングは優しいな」
ガリストは呟いた。
三人の妹の最年長が15になった日に、下の妹二人を連れて家出。自分が意に添わない相手に、姉の様に売られる話を聞いてしまったから。妹達を残して逃げられないと思い、そのまま教会に逃げ込んだ。事情を聞いた牧師達が直ぐに保護をしてくれ、境遇に恵まれない女性達や犯罪に巻き込まれ自活出来なくなった女性を保護する修道院に入るように手続きしてくれた。
「一番上の子はシスターになったと聞いた。下の子は知らないが、サウザマークでも堅牢な修道院だ。無事だと思う」
そう、穏やかに言うガリストが、何か割りきっているんだと思った。亡くなった元婚約者の女性が、身を呈して守った妹達の安否が、そうさせたのか。自分はまだ、引きずっているのに。
「そうじゃないんだよファング。今でも後悔と安堵を繰り返しているんだ。あの時、彼女を連れて逃げなかった事に後悔している。きっと、一生な。それと彼女が守ろうとしたあの子達の安否を思うだけで、彼女の意思を守って貰えたっていう思い。もし、彼女を連れていったら、あの妹達がどんな仕打ちを受けたかという事や、あのまま斧を持って飛び出していたらって言う恐怖や後悔。一生、一生、一生、そんな気持ちに苛まれる。俺はそれを受け入れているだけだ」
だからな、ファング。
「引きずっているのは、悪くないことなんだよ。愛しているんだろう? それは今も。だから、一生、一緒にその気持ちを大事にして生きていかないと」
その言葉に、ファングの心に無数に引っ掛かった釣り針の様な痛みが、少しだけ取れた気がした。
あなたにおすすめの小説
「三番以下を取りなさい」と五年言われ続けたので、公開試験で本気を出しました
歩人
ファンタジー
王立魔法学院、入学時首席のリュシエンヌは、婚約者レイナルト公爵令息から五年間「女は三番以下を取れ」と命じられてきた。学院の序列は国家序列の縮図。レイナルトは常に一位に居続けた。婚約披露を控えた十九歳の春、レイナルトが新しい婚約者を連れて告げる。「お前では並び立てぬ。学力も身分も、足りなすぎる」——リュシエンヌは微笑んで、その翌日の年次公開試験で、五年封じてきた本気を出した。国王臨席の場で、史上最高点。魔法局長官が教授陣に命じる。「過去五年間の彼女の実測点と、もし本気で受けていたら出せた推計点を、公表したまえ」。教授陣は震える手で数字を並べた。レイナルトの「首席」は、全て彼女が譲った場所だった。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
夫の不倫相手に「妻の座を譲れ」と言われたので、譲る代わりに全部置いていきます 〜行き先は老舗旅館。追いかけてきても、もう遅いです〜
なつめ
恋愛
夫の愛人に「妻の座を譲れ」と言い渡された主人公は、怒鳴り返すこともしがみつくこともせず、ただ静かに頷いた。
家のこと、食事のこと、社交のこと、義実家のこと、会社の裏方のこと。 誰も価値を知らなかった“妻の座”の中身を、そっくりそのまま置いて家を出る。
向かった先は、かつて傷ついた自分を受け入れてくれた老舗旅館。 再建に奔走する若旦那とともに働く中で、主人公は初めて「役に立つから愛される」のではなく、「あなた自身がいてほしい」と言われる温かさを知っていく。
一方、主人公を軽んじた元夫の家では、生活も体裁も仕事もじわじわと崩壊を始める。 これは、何も持たずに出ていったはずの女が、自分の人生を取り戻し、最後には新しい恋と居場所を手に入れる再生の物語。
見た目の良すぎる双子の兄を持った妹は、引きこもっている理由を不細工だからと勘違いされていましたが、身内にも誤解されていたようです
珠宮さくら
恋愛
ルベロン国の第1王女として生まれたシャルレーヌは、引きこもっていた。
その理由は、見目の良い両親と双子の兄に劣るどころか。他の腹違いの弟妹たちより、不細工な顔をしているからだと噂されていたが、実際のところは全然違っていたのだが、そんな片割れを心配して、外に出そうとした兄は自分を頼ると思っていた。
それが、全く頼らないことになるどころか。自分の方が残念になってしまう結末になるとは思っていなかった。
夫が私にそっくりな下の娘ばかりをかわいがるのですけど!
山科ひさき
恋愛
「子供達をお願い」 そう言い残して、私はこの世を去った。愛する夫が子供達に私の分も愛情を注いでくれると信じていたから、不安はなかった。けれど死後の世界から見ている夫は下の娘ばかりをかわいがり、上の娘をないがしろにしている。許せない。そんな時、私に不思議な声が呼びかけてきて……。
「お前の泥だらけの手で触るな、気持ち悪い」と追放された令嬢——王宮の食器が一枚も焼けなくなった
歩人
ファンタジー
「お前の泥だらけの手で触るな、気持ち悪い」——王宮御用達の食器を焼く伯爵令嬢エルザは、婚約者の第二王子に手の荒れを嗤われて追放された。十二歳から十年間、王宮の全ての食器を手ずから焼いてきた。彼女の食器は特殊な土と焼成技術で魔力を通し、毒に触れると色が変わる。料理の温度も保つ。追放から三ヶ月後、晩餐会で新しい食器を使ったところ、毒が検知されず隣国の大使が倒れた。外交問題に発展する中、第二王子が「食器くらい誰でも焼ける」と窯に立った結果、出来上がったのは歪んだ灰色の皿だった。
元の世界に帰らせていただきます!
にゃみ3
恋愛
淡い夢物語のように、望む全てが叶うとは限らない。
そう分かっていたとしても、私は敵ばかりの世界で妬まれ、嫌われ、疎まれることに、耐えられなかったの。
「ごめんね、バイバイ……」
限界なので、元いた世界に帰らせていただきます。
・・・
数話で完結します、ハピエン!
「貧相な小娘」と罵った第一王子へ。番(つがい)は貴方ではなく、国王陛下(お父様)でした
しえろ あい
恋愛
「お父様、わたくし、あの方と目が合った瞬間、分かってしまったのです」
十六歳のデビュタントの夜、ルーセント侯爵令嬢フェリシアを待っていたのは、残酷な罵倒だった。第一王子カシウスは、可憐な白いドレスを纏った彼女を「貧相な小娘」と呼び、己の番(つがい)であることを真っ向から否定する。
会場に響く冷笑と、愛用の刺繍に込めた自信さえ打ち砕くような屈辱。しかし、絶望の淵に立たされた彼女を見つめていたのは、王子ではなく、圧倒的な威厳を放つ「ある男」だった。
魂を焦がすような熱い視線が重なり、静まり返る謁見の間。この出会いが、王室を揺るがす大事件の幕開けになるとは、まだ誰も知らない。自身の価値を否定された少女が、真実の愛によって世界で最も幸福な王妃へと駆け上がる、逆転溺愛ストーリー。
※小説家になろう様にも投稿しています※