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連載
開花⑫
「事情はそんな感じなんやけど」
私が説明すると、両親と晃太の眉間に皺が寄る。
「なんそれ? 最低やな、あん人達より最悪や」
晃太のあん人達って言うのは華憐達の事ね。華憐は、私達が美羅ちゃんをきちんと世話するだろうと踏んで、うちに置いていった。アルスさんとリィマさんの父親に比べたらましに思えるが、だから許されるようなわけではないけどね。
「優衣、どうすると? まだ、向こうはアルス君達には気づいてないんやろ? なら、アルス君とリィマさんだけでもカルーラに避難した方が良くないね?」
と、珍しく険しい顔の父。
「現実的にはそれが一番やね。明日、ファングさんとよく話さんとね」
それでも、色んな問題がある。
「もしもよ、アルスさんとリィマさんの存在が向こうに知られたら、カルーラまで追いかけて来んね? それに、ほらあのカルーラで騒ぎを起こした商会も、結局条約で引き渡されたやん」
晃太が私の心配していることを議題に上げる。
確か、あの白狼の少年達の件で、あのズロー商会メタボ男性達は、条約でアスラ王国に引き渡された。私の心配はそこだ。向こうが法律使って、アルスさんとリィマさんの身柄を要求したらって。
「でも、アルスさんとリィマさんは犯罪を犯したわけやないやろう? そんな理由でアスラ王国に引き渡されるん?」
と、膝に乗せた眠そうな花を撫でる母。
「そこなんよね。ちょっと情報が足りんなあ」
ホークさん達に聞いてみたが、犯罪者の引き渡し条約は知っているが、詳しい内容はわからないと。
ただ、チュアンさんが、向こうから簡単に手出し出来ない状況ではないか、と。
「おそらく向こうにとって一番恐いのはリィマさんではないでしょうか? もし、リィマさんが実の父親が、アルスさんにしようとした事をばらしたら、その商会の信用問題になります。呪い持ちに対する処罰や保護法が既に法律として稼働しています。当時成人していたリィマさんの証言は大きいはず、下手したら重い懲罰ものですよ」
うーん。リィマさんの証言かあ。
「それは最後の手段にならないかな。あんまり、大事にして、リィマさんとアルスさんの人生が狂うのがいややし」
「そうやなあ。とにかくしばらくリィマさん達にはルームに避難してもらって、情報ば集めよう。明日、わい、どうせギルドに行かんといかんし」
地図の件ね。
あ、ちょっと待った。
「晃太、ギルド行くのケルンさんやフェリクスさん達が来るまで待って。もしかしたら、良い対応策があるかもしれんし」
「そうやなあ。あの二人色々物知りやしね」
手段が増えるかも。出来れば穏やかに、ね。
『ユイ、その童の父親、消してくるのですよ』
『そうね。私なら誰にも気がつかれず、ヤれるわ』
「おっかないこと言わんで。向こうが強行手段を使って来ても防御よ、それから生け捕りやからね」
『『ぶー』』
もう。
『私ニハ、ソノ父親ノ行動ニ主達ガ憤ル理由ガ分カラン。群レノ頭デアルノデアレバ、後継者ヲ選別シ、臣下ニハナラズ、必要ナケレバ排除スルノハ、当タリ前ダ。アノ二人ハ父親二選バレナカッタダケデアロウ』
弱肉強食っ。
イシスが言うのは、まさに弱肉強食だ。
なんや、イシス、すごいドライやな。
「ま、まあ、イシスの言うのは、魔物の世界のルールよね? 選ばれないからって、生きるのを、諦める必要はないよね?」
私の最後の方の言葉に、イシスの羽角がぴくっ、とする。
『生キルノヲ諦メナイカ、ソレニハ同意スル。ヒトノルールガ複雑デ、時二甘スギルト思ッテイルガナ』
「イシスは、協力してくれる?」
確認するように聞く。
『私ハ主ノ判断二従ウ。ソノ為二契約シタノダカラナ』
「そう、頼むね」
時間も遅いしお開きになる。鷹の目の皆さんは、自分達のスペースに取って返し。アレスはアリスにベタベタしたがら寝ている。イシス達も自分のスペースに引っ込んだ。
だけど、ちょっとイシスの言葉が気になる。過去を詮索するのは良くないのやけど、気になってしまう。それにイシスは以前自分を異端児だと言っていたこともある。
「ビアンカ、ルージュ」
私は無言で手招き。
『ふわあ、どうしたのです?』
『アイスでも食べさせてくれるの?』
「違うって。何かさ、イシスが言ってたのが気になってさ。本来の魔物とかの群れを率いているんやら、当然の反応かも知れんけど。なんか、ドライ過ぎるような気がして」
私の問いに、ビアンカとルージュは、うーん、と考える。
『そうなのですね。イシスの考えは、群れを率いる頭としては一理あるのです』
『特にイシスの父親は、従わぬ者には容赦しないって聞いたわ。だから、自分の言う事に従順でなかったイシスを追放したって聞いたわ』
『エンペラーグリフォンは、従わなければ排除するのです。イシスも元々はそう言った考えを持っていても当たり前なのです』
『ただ、元従魔である母様に助けられて、私達と一緒に育ったから、ユイの考えにも抵抗はないと思うわ』
ビアンカを生んで、種族の違うルージュを育てたリルさん。元従魔、しかも日本人である佐伯ゆりさんに着いていたため、リルさんは魔物より人よりの考えである。本来なら、別の種族であるルージュを助け出して、お乳を与えてビアンカやアレスと分け隔てなく育てたりはしない。
イシスの中では、本来の弱肉強食である魔物の考えがあるのは当たり前。だけど、私達がさっきまで話していた、他人にであるリィマさんやアルスさんの身を案じたり、その父親に憤る人間くさい考えも分からなくはないって事かな。
『ユイ、心配しなくても、イシスはユイの判断に反対しないのですよ』
『そうね。それはないと思うわ』
「そうよね」
うーん、なんや釈然としないが、考え方を強要もできない。ビアンカやルージュの言うように、協力してくれるのであれば、それでよしとせんといかんかな。
厄災クラスに強いイシスが味方でいてくれるだけでも、凄いことなんよね。この状況だけでも、感謝せんといかんね。
私が説明すると、両親と晃太の眉間に皺が寄る。
「なんそれ? 最低やな、あん人達より最悪や」
晃太のあん人達って言うのは華憐達の事ね。華憐は、私達が美羅ちゃんをきちんと世話するだろうと踏んで、うちに置いていった。アルスさんとリィマさんの父親に比べたらましに思えるが、だから許されるようなわけではないけどね。
「優衣、どうすると? まだ、向こうはアルス君達には気づいてないんやろ? なら、アルス君とリィマさんだけでもカルーラに避難した方が良くないね?」
と、珍しく険しい顔の父。
「現実的にはそれが一番やね。明日、ファングさんとよく話さんとね」
それでも、色んな問題がある。
「もしもよ、アルスさんとリィマさんの存在が向こうに知られたら、カルーラまで追いかけて来んね? それに、ほらあのカルーラで騒ぎを起こした商会も、結局条約で引き渡されたやん」
晃太が私の心配していることを議題に上げる。
確か、あの白狼の少年達の件で、あのズロー商会メタボ男性達は、条約でアスラ王国に引き渡された。私の心配はそこだ。向こうが法律使って、アルスさんとリィマさんの身柄を要求したらって。
「でも、アルスさんとリィマさんは犯罪を犯したわけやないやろう? そんな理由でアスラ王国に引き渡されるん?」
と、膝に乗せた眠そうな花を撫でる母。
「そこなんよね。ちょっと情報が足りんなあ」
ホークさん達に聞いてみたが、犯罪者の引き渡し条約は知っているが、詳しい内容はわからないと。
ただ、チュアンさんが、向こうから簡単に手出し出来ない状況ではないか、と。
「おそらく向こうにとって一番恐いのはリィマさんではないでしょうか? もし、リィマさんが実の父親が、アルスさんにしようとした事をばらしたら、その商会の信用問題になります。呪い持ちに対する処罰や保護法が既に法律として稼働しています。当時成人していたリィマさんの証言は大きいはず、下手したら重い懲罰ものですよ」
うーん。リィマさんの証言かあ。
「それは最後の手段にならないかな。あんまり、大事にして、リィマさんとアルスさんの人生が狂うのがいややし」
「そうやなあ。とにかくしばらくリィマさん達にはルームに避難してもらって、情報ば集めよう。明日、わい、どうせギルドに行かんといかんし」
地図の件ね。
あ、ちょっと待った。
「晃太、ギルド行くのケルンさんやフェリクスさん達が来るまで待って。もしかしたら、良い対応策があるかもしれんし」
「そうやなあ。あの二人色々物知りやしね」
手段が増えるかも。出来れば穏やかに、ね。
『ユイ、その童の父親、消してくるのですよ』
『そうね。私なら誰にも気がつかれず、ヤれるわ』
「おっかないこと言わんで。向こうが強行手段を使って来ても防御よ、それから生け捕りやからね」
『『ぶー』』
もう。
『私ニハ、ソノ父親ノ行動ニ主達ガ憤ル理由ガ分カラン。群レノ頭デアルノデアレバ、後継者ヲ選別シ、臣下ニハナラズ、必要ナケレバ排除スルノハ、当タリ前ダ。アノ二人ハ父親二選バレナカッタダケデアロウ』
弱肉強食っ。
イシスが言うのは、まさに弱肉強食だ。
なんや、イシス、すごいドライやな。
「ま、まあ、イシスの言うのは、魔物の世界のルールよね? 選ばれないからって、生きるのを、諦める必要はないよね?」
私の最後の方の言葉に、イシスの羽角がぴくっ、とする。
『生キルノヲ諦メナイカ、ソレニハ同意スル。ヒトノルールガ複雑デ、時二甘スギルト思ッテイルガナ』
「イシスは、協力してくれる?」
確認するように聞く。
『私ハ主ノ判断二従ウ。ソノ為二契約シタノダカラナ』
「そう、頼むね」
時間も遅いしお開きになる。鷹の目の皆さんは、自分達のスペースに取って返し。アレスはアリスにベタベタしたがら寝ている。イシス達も自分のスペースに引っ込んだ。
だけど、ちょっとイシスの言葉が気になる。過去を詮索するのは良くないのやけど、気になってしまう。それにイシスは以前自分を異端児だと言っていたこともある。
「ビアンカ、ルージュ」
私は無言で手招き。
『ふわあ、どうしたのです?』
『アイスでも食べさせてくれるの?』
「違うって。何かさ、イシスが言ってたのが気になってさ。本来の魔物とかの群れを率いているんやら、当然の反応かも知れんけど。なんか、ドライ過ぎるような気がして」
私の問いに、ビアンカとルージュは、うーん、と考える。
『そうなのですね。イシスの考えは、群れを率いる頭としては一理あるのです』
『特にイシスの父親は、従わぬ者には容赦しないって聞いたわ。だから、自分の言う事に従順でなかったイシスを追放したって聞いたわ』
『エンペラーグリフォンは、従わなければ排除するのです。イシスも元々はそう言った考えを持っていても当たり前なのです』
『ただ、元従魔である母様に助けられて、私達と一緒に育ったから、ユイの考えにも抵抗はないと思うわ』
ビアンカを生んで、種族の違うルージュを育てたリルさん。元従魔、しかも日本人である佐伯ゆりさんに着いていたため、リルさんは魔物より人よりの考えである。本来なら、別の種族であるルージュを助け出して、お乳を与えてビアンカやアレスと分け隔てなく育てたりはしない。
イシスの中では、本来の弱肉強食である魔物の考えがあるのは当たり前。だけど、私達がさっきまで話していた、他人にであるリィマさんやアルスさんの身を案じたり、その父親に憤る人間くさい考えも分からなくはないって事かな。
『ユイ、心配しなくても、イシスはユイの判断に反対しないのですよ』
『そうね。それはないと思うわ』
「そうよね」
うーん、なんや釈然としないが、考え方を強要もできない。ビアンカやルージュの言うように、協力してくれるのであれば、それでよしとせんといかんかな。
厄災クラスに強いイシスが味方でいてくれるだけでも、凄いことなんよね。この状況だけでも、感謝せんといかんね。
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