ミルクティーな君へ。ひねくれ薄幸少女が幸せになるためには?

鐘ケ江 しのぶ

文字の大きさ
337 / 338

あれから…………③

しおりを挟む
「お邪魔したわねウィンティアさん、たまにうちにも顔を出して」

「はい」

 バイバイとアナとルインが手を振る。フィーリもバイバイ。

「さあ、フィーリ、お父様がお帰りになりますよ。それまでごほんを読みましょうね」

「はーいっ」

 私はソファーで膝にフィーリを乗せて絵本を開く。
 程なくして、レオナルド・キーファーが帰ってきた。
 フィーリが膝から飛び降りて、玄関に走る。

「ただいまフィーリ、いいこにしていたかい」

 きゃっきゃと笑うフィーリを腕に抱えて、あれから月日が経ち、大人の男性の色気が追加したレオナルド・キーファー。

「ただいまティア」

 フィーリを片手に抱きながら、私を抱き締めてくる。

「お帰りなさい」

「ああ、ただいま」

 と、ちゅ、とキスして、ジーッと見てくる。
 あ、これは夜の合図なのだが。

「あのね、レオ」

 夫婦になり、お互い愛称呼びになって板についた。

「ん?」

 ちゅ、とキスしてくる。
 ちょっと待ってと押し返す。

「まだ、確実じゃないんだけど。そのできた感じで」

「え?」

「だから、二人目」

 …………………だって来てないもんっ。まるっと2ヶ月来てないもん。
 ふわあっ、と笑う。フィーリの時もそうだった。

「本当?」

「多分、ね」

「そうかっ」

 弾んだ声で抱き締めてくる。

「ああ、ありがとうティア、体調は? 休んだ方がいいんじゃないか?」

「大丈夫。まだ、確実じゃないのよ。もしかしたらだよ」

 やや興奮気味のレオナルド・キーファー。私は腕を押し返す。

「だけど、最初に伝えたくて」

 今日お世話になっているアンジェリカ様がいらしたが、言えなかった。やっぱり最初は、旦那様かなって。
 その言葉に、嬉しいのが溢れているレオナルド・キーファー。

「本当に嬉しいよティア」

 ぎゅ。

「うー?」

 フィーリがきょとんとしている。

「フィーリ、もしかしたらお姉ちゃんになるかもしれないよ」

「まだ確実じゃないのよ」

「いいや、きっと出来てる」

 そして、満面の笑みでぎゅ、と抱き締めてくる。

「ありがとうティア、私に家族を与えてくれて」

 複雑な生まれと育ちのレオナルド・キーファーは、家族が憧れがあった。もちろんウーヴァ公爵家の皆様も家族だけど、それとは違う家族が欲しかったと。

「もう。確実じゃないのよ。ほら、お仕事お疲れ様。嗽と手洗いして。ご飯にしましょう」

「わかった」

 ちゅ。
 上機嫌のレオナルド・キーファーは、フィーリを抱えて洗面所に行った。
 数日後、無事にマルティンとマナ嬢のおもてなしした。それから、私の妊娠が確実にわかった。
 ちょっとだけ、心配だったのは、この子が女の子で、次女で、私のようにひねくれたらどうしようって。
 ぽろり、と溢した。

「なら、全てを愛して見せるよ。ティア、どうか、私を信じて」

 そういって、フィーリごと私を抱き締めてくれた。
 
「本当?」

「もちろん」

 この人、本当に私を大事にしてくれる。
 私は、ちゃんと愛されているって、思える。
 山岸まどかだって、行き違いがあったけど、愛されていた。答える事はできなかったけど。
 後悔した。神様のおかげで謝れたけど、もうあんな思いはいやだ。
 私はぎゅ、とレオナルド・キーファーに抱きつく。

「うん。信じてる」

 彼は、私を裏切らない。だから、素直に甘えよう。
 レオナルド・キーファーもぎゅ、と抱き締め返す。

「フィーリも、フィーリも」

 と、フィーリも来たので、三人でぎゅ、と抱き締め合う。
 暖かい、嬉しい、心が温かい。
 きっと、私は幸せなんだろう。

 数ヶ月後、私はレオナルド・キーファーそっくりの男の子を産んだ。名付け親にはセシリア女公爵だ。オーランドとなる。
 あれだけ、大騒ぎして産んだのに、落ち着いたらもう一人欲しいなー、なんて思ったら。

「え? 三人目」

「多分、確実じゃないのよ」

 まだまだ、賑やかな日々になりそうだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

側妃契約は満了しました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約者である王太子から、別の女性を正妃にするから、側妃となって自分達の仕事をしろ。  そのような申し出を受け入れてから、五年の時が経ちました。

偽聖女として私を処刑したこの世界を救おうと思うはずがなくて

奏千歌
恋愛
【とある大陸の話①:月と星の大陸】 ※ヒロインがアンハッピーエンドです。  痛めつけられた足がもつれて、前には進まない。  爪を剥がされた足に、力など入るはずもなく、その足取りは重い。  執行官は、苛立たしげに私の首に繋がれた縄を引いた。  だから前のめりに倒れても、後ろ手に拘束されているから、手で庇うこともできずに、処刑台の床板に顔を打ち付けるだけだ。  ドッと、群衆が笑い声を上げ、それが地鳴りのように響いていた。  広場を埋め尽くす、人。  ギラギラとした視線をこちらに向けて、惨たらしく殺される私を待ち望んでいる。  この中には、誰も、私の死を嘆く者はいない。  そして、高みの見物を決め込むかのような、貴族達。  わずかに視線を上に向けると、城のテラスから私を見下ろす王太子。  国王夫妻もいるけど、王太子の隣には、王太子妃となったあの人はいない。  今日は、二人の婚姻の日だったはず。  婚姻の禍を祓う為に、私の処刑が今日になったと聞かされた。  王太子と彼女の最も幸せな日が、私が死ぬ日であり、この大陸に破滅が決定づけられる日だ。 『ごめんなさい』  歓声をあげたはずの群衆の声が掻き消え、誰かの声が聞こえた気がした。  無機質で無感情な斧が無慈悲に振り下ろされ、私の首が落とされた時、大きく地面が揺れた。

私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。

火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。 王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。 そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。 エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。 それがこの国の終わりの始まりだった。

今更ですか?結構です。

みん
恋愛
完結後に、“置き場”に後日談を投稿しています。 エルダイン辺境伯の長女フェリシティは、自国であるコルネリア王国の第一王子メルヴィルの5人居る婚約者候補の1人である。その婚約者候補5人の中でも幼い頃から仲が良かった為、フェリシティが婚約者になると思われていたが──。 え?今更ですか?誰もがそれを望んでいるとは思わないで下さい──と、フェリシティはニッコリ微笑んだ。 相変わらずのゆるふわ設定なので、優しく見てもらえると助かります。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

処理中です...