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四章
(25)アルドールの侵攻
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レクセルは兵士に連れられてアネモネと共に王宮についた。
「さぁ、ベルディがどこに居るか話せ、アネモネ!」
「焦るな。彼女の安全は私が保証しよう」
アネモネは静かに言った。
「時に忍耐が必要だ。レクセル」
「時期がくれば、妹を助けることができる。だが、今はその時ではない」
「何を言っている!お前がアルドールと繋がってることは知ってるんだ!ニカロストやアルベロのことも!」
「だからこそだ。そんな私だからこそ妹の安全を確保できるのだ」
「……っ!」
レクセルは黙った。そして考えてこう言った。
「……わかった。俺はどうすればいい?」
「蔵に入れ。暫くの間だ」
ーー監禁する気か。
「そうすれば、ベルディは助かるんだな?」
「少なくとも君が従っている間は」
「……契約書を書け。約束を破れぬように付呪した契約書だ」
「いいだろう」
アネモネはスクロールを取り出すと、ペンで書き出した。
そしてそれをレクセルに寄越した。
『契約書∶契約者①(以下、①と呼ぶ)は契約者②(以下、②と呼ぶ)が下記の条件を遵守する限り②の親族の安全を保証する。保証が破られた場合、①はこの契約書の付呪の呪印によって死亡する。条件∶②は①の許可があるか、最長半年の期間、王宮の蔵に監禁される。』
そして契約者①にアネモネの名前があった。契約書の内容を何度も確認し、レクセルは②に名前を書いた。
「契約は成立だな」
アネモネはそう言うと、ペンを自らの心臓にあたる胸の部分にあてがった。
すると黒い紋様が浮かびあがり、アネモネの左胸に沈んでいった。
これで、契約を破ると、アネモネの心臓は止まる。
その様子を見て、レクセルは覚悟がついた。
暫くはアネモネに従おう、と。
「では、連れて行け」
アネモネは兵士に命令した。
そして、レクセルは王宮の地下に連れて行かれる。
それからレクセルは三ヶ月の間、監禁生活を過ごした。
◆◇◆◇
三ヶ月後。
かつてレクセルが救った大国、エルドヴィエにアルドールが侵攻した。
エルドヴィエの首都、サンリエル城にて。
「敵の数は」
銀髪の少女が言う。
「正確には不明。ですが少数とのことです」
伝令係の兵士が告げる。
「ですが、その全員が臂力の鎧を身に着けているとのことです」
「臂力の鎧。かつて我らを救ったあの鎧が敵に回るとは」
「……我らが軍の総力を持ってしても押されています」
それを聞いて、銀髪の少女、ロゼッタは王の広間の端に立つ、白髪の男に聞く。
「私の寿命は後どれくらいですか?ルドウィック」
「持ってあと、一年と言ったところかな」
「……」
「気休めは言いたくないんでね」
ルドウィックはそう言った。
「……時間がない。早くエルドヴィエを安定させて、次期の指導者を決めなくてはいけないのに」
「……レクセル……」
ロゼッタは呟く。
◆◇◆◇
「おい。王様がお呼びだ。失礼のないようにしろよ」
レクセルが入っている牢の前で兵士が言った。
レクセルは手錠を掛けられ、カザド王の座する広間まで連れて行かれた。
王座に座るカザド王は眉間に皺を寄せた、厳かな顔をしていた。
「お前がレクセルか」
以前であれば膝まついて、忠誠を誓ったであろうレクセルは、憔悴しきっていて、頭を垂れるのがやっとだった。
「単刀直入に言う。アルドールがエルドヴィエに侵攻した。エルドヴィエを押さえられたら、カザドも侵攻され、すぐ陥落するじゃろう」
「そこでカザドはエルドヴィエに軍を派遣する。そこでお前には先陣を切ってもらいたい」
「……しかし、王様……。私には……アネモネとの契約が……」
声を絞り上げるレクセル。彼は力なくそう言った。
「もちろん、アネモネの許可あってのことじゃ」
カザド王が目配せした先にはアネモネが立っていた。
「本日をもって君の監禁を解除する、レクセル。アルドールに行って妹を取り返してこい」
アネモネはそう言った。
「もちろん、君の最大の武器である、防具もここにある。」
カザド王は指輪を摘み、レクセルに見せた。
臂力の鎧を纏うことができるアリスの作った赤い指輪だ。
「……あ、あぁ、あ……」
声にならない音を上げるレクセル。
「欲しいじゃろ?力を振るいたいじゃろ?妹を取り返したいのじゃろ?レクセルよ」
「はい……。おっしゃるとおりです……」
レクセルは項垂れて、そう答えた。
◆◇◆◇
数日後。
レクセルはエルドヴィエとアルドールの国境、戦地まで運ばれていた。
エルドヴィエ軍の伝令がレクセルに伝える。
「アルドールには(1)ニカロストの居城 (2)アルベロの住まう魔術師の塔 (3)アルドールの皇帝の城 があります」
「(1)→(2)→(3)の順番でエルドヴィエの国境から奥地になっています」
「この(1)(2)(3)のどれかに妹のベルディさんは捕らえられている筈です」
伝令は説明を終える。
「分かった。ありがとう」
「まずは国境の戦場を突破することが先決です」
「分かった」
「本当に大丈夫ですか!?見えますか?戦場が?我らのエルドヴィエ軍は3000は下らないのに相手方精々100の軍と拮抗状態なのですよ!?」
「……」
「……いくら、レクセルさんが強いとは言え、まずは作戦を立てないと」
「……そろそろ行く」
そう言うとレクセルは着装し、戦場へと走り抜けていく。
◆◇◆◇
戦地にて。
亡骸が、そこら中にあった。
全てがエルドヴィエ軍のものである。
「撃てぇ!撃てぇ!」
残った数少ない部隊大砲を撃つエルドヴィエ軍の兵士達。
砲弾が臂力の鎧を着た相手方の(アルドールの)兵士に直撃したかに見えた。
しかし、爆発のあと、
そのアルドール兵士は手を翳して立っていた。
「この鎧があれば、砲弾も掴めると思ったんだがな~」
アルドール兵は低い声でそう言った。
「馬鹿が。いくらその鎧が最強の付呪がされてるからって、時間を止められる訳じゃない。爆発物を掴めるかよ。ほら、鎧が少しひしゃげちまってるだろうが」
側に居たもう一人のアルドール兵がそう言った。この兵士もまた臂力の鎧を着ていた。
「じゃあこっちの番といきますか」
「あぁ、そうだな」
低い声のアルドール兵は近くにあった巨大な瓦礫を、持ち上げた。国境の壁の破片である。
3m弱平方はあろうかという、その瓦礫を大砲目掛けて放り投げた。
「逃げろーーーーーー!!!!」
大砲を撃った兵士たちは逃げたが、何人かは瓦礫の下敷きになった。
「化け物……」
一部のエルドヴィエ兵は戦意を喪失している。
「援軍はまだ来ないのか!!」
「……あなた達は下がっていて下さい」
レクセルが現れた。
同じ臂力の鎧を身に纏った少年の姿がそこにあった。
「ハハハ!臂力の鎧を最初に着たとかいうガキか!」
アルドール兵の1人が言った。
「同じ臂力の鎧を着ているからって調子に乗んなよ?こっちはお前の100倍の数がいるんだぜ?」
「それがどうした!!」
レクセルは姿を消すと、低い声のアルドールを殴り飛ばした。
アルドール兵は10mは吹っ飛んだ。
「おいおい。何をマジになってんだ?」
剣を抜くアルドール兵。レクセルの目に見えるだけでも20人は居る。
レクセルも剣も抜く。
「ここからは本気でいく!!」
レクセルはそう言った。
レクセルとアルドール兵が激突した。
レクセルは、同じ臂力の鎧を着た兵士を次々と倒していく。
「馬鹿な……!!何故我らが負ける?押される?スペックは同じはず……!!」
一人のアルドール兵が狼狽えて叫んだ。
「それほどレクセルの鎧への適性が高いのさ」
アネモネが立っていた。
彼女は戦地の激戦区から少し離れたところでレクセルの戦いっぷりを見ながらそう言った。
「さぁ、ベルディがどこに居るか話せ、アネモネ!」
「焦るな。彼女の安全は私が保証しよう」
アネモネは静かに言った。
「時に忍耐が必要だ。レクセル」
「時期がくれば、妹を助けることができる。だが、今はその時ではない」
「何を言っている!お前がアルドールと繋がってることは知ってるんだ!ニカロストやアルベロのことも!」
「だからこそだ。そんな私だからこそ妹の安全を確保できるのだ」
「……っ!」
レクセルは黙った。そして考えてこう言った。
「……わかった。俺はどうすればいい?」
「蔵に入れ。暫くの間だ」
ーー監禁する気か。
「そうすれば、ベルディは助かるんだな?」
「少なくとも君が従っている間は」
「……契約書を書け。約束を破れぬように付呪した契約書だ」
「いいだろう」
アネモネはスクロールを取り出すと、ペンで書き出した。
そしてそれをレクセルに寄越した。
『契約書∶契約者①(以下、①と呼ぶ)は契約者②(以下、②と呼ぶ)が下記の条件を遵守する限り②の親族の安全を保証する。保証が破られた場合、①はこの契約書の付呪の呪印によって死亡する。条件∶②は①の許可があるか、最長半年の期間、王宮の蔵に監禁される。』
そして契約者①にアネモネの名前があった。契約書の内容を何度も確認し、レクセルは②に名前を書いた。
「契約は成立だな」
アネモネはそう言うと、ペンを自らの心臓にあたる胸の部分にあてがった。
すると黒い紋様が浮かびあがり、アネモネの左胸に沈んでいった。
これで、契約を破ると、アネモネの心臓は止まる。
その様子を見て、レクセルは覚悟がついた。
暫くはアネモネに従おう、と。
「では、連れて行け」
アネモネは兵士に命令した。
そして、レクセルは王宮の地下に連れて行かれる。
それからレクセルは三ヶ月の間、監禁生活を過ごした。
◆◇◆◇
三ヶ月後。
かつてレクセルが救った大国、エルドヴィエにアルドールが侵攻した。
エルドヴィエの首都、サンリエル城にて。
「敵の数は」
銀髪の少女が言う。
「正確には不明。ですが少数とのことです」
伝令係の兵士が告げる。
「ですが、その全員が臂力の鎧を身に着けているとのことです」
「臂力の鎧。かつて我らを救ったあの鎧が敵に回るとは」
「……我らが軍の総力を持ってしても押されています」
それを聞いて、銀髪の少女、ロゼッタは王の広間の端に立つ、白髪の男に聞く。
「私の寿命は後どれくらいですか?ルドウィック」
「持ってあと、一年と言ったところかな」
「……」
「気休めは言いたくないんでね」
ルドウィックはそう言った。
「……時間がない。早くエルドヴィエを安定させて、次期の指導者を決めなくてはいけないのに」
「……レクセル……」
ロゼッタは呟く。
◆◇◆◇
「おい。王様がお呼びだ。失礼のないようにしろよ」
レクセルが入っている牢の前で兵士が言った。
レクセルは手錠を掛けられ、カザド王の座する広間まで連れて行かれた。
王座に座るカザド王は眉間に皺を寄せた、厳かな顔をしていた。
「お前がレクセルか」
以前であれば膝まついて、忠誠を誓ったであろうレクセルは、憔悴しきっていて、頭を垂れるのがやっとだった。
「単刀直入に言う。アルドールがエルドヴィエに侵攻した。エルドヴィエを押さえられたら、カザドも侵攻され、すぐ陥落するじゃろう」
「そこでカザドはエルドヴィエに軍を派遣する。そこでお前には先陣を切ってもらいたい」
「……しかし、王様……。私には……アネモネとの契約が……」
声を絞り上げるレクセル。彼は力なくそう言った。
「もちろん、アネモネの許可あってのことじゃ」
カザド王が目配せした先にはアネモネが立っていた。
「本日をもって君の監禁を解除する、レクセル。アルドールに行って妹を取り返してこい」
アネモネはそう言った。
「もちろん、君の最大の武器である、防具もここにある。」
カザド王は指輪を摘み、レクセルに見せた。
臂力の鎧を纏うことができるアリスの作った赤い指輪だ。
「……あ、あぁ、あ……」
声にならない音を上げるレクセル。
「欲しいじゃろ?力を振るいたいじゃろ?妹を取り返したいのじゃろ?レクセルよ」
「はい……。おっしゃるとおりです……」
レクセルは項垂れて、そう答えた。
◆◇◆◇
数日後。
レクセルはエルドヴィエとアルドールの国境、戦地まで運ばれていた。
エルドヴィエ軍の伝令がレクセルに伝える。
「アルドールには(1)ニカロストの居城 (2)アルベロの住まう魔術師の塔 (3)アルドールの皇帝の城 があります」
「(1)→(2)→(3)の順番でエルドヴィエの国境から奥地になっています」
「この(1)(2)(3)のどれかに妹のベルディさんは捕らえられている筈です」
伝令は説明を終える。
「分かった。ありがとう」
「まずは国境の戦場を突破することが先決です」
「分かった」
「本当に大丈夫ですか!?見えますか?戦場が?我らのエルドヴィエ軍は3000は下らないのに相手方精々100の軍と拮抗状態なのですよ!?」
「……」
「……いくら、レクセルさんが強いとは言え、まずは作戦を立てないと」
「……そろそろ行く」
そう言うとレクセルは着装し、戦場へと走り抜けていく。
◆◇◆◇
戦地にて。
亡骸が、そこら中にあった。
全てがエルドヴィエ軍のものである。
「撃てぇ!撃てぇ!」
残った数少ない部隊大砲を撃つエルドヴィエ軍の兵士達。
砲弾が臂力の鎧を着た相手方の(アルドールの)兵士に直撃したかに見えた。
しかし、爆発のあと、
そのアルドール兵士は手を翳して立っていた。
「この鎧があれば、砲弾も掴めると思ったんだがな~」
アルドール兵は低い声でそう言った。
「馬鹿が。いくらその鎧が最強の付呪がされてるからって、時間を止められる訳じゃない。爆発物を掴めるかよ。ほら、鎧が少しひしゃげちまってるだろうが」
側に居たもう一人のアルドール兵がそう言った。この兵士もまた臂力の鎧を着ていた。
「じゃあこっちの番といきますか」
「あぁ、そうだな」
低い声のアルドール兵は近くにあった巨大な瓦礫を、持ち上げた。国境の壁の破片である。
3m弱平方はあろうかという、その瓦礫を大砲目掛けて放り投げた。
「逃げろーーーーーー!!!!」
大砲を撃った兵士たちは逃げたが、何人かは瓦礫の下敷きになった。
「化け物……」
一部のエルドヴィエ兵は戦意を喪失している。
「援軍はまだ来ないのか!!」
「……あなた達は下がっていて下さい」
レクセルが現れた。
同じ臂力の鎧を身に纏った少年の姿がそこにあった。
「ハハハ!臂力の鎧を最初に着たとかいうガキか!」
アルドール兵の1人が言った。
「同じ臂力の鎧を着ているからって調子に乗んなよ?こっちはお前の100倍の数がいるんだぜ?」
「それがどうした!!」
レクセルは姿を消すと、低い声のアルドールを殴り飛ばした。
アルドール兵は10mは吹っ飛んだ。
「おいおい。何をマジになってんだ?」
剣を抜くアルドール兵。レクセルの目に見えるだけでも20人は居る。
レクセルも剣も抜く。
「ここからは本気でいく!!」
レクセルはそう言った。
レクセルとアルドール兵が激突した。
レクセルは、同じ臂力の鎧を着た兵士を次々と倒していく。
「馬鹿な……!!何故我らが負ける?押される?スペックは同じはず……!!」
一人のアルドール兵が狼狽えて叫んだ。
「それほどレクセルの鎧への適性が高いのさ」
アネモネが立っていた。
彼女は戦地の激戦区から少し離れたところでレクセルの戦いっぷりを見ながらそう言った。
応援ありがとうございます!
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