31 / 119
第二章 王都
閑話 静かな夜
しおりを挟む「まものって、なんですか?」
「魔物?」
「はい。なぜ、いるのですか」
「それはまた、哲学的な問いかけですね」
「ラウルは、まものはもうじゅうといっしょ、といいました」
「猛獣」
「はい。にゃ…にゃくにく、きょうそ、く…?」
「弱肉強食」
「はい。つよいからよわいもの、たおす、といいました。でも」
「ナガセは違うと思うんですね?」
「はい…わたし、みました、まもの。あれはなんだか…だめです、いやなかんじでした」
「どんな風にダメでしたか?」
「ええと…あの、ひつよう、ではない、うーん、いきる、ためではない、ただ、こわいだけ」
「なるほど…それは、合ってると思います」
「あってる」
「私もそう思います」
「クラウスさまも」
「魔物は生き物とは違う理の中にあるものだと思います。あれは存在してはならない」
「…でもなぜ、いるのでしょう」
「そうか、それでその質問に戻るんですね」
「みんなをくるしめます。そのことに、いみはありますか」
「…ナガセは優しいですね」
「?」
「以前、教会で聞いた説法…お話では、魔物は人の黒い心の現れだと言っていました」
「ひとの、くろいこころ」
「人々の心の闇が生み出すのだと。それが本当なら、魔物がいなくなる日などずっと来ないでしょうね」
「……………じゃあ、へんきょうの、とりでのみんなはしろい、ですね」
「白い?」
「そうです。とりでのみんなは、いつもまもの、たおします。だからみんなくらしています。とりでのみんな、わたしたちをまもる」
「………」
「だから、とりでのみんなはしろい、こころです。ひとの、いいこころ」
「……ふふ、そうですか、砦の兵士たちはとてもそんな心根を持った奴等ではないですけどね」
「みんな、やさしいです。わたしは、ここがすきです」
「それはナガセが一生懸命だからですよ」
「わたし、がんばります」
「十分頑張ってます。あまり無理しないように」
「はい。ありがとうございます」
「ナガセ」
「レオニダスさま」
「閣下、お疲れ様です」
「クラウス、今日は非番か」
「ええ、昨日夜番でしたので」
「そうか、昨晩は魔物が二番砦の辺りに出ただろう。素早く対処できたと報告を受けている。ご苦労だった」
「はっ」
「邪魔したな、ゆっくり休むといい。ナガセ、帰るぞ」
「はい。クラウスさま、おやすみなさい」
「はい、おやすみなさい」
「あ、クラウスさまこれ、どうぞ」
「?」
「じゃあまた! さよなら!」
* * *
「何貰ったんだ?」
「これは……サンドウィッチ、でしょうか」
「ああ、今日なにやら一生懸命作ってたぞ。俺も少し味見したが美味かった。独り者のお前に気を遣ったのか」
「オーウェン殿もおひとりかと」
「俺はあちこちにいるんだよ」
「それは失礼しました」
「今日は月が明るいですね」
「ま、こういう日は魔物も出ないだろ」
「ええ。ではもう一杯頂けますか」
琥珀の液体が注がれグラスの氷がカランと音を立てる、今夜は静かな夜。
116
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です
星乃和花
恋愛
【全16話+後日談5話:日月水金20:00更新】
王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。
……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。
追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。
無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」
騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!
巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた
狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている
いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった
そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた
しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた
当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった
この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ドルイデスは忌み子将軍に溺愛される
毒島醜女
恋愛
母の死後引き取られた叔父一家から召使として搾取され、手込めにされそうになった少女、羽村愛梨。
馴染みの場所であった神社に逃げると、異世界にいた。「神樹により導かれたのね」とドルイデスと呼ばれる魔女が愛梨を拾った。異世界に救われ、ドルイデスから魔法を教わりながら田舎で過ごしていく。現世では味わえなかった温かな人の温もりに、もう何も望むまいと思っていた。
先代のドルイデス=先生が亡くなり、村の外れで静かに暮らすアイリ。
そんな彼女の元に、魔獣討伐で負傷した将軍、ウルリクが訪ねてくる。
離れで彼を看病していくうちに、不器用で、それでいて真っすぐな彼に惹かれていくアイリ。
こんな想いを抱く事はないと、思っていたのに。
自分の想いに嘘がつけず、アイリはウルリクに縋りつく。
だがそれは、ウルリクにとって願ってもない頼みであり、もう決して逃れる事の出来ない溺愛の始まりであった…
私が美女??美醜逆転世界に転移した私
鍋
恋愛
私の名前は如月美夕。
27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。
私は都内で独り暮らし。
風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。
転移した世界は美醜逆転??
こんな地味な丸顔が絶世の美女。
私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。
このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。
※ゆるゆるな設定です
※ご都合主義
※感想欄はほとんど公開してます。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。