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課長の未練
《1》
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今度は一体いつ課長に会えるんだろう。
課長に会った次の日は一日中、そんなことを考えながら仕事をしていた。おかげで作業効率が下がり、残業をする羽目になった。
最近は残業をしないように言われているので、定時を過ぎるとオフィスは私だけになった。
パソコンでデータを入力していると人の気配がして画面から顔を上げた。
すぐ傍に男性の顔があった。
びっくりした拍子に男性を突き飛ばした。
「イタタタ……って、痛くないや」
課長の声がして二度びっくり。
「濱田課長!」
課長は尻餅をついていた。
「課長、すみません。大丈夫ですか?」
課長の傍に行き、手を差し出した。
課長が私の手を掴み、ふわりと立ち上がった。
「ああ、大丈夫だ。幽霊だから痛みは感じないみたいだ」
「すみません。そんなに力を入れたつもりはなかったんですが」
「体も軽いみたいだから仕方ないよ。島本くんは手痛くない?」
「何ともないです」
「幽霊で良かった」
課長の一言が妙におかしくて、笑いが零れた。
「やだ。変な事言わないで下さいよ」
「島本さん、まだいたんですか?」
突然、オフィスのドアが開いて、江里菜が入って来た。
慌てて課長から離れ、自分の席に座りパソコンに向かった。
「仕事が終わらなくて」
「今、誰かと話してませんでしたか?」
江里菜は向かい側の自分の席に行きながら言った。
課長に会った次の日は一日中、そんなことを考えながら仕事をしていた。おかげで作業効率が下がり、残業をする羽目になった。
最近は残業をしないように言われているので、定時を過ぎるとオフィスは私だけになった。
パソコンでデータを入力していると人の気配がして画面から顔を上げた。
すぐ傍に男性の顔があった。
びっくりした拍子に男性を突き飛ばした。
「イタタタ……って、痛くないや」
課長の声がして二度びっくり。
「濱田課長!」
課長は尻餅をついていた。
「課長、すみません。大丈夫ですか?」
課長の傍に行き、手を差し出した。
課長が私の手を掴み、ふわりと立ち上がった。
「ああ、大丈夫だ。幽霊だから痛みは感じないみたいだ」
「すみません。そんなに力を入れたつもりはなかったんですが」
「体も軽いみたいだから仕方ないよ。島本くんは手痛くない?」
「何ともないです」
「幽霊で良かった」
課長の一言が妙におかしくて、笑いが零れた。
「やだ。変な事言わないで下さいよ」
「島本さん、まだいたんですか?」
突然、オフィスのドアが開いて、江里菜が入って来た。
慌てて課長から離れ、自分の席に座りパソコンに向かった。
「仕事が終わらなくて」
「今、誰かと話してませんでしたか?」
江里菜は向かい側の自分の席に行きながら言った。
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