推しの速水さん

コハラ

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1話 出会い

《10》

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次の木曜日、いくちゃんと図書館でハヤミさんを待つ。ハヤミさんは午後6時頃に来た。

「あれがハヤミさん?」

カウンター前に立つスーツ姿のハヤミさんをいくちゃんが見る。
またお姿を拝見できるなんて幸せ過ぎる。

「うん。イケメンでしょ?」
「整った顔立ちではあるけど、なんか怖そう」
「怖そう?」
「もっと優しい感じの人かと思ってた。スーツ姿は長身だからカッコイイけどね」
「でしょ、でしょ! ハヤミさんってスーツ姿がいいんだよね」

今日のグレーのスーツも素敵でよく似合っている。

「ハヤミくん、お待たせ」

カウンターから紺色のエプロンの女性が出て来た。
ゆりさんって人だ。

「うわっ、あの人美人!」

ハヤミさんよりもゆりさんの方にいくちゃんが食いついた。

「あっ、ハヤミさんが微笑んだ。笑うと素敵ね」

いくちゃんが言った通り、ゆりさんと向かい合ったハヤミさんが微笑んだ。物凄く優しい表情になる。

「いい雰囲気の二人だね。美男美女って感じで」

確かに美男美女。

ゆりさんに向かって砕けた表情を浮かべるハヤミさんを見て、胸の中いっぱいに真っ黒な雨雲が広がるみたい。なんかモヤモヤする。

2人はどういう関係なんだろう?

もしかして、ゆりさんはハヤミさんの片思いの相手?

いや、そんな訳ない。

ゆりさんはお子さんがいて、結婚しているような話をこの間していたし。

でも、結婚しているからこそ、言えない想いがあったりするのかな。毎週図書館に来るのって、まさかゆりさんに会う為?

そう思った時、ピンと来てしまった。

胸が張り裂けそうになる。

今日こそはハヤミさんにお礼を言おうと思ったけど、無理。もうそんな勇気ない。
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