推しの速水さん

コハラ

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2話 速水さんからのオファー

《6》

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「今日はお時間を頂きありがとうございました」

エレベーター前まで送ってくれた速水さんと目が合い、ドキッとする。

目尻の上がった切れ長の目を直視できない。慌てて視線を速水さんの肩の位置に落とした。

速水さんの肩の高さと私の身長がほぼ同じだ。
背、高いな。180㎝以上はありそう。

ネイビーのスーツ素敵だな。

なんか柑橘系のいい匂いもする。整髪料とかの香りかな?

遠くから見ているだけじゃ、速水さんに香りがある事は気づかなかった。

「卯月先生」

落ち着いた低い声で呼ばれる。

本名の内田美樹と違う名前。

今日、何度も速水さんに卯月先生と呼ばれたけど、まだペンネームで呼ばれる事に慣れない。

年上の速水さんに先生と呼ばれるのもなんか変だし。

「あ、はい」
「卯月先生とどこかでお会いしている気がするのですが、私に見覚えがありませんか?」

心臓がギュッと縮む。

「えっ……」

まさか速水さん、私を覚えていたの?
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