推しの速水さん

コハラ

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4話 速水さんとデート?

《8》

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「卯月先生は本格的に小説家としてやっていくつもりはありますか?」

速水さんに聞かれて、戸惑う。

『今日ドキ』を書いているのはただ楽しいからで、プロとしてやっていくとか全然考えていなかった。

「高校の時も部活で小説を書いていたんですよね? 新人賞に応募した事はありますか?」

黙っているとどんどん質問される。

「え、えーと」
「あ、すみません。卯月先生に興味があり過ぎて、つい」

びっくり。

速水さん、地味でつまらない私に興味を持っているの!

顔がにやけそうになる。

ぐっと顔面に力を入れて耐えていると、速水さんが赤い縁のメニューをこちらに向けた。

「料理を選びましょうか。ここは何でも美味しいですよ」

メニューにはピザやパスタやお肉のお料理が沢山並んでいる。

どれも美味しそう。

「卯月先生って、お酒は飲める年でしたっけ?」
「ええ。21になります」
「可愛らしいから、十代に見えました」

か、可愛らしい……。

今日、速水さんに可愛いと言われたのは記憶している限りでは二度目。

お世辞だとわかっているけど、言われ慣れていない言葉にますます頬が緩んじゃう。

「2人でボトルワインを一本どうですか?」

速水さんとワインを飲んでいいの?

推しと一緒にアルコールを摂取できるなんて……。

酔って、少し崩れた感じの速水さんが見られるかも。

ぐふふ。

「是非! ワイン飲みましょう!」
「赤と白、どちらがいいですか?」
「速水さんの好きな方で」
「じゃあ、料理との相性を考えてキャンティの赤ワインはどうです?」

速水さんがワインリストを指した。そこにはイタリア、トスカーナ州、キャンティと、原産地が書かれているけど、全然わからない。

「それでお願いします」

私の答えに速水さんが頷く。

アルコールが入ると速水さんはどんな風になるのだろう?

セクシーな感じになるのかな? それとも可愛らしい感じになるのかな。

想像するだけで、わくわくしちゃう!
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