推しの速水さん

コハラ

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5話 速水さんとバーベーキュー。

《5》

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「ごめん……なさい。涙が、止まらなくて……」

頭にそっと触れるような手の感触を感じた時、速水さんが私の頭を撫でてくれた事に気づいた。

「大丈夫ですよ。傍にいますから」

穏やかな声が胸に沁みる。
相変わらず速水さんは優しい。

「前にもこんな事ありましたね。公園で卯月先生の涙を拭いて」

速水さん、覚えていてくれたんだ。

「はい。あの時もすみませんでした」
「いえ。ところで、スマホどうされました?」
「えっ」

ハンカチから顔を上げると正面に速水さんの目があった。

ドッキン――!

心臓に強い衝撃が走ったと思ったら、同時に顔も熱くなる。速水さんの近くにいるといつも過剰に体が反応するから困る。

「失礼します」

速水さんは私の左手ごと握って掴んだままのスマホを見る。

うわっ、速水さんの手の感触が……。

ドキドキ。

「液晶が割れてますね」
「い、今、落としてヒビが入って」

話しながら自分のドジさに嫌になる。

「見せて頂いてもいいですか?」
「は、はい」

速水さんは私の左手からスマホを抜き取り電源ボタンを操作した。その瞬間、ピッカーン! と、スマホが息を吹き返すように画面が輝いた。

電源が入った!

速水さん凄い!
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