推しの速水さん

コハラ

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5話 速水さんとバーベーキュー。

《18》

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ゆりさんの家から歩いて、何とか大きな道路まで出たけど、帰り道がわからない。

スマホで調べようとして、ハッとする。

速水さんからの着信があった。
私がいない事に気づいたんだ。ゆりさんから帰った事を聞いたのかもしれない。

いつかの夜に見た速水さんとゆりさんが抱き合っている姿が浮かんで、胸が締め付けられる。

速水さんが好きな人はゆりさん……。

そうかもしれないと思っていたけど、ハッキリと言われて死にそう。

ゆりさんは美人で、大人の女性で、才能もあって、お金もあって、おまけに人気俳優の弟までいて……。

はあ。

私にないものばかり持っている。
ゆりさん、ラスボスレベルだ。絶対敵わないよ。レベル99でもきっと勝てない。

また電話が鳴る。速水さんからだ。心配してくれているのかな?
電話に出たいけど、感情的になってボロボロになりそうだから電源を切った。

もう二度と速水さんに会う事はないだろうから最後に惨めな自分を晒したくない。

ぐにゃっと視界が歪んだ。
眼鏡を外して手の甲で涙を拭う。

一歩進むごとに涙が溢れるから困る。

かなりメンタルがやられている。
もうズタズタ。

速水さんとドライブしていた時は楽しかったのにな。なんでこうなっちゃったんだろう。

苦しい。

誰か助けて……。

プップーとクラクションが鳴る音がしてドキッとした。

速水さん?

そう思って車を見ると赤いスポーツカーが道路脇に停まっている。
ゆりさん家で見かけた車だ。

「卯月ちゃん」

戸惑っていたら、タクヤ君が運転席から降りて来た。

なんで、タクヤ君?
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