推しの速水さん

7話 速水さんとセクシー美女？

《24》

「荷物かな。何か頼んであったっけ」

速水さんが呟いた。
急かすようにもう一度インターホンが鳴った。

「早く出た方がいいのでは？」
「そうだね」

速水さんがやっと私を解放し、ソファから立ち上がる。
私もソファから起き上がって、ゴクゴクとウーロン茶を飲んだ。ドキドキし過ぎて喉がカラカラ。

多分、10分近く、速水さんに抱きしめられていた。思い出すだけで鼻血が出そう。刺激が強すぎた。でも、速水さんと離れた事が少し残念……って何を考えているの！　多くを望めば身の破滅だと言っているのに。

「美樹ちゃんならいるけど」

ふるふる頭を振っていると、私の名前が聞こえてドキッとする。

眼鏡がないからよく見えないけど、速水さんがインターホンに向かって話しているよう。

やり取りが終わると、速水さんが「卓也が来た」言った。

「タクヤ君ですか」
「うん。美樹ちゃんに大事な話があるそうだ」

タクヤ君が私に大事な話？

悪い予感しかしないのはなぜだろう？
いやいや、きっと大丈夫。大した話じゃない。

深呼吸をして気を落ち着かせていると、部屋のインターホンが鳴った。
速水さんと一緒に玄関まで行き、ドアを開ける。グレーのコートを着たタクヤ君らしき人がぼんやり見えた。

「美樹ちゃん、ごめん！」

タクヤ君が玄関に入ると、いきなり膝をついて土下座した。

「本当にごめん！　申し訳ない！　ごめんなさい！」

物凄い勢いで謝られて戸惑う。

「卓也、落ち着け。どうしたんだ？」
「それがその……この間、バーベキューの日にホテルで撮った美樹ちゃんとのツーショット写真がなぜかネットに流れた。それで美樹ちゃんと熱愛って記事が出て」

「えっ！！」

速水さんと同時に叫んだ。