雨宮課長に甘えたい

コハラ

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トラブル

《4》

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日比谷から電車を乗り継ぐこと一時間。JR根岸線の石川町駅についた。周辺には横浜中華街などがある土地だ。目的地は中華街ではないが、真っ青な顔をした久保田と一緒に電車を降りた。

先ほど社食に現れた久保田から聞いた話によると事の発端は昨日……。
久保田は今月末に公開される望月かおる原作小説「今日子」の映画プロモーションに関わっていた。

望月かおると言えば、小説のほとんどがドラマ化、映画化される程の大人気作家で、今回映画のプロモーションにも協力してもらっていた。

昨日は「今日子」の映画を撮った安藤監督と望月先生の対談番組の収録がテレビ局であり、作品についての解釈で安藤監督と望月先生はかなり白熱したそうだ。それで収録中の休憩時間、望月先生が久保田に安藤監督の解釈はどう思うかと聞かれて、久保田が望月先生を怒らせる発言をしたらしい。

対談番組は収録の途中だったが、望月先生は帰ってしまい、しかも今後一切の映画のプロモーション活動はしないと、集学館の望月先生の担当編集者が言ってきたそうだ。

望月先生ありきで立てていた宣伝計画が全て崩れて、久保田は阿久津に望月先生を何とかしないと札幌のグループ会社に飛ばすと脅されているらしい。

それで私に泣きついてきたというわけだ。
冷静さを完全に失った久保田一人を望月先生の所に謝罪に行かせるのは不安だったので、結局ついて来てしまった。

「久保田、しっかりしなさい!」

石川町駅のホームをゾンビのように歩く久保田の背中を叩いた。

とにかく何とかしなければ。久保田の為でもあるけど、こんな事で映画の宣伝を潰したくない。試写で見た「今日子」はいい作品だった。元宣伝マンとして一人でも多くのお客さんに見てもらいたいし、作品に心血を注いで映画を作った安藤監督を始め、スタッフたちの努力を水の泡にするような事は絶対にしたくない。宣伝の仕方が悪ければどんなにいい作品でもお客さんは来ない。久保田のミスでそのような事になっては絶対にならない。
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