雨宮課長に甘えたい

雨宮課長のマンション

《3》

「私はもう宣伝部は離れましたが、今回の映画のプロモーションはどうしても成功させたいんです。『今日子』はとてもいい作品なんです。だから一人でも多くのお客様に観てもらいたいんです。雨宮課長の力を貸して下さい。お願いします」

深く頭を下げると、ポンポンって頭を撫でられた。

「必死に頭を下げすぎ。俺にまでそんなに必死にならないでよ。俺は中島さんの味方だから。きっと今度の事で沢山、頭を下げたんだね。中島さん、頑張り過ぎだよ。ちゃんと休めている？　ご飯は食べた？」

うっ、課長、優しい。課長の言葉が胸に沁みて、不覚にもポロリと涙が一筋流れた。

「泣かせないで下さい。今は武装を解けないんです」

涙を拭いながら笑うと、雨宮課長も笑う。課長といるとほっとする。今は武装は解けないと言ったけど、雨宮課長の前では自然と解けてしまう。だから、お腹がぐうーっと鳴った。

「あ、これは、その」
「夕飯まだだった？」
「……はい」
「親子丼でいい？」

課長がソファから立ち上がった。

「15分もあれば作れるよ」
「いえ。それより映画の方は」
「心配しないで。心当たりがあるから」
「本当ですか！」
「だから親子丼食べて行きなさい」
「えっ、あの」
「中島さんが食べてくれなきゃ、協力はしない」
「えー、何ですか、その条件は。そう言われたら食べるしかないじゃないですか」

雨宮課長が楽し気に笑う。そんな課長が素敵過ぎて、また胸がキュンとした。