空はいつでも青くて

ERI

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第1話

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古びた神社
どこまでも清みわたる青空
手を伸ばせば届きそうな大きな雲

硝子の張られていない小さな窓から眺めて

陽は盛大な欠伸をした。

「うまそうだな」陽はつぶやいた。

白くてふわふわな大きな尻尾と
女子高生が喜びそうなピンと尖った耳を頭から出ている。

耳は辺りを伺うかのように忙しなくピクピク動いている。

そう、彼は人間ではない。

人間の形をしてはいるが、完全な妖怪だった。

この古びた神社で一人きりですごしている。
もう何年たったのだろうか。
忘れ去られた稲荷を奉っているこの神社は
人里から少し離れていることもあってか
もう長いこと誰も訪れていない。
鳥居は本来のきれいな色を忘れ、ほとんどが錆びて剥げて
苔や雑草が其処らじゅうに蔓延っている。

陽はここから出た事は一度もない。
いや、出ることが出来ないのだ。

昔、陽がまだ小さかった頃
神社の境内にお供えされている油揚げに釣られ中に入ったところを

妖怪祓いを生業としている若者に見つかり、神社に陽を封印してしまったのだ。

それ以来ずっとこの境内で一人
もうすっかり大人になってしまった。

最初の内は何度も出ようと試みたが
幾度となく拒まれて
もう今となっては出ようとする事を考える事もしなくなった。


きっとこのまま一生一人なんだ。


そう思っていた。





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