東京PMC’s

青空鰹

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呆けてしまう紫音

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 「今日は本当にありがとうございました」

 園長は僕に向かって頭を下げ、お礼の言葉を述べてくれる。

 「あ、その、僕だけじゃなくて、シロくんが大変な目に遭っている事を報告してくれた子供達や、シロくんを庇ってくれたあの男の人のおかげですよ」

 その人は何処かへ行っちゃったけど、今度見かけたらお礼を言っておこう。

 「何を仰っているのですか。アナタ自身もシロを庇った上に、あの夫婦を追い払ってくれたじゃありませんか」

 「まぁ、そうですけどぉ・・・・・・うん」

 実際問題僕がPMC協会に今回の事を調査依頼しても、 ああ、そうなんですか。 と言われるだけで、終わる可能性の方が高いと思う。それはそうと。

 「それよりも、さっきのようすを見て、シロくんが面談相手から逃げる理由がわかった気がします」

 シロくんに顔を向けて見てみると、こっちをじっと見ていたので頭を優しく撫でてあげる。

 「本当ですか? もしよろしければ、その理由をお伺いしてもよろしいでしょうか?」

 「はい、多分シロくんは面談に来る人達が自分の事を自慢する為の道具か、もしくはペット感覚で家族しようとしていたのに、気づいていたのかもしれません」

 「ペット感覚って・・・・・・」

 「ライカンスロープ、デミヒューマン、ノーム、ハーフエルフは珍しいですからね。色んな意味で見られるんですよね。
 羨ましそうな目、可哀想な目、蔑んだ目まで・・・・・・ね」

 一部の国では、こういったハーフに対して差別が激しいらしいが、日本でも少なからずいるので問題になっている。

 「僕はこの子と同じライカンスロープだからわかります。今日来た彼らがシロくんに向けた目は、家族を迎えようとした目じゃなくて、興味本意で向かい入れようとしていたのを」

 「そ、そんな事は・・・・・・私が面談したときは問題なんて」

 「彼らは僕を見たときに、 シロくんと同じで可愛いね。 って言ったんですよ。もしかしたらシロくんがダメだったら、僕を養子に迎えようとしていたっぽいですよ。
 それに、アナタは普通のヒューマン。僕達ライカンスロープの身になって考えてますか? それに今回こうなってしまったのは、シロくんが何で会うのを拒絶しているのか理解せずに、自分達で勝手に決めたからじゃないでしょうか?」

 僕がそう言うと、田端さんは黙ってしまった。恐らくハーフとヒューマン自分の種族の違いを、たった今自覚したんだろう。

 「そう、かもしれませんね。思い返してみれば、最近ではシロくんと面談がしたいって言う人が増えていました。
 私が何でだろうと不審に思わないと、いけなかったところですね」

 「・・・・・・そうですね」

 「紫音さん。今後はしっかり見定めようと思います。シロくん」

 田端さんはシロくんの目の前に行くと、膝をついて同じ目線になる。

 「ゴメンなさい。私はアナタの為を思ってやっていた事が、こんな危ない目に遭わせる形になってしまったわ。
 今後はアナタと相談しながら、面談を考えましょう」

 「・・・・・・うん」

 シロくんはそう返事をすると、田端さんを抱きしめた。

 「ありがとうシロくん、アナタは優しい子ね」

 シロくんはその言葉を聞くと、嬉しそうに尻尾を振っていた。

 「おにぃちゃん」

 シロくんと遊んでいた子供達が話しかけて来たので、その方向に向ける。

 「シロちゃんを助けてくれて、ありがとう!」

 「うん、さっきも田端さんに言ったけど、キミ達のおかげでもあるよ」

 「こんどあんなヤツらがきたら、おれがブッとばしてやる!」

 「アハハ、ぶっ飛ばしたらダメだよ。先生達に迷惑が掛かるから」

 みんなそれぞれシロくんの事を思っているから、僕が心配しなくてもよさそう。

 「あっ! そういえば、もうバイトの時間が過ぎてましたね」

 「えっ!? 時間ですか?」

 「ええ、お勉強の時間、つまり午前中だけの仕事でしたので」

 時計を見てみると、1時前。色々とお話をしていたら、こんな時間になってしまっていたみたい。

 時間どころかバイトの何時から何時まで仕事するのかを時間を、ちゃんと見てなかった。今度から確認するようにしよう。

 「あの、よかったら一緒にお昼を食べますか?」

 「あ、気持ちだけ受け取っておきます」

 ここにいたらまた子供達にオモチャにされそうだから、これ以上いたくない。

 「そうですか。残念ですね。明日またよろしくお願いします」

 「アハハ、それではまた明日!」

 この空腹のお腹が鳴る前に僕はそそくさと部屋の外へと出て行く。そして孤児院の門を潜ったところで、キュゥ~~~・・・・・・とお腹がなった。

 「この音を聴かれなくてよかった。お腹減ったぁ~」

 帰ったら、ご飯を食べよう。あ、でも料理を用意してくれてるかな? ダメだったら、自分で作るしかないかなぁ?

 そう思いながら来た道を歩いていると、少し先の方に停まっていた黒い車から、M4A1(5.56×45mm使用)を持った2人が降りて来て、こちらに向かって構えた。

 「あっ!?」

 殺されるッ!?

 咄嗟の判断で、姿勢を一気に下げて、素早く近くに停まっていたスポーツカーの裏に隠れる。

 「あのガキ隠れやがった! 撃て撃て!」

 スポーツカー越しに ダダダダダダダダンッ!? というM4A1の発砲音に重なって、 ギャンっ!? ギュインッ!?ゴンッ!? パリンッ!? と金属音と窓ガラスが破れる音が耳にうるさく聴こえてくる中、被弾しないように身を縮こませる。

 怖い怖い怖いっ!! 死んじゃう、殺されちゃうよっ!! 誰か助けてっ!!

 恐怖に駆られている中、段々と発砲音が大きくなっていく。そう、撃ってきている相手が、少しづつ自分に近づいているのを紫音は理解をする。

 どうしよう、あの人達が近づいて来ている! 本当に殺されちゃう!!

 殺されるという恐怖に加えて、早く何とかしないと焦り気持ちのせいでパニック状態に陥ってしまい、ただ目に涙を溜めて何も出来なくなってしまっている。

 「ウッ!?」

 突然銃声が止んだのでスポーツカーの横から注意しながら見てみると、何と撃って来ていた2人の内の右側の人が、胸を押さえて痛そうにしていた。

 「シオン、そこでじっとしとるんじゃっ!!」

 反対方向に顔を向けると、何とそこにはオズマさんがH&K M27 IAR (5.56×45mm 使用)を構えて撃っていたのだ。

 「オズマさん!? どうして・・・・・・」

 「いいから隠れていろ!」

 オズマさんはそう言うと、ダダダダダダッ!? とフルオートで襲って来た人達に向かって撃ち続ける。そんな中で1人の男性が僕に近づいて来たので、反射的に表情を強張らせてしまう。

 「落ち着け、俺はオズマの仲間だ」

「そ、そうなんですか?」

 オズマさんの仲間だと聞いた途端、強張っていた表情がなくなる。

 「ああ、シオンを確保した!」

 「紫音を連れて、こっちに来るんじゃ!」

 怒声にも似た会話をすると、男の人が僕の肩を掴んで来た。

 「頭を下げて、俺に付いて来るんだっ!」

 「は、はい!」

 低い姿勢まま、オズマさん達が隠れている建物の裏に向かって走る。僕を掴んでいるPMCの人も、走りながら持っているGLOCK19X(9×19mm弾使用)で敵に向けて牽制射撃をしながら走る。

 「クソッ!? 失敗だ!」

 「逃げるぞ、早く乗れ!」

 「わぁってるよ、チクショウッ!!」

 2人はバンに乗ると、逃げるようにして走り去ってしまったが、すぐさま2台の車が僕達の後ろから猛スピードで通り過ぎて後を追う。

 「無事かシオン?」

 「あ、はい。助かりましたオズマさん」

 あのまま助けて貰えなかったら、と考えるとゾッとしてしまう。

 「やはり、アイツらは彼を狙って来たな。見張っていて正解だった」

 「・・・・・・え?」

 見張っていた? 僕の事を。

 「どういう、事なんですか?」

 「キミはアイツらをおびき寄せる為の囮だったんだけど。あれ? 天野から聞いていなかったのかい」

 今の言葉を聞いた紫音は、天野さんに嵌められたのだと気づいたのだった。
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