創発のバイナリ

ミズイロアシ@文と絵

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第二部 後編

07 親愛なるあなたへ

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「ロゼ、先ほどから何をしているのですか?」

 孤児院の一室にて、ロボットは自分の主人が何をしているのか気になって仕方がなくなってしまい、声を掛けた。

 年に一度のクリスマスイブだというのに、他の子どもたちと違って浮かれ遊んでいない。ロボットの目からしても不思議であった。

 ロゼは机に向かって今朝から何か書き物をしていた。
 時々唸ったり、椅子にもたれ掛かった。

「んー? 内緒」ペンを動かしながら答えた。

 そう言われて、マキナは机を覗き込んだ。

「……書き物、ですか?」

「うん、そう。うふ、手紙だよ」
 切りの良いところまで書き終えると、ようやく顔を上げた。

「誰にですか?」
「えーっと……」

 マキナに真っ直ぐ見つめられ、少女は頬を真っ赤にした。

「誰に宛てた手紙ですか?」

 ロボットは、質問が上手く伝わらなかったのであろうと考え、もう一度詳しく質問した。 

「う~ん」
「ロゼ?」
「あーわかった! もう……」

 ロゼは観念したようにロボットに向き合った。

「マキナ、これはね、私の大事な人たちへ向けた手紙なの! だから、あんまり見ないでー?」

 大げさに語尾を伸ばして、まるで子ども相手に注意するような言い方だった。

「あ……はい、わかりました」
 マキナは何も理解できていなかった。

 主人が何かを隠そうとしていることだけはかろうじて理解できたので、ご命令通り放っておいて離れた椅子へ着席した。

 ロゼはそれを見届けて、再び書きかけの便せんへ向き直った。

「……えっと……」

 三人へのお礼と思いを、多少ごちゃごちゃしても構わないと、手が動くままに書き出す。

「ロゼは――……クリスマスは、楽しみではありませんか?」

「え?」背もたれを掴んで振り返った。

「もう、そこまで子どもじゃない、ということでしょうか?」

 マキナは目を丸くしていた。ロゼは目を見開き、やがて笑い声を上げた。

「キャハハ! 違うよ。クリスマス――……!」
 ひらめきが舞い降りて、再び手紙へ向き直った。「――うん。プレゼントは、もう、貰っちゃったから」

「え?」

「うふふ。あわてんぼなサンタさんたちだよね~」

「サンタさんに……複数形、ですか?」
 ロボットは目をぱちくり瞬きした。

「うふふ、いいのいいの」

 ロゼは良い文句を思い付き、手紙へ書き足した。

 それ以降話しかけられなかったので、集中して一気に書き上げた。達成感で「よし……!」を声を漏らした。

 しかし重要なことを思い出し固まった。

「あっ……マキナ、どうしよう!」
 後ろで待つロボットに助けを求めた。

 急に主人が大声を出したので、休憩中の状態にいたマキナはびっくりして飛び起きた。

「は、はい!」

 主人が困っているようなので、急いで傍へ駆けると、机の上の出来上がった三通の便せんとにらめっこしていた。

「はい。ロゼ」マキナはもう一度返事をした。

「私……ポールの住所しか知らない」
「はい?」

「これだよ! エリオとダグラスの!」

と言って、二つの封筒をマキナの目の前に差し出した。

「どーしよー」折角書いたのにと残念がった。
「そうですね。エリオたちも、届けばとても喜ぶと思います」
「うんー……」

 ロゼが聞きたいのは、今はその言葉ではない。

 マキナは少し考える仕草をした後「ロゼ」と明るい声を出した。

「なに~……」
 完全にやる気を失くしてしまったようだ。

「この三つを――」ロゼの手から手紙を抜き取った。
「んー?」不思議そうにそれを見上げた。
「一つにしては、どうですか?」

 重ねられた手紙に視線を落とす。
「ええー? それじゃあ意味ないじゃん。三人それぞれに書いたん、だ、から、ね?……――あ!」

 妙案を思いついたのか、机の引き出しから大きめの封筒を取り出して宛先を書き始めた。

 マキナに覗かれたまま書いた宛名は「ポール・ゼファー」だった。

「マキナ、それ貸して」
「はい」

 ロゼは受け取った三つの封筒を重ね、先程の大きめの封筒へ収めた。

 マキナは興味ありそうに、封されるのを覗き込んで見守った。

「できた!」と小さな主人が言ったのが、まるで自分事のように嬉しかった。

「はい! できましたね」小さく拍手を送った。

 ロゼは、封筒を大事そうに見つめ、そして祈るように目を閉じた。

 ポストへ投函する時も「お願いします。無事に届けてください」と念じて、三人へ届くことを祈った。
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