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面接で
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待ち合わせは支店の一つが提示されていた。休日のため、行ってみたが誰もきておらず、門の前で待っていた。
汗をかきながら人の良さそうな人物が「すみません。」と現れた。声が電話の主と同じだったのですぐ気がついたのだが、声の印象と目の前の人物は随分違って見えた。横柄そうな声の人物は、すみませんと繰り返しながら、社長の都合で面接の場所をかえるから、車で本部までついてきて欲しいと告げた。
グループ企業となっているので、どこに採用になるのかかわからないし、普通は本部で面接をするものだろうからと疑問を持たずについて行った。
本部はそこから車で20分ほど離れた場所にあった。
建物は古く、入ってみるとバブルの頃の重厚なカーテンや椅子など、なかなか古めかしいものばかりが並んでいる。
私は親が家具や陶器を趣味で集めていたので、それらの値段が、椅子一脚だけでも数十万はするものだと知っていた。セットで購入しているとすれば、椅子のセットだけでも100万は下らない。
しかし、年数が経っていて、貼られている布は擦り切れていた。外は明るいのに、建物の中は薄暗く、明るさがわざと落とされそれが目立たないようにしてある。お金があるのかないのかわからないところだと思ったが、物を大切に使っているのだろうと思った。
通されていたのは玄関から入ってすぐのガラス張りの応接室。時間より五分ほど前に行き、15分ほど待たされた。向かいが事務室だったので、様子を窺われていたのは間違いない。
姿勢を崩さず待っていると、先ほどの人物が別の部屋への移動を促してきた。
ついていくと、又、高価な机と椅子が並んだ応接室だ。
ここには幾つの応接室があるんだろうと思いながら待っていると、ヨロヨロと手を支えられた老婆が現れた。社長だった。
立ち上がってお辞儀をする。
「かけてかけて。」
甲高い小声でまくし立てられる。
「あなたね、素晴らしい経歴を持ってるわね、あなたにとても大事な仕事を任せたいのよ。」
何も言わずに頷いていると、ニッコリ笑って話を続ける。ヨロヨロ歩いていた時とはうって変わって生き生きとしていた。
「沢山の人が困っていて、それを助けてもらいたいの。私はね、地域のために今やってることを大きくしたいのよ。」
具体的な事は何一つ出てこない。
「あなたのような子育てを経験した人にお母さんたちを助けてもらいたいの。」
やはり何も分からない。私は教員しか経験していないので、一般企業だとこんな話になるのかと思い、それ以上聞くのは控えた。
「どうする?これる?」
お茶は2杯目になっていたが、話を聞けば聞くほど内容が掴めない。
「1週間見学をさせていただけないでしょうか?今働いているところをすぐに辞めるのは難しいので、しばらくお時間いただけたらありがたいです。」
そう答えると、「決まりね。はいおしまい。」と満足そうに笑い、すっくと立つと部屋を出て行った。
呆気にとられた。これは年の功としか言いようがない。こちらが先手を打ったように見えて、相手が思うように話が動いたのだ。
三杯目のお茶が置かれた。お腹は水分でタプタプになっている。
新入社員の面接に、お茶が出され、コーヒーが出され、又、お茶が出されるなんてことがあるのだろうか。
その時に気がつくべきだった。自分がされたことと同じことを自分がしないといけないのだということを。
汗をかきながら人の良さそうな人物が「すみません。」と現れた。声が電話の主と同じだったのですぐ気がついたのだが、声の印象と目の前の人物は随分違って見えた。横柄そうな声の人物は、すみませんと繰り返しながら、社長の都合で面接の場所をかえるから、車で本部までついてきて欲しいと告げた。
グループ企業となっているので、どこに採用になるのかかわからないし、普通は本部で面接をするものだろうからと疑問を持たずについて行った。
本部はそこから車で20分ほど離れた場所にあった。
建物は古く、入ってみるとバブルの頃の重厚なカーテンや椅子など、なかなか古めかしいものばかりが並んでいる。
私は親が家具や陶器を趣味で集めていたので、それらの値段が、椅子一脚だけでも数十万はするものだと知っていた。セットで購入しているとすれば、椅子のセットだけでも100万は下らない。
しかし、年数が経っていて、貼られている布は擦り切れていた。外は明るいのに、建物の中は薄暗く、明るさがわざと落とされそれが目立たないようにしてある。お金があるのかないのかわからないところだと思ったが、物を大切に使っているのだろうと思った。
通されていたのは玄関から入ってすぐのガラス張りの応接室。時間より五分ほど前に行き、15分ほど待たされた。向かいが事務室だったので、様子を窺われていたのは間違いない。
姿勢を崩さず待っていると、先ほどの人物が別の部屋への移動を促してきた。
ついていくと、又、高価な机と椅子が並んだ応接室だ。
ここには幾つの応接室があるんだろうと思いながら待っていると、ヨロヨロと手を支えられた老婆が現れた。社長だった。
立ち上がってお辞儀をする。
「かけてかけて。」
甲高い小声でまくし立てられる。
「あなたね、素晴らしい経歴を持ってるわね、あなたにとても大事な仕事を任せたいのよ。」
何も言わずに頷いていると、ニッコリ笑って話を続ける。ヨロヨロ歩いていた時とはうって変わって生き生きとしていた。
「沢山の人が困っていて、それを助けてもらいたいの。私はね、地域のために今やってることを大きくしたいのよ。」
具体的な事は何一つ出てこない。
「あなたのような子育てを経験した人にお母さんたちを助けてもらいたいの。」
やはり何も分からない。私は教員しか経験していないので、一般企業だとこんな話になるのかと思い、それ以上聞くのは控えた。
「どうする?これる?」
お茶は2杯目になっていたが、話を聞けば聞くほど内容が掴めない。
「1週間見学をさせていただけないでしょうか?今働いているところをすぐに辞めるのは難しいので、しばらくお時間いただけたらありがたいです。」
そう答えると、「決まりね。はいおしまい。」と満足そうに笑い、すっくと立つと部屋を出て行った。
呆気にとられた。これは年の功としか言いようがない。こちらが先手を打ったように見えて、相手が思うように話が動いたのだ。
三杯目のお茶が置かれた。お腹は水分でタプタプになっている。
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