【完結】本気だと相手にされないのでビッチを演じることにした

たっこ

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冬磨編

10 セフレに独占欲 ※

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 当日の誘いは他と被るかも、という天音に、俺は事前に約束を入れた。もし暦通りの仕事なら月曜日はしんどいか? そう思って火曜日にした。
 今まで通り金曜日にとも思ったが長すぎた。待てなかった。週明けにはすぐにでも会いたかった。天音に会って癒されたかった。
 特定の一人とは頻繁に会わない。今までは絶対だった俺の中のルールを破ってでも天音に会いたかった。
 それくらい、天音は俺にとって特別だった。

 待ち合わせのバーで天音の顔を見た瞬間、俺は癒された。なぜだかわからないが、天音の無表情が無性に可愛い。

「なんだよ、じっと見て」
「ん? そんな見てたか?」
「見てるだろ。見んなよ、うざい」
「……天音だ」
「は?」
「いや、なんでもない」

 記憶の中の天音はベッドでの天音が多かったから、さっそくギャップにやられた。
 やばい、なんだこれ。ほんと癖になりそう。

 ホテルに入ると、早く抱きたくてたまらなくて、天音のうなじにキスを落とした。

「ん……っ……」

 ふるっと震える天音が可愛くて、その吐息にゾクッとした。
 これはトラウマの震えか? いや、たぶんキスに反応して震えただけだ。その証拠に、もう震えは止まってる。

「……かわい」

 もう一度うなじキスをしながらそう漏らすと、さらにふるふると天音が震えた。
 シャワーを待つのももどかしいくらい、早く抱きたい。
 天音からふわっと香るホワイトムスクに似た香り。シャンプーか? ボディソープ? 天音らしい優しい香りに癒される。

「もう離せよ。シャワー先入る」

 その可愛くない態度もまた可愛いから参る。ますます早くベッドの天音に会いたくなった。

 シャワーを交代で終わらせベッドに組み敷いた天音は、やっぱり感情のない眼差しで俺を見据えた。

「今日は前からでいい?」
「……やだ。後ろがいい」
「……そっか。いいよ。じゃあ今日も後ろな」

 もう少し慣れるまでは天音のしたいようにしてあげよう。
 前回よりももっと優しく、焦らずゆっくりと、天音の全部を溶かすように身体中を愛撫する。
 この一週間、ベッドの天音を何度も思い出した。でも、記憶の中にあった天音の数倍も、本物の天音は可愛かった。
 吐息が漏れるころには言葉がたどたどしくなり、今日もうわ言のように俺の名を繰り返す。

「……ぁ……っ、とぉ……ま……、と……っ、ぁ…………」

 これを聞くだけで、俺のそこは痛いくらいに張り詰めた。
 かすかにしか漏れない喘ぎ声も、ものすごいクる。
 今回は、うつ伏せになる前の天音の顔をしっかりと見つめた。
 無表情の中にも微妙な変化がちゃんとあった。
 気持ちいい、と天音の表情がわずかに語る。ちょっとだけ寄る眉だったり、震える唇だったり、愛撫に反応してわずかに語る。
 そのとき、一瞬だけまぶたが開いて熱い瞳が覗き、俺の心臓がドクンと鳴った。
 それは本当に一瞬で、今のは見間違いかなと自分の気持ちを冷静におさめる。
 あれはやばい。イクときの名前呼びの比じゃない。あんなの見せられたら完全に勘違いしちゃうだろ……。
 見間違いだよな? 
 もう一度見て確認したいな。
 天音……早く慣れろよ。早くお前の顔を見ながら抱きたい。

「……ぁ……っ、……と……ま……」

 天音の中は相変わらずキツくて、俺は今日も先にイかないように必死だった。
 震える天音の身体を優しく抱きしめ、震える手をぎゅっと握る。

「ぁぁ……っ……!」

 俺が奥を突くたびに、ひきつれたような小さな喘ぎ声を上げ、繋いだ手をぎゅうっと握ってくる。

「ほんと……なんでそんな可愛いんだよ、お前」

 強く握り返してくる手が可愛い。うなじや頬、耳にキスをするたびに大きく震える天音が可愛い。
 ベッドの中ではワントーン高い天音の声が可愛い。
 小動物みたいでほんと可愛い。

「とぉ……ま……っ、ぁ……っ、……と……ま……」

 ほかのセフレにも、こんな可愛いお前を見せてんのかよ。
 見せんなよ。もう俺だけでいいじゃん。
 俺がずっと誰よりも優しく抱いてやるから、他なんて切っちゃえよ。
 ……なんて言ったら、きっと天音は「お前なに言ってんだ?」って冷たく言い放つだろうな。
 そんな天音を想像したらおかしくて笑ってしまった。

「あぁ……っ……っ、とぉま……っ……!」

 今日も天音は、果てながら俺の名を呼んだ。
 あぁ可愛い。お前もう、ずっと俺の名前だけ呼んでろよ。
 そんな独占欲をセフレに抱いてる自分に、思わず苦笑した。

 天音はタバコを吸わないと聞いて遠慮したが、「吸っていいよ」「いいっつってんだろ」とぶっきらぼうに言われ、天音の前ではありがたく吸うことにした。
 どうしてもやめられないタバコ。
 天音の身体には悪いとわかっていながら、吸うのを許してもらえたのはありがたかった。

 
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